「Nothing」と一致するもの

First Person Shootr - ele-king

 そもそもインタヴューをおこなうつもりで返事を待っていたのだが、担当者の骨折りにもかかわらず、彼からは返事がこなかったようだ。それからもうずいぶんと時間がたった。ファースト・パーソン・シューターとは誰なのか。リリース当初ほんとうにわずかな情報しかなく、フレッド・ワームズリーとかリー・バーノンという名前にたどりつくのすらやっと。その頃デビュー作をリリースしたばかりだったサクラメントのプロデューサー、リー・バーノンと、このリー・バーノンを結びつける記事もなかったし、フレッド・ワームズリーと記されることがもっぱらであって、いまではリー・バーノンのサイド・プロジェクトらしいということはわかっているが、ファースト・パーソン・シューター(以下FPS)名義でのインタヴューは見かけない。情報がないというよりも意図的に覆面性を持たせたのではないかと、いまでは思う。彼にはファースト・パーソン・シューター(以下FPS)をリー・バーノンの名前から切り離したい理由があったのではないか? それは「少なくとも僕が本当に好む最後のチルウェイヴ作品になるだろう」という数ヶ月前の発言を再度引用しながらはじまるタイニー・ミックス・テープスのレヴューにも透けてみえるように、チルウェイヴ的な音への留保つきの共感、あるいはそのブームとしての消費期限を瀬踏みするかのような思惑ではなかったか。リリース元の〈レフス〉もチルウェイヴ系のレーベルとしての印象が強く、〈プラグ・リサーチ〉のような硬派な名門とはキャラクターとして差が大きい。もしそのようなことのために素性をあいまいにするような経緯があったのだとすれば、本作にとってもチルウェイヴにとってもあまりにもったいないことだと思う。「ピュア・ベイビー・メイキング・ミュージック」......それが、リリース後にやっと読むことのできた彼のFPS評だ。リー・バーノン名義では卓抜にして自在なエディットと、スマートなセンスによって、自由な発想に打ち抜かれたヒップホップを展開している。「それこそフライング・ロータスのモンド・ヴァージョンでしょう」というのは三田格の評で、そのように込み入った自身の作家性を、FPSの「ベイビー・メイキング」な作風と混在させたくなかった。そのようなことではないかと推察する。

 KEXPなどではFPSの音源にリーン・ウェイヴというタグがつけられている。それは「やせ細ってかぼそく、ふしぎなことにウェイヴィだ」そうで、実際のところ、R&Bを基調としながらも、シンセを重ね、リヴァービーにドリーム・スケープを広げていくやりかたにはチルウェイヴのヴァイブが色濃い。全体的にはかなげで繊細、隙間が多く、とてもスローに展開する。また自在なビート感覚、あるいはタイム感覚がそなわっている一方で、メディテーショナルなアンビエント・ポップへと展開していきそうな芽もある。要するにはっきりとポスト・ヒプナゴジックを彩る才能のひとりである。それを当人の言で表すなら「リアル・アンビエント・R&B・ノスタルジア・タイプ」ということになるだろうか。アンビエントとR&Bとを接続する感性がチルウェイヴを介して登場してくる例を鮮やかに示している。クラムス・カジノと比較するサイトもあるが、ハウ・トゥ・ドレス・ウェルも引き合いに出さねばならない。

 「リーン」という言葉が定着することはなかったが、それはファットな要素をごっそりとそぎ落とした音楽、というような意味とともに、リテラルなかぼそさに言及したものであろう。FPSにはひどく栄養不足な男性のイメージも重なっていて象徴的だ。そもそもFPSとはプレイヤーの視点で争われるシューティング・ゲームの総称。ゲーム画面はイコール自分の視界であり、プレイヤーは不断の緊張をしいられる。自分の存在が戦闘空間に巻き込まれている緊迫感と臨場感、サバイバル感。それがFPSの肝だそうで、それはけっしてファットな体験ではなく、神経をすり減らし摩耗させるものだ。"パンチ・ストラック""シー・イン""ザ・ビッグ・ミステイク"と、ゲームの体験をほうふつさせるような曲名が並び、食事もとらずにモニターにはりつくプレイヤーを描出しながら、最終的に"ペイン・フォー・ユア・ウィン"(勝利の痛み)をうたい、再度「ニュー・ウェブ」(あらたなクモの巣)へとからめとられていくことを暗示して本作はぶつりと終わる。それはこうしたゲームへの両義的な返歌であるとともに彼の世界観でもある。ドリーミーでありながら、モニターから見えるものはすべて敵という、酷薄な現実認識がその裏側にはりついているのではないか。パンダ・ベアやチルウェイヴはマッチョイズムの対極にあるフィーリングをとらえたが、FPSの「リーン」は挫折したマッチョイズムを内側からあかすものなのかもしれない。奇妙に栄養のない音は、とてもデリケートにその空虚さをうずめていく。男性の表現はいつこのような細やかなタッチを得たのだろうかと筆者は驚く。

 そうした、女性らしさを経ない非マッチョイズムの可能性に対して、FPSはもっと意識的であっていい。それを「赤ちゃんが作ったようなピュアな音楽」として、一見肯定するようでいて実際は恥じているかのような自己評価が下されていることは、筆者にとっては悲しいものだ。このデビューEPの次がリー・バーノンの作品になるかFPSの作品になるかはわからないが、ぜひともFPSは続けてほしい。そして、どうせ名義わけるのならもっと限界まで「赤ちゃんが作ったようなピュアな音楽」性をつきつめてほしいと思う。本作は今年聴いたもののなかでも出色の作品なのだから。

Ryoma Takemasa - ele-king

10/17にファース・トアルバム『Catalyst』をUNKNOWN seasonからリリースしました。かなり濃い内容になってますので是非チェックお願いします。また、『Catalyst』のミュージック・クリップをYoutubeで配信中 です。テンポ良くモダンな映像でかなりかっこいい作品に出来上がってますのでこちらも是非宜しくお願いします。
Ryoma Takemasa "Catalyst (Autumn Evening Mix)"

10/26@原宿Lily
DJ : Ryoma Takemasa、TBA
10/27@恵比寿Zubar
Music : Yoshi Horino、Ryoma Takemasa、Kyoko Kamichika
11/24@恵比寿Zubar
Music : Yoshi Horino、Ryoma Takemasa、Kyoko Kamichika
11/30@Loop
DJ : Shinya Okamoto、DJ Nori(Posivision)、Ryoma Takemasa
Live : Cherry、ngt.

Link
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CHART


1
Ryoma Takemasa "Catalyst" UNKNOWN season

2
Yoshio Ootani "Strange Fruits (Gonno Remix)" Black Smoker

3
Manzel "Manzel2" Manzel

4
Ryoma Takemasa "Deepn'(Gonno Remix)" UNKNOWN season

5
Ryoma Takemasa "Deepn'(The Backwoods Remix)" UNKNOWN season

6
Sutekh DIrty Needles Drop Beat Records

7
Kenlou "The Bounce" MAW

8
Unbalance "Unbalance5" Unbalance

9
Milton Bradley "Reality is Wrong" Prologue

10
Reality Check "Fantasy" Strictly Rhythm

Mala - ele-king

 コーキとのデジタル・ミスティックズ名義でロンドンのダブステップの動きをリードしてきたマーラが、ジャイルス・ピーターソンの招きでキューバを訪れ、ハバナのミュージシャンの演奏を持ち帰って完成させたのがこのアルバムだ。

 ソン、ルンバ、チャチャチャ、マンボなど、多彩なスタイルのリズムで20世紀の世界のポピュラー音楽に影響を与えてきたキューバ音楽は、演奏の約束事がとても多い。約束事が多いということは、そこに他の要素が入りこみにくいということでもある。ライナーによれば、キューバで録音してきた演奏と自分のビートやサウンドの組み合わせ方を探るのが難しくて、マーラは途中で投げ出したくなった。そこでジャイルスに相談したら、プエルトリコで出会ったことのあるシンバッドが送りこまれてきて、そこからようやく作業が好転したのだそうだ。平凡なDJなら自分流のドラムとベースのリズムにキューバの打楽器類を上モノ的に飾って一件落着にしそうだが、マーラとシンバッドは一歩踏みこんだ組み合わせを考えていった。
 たとえば"The Tourist"はリズムの骨格をキューバのミュージシャンにまかせた伝統的なソンのスタイルの、ふだんのマーラならやりそうにない曲だ。弦楽器トレスのように聞こえる音は演奏者のクレジットがないが、サンプリングだろうか、音は加工されているが、フレーズは伝統的。マーラはイントロや途中で合成音を加え、伝統的なソンの新しい音色による再解釈といったおもむきの曲に仕上げている。
 もう1曲キューバ色が強いのは、アフリカ系の宗教サンテリアのお祈りを使った"Como Como"だ。地元では打楽器類の伴奏だけでうたわれるお祈りだが、ここではエレクトリック・ピアノをループして使ったり、ハーモニー感のある女声コーラスを入れたりして、これまた伝統的なものとは次元の異なる編曲をほどこしている。
 それ以外の曲はふだんのマーラ色がもっと発揮されている。冒頭の"Introduction "から"Mulata"にかけては、おしゃべりとコンガのソロからはじまり、ロベルト・フォンセカのピアノとサンプリングのマラカスが加わるところまではキューバ風だが、その後のドラムや背後のかすかな謎めいた音やベース、ピアノの残響をカットする手法などはマーラ風ということになるのだろう。美しい曲で、フルートがのっかっていれば、ぼくなどフランキー・ナックルズの未発表曲だと言われても信じてしまいそうだ(彼のハウスはキューバン/ラテン・リズムを換骨奪胎したものだった)。"Mulata"はアフリカ系とヨーロッパ系の混血女性のことだが、異なる音楽の要素がバランスよくミックスされたこの曲らしい。
 4つ打ちのリズムにピアノや打楽器がのっかる"Tribal"やテクノ系の音楽でアイコン的に使われてきたリズムを強調した"Cuba Electronic"などは、よりロンドン色の強い音楽ということになるのだろうか。ダナイ・スアレスのうたう"Noches Suenos"のようなバラードでさえ、途中で初期のダブステップ的なドラムが出てくる。

 デジタル・ミスティックズ名義の作品からすると、生楽器度が高く、過激な実験が少ないので、ダブステップのファンにはどう受け止められるのかわからないが、キューバ音楽とのフュージョンとしては誠実によく作られたアルバムだと思う。

Meditations 2012.10.15 - ele-king

Chart


1

Jean Dubuffet - Experiences Musicales (II) Rumpsti Pumsti (Musik)
これは事件でしょう...アール・ブリュット提唱者Jean Dubuffetによる61年美術館級音源の未CD再発部分が遂にCDになりました。以前のCDでは聴けなかった激しい演奏ばかりが満載です!

2

Sensations' Fix - Music Is Painting In The Air (1974 - 1977) Rvng Intl.
Spectrum Spoolsの再発で知られるFranco Falsiniが中心である伊プログレバンドの既発、未発&新ミックス盤。黄金色に輝くギターの浮遊感が素晴らしい!

3

Uku Kuut - Estonian Funk Bigtree Records
PPUの編集盤で度肝を抜かされたエストニアのファンク作家による最新作。新曲&リミックスのトレンドからは微妙に外れたハウス/ファンクな音楽性は、今回も多くの音楽好きに爪痕を残します!

4

Ricardo Donoso - Assimilating The Shadow Digitalis Recordings
2LPに渡る壮大な宇宙への旅~ 退廃した近未来世界を思わ暗さを持つコスミッシェ作品。派手な展開はないものの、宇宙地下道をロマンチックに突き進む展開は素晴らしい。影の傑作!

5

Ian Drennan - The Wonderful World Underwater Peoples Records
OESB周辺からこんなものが...!Big Troublesのメンバーによる初ソロ作。ワールド/ニューエイジ臭漂うアンビエントを軸に、破天荒な展開を重ねるポップ/アヴァンの混沌具合...たまりません。

6

Woo - It's Cosy Inside Drag City
Nite Jewelお気に入りのユニットによる89年2ndが再発。現れては消えて行く優しいアンビエンスは唯一無二で、あらゆる人に聴いもらいたい名盤です。今再発されるというのも良いタイミング。

7

M.B. - Neuro Habitat Urashima
言わずと知れたイタリアのノイズ巨匠の82年代表作が再発。ミンチ状に怪音が刻まれ続けるA面に、幻覚から必死に抜け出そうと重くもがき苦しむB面。絶品です...

8

Elg - Mil Pluton Hundebiss Records
Ghedalia Tazartesとの共作でも知られるElgの怪ポップ! 宇宙電子音、コンクレート、EBMにボーカルが絡むという破綻寸前の所でポップに仕上げてます。今年の発狂盤の中でもこれは上位でしょう!

9

Natural Snow Buildings - Night Coercion Into The Company Of Witches Ba Da Bing!
フォークとドローンの間から陰惨な破滅を導き続ける男女ユニット。08年作の再発盤となるここでは、3CDという長尺で最初から最後まで一直線に破滅へと導くノイズ・ドローンを披露。純粋なノイズでは無い分余計にむごいです。

10

Roberto Cacciapaglia - Sei Note In Logica Wah-Wah Records Sound
前作に続いて79年の2ndも再発。児童による演劇を観ているような、危なっかしいハラハラした感覚と素朴な楽しさが心地良い電子音楽/ミニマリズム。蛍が現れては消えていく淡々とした美しさです。

Zazen Boys - ele-king

 ザゼン・ボーイズのファンで座禅を経験しているのは何人いるのだろう。バンドのメンバーはやはり経験しているのだろうか。向井秀徳とは何度か酒を飲み、音楽について「何が好きか」とか「ビートルズだったら何が好きか」などというたわいのない話を延々としたことがあるけれど、肝心なことを聞き忘れていたといまさら気がついた。

 只管打坐というのは有名な禅宗の教えで、座禅を組むのは、それで心が洗われるからとか、浄化されるとか、悩みが消えるとか、そうではないと。座禅をしたいから座禅をするのである。掃除をしたいのは、部屋を綺麗にしたいからではない。掃除をしたいから掃除をするのである。原稿を書きたいのは、ただ書きたいから書くのである。なにかの目的があって行動があるのではない。行動は行動そのものによって成り立つ。ポテトサラダが食べたいのは、ポテトサラダで野菜を取りたいからではない。ポテトサラダが食べたいから食べるのだ。禅という東洋で生まれた「考え方のシステム」は、1960年代のヒッピーからジョン・ケージ、あるいはディスコ(アーサー・ラッセル)にまで影響を与えている。僕は西欧人ではないからわからないが、早い話、煮詰まりかけていた欧米の「考え方のシステム」に別次元の自由を与え、気持ちを楽にしたのだろう。

 ザゼン・ボーイズなるそのバンド名の、座禅という、ある意味反ロック的な言葉(なにせ座っているのだから)をボーイズという実にクリシェたるクリシェとくっつけているところに彼らの本質が見える。片方の耳で般若心経や落語を聴きながら、もう片方の耳ではロックが、ファンクが、ジャズが、電子音楽が、ディスコが、白い音楽と黒い音楽が注入される。音の実験には余念がないが、ザゼン・ボーイズの音楽は洗練されている。

 彼らのファンクへのアプローチには本当に目に見張るものがある。それぞれの楽器のそれぞれの反復のあいだには、よろめく身体を鞭打つようなフィルイン、ユニゾンが入る。"ポテトサラダ"の奇数拍子をリズミックな躍動は見事なもので、ある意味バトルズと同じ次元で鳴っていると言えよう。
 向井秀徳は、彼のマス・ロック的なアプローチのいっぽう、"はあとぶれいく"ではシンプルな8ビートを面白がり、また"破裂音の朝"や"サンドペーパーざらざら "ではUKのポスト・パンク・バンド、ワイヤーのようにデザインされた音の配列を披露する。"電球"における5拍子のグルーヴを聴いていると、しかしマス・ロックと呼ぶには......なんというか、彼らのよりフィジカルな衝動を感じる。ダンス・ミュージックとして成立しているのだ。

 "気がつけばミッドナイト"や"暗黒屋"のような曲は、彼らの旺盛な実験精神の結実のひとつだ。向井秀徳のジャズに対する共鳴は、その装飾性やたんなる情緒的なものとしてではない。音楽的論法の連なりによって表されている。ドラム、ベース、ギター、時折入る鍵盤の音は、IDMのビートメイカーがソフトウェアを使ってもできない領域があるところを見せている。彼らにとって5枚目のアルバムは、前作で見せたダンス/ファンク/エレクトロニック・ミュージック、それからキモノスで試みたシンセ・サウンドをさらに押し進めるものとなった。"泥沼"は、『セクスタント』時代のハービー・ハンコックがキャプテンビーフ・ハートとセッションしているかのようだ。
 タイトル曲の"すとーりーず"は、いわばディスコだ。ベタな4/4キックドラムを使い、ユニークな録音をもって生まれた、彼らのコズミック・ディスコである。クローザーの"天狗"でもバンドは拍子数を操り、見事なアンサンブルで、おおらかなグルーヴを創出する。『すとーりーず』は、彼らの高度な演奏の妙で、スリルと興奮の音楽体験を我々を差し出す。僕はその態度にとても共感を覚える。

 向井秀徳の歌詞は、敢えて道徳心(J-POPでお馴染み)を踏みにじるような、ときに露悪的なきらいもある。ユーモアのふりをして、揺さぶりをかけているかのように、彼はきわどい言葉遣いを好む。たとえば「陸軍中野学校予備校理事長 村田英雄」といったフレーズは、いまのご時世では笑えない(徴兵制が検討されているくらいだから)。そして、彼の言葉は道徳心を説いてばかりいる日本の多くの音楽にくらべれば異色であるばかりか、陳腐なことのいっさいを聴き手に強制しない。これから起こりうるすべてのことを思いつつ、パンツ一丁で踊りたいと向井秀徳は叫んでいる。ザゼン・ボーイズが人間を小馬鹿にしているのか愛しているのかよくわからくなったときには、アルバムの1曲目に戻れば良い。

ROOM FULL OF RECORDS - ele-king

 さまざまな配信サイトやデジタル機器の発展のおかげで、我々は世界中の良質な音源をたやすくゲットできるようになった。
 デスクトップ・ミュージックは、一昔前なら高価な機材を揃えなくては実現できなかった表現をパーソナルなモノにしてくれて、アーティストの金銭格差を縮めてくれた。
 これはとても歓迎することではあるのだが、ここ最近日本のアンダーグランド・シーンにわざわざアナログでリリースをする若者が増えて来たことは特筆するように思う。HOLE AND HOLLANDDJ P-RUFFの7インチ、まだ未見だが主に中央線沿線で活動を続けるBlack SheepもカセットテープによってMIX TAPEを新規でリリースしているという具合。
 彼らに共通して私が面白いと感じるのは、私のような昭和生まれのヴァイナル・ノスタルジー世代が「レコードこそ至上」と言うのとは違い、主に20代~30代前半でデジタル技術の恩恵を最大限に享受しながらも、自身の表現の手段としてアナログフォーマットを選択しているところだ。
 今回そんな流れから紹介させて頂くのは、長年CLUB MUSICを発信し続けている「manhattan records」内に設立されたヴァイナル専門のROOM FULL OF RECORDSだ。

 今年に入って着々とリリースを重ね、日本国内はもとより、つい先日東欧のディストリビューターとも契約した。日本発のヴァイナルがいよいよ世界各国へと発信される。一昔前ならこういう話も多々聞かれたことではあるが、前述の通り世界的にデジタル化が進む昨今では賞賛に値することだ。

 このレーベルの陣頭指揮を取っているのが、元CISCO HOUSE店にて長年店長を勤めていた野口裕代嬢。レーベル躍進の理由もうなずけると言えばそうなのだが、そこには並々ならぬ彼女の愛情と熱意が込もっている。
 私が何より嬉しいのは、こう言った先人のノウハウや熱意が若い世代といい具合にリンクしはじめていることだ。このような現象はDJカルチャーに留まらずさまざまな場面で起こっている(例えば宮大工や農業等)。
 ある意味技術革新も飽和状態になりつつある昨今、若者が自らの感性で失われつつある文化を選択している。そしてこういった伝承の精神こそが何でも画一化されて行きやすい今日において素晴らしい文化を守るヒントになっているのだと私は考える。

 随分前置きが長くなってしまったが、今回ご紹介させて頂くレコードはその〈ROOM FULL OF RECORDS〉から第3弾シングルとして発売されたばかりの「The Dubless - JAMKARET」だ。
 グループを率いるRyo of DEXTRAXは小生も関わらせてもらった「20years of Strictly Rhythm" Mixed by DJ NORI & TOHRU TAKAHASHI」でRE-EDITをお願いした彼の新ユニットである。〈Strictly Rhythm〉のときには来るべきデジタル時代を表現すべく「サンプリングスポーツの面白さ」として彼にRE-EDITを依頼したのを覚えている。今作とはまったく真逆の発想でお願いしたのだが、見事なEDIT-WORKを披露してくれたのも記憶に新しい。
 そんな彼が現在の地元である「吉祥寺Cheeky」にて開催されているPARTY「JAMKARET」にてUZNKと出会い結成されたのが、「The Dubless」だ。
 前作は同じく吉祥寺を地元とするLighthouserecordsの増尾氏にオープンリールのMTRを借りて作られたCD-R版のみのミニアルバム。思えばこの時からこのユニットの方向性は定まって居たのかも知れない。せっかくのCDであるのに悪く言えば「こもった音質」だったり、良く言えば「どこか懐かしい音質」を感じる意欲作であり問題作だった。余談だがこの夏の暑さでマスターのテープが少しノビ気味になったらしく「もう2度と同じマスターで違うアプローチが出来なくなった」と本人は嘆いていたが、そんな2度と同じ物が作れないからこそ、その時一瞬の価値が高まるとも僕は感じている。

 末筆だが最近デジタル機器を存分に駆使してる友人のMOODMANが、最近のデジタル音源をその店の出力機器に合わせマスタリングを自ら施し、同じ音源でも3種類は用意して臨んでいると言う話も付け加えておく。
 要は画一化されてると思われやすいモノでもどれだけの手間や愛情を注いだかでフロアでのプレゼンテーションの幅は広がり、その気を感じることもDJとクラウドとの素敵な相関関係としてのCLUBの醍醐味ではないだろうか。それは音質博士のウンチク話とは別次元の話だ。
 この辺の話は小生も熱くなりすぎるので、The Dublessの新作の紹介は彼らとも親交の厚い長谷川賢司にお願いしよう。(五十嵐慎太郎)

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The Dubless
JAMKARET/Blackkite

ROOM FULL OF RECORDS

 ライブ・アクトの出来るアーティストの作品をオリジナル+ダンス・リミックスという形態でヴァイナル化。〈ROOM FULL OF RECORDS〉の第3弾リリースとなる本作、Ryo of DextraxとUZNKからなるユニット、The Dublessの人気曲が遂にアナログ化~!!!
 吉祥寺を拠点に活動するryo of dextraxが、地元のナイスなミュージックバー"bar Cheeky"で仲間たちと開催しているパーティ名をタイトルに冠した "JAMKARET"は大気圏を突破し無重力の宇宙空間まで一気に飛び抜けるかのような強い推進力と高揚感に溢れたバレアリック・チューン。
 スペイシーなエフェクトとウネりまくるベースがやけにカッコイイ"Blackkite"はまさに漆黒のサイケ・ファンク!
 そして、Rondenionによるリミックスはカット&ループとエフェクトがムーディーマンやセオ・パリッシュに通じるデトロイト・ハウス・フィールでよりフロアー仕様!
 彼らのロッキッシュなサイケ・メタル感とUR的なヘヴィー・ファンク感が渾然一体となって聴く者を次元上昇へと誘うフロアーフィラー3チューンを180gのヘヴィー・ヴァイナルに収めた一枚!
 是非、フロアーに向けガンガン鳴らしていただきたい。末筆になるが、ジャケのアートワークも素晴らしい!  (Kenji Hasegawa)

The Dubless リリースPARTY @新世界
https://shinsekai9.jp/2012/10/12/dubless/

DJ END (B-Lines Delight / Dutty Dub Rockz) - ele-king

B-Lines Delight/Dutty Dub Rockz主宰
栃木のベース・ミュージックを動かし続けて10数年。へヴィーウェイト・マッシヴなDrum&BassパーティーRock Baby Soundsystemを主宰。同時に伝説的なレコード・ショップBasement Music Recordsでバイヤーを務め栃木/宇都宮シーンの様々な下地を作った。現在はDutty Dub Rockzに所属、北のリアルなベース・ミュージックの現場を作り出すべくスタートしたパーティーB-Lines Delightを主宰している。
https://soundcloud.com/dj-end-3
https://b-linesdelight.blogspot.com/
https://duttydubrockz.blogspot.com/

DJ END REWIND CHART


1
Ten Billion Dubz - One Drop Banger / Depth Charge - Dub
https://snd.sc/OVQonJ

2
Negatins - Crimson Horn - Dub
https://snd.sc/WVlYBF

3
DD Black - Deep Cover - Dub
https://snd.sc/OVQaNo

4
Altered natives - Tenement Yard Vol 3 - Eye4Eye Recordings
https://boomkat.com/downloads/568053-altered-natives-tenement-yard-vol-3

5
Zed Bias - Heavy Water Riddim - Digital SoundBoy
https://snd.sc/U6Z3QB

6
Dusk&Blackdown - Wicked Vibez feat.GQ - Keysound
https://youtu.be/WwcpxmPugoI

7
Pearson Sound - Clutch - Hessle Audio
https://snd.sc/OxrOtd

8
New York Transit Authority - Off The Traxx(VIP) - Lobstar Boy
https://snd.sc/SQWPIY

9
Bounty Killer vs Dub Phizix - Cellular Phone Rags (1TA's Killer Dancehall Refix) - Free Mp3
https://snd.sc/WVoBDF

10
Death Grips - NO LOVE DEEP WEB - Free MixTape
https://snd.sc/PzjW5N

dj kamikaz - ele-king

dj kamikaz

clockwise recordings再始動しました!
私自身の活動としては、六本木bullet'sにて開催されている"Metropolis"に定期的に出演しています!clockwise recordingsのこれからの動きはチョコチョコ報コックしまっすので。ツイッターやgoogle検索とかをチェケラッチョしてみてください。
今回はちょっと古めから今現在までの曲で、雰囲気の良い曲をまとめてみましたので。
https://soundcloud.com/kazakami

Chart


1
Airhead - Black Ink

2
Matthewdavid - Being Without You

3
Jeremiah Jae - $easons

4
Ras G - Yea

5
Nicole Willis&The Soul Investigator - Soul Investigator's Theme(Heralds of Change Remix)

6
dj klock - machine live @Niigata club JunkBox 2004 12/4

7
dj klock - untitled(2003 out take)

8
himeshi - Break my heart

9
shlohmo - Places

10
RLP - Minovsky Physics

オウガ・ユー・アスホール - ele-king

 飄々としながら、ほとんど同じテンポで繰り返される『100年後』は、退屈さえも受け入れようとするオウガ・ユー・アスホールらしい開かれ方をしたアルバムだ。はったりはなく悲観もない、そして実はとんでもなく無理してはったりをかまし、悲観しているとも言えるが、たやすく涙に流されることをここまで拒んでいる作品はない。
 そんな問題作『100年後』から"素敵な予感 different mix"、12インチ・アナログ用の別ミックスのPVです。メンバーが企画制作すべてをてがけた意欲作。ele-king先行公開!



Chart - DISC SHOP ZERO 2012.10 - ele-king

越境ビーツ Selection #01

ひとつのジャンルにこだわっていては見落としてしまいそうな"越境"ビーツ&サウンドを、ワールド・ミュージックの感触を持った曲を中心に10曲。
https://discshopzero.tumblr.com/post/25012657366


1

LHF - EP3: Cities Of Technology (Keysound) /
ロンドン裏通りの移民感を感じさせるユニットの2枚組大作CDからのカット。世界の一都市としてのロンドン・ワールド・ミュージックとでも言うべき4曲。

2

SYNKRO - Broken Promise EP (Apollo) /
ジャジーなムードとエレクトロが持つウォームでクール(この2つが共存するのが素晴らしい~)な柔らかさが魅力のEPの中で、4の民族パーカッションが響くアンビエントが越境。

3

GUIDO - Flow / Africa (State Of Joy) /
自身のレーベルを立ち上げての2作目。親指ピアノ的フレーズも交えつつリズムが斬新な3のアフリカ感は新しいと思います。

4

MENSAH - The Gambia (Deep Medi Musik) /
タイトル通りにアフリカンなポリリズムがオールドスクールな感触も混ぜつつ表現されたキラー・エレクトロfromブリストル。

5

TUNNIDGE - Dark Skies / Tribe (Deep Medi Muzik) /
クラクラするようなベース音と催眠術のような男声ヴォイス、そしてシャープなスネアが覚醒を呼ぶ1もイイですが、タイトル通りトライバルさを前面に出した2がキラー。ダブステップを超えてます。

6

DISTAL - Booyant / Amphibian (Tectonic) /
ジュークを解体しファンキーな要素も加えた展開。1で聴かせてくれたサウンドをさらに解体した2は、ジューク感もありますが、よりトライバルなサウンドを指向するDJに上手く混ぜ込んでイッて(イカせて)欲しいです。

7

FUNKYSTEPZ - Trouble (Hyperdub) /
スクウィーな感触のアシッド味も加わったクレイジーなUKファンキー・サウンド。1のチープなシンセが生む中東感も◎。いずれもフロアでも効力発揮間違いなしの3曲。強力!

8

KAHN - Way Mi Defend / Azalea (Box Clever) /
ブリストルの要注目プロデューサー。レゲエの声ネタを使いつつ、3連パーカッションとシャープなワンドロップ・スネアが水滴のように深さを強調させる1。このレーベルは全て要注目。

9

DARLING FARAH - Body (by CivilMusic) /
デトロイト出身UAE経由、現ロンドン在住の20歳によるアルバム。4/4ビートのテクノ・サウンドをベースにしつつ、チルアウトでディープに洗練されたデトロイト・ソウル~ダブ・テクノを展開。5のテック・サンバが最高。

10

ADRIAN LENZ / SANDMAN - Cover Me / No Prisoners (Blank Mind) /
スペインはグラナダ発という2人の、ソカをベースにしたダークでマッドな1枚。ヤバイデス。
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