「Nothing」と一致するもの

HOUSE OF LIQUID presents WARM UP - ele-king

 足を素速く動かしましょう。冗談を理解しましょう。フットワーク/ジューク、ハウスとベース・ミュージックを楽しく聴きましょう。恵比寿のリキッドルーム2Fに行きましょう。入場料は1000円。大ベテランのムードマンも出ます。明日のために、大量の汗をかいてください。財布を落とさないように。

featuring
D.J.APRIL(Booty Tune)
Kent Alexander(PAN PACIFIC PLAYA/Paisley Parks)
1-DRINK
MOODMAN(HOUSE OF LIQUID/GODFATHER/SLOWMOTION)

2013.3.30 saturday night
at KATA[LIQUIDROOM 2F]

open/start 23:00
door only 1,000yen

*20歳未満の方のご入場はお断り致します。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参下さい。(You must be 20 and over with photo ID.)

info
KATA https://www.kata-gallery.net
LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

▼D.J.APRIL(Booty Tune)
Hardfloorでシカゴに目覚め、のらりくらりとシカゴ・ハウスを追いかけております。横浜で「Ruler's Back」というJukeをメインにしたっぽいイベントをオーガナイズ(現在休止中)させていただいたり、Jukeレーベル「Booty Tune」の広報などもしております。
https://www.bootytune.com

▼Kent Alexander(PAN PACIFIC PLAYA/Paisley Parks)
高校生の頃からパーティ地獄巡りを重ね、日本とアメリカ各地でDJ。昨年は自身が所属するjukeユニットPaisley Parks楽曲のみのdjセット等をjukeの本場シカゴのラジオで披露するなどの活躍を見せている。横浜Pan Pacific Playa所属。
https://www.panpacificplaya.jp/blog/

▼1-DRINK
BASSと非BASSの境界を彷徨いながら現在にいたる。ときどき街の片隅をにぎわせている。
https://soundcloud.com/1-drink

▼MOODMAN(HOUSE OF LIQUID / GODFATHER / SLOWMOTION)
日本でもっとも柔軟な選曲能力を持っているベテランDJ。近々、新しいミックスCDをエイヴェックスからリリース。
https://www.myspace.com/moodmanjp

 職場では月1回の頻度でインハウス・トレーニング(職場内研修)というのがあり、さまざまなテーマの研修(という名の夜間残業)がある。

 んで、このテの研修でわたしがもっとも恐れているのが「ワークショップ」と呼ばれる形態のものである。この「ワークショップ」は、演劇的色彩が濃く、要するに、例えば「保護者との関係構築」というテーマでワークショップがあったとしよう。すると、ある者は保護者の役を、またある者は「良い保育士」または「悪い保育士」の役を演じさせられるわけであり、それでなくとも人一倍ノリの悪い東洋人のおばはんであるわたしなどは、いったいどうしてこの人たちはこんなことをするのか、シェイクスピアの国だからなのか。と呆れることも度々で、実に疲労困憊する研修なのである。

 ほんで。先日もそういうのがあった。
 研修のタイトルは「EAL(English as an additional language)」。英国の保育施設では、英国を母国語としない子供が激増している。で、そうした子供たちへの効果的な指導法と保育法を学ぶという主旨の研修だったわけだが、その後半部分に、問題のワークショックが組み込まれていた。
 「Inclusion」(要するに、人種、性的嗜好、障害の有無などとは関係なく、全ての人々を平等に社会に受け入れよう、というアレだ)を考察する目的で、出席者をふたつのグループに分け、一方は英国人チーム、もう片方は外国人チームになって、それぞれの立場から議論せねばならぬらしい。
 外国人チームといっても、うちの職場では外国人はわたしだけである。それとなく、しかし有無を言わさず外国人チームに入られれたので、やっぱりね。と思っていると、早速ワークショップが始まった。英国人チームは「保育園でのInclusionの推進に抵抗感を持つペアレンツ」として、なりきり外国人(+リアル1名)チームは「英国の保育園に子供を預けている移民ペアレンツ」として、ディスカッションをしろという。

 「では、まず、英国人保護者の方々にお聞きします。Inclusionの推進に抵抗を感じておられるのは、何故ですか? 理由を挙げてください」
 と講師が言った。
 暫くざわざわしていた英国人チームから、ためらいがちに意見が出て来た。
 「まず、言葉ですね。自分の子供が、外国人の子供たちと混ざって、妙な英語を覚えて帰って来たりすると困ります」
 「あと、英語が喋れない子供って、どうしても先生たちの時間を取りがちですよね。その間、自分の子供は誰が見てるんだろうって」
 ありきたりの意見が出た後で、講師が言った。
 「では、外国人保護者にお聞きします。自分や自分の子供たちが、英国の保育施設にオファーできる、ポジティヴな点とは何でしょう」
 「実際、この国はこれだけ外国人が多いのだから、幼児のうちからミックスした状態で育った方が良いと思う。慣れる、っていうか」
 「それから、言葉や文化の多様性というのは、子供たちの世界を広げますよね」
 「そうそう。海外旅行に行かなくとも世界を体験できる環境って素晴らしいことです」
 同僚のひとりが、インド・パキスタン系の人々の英語のアクセントを真似てそう言うと、どっと笑いが起きた。「エクセレント!」と親指を突き上げて、講師までウケている。

 と、英国人チームのKが言った。
 「価値観とか、文化とか、そういうことじゃなくて、もっと目に見える形で、外国人は英国人に迷惑かけてると思うけど」
 和気藹々となっていた室内の雰囲気を一変するような、尖った口調だった。
 「だいたい、園で運動会だの何だのイヴェントがある度、中心になって手伝っているのは、いつも英国人の父兄だ。外国人はそういう時に参加して来ない」
 レトロな髪型をした20代前半のKは言う。といっても、彼女の場合、アデルのようないま流行りの女の子レトロではない。ポール・ウェラーのような髪をして、水玉のシャツにモッズコートを着て出勤してくるKには、レズビアンだという噂もある。
 「英語が喋れないとか、外国人の親はすぐ言い訳するけど、喋れないなら英国にいるべきじゃないと思う」
 「そういう言い方、ひどくない?」
 外国人チームのSが言った。
 「でも、これワークショップでしょ? 外国人嫌いの保護者の視点で言ってるんだけど」
 とKが言うと、講師もうなずく。
 「だいたい、移民の子供はお金がかかるしね。英語が喋れなきゃ通訳も雇わなきゃいけないし。勝手にこの国に来ちゃった人たちを、どうして英国人のコストでケアする必要があるの」
 脇に座っているSが、わたしの方をちらりと見る。真っ直ぐな気立ての子だから、リアル外国人であるわたしに気をつかっているのだろう。
 「困ってる人たちを助けるのは道理でしょ。自分が外国人の立場に立って考えてみなよ」
「でも、私は外国に行って住んだりしないし、そこの国の人たちに迷惑かけたりしないもの」
と言っているKも、実はわたしにとっては仲が良いほうの同僚だった。
 園のスタッフ休憩室のテーブルには、ゴシップ誌の山と、『NME』の山とふたつあるのだが、Kとわたしは後者を順番に買って持ち寄るグループに属している。
 「うちの姉の子供は、家の周辺に外国人がたくさん引っ越して来たせいで、近所の小学校に入れなかった。バスに30分乗って、街の反対側にある学校に通ってる。こう言っちゃ何だけど、ムスリムとかバングラ系の家族は子供の数が多いでしょう。外国人の子供が増えたせいで、英国人の子供が学校に入れなくなるなんて、おかしい」
 と言うKは、わたしと同様、スペシャル・ニーズを持つ子供たちの担当チーム員だ。現在はガーナから来た自閉症児を1対1で見ている。
 「それから、これはファクトとして、生活保護を受けている移民も多い。よその国の福祉システムにぶら下がって生きてるぐらいなら、自分の国に帰るべきじゃないの?」
 Kが面倒を見ている自閉症児の母親も、そういえば、生活保護を受けているシングルマザーだった。と思う。
 「だいたい、政府が食わせてくれると聞いて英国に来る外国人も多いらしいし。英国は、とんでもないお人好しの国だ。趣味でチャリティーやれる金持ちならいいけど、最低保証賃金で働いている私たちのような人間には、働かない外国人まで税金で養ってる余裕なんかないでしょ」
 と彼女が言う頃には、英国人チームも外国人チームも一様にしーんとなっていた。
 「......私たちみんなのなかにそういう部分はあるんだよ。Get real!」
 とKは言って口をつぐんだ。
 その後をうまくまとめるのは、経験豊富に見える講師にも大変そうだったが、どうにかワークショップは幕を閉じ、研修が終わった頃には8時過ぎになっていた。

 ロッカールームに忘れ物をしていたので戻ると、Kがいた。夜遅くなったので、みんな制服のまま帰ったが、彼女は服を着替えている。
 「遊びに行くの?」
 と声をかけると、彼女は言った。
 「ああいう、マジョリティー目線でのリベラル講座には超むかつく。これから飲みに行く」
 「ははは。モッズの姿を借りたナショナル・フロントかと思ったよ」
 「いや、意外とね、マジ右翼の連中のほうが、日常的にはマイノリティーに優しかったりして。ふわふわした野郎どもが一番始末に終えない」
 「うん。近所にBNP(英国国民党)のブライトン支部長が住んでるけど、わたしと息子にやけに親切だもん。元スキンヘッズみたい。いまは単なる禿げたおっさんだけど」
 「元スキンヘッズは、同性愛者にもわりと優しいよ」
 と彼女が言ったので、へ? これってカミングアウト? と思いながら、わたしは黙って自分のロッカーから荷物を出した。
 「スキンヘッズっていえば、『This Is England』のサントラ持ってる?」と彼女が言うので「うん」とわたしは言った。「貸して」というので、「いいよ」と言うとKは言う。
 「私は生まれて来る時代を間違ったと思う」
 そんなことを若い頃に言ってた友人が、日本にもいたな。と思いながら、わたしは老眼鏡を外してケースに入れた。
 結局、音楽を聴いたりするのは、今も昔も、こういう類の違和感を持つ若者なのかもしれない。
 鏡に向かって髪を直していたKは、めちゃくちゃハンサムなモッズ・ボーイになって職場から出て行った。彼女のロッカーの扉には、「KEEP CALM AND DRINK」と記されたステッカーが貼られている。

interview with Vondelpark - ele-king

 音をチェックしていなかったとしても、あの犬ジャケは覚えている、という人は多いのではないだろうか。デビューEP(『サウナEP』2010年)ではビーチ・リゾート風の海が、つづく『NYCスタッフ・アンド・NYCバッグスEP』では飼い犬らしい犬の表情がジャケットにあしらわれている。それぞれトイカメラ風の叙情性をたたえながらもプライヴェート・ショットのような何気なさが演出され、ウォッシュト・アウトやあるいはエール・フランスなどがそうであったように、柔らかくてどこかインナーな光源を感じさせる。つまり2010年当時のインディ・ミュージックにおけるひとつのリアリティがありありと刻まれたアート・ワークだ。たとえばチルウェイヴやバレアリックという呼称とともに、たとえばベッドルーム・ポップという概念とともに、われわれはローファイでリヴァービーな音像や、ロング・トーンのヴォーカルや、気だるげなサマー・ブリーズ、逃避的なムード、それでいて清潔感のある曲調などを容易に思い浮かべることができるだろう......そうしたヴィジュアリティである。

 フォンデル・パークは鋭くまばゆくこのフィーリングをすくいとっていた。だがビートにおいては、より強くダンス・ミュージックとしてのシャープさを持っていたかもしれない。なにしろ〈R&S〉が送り出した新人というインパクトもあったのだ。しかしダンス・ミュージックだと呼ぶには、あまりにインディ・ロックのヴァイブをあふれさせた存在でもある。本人たちは「エレクトロ・ギター」と奇妙な呼び方をしているが、彼らのルーツがギター・ロックであることは音からも瞭然だ。こうしたあたりが、彼らの個性でもあり、またクラブ系のリスナーとインディ・ロック系のリスナーの双方を心地よく揺さぶった要素でもある。両者の混交が著しかったこの時期のシーンを象徴してもいるだろう。

E王
Vondelpark
Seabed

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 フル・アルバムとして初となる今作では、よりクリアで整理されたプロダクションが目指されるとともに、ポスト・チルウェイヴのひとつの着地点とも言えるR&B傾向が強まった。ジェイムス・ブレイクの成功もひとつの布石になっているかもしれない。スムーズで洒脱なソウル色が深まる一方で、そもそものサイケデリア(このあたりはレーベル・メイトのエジプシャン・ヒップホップとも共通する)や内向的で繊細なドリーム感といった持ち味も失われておらず、さらにシー・アンド・ケイク的なリリカルなポスト・ロックまで加わっている。時間とともに、方法も掘り下げられたようだ。

今作のキーワードは「アンダー・ウォーター」。陽気に浮かれ騒ぐヴァカンスではなく、水底から眺めるヴァカンス......どこか隔絶感があって、どこか不随意で、しかしどこか安心するようなうす碧い空間を思わせる。デビューから3年をへて彼らが着地しようとしている地平は、どのような場所なのだろうか?

エフェクトを付け足すのをやめるタイミングをどこかで見極めて、ピュアでミニマルな手法でいきたかった。(ルイス)

2010年の『サウナEP』から時間を経て、今作はサウンド的にとてもソフィスティケートされたという印象があります。しかし、あのEPのカジュアルなプロダクションも、チルウェイヴなどに象徴的だった当時のムードをとてもよく表していて魅力的です。いまからみて、あの当時のフォンデルパークの音はどのように感じられますか?

マット:曲を作るときに感じていた感情とかがベースになっているから、僕たちが年を重ねるごとに音楽も進化してきていると思うよ。前回から2年も経っているから、あの頃のプライヴェートの状況や心境にも変化はあったし、音楽を聴いていると当時の心境を表していると思う。

アレックス:あの頃からミュージシャンとして腕も上がったし、ここ数年間でもっとクリーンな音を出せるようになったと思う。次の作品ではファーストEPのような制作手法に、家でレコーディングしたり「生」のサウンドにこだわったプロダクションで、ルーツに戻ろうかと話し合っているところだよ。

『サウナEP』や『NYCスタッフ・アンド・NYCバッグスEP』など、その頃の音がアルバムとしてまとめられていないのはなぜなんでしょう?

マット:どうしてかなぁ? でも"カリフォルニア"の新ヴァージョンをこのアルバムに入れたのもそんなことを考えていたからかもしれない。EPを作った頃はいつかアルバムにしようなんて思っていなかったし、レコーディングした当時のフィーリングはそのままの形でもいいと思うんだ。これからもまたEPを出すと思うよ。

今作はセルフ・プロデュースなのですか? また、今作の録音について重視したことを教えてください。

ルイス:他の人にプロダクションを手伝ってもらったところもあったけど、最初から最後まで立ち会って関わっていたよ。家にある機材じゃできないミックスをしたりコンプレッサーを使ったり、生収録した音楽にテープや機材でエフェクトをかけたりする作業はスタジオでやった。でも、プラグインをあれこれ使いたくなかったからあんな感じのアナログ・サウンドができたんだ。エフェクトを付け足すのをやめるタイミングをどこかで見極めて、ピュアでミニマルな手法でいきたかった。
 今回のアルバムではヴォーカルやドラム収録のためにスタジオにいる時間がいままででいちばん長かったね。スタジオ作業っていうのもおもしろかったけど、自分の部屋、自分の空間にいた方がもっとうまく表現できる気がするんだ。自分の猫とかテレビとかハーブ・ティー(最近はカフェインを控えるようにしていて、ペパーミント・ティーにハマっている)とか、自分が好きなものに囲まれている方が落ち着くし、インスピレーションもスタジオにいるときより浮かびやすい。スタジオはレコーディングをしなきゃいけないから行く場所だけど、自分の部屋でやると、音楽が生活の一部と感じられるから、そっちの方が好きだ。

スタジオ作業っていうのもおもしろかったけど、自分の部屋、自分の空間にいた方がもっとうまく表現できる気がするんだ。自分の猫とかテレビとかハーブ・ティーとか、自分が好きなものに囲まれている方が落ち着くし。(ルイス)

クリアなプロダクションを得たことで、今作はドラミングがものすごく生きているように思います。〈R&S〉というテクノの名門が、あなたがたやエジプシャン・ヒップホップのようなバンド・アンサンブルを重要視するのはなぜだと思いますか?

アレックス:たぶん、ちょうどその頃、いままで中心的だった音楽とは違う、新しいスタイルの音楽を探していたんだと思うよ。僕たちは当時はバンドっていうより、3人集まったプロダクションとして音楽を作っていた感じだったんだ。テクノよりチルアウト要素が強い音楽も扱ってみたいと思っていたんだろうね。

実際に、2ステップや90年代のUKガラージ、R&Bのマナー、またポスト・ダブステップやポスト・チルウェイヴ的なムードをバンド編成でやってしまうところはフォンデルパークのとてもユニークなところでもあると思います。あなたがた自身ではこのフォーマットで活動することについてどのような思いがありますか?

アレックス:ドラムマシンでビートを数時間流しっぱなしにして3人でジャミングしながら音楽をつくり上げるのはすごく気持ちのいいことだよ。それぞれの音楽を各自の趣味で作ることもあるけど、3人で集まるときの音楽スタイルとはぜんぜん違うんだよな。3人で集まらないとフォンデルパークのような音楽、チルアウトでエレクトロ・ギターっぽい音楽は作れないんだ。

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5年ぐらい前に『ザ・ワールド・オブ・アーサー・ラッセル』を聴いてハマったんだ。自伝も読んだし、フィリップ・グラスや〈ザ・キッチン〉にも興味を持った。南ロンドンの仲間たちと同じようなコミュニティを作りたいと思って。(ルイス)

E王
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HAPPAはどのように知ったのですか? リミックスを依頼した経緯を教えてください。

ルイス:彼がフォー・テットの曲をリミックスしたのを聴いてコイツすごいなって思ったのが最初かな。インダストリアルな感じがいいなと思ったんだ。まだあんな若さなのにすごいよな。彼なら"ドラキュラ"をいい感じにハードにリミックスしくれそうだと思ってアプローチしたんだ。もともとダークな要素が強いトラックだけど、さらにダークなエッジを効かせてくれた。

"カリフォルニア・アナログ・ドリーム"はヴァージョンを変えて収録されていますが、これもやはり非常にサウンドに磨きがかかっています。逆に、元のヴァージョンから失われたものがあると思いますか?

マット:失われたもの、と考えたことはないよ。昔レコーディングした音楽は当時のフィーリングのまま残してもいいと思うけど、あの頃といまでは僕達の状況や心境がまったく違う。その変化を表すためにアレンジしてみたくなったんだ。僕はどっちも好きだな。感じはまったく違うけど、どっちもいいと思うな。

犬や海のフォトグラフにくらべて、今作のジャケットは抽象度が上がったように思います。それはテーマとするものやフィーリングの変化と関係がありますか?


アレックス:知り合いのふたりのデザイナーにやってもらったんだ。写真にイラストを混ぜ込んだら水中に漂うカモメのような感じになって、ちょっとマンガっぽいでしょ? タイトルも『シーベッド』だし、ここでもやっぱり「アンダーウォーター」がキーワードだよね。

アーサー・ラッセルを聴きはじめたのはいつごろですか? ここ数年ちょっとした再評価の機運があったと思いますが、彼についてはどう思いますか?

ルイス:5年ぐらい前に『ザ・ワールド・オブ・アーサー・ラッセル』を聴いてハマったんだ。彼の自伝も読んだし、フィリップ・グラスや〈ザ・キッチン〉も70年代のニューヨークの様子をもっと知るうちに興味を持ったんだ。南ロンドンの仲間たちと同じようなコミュニティを作りたいと思って、ミュージシャンやヴィジュアル・アーティストとつながるためにイヴェントを企画しだしたんだ。友人同士で〈スライム・ミュージック〉のウィル・アーチャーやバリオン(Bullion)とか、ヴィジュアル・アーティストのハンナ・ペリーとか、いっしょにレコード回したりパーティできる仲間たちとつながって、コラボや作品制作につながるようなコミュニティをはじめたのも、アーサー・ラッセルに感化されたからなんだ。

今回のアルバムは「水中を横泳ぎするような音楽(Underwater sideways music)」って自分たちは呼んでいる(笑)。(アレックス)

2009年当時、ウォッシュト・アウトやトロ・イ・モワ、あるいはよりギターや生音でのアプローチがあるビーチ・ハウスなどをどのように聴いていましたか?

アレックス:ああ、あの頃は彼らの大ファンだったよ。影響もたしかにあったと思う。トロ・イ・モワの新作もすごく好きだよ。LAの太陽とビーチを連想させる音楽に惹かれるんだろうね。こっちはあまり太陽に恵まれないから(笑)。

あなたがたの音楽は美しくポジティヴな逃避先をわれわれに与えてくれますが、実際にベッドルーム・ミュージックやドリーム・ポップというふうに呼ばれることはどう感じますか?

アレックス:たしかにそうだと思うよ。今回のアルバムは「水中を横泳ぎするような音楽(Underwater sideways music)」って自分たちは呼んでいる(笑)。ジャケット・デザインにも表現されているけど、水中をゆっくり漂うような、そんなフィーリングのチルアウトでエレクトロ・ギターっぽい音楽だと思う。

あなたがたはどこに生まれて育ったのですか? 地元に活発な音楽シーンはありましたか? また、あなたがたの音楽活動はそうしたシーンと深く関係するものでしたか?

ルイス:僕たちはロンドン南部育ちで、12歳頃からいっしょに音楽を作ってきた。学校もいっしょだったし、長い付き合いなんだよ。家のガレージをスタジオに仕立ててジャムするのが10代のエネルギー発散方法だったんだ。周りの同級生はスケボーの方にハマっていたけどね。3,4年前にロンドンに移ってからミュージシャンやアーティスト達とのつながりがいっきに増えて、いまはすごくいいコミュニティに入っているよ。

マイ・ブラッディ・ヴァレンタインの新譜がリリースされて、UKでもかなりの話題になっていますが、あなたがたの世代にとって、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインやこの新作はどのように受けとめられているのでしょう? またシューゲイザーの持つサイケデリアやメンタリティは、あなたがたの音楽とも共鳴するところがあるように思いますが、どうでしょう?


アレックス:ああ、MVBももっと若いころ聴いていたし、ああいう音楽は大好きだ。来週MVBのショーに行くのが楽しみだよ。MBVの最近出たアルバムもすごく気に入っているしね。前はマイ・ブラッディ・バレンタイン、ジーザス・アンド・メリー・チェインやジョイ・ディヴィジョンのようなギター・ミュージックをよく聴いていたけど、最近はR&Bとかもよく聴いている。あの頃はR&Bとかは自分たちと接点が感じられない音楽だったかもしれないけど、いまではMVBなんかより自分たちがやっていることとの接点が感じられるようになったんだ。

Drexciya - ele-king

 最後の嵐がこの地上から去って10年。奴隷船から落とされた母親たちの子孫、ドレクシア。この不気味な音楽はいまもなお、海底で鳴り響き、地上への抗戦を続けている。
 オランダの〈Clone Classic Cuts〉からリリースされた、ドレクシアのベスト盤「ジャーニー・オブ・ザ・ディープ・シー・ドウェラー(深海居住人の旅)」シリーズ3部作が、去る1月に完結した。
 第1弾『Journey Of The Deep Sea Dweller I』がリリースされたのが2011年、翌2012年に第2弾、そして2013年で第3弾。当初は、選ばれた曲が年代別に並び3枚に分けられるのかと勝手に思っていた。しかし、この3部作では、また新しいドレクシアのファンタジーを見せた。

 第1弾『Journey Of The Deep Sea Dweller I』は、とにかく不吉だった。それはあまりにも、暗く、怒気に満ちた音の集合体だった。我々が抱いている「ドレクシア」のイメージに近い選曲となっている。不朽の名曲"Wave jumper"や"Aquarazorda"(1995「Aquatic Invasion」収録)、"Beyond theAbyss"(1993「DREXCIYA2:Babble Metropolis」収録)では乾ききった稲光に打たれた。歌モノ"Take your mind"(1994年「DREXCIYA4:The Unknown Aquazone-Doble Aquapak」)も選曲されているが、ポップとは真逆な音がそこにある。
 
 第2弾『Journey Of The Deep Sea Dweller II 』には、デトロイト・サブマージの実店舗でしか購入できなかった、(オークションで数万円で取引されている)「SomeWhere in Detroi」から"Hi-tide"が収録されている。ほかに、低音を地の底から感じるような"Anti Vapour Waves"(1993「DREXCIYA3: Molecular Enhancement」)、ファンキーなトライバル"AquaJujidsu"(1994「DREXCIYA4:The Unknown Aquazone-Doble Aquapak」)、そして、コンピレーション・アルバム『True People:The Detroit Techno Album』でしか聴けなかった"DaveyJones Locker"も収録されている。

 第3弾『Journey Of The Deep Sea Dweller III』は、1992~1997年の〈UR〉〈Submerge〉〈Shock wave Records〉からリリースしたものを中心に選曲されている。「DREXCIYA3: Molecular Enhancement」収録の、傑作"Intensified Magnetron"、殺伐としたベースの上に海面を漂うような女性ヴォーカルが入った"Flying Fish"、"The Countdown Has Begun"(「Aquatic Invasion」収録)は、気味の悪いボコーダーの声が不安を助長させる。"Vanpire Island"はいまにも暗闇のなかからベラ・ルゴシが不敵な笑みを浮かべて現れそうだ。未発表曲の"Unknown Journey IV"は駆け抜けるリズムにファンファーレのようなメロディが絡む。あたかも、希望に満ちた世界の幕開けのように。

 ジェームス・スティンソンは、亡くなる前のインタヴューで、「たとえ自分が死んだとしても、俺が作ったたくさんの音楽は残るのさ。未発表曲もあるんだ!」と言っている。その通り、3部作のすべてに未発表曲が入っている。こうやって、リスペクトがある人たちの手によって新しいドレクシアを聴けることは、本当に素晴らしいことだ。
 ドレクシアのテーマは海──水はもっともこの地球上でパワフルな物質だとドレクシアは語っている。さまざまな特性があり、どんな形にもなり、どんな質感にもなる。生物の源、人類を作り出すスープ──。

 〈WARP〉からのエレクトロイド、〈Rephlex〉からのトランスリュージョン、そして〈WARP〉からのジ・アザー・ピープル・プレイス......などなど彼には他にもいろいろな名義での作品がある。デトロイトから届けられたこの音に身体ごと浸ると、暗闇を手探りで歩いるような、その先に未来があるような、そんな気持ちにさせられる。彼らの音がクラフトワークやサイボトロンによって形成されている──ということも強く感じられる。

 昨年、ジェラルド・ドナルドはDJスティングレーと一緒にNRSB-11という名義でリリースをしている。1枚リリースしただけで、その後の動きは見えないが、この作品によって、また今後のデトロイト・エレクトロへの期待が高まってしまった。日本では(かなり)アンダーグラウンドな人気だけれど、ヨーロッパでは当時から広く評価されている。エイフェックスツインがドレクシアをリスペクトしているのは有名な話だが、最近で言えば、スリープアーカイブやマーティン、Fine 〈Kontra-Music〉もフェイヴァリットとしてドレクシアをあげている。アンディ・ストットの音の破片はドレクシアやセオパリッシュをも彷彿とさせ、ミニマルやダブステップなどの現在進行形の音にもドレクシアの成分がちりばめられている。

 リアルタイムで、この音を聞くことができなかった世代には、これが感情のある音で紡がれた最高のメッセージだと思って、この機会に是非聞いてもらいたい。ドレクシアの音はDJユース向きじゃないとよく耳にするが、たしかにこれがかかった途端、フロアには黒い幕が落とされて、すべての幸せな空気を闇に変えてしまう。しかし、これがもっともリアルで、ハードなデトロイト・テクノなのだ。

 オリジナル作品の強烈な個性がいまもなお語り継がれ、それぞれの思いが入り交じるような重圧のなかで、丁寧にリマスタリングをし、リリースしてくれたクローンにも心から感謝したい。

Fla$hBackS - ele-king

REFUGEE MARKETの空気感 文:巻紗葉 a.k.a. KEY

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 わたしがFebb a.k.a. Young Masonの存在を知ったのは、確か2年前に池袋bedで行われたREFUGEE MARKETだった。中は相変わらずの盛況ぶりで人ごみが苦手なわたしは友人とともに、入口の前でおしゃべりをしていた。そのとき、Febbというまだ非常に若いがラップもトラックも作る少年がいるということを教えてもらった。じつはそのときにKID FRESINOの話も聞いていたが、友人は彼を本名の名字で読んでいたため、つい最近までその人物がKID FRESINOであるということを知らなかった。

 日本においては縮小の一途を辿るヒップホップ業界だが、まだ20歳にも満たない少年たちがトラックメイキングやラップをしているという事実が単純に面白かったので、彼らの存在はずっと頭の片隅に残っていた。そして昨年が終わろうとしている頃、FebbがjjjとKID FRESINOとともにFla$hBackSというグループを結成し、『FL$8KS』というアルバムをリリースするということで早速音源を入手した。一聴してなるほど、わたしが彼らの存在をどこでもないREFUGEE MARKETで知ったのはある種の必然であったんだな、と気付いた。ソウルフルなネタ使いをベースにゆったりとした横揺れの"Fla$hBackS"や、ブラックスプロイテーションを想起させるファンキーな"2014"など、そこから感じさせられるのは前述のREFUGEE MARKETの空気感だった。もっと言えば、ISSUGI、Mr.PUG、仙人掌、16FlipからなるMONJUなのだ。もちろん彼らがMONJUの猿真似であるということではなく、Fla$hBackSはDOWN NORTH CAMPのクルーがREFUGEE MARKETという現場を通じて行ってきた良質なヒップホップの根を絶やさない活動から産まれたひとつの成果であるということだ。

 アメリカン・ハードロックを思わせるギター・ソロをユニークな感覚で切り取り、アッパーなブラック・ミュージックに組み替えてしまった"Cowboy"(タイトルも人を舐めているような不敵さがあっていい)などから感じさせるセンスは、彼らがただフレッシュであるだけで注目されているわけではないことの証明だろう。

 ただひとつだけ苦言を述べるのであれば、それはパンチラインの少なさかもしれない。このアルバムを象徴するような力強いワンパンチがあれば、この作品の価値はさらに上がったことだろう。しかしそれも彼らの年齢を考えれば、まだまだ心配するようなことでもない気もするが。本作とISSUGIの大傑作アルバム『EARR』と聴き比べるのも面白いかもしれない。


文:巻紗葉 a.k.a. KEY

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ラップの根源的な快楽へ 文:中里 友

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 ミックステープ『1999』がブレイク・ポイントとなったJoey Bada$$をはじめ、彼が率いるPRO ERAのクルー、Schoolboy QやKendrick Lamarも所属するBlack Hippy、〈Brainfeeder〉と契約を果たし、ミクステ『Indigoism』も好評のThe Underachiever、それにFlatbush Zombies、レイダー・クラン......ジャンル内で多様化が進むなか、いま列記した連中の作る曲は質感としては粗野で生々しく、つんのめった初期衝動的な高揚感がある。それが「90年代的」と評されるのも納得いく話だと思う。こうした90年代をリヴァイヴァルせんとする機運を多くの人が感じているとは思うが、トレンドというよりむしろ、90年代に幼年を過ごした少年たちがロールモデルに選んだのが、若かりし頃のNasであり、2Pacであるかのような、そういった印象を受ける。サウンドをとってみれば、ここ日本でも同様の現象は起きている。

 2月にリリースされたライムスターの最新作『ダーティー・サイエンス』は、DJ JIN曰くジェレマイア・ジェミーのサウンドに影響を受けたという。そこから、80年後期~90年代前半のハードなローファイ・サウンドのトラックに対比して、よりアップデートした「いま」のラップを乗せるというアルバムのコンセプトが生まれたのだが、イリシット・ツボイの貢献により、よりカオティックで荒々しい印象を持たせることに成功している。去年からOMSBやsoakubeatsの作品など、示し合せたようにラフで攻撃的なラップものが続くなか、ようやくのフィジカル・リリースを果たしたFla$hBackSは少し趣きが違っていた。腰を落ち着けたリズムをとりながら、ひたすらクールで散文的にカットアップされたリリック、それに煌びやかなトラック......瑞々しい若さによって彼らは別の道筋で90年代を再解釈、アップデートしてみせた。コンセプチュアルで計算された作品のなか、息せき切ったような早いBPMで、言葉にエモーションを込めるライムスターとは、まるで対照的だった。

 そういえば、「90年代生まれによる90年代再解釈の......」と野田努が評する通り、いつかクラブで会ったとき、Febbは、1994年生まれの彼は90年代の音楽に対する憧憬をはっきりと語ってくれた。TETRAD THE GANG OF FOURのメンバーであるSPERBと共にCrack Brothersなる不定ユニットでも活動する彼は、16歳でGOLD FINGER'S KITCHENのMPC BATTLEの本戦でベスト4へすすむトラック・センスを持つ。しかし、個人的にはなんといっても、彼のラップを素晴らしいと思う。Crack Brothersの音源の他、Black SwanコンピやBCDMGでの客演でも彼のラップが聴けるので、興味がある方は是非チェックしてほしい。どっしりと胴を据えながら、B.D.やNIPPSのように、ゴロ合わせのようにはめていくラップ。それはときに連想ゲームのようにイマジネーティヴな単語の連なりであったり、ときには刺激的なパンチラインとしてするりと耳に入ってくる。そうした(勿論痛快でカッコいい)ラップが、ともすれば「ドープ」だとか「玄人好み」という言葉に回収されてしまいそうになってしまうところを、より開かれた音楽としてメロウに、そして時にロマンチックでフレッシュなものにしているのは、Fla$hBackSの音楽性の形成に大きく寄与したjjjのトラックのおかげだろう。声ネタを多用したソウルフルで華やかな上モノ、緩急入れた力強いビートはインスト物として聴いても十分に楽しめるほど。彼の作品集『ggg』はもちろん、個性派ラッパーとしていま注目のあべともなりに提供している楽曲"ヨルナンデス"は、彼の独特のタイム感や野性的な一面をうまく引き出した素晴らしいトラック・ワークだ。そしてFla$hBackS第3の男、KID FRESINOもトラック・メイキングとDJの他に、ラップをはじめたということで(アルバムが早くも4月3日に〈Down North Camp〉からリリース予定)、Fla$hBackS本隊にどんな作用が起きるか、いまから楽しみでしかたない。

 そして、もうひとつ。Fla$hBackSを聴いてヤラれてしまったポイントがある。それは歌詞の合間、もしくはイントロ・アウトロに挿入される相づちや掛け声、シャウトアウトなど、おそらくは彼らのリリック・ノートにも記されていない言葉のカッコよさだ。人によっては拍を取ったり、ラップを入れる前のチューニング感覚に近い。
 もっと言うとそれは、単なる「ノリ」で発せられることが大きいのだけれど、なんといっても、その「ノリ」がとても重要だ。何故なら、自然と発せられたそうした言葉こそが、何より彼らの特別なセンスを表すものでもある。相方がラップしている
 裏で、好きにスピットする言葉が曲に躍動感を吹き込み、新たな情報を加える。決して雑な印象はなく、むしろそれが聴いていて、とても気持ち良いのだ。Febbが時折入れる「A-ha」はとてもチャーミングだし、jjjの名前ひとつとっても、音が楽しい。何を言っているかはさして重要ではなく、彼らが発せざるを得なかった言葉が持つ響きが、ジャストなスパイスとして効いている。

 Down North CampやBlack Smokerの関連諸作等々、歌詞カードを掲載しないアーティストたちに共通しているのは、言葉の持つ意味性に囚われすぎず、音として純粋に楽しんでほしいという気持ちの表れであることは明らかだ。だがそれ以上に、彼らが純粋培養し、大切にしてきた仲間内の独特のノリを感じとってほしいがためなのかもしれない。総じてゆるいBPMであることも、個々の自由なノリを重視すればこそだと思えば、合点がいく。もしかしたら、彼らは90年代なものに回帰しているのではなくて、ラップをすることの、ヒップホップをやることの、根源的な快楽へと立ち返っているのかもしれない。付け加えていうなら、それは遊び心溢れる実験性への道でもあるはずだ。いま、何度かの最盛期を迎えているこの音楽が、また新たなステージに向かっているように感じられてならない。


文:中里 友

D.J.Fulltono (Booty Tune) - ele-king

D.J.Fulltono (Booty Tune)
https://bootytune.com

NEXT PARTY: 4/5 "UNDERMINE" at club METRO (京都)

2013 MARCH JUKE & GHETTOTECH TOP10


1
Traxman / Zone / Fresh Moon Records
https://freshmoon.bandcamp.com/album/freshmoon-presents-808k-v-1
 トラックスマンと聞いて「Footwork On Air」みたいなの期待した人、ごめんなさい。でもすぐに快感に変わるのでそのままお付き合いください。音を分析するまでもなく、ノイズ、キック、スネア。その3つの音しか鳴ってない。リズムにほんのり施されたリバーブがアシッドハウス全盛期のTRAXレコーズを髣髴とさせる。間違いなくキラーチューン。早くプレイしたい!

2
DJ Taye / Just Coolin' / DJ Taye
https://djtaye.bandcamp.com/album/just-coolin
 シカゴの若手ホープDJ Tayeのフルアルバム。16ビートと3連符の交差の中で起こる体感スピードのコントロールが絶妙。僕のお気に入りは12曲目「Roll Up」。ロール・アップって言葉だけで色々表現してます。ボイスサンプリングがクドいなんてもう誰にも言わせない。CDもリリースされたとのことなので日本のショップにも並ぶことを期待。レーベル名は「DJ Taye」。弱冠18歳の若者が1人で全部こなす。1人1レーベル時代の到来です。

3
Hayato6go / Promised Land EP / Booty Tune
https://bootytune.bandcamp.com/album/promised-land-ep
 自分のレーベルでスミマセン。でも素晴らしいんですこのEP。静岡の隼人6号が手掛ける、ジュークとジャングルの融合。筋金入りのジャングリストの彼だからできるハイブリッドな世界観を、今後拡大しえるヨーロッパのジュークシーンにぶち込みたいと思っています。

4
K. Locke / 数十曲 / Promo
 シカゴから凄いプロモが送られて来た。GETO DJ'Zというクルーに所属する若手K. Lockeは、先輩のTraxmanから学んだ打ち込みスキルとDJ Spinnのようなスムースなネタ使い感を兼ね揃えたトラックメイカー。今後注目を浴びること間違いなし。間もなくお披露目できると思いますので、名前だけでも覚えといてください。

5
Boogie Mann / Yokohama Midnight Footworkin' EP / Shinkaron
https://shinkaron.bandcamp.com/album/yokohama-midnight-footworkin-ep
 横浜のBoogie Mannことタカミチ・ヒロイは、神奈川の若いジュークトラックメイカーが集うShinkaronというレーベルに所属。昨年末にファーストEPをリリース。中でも「Take Me Back」で見せるスネアとネタの畳み掛けるビートが最高。ファーストにしてこのクオリティー。マジかよ。期待を込めてランクイン。

6
DJ Avery76 / In Side The Tribe EP / Booty Tune
https://bootytune.bandcamp.com/album/inside-the-tribe-ep
 シカゴのTRIBEというクルーは、ユーチューブを通じていち早くフットワークダンスを日本のファンに教えてくれました。その熱意&ボスのラシャド・ハリスの猛烈な押しに負けて、クルーのトラックメイカー筆頭であるAvery76のEPを我々のBooty Tuneからリリースしました。彼のトラック全般に漂うミッドなテーストは、ジューク=速くて忙しい音楽、という先入観がある人にこそ聴いて欲しい音です。

7
Typhonic / Call Of The Booty EP / Booty Call
https://www.junodownload.com/products/
typhonic-call-of-the-booty/2144982-02/

 シカゴ・ジュークだけじゃなくもちろんデトロイト・ジット(ゲットーテック)もチェックしてますよ。オーストラリアを代表するゲットーテックトラックメイカーTyphonicがフランスのBooty Callからリリース。オススメは4曲目「Early」。彼のお得意デトロイトテーストなシンセリフで疾走するゲットーテック。本場デトロイトではリリースが止まっちゃってるけど、ゲットーテックは死なない。

8
CRZKNY / Lost/Sadnes / Dubliminal Bounce
https://dubliminalbounce.com/?p=464
 先日、ファーストアルバムとリリースパーティー「Shin-Juke」にて鮮烈なデビューを飾ったクレイジーケニー。そのアルバムの16曲目に収録されたこの曲。凶悪なベースサウンドから湧き出た甘いネタ使いがめちゃくちゃ好きなんだよねー。ヤンキーに優しくされてキュンとする女の子ってこういう気持ちなのかなあ。あー書いてたらむかついてきた。

9
Jalen / Digital Juke EP / Juke Underground
https://jukeunderground.bandcamp.com/album/digital-juke-ep
 シカゴのトラックメイカーは若い。彼は17歳。とにかく元気なジューク満載。でもネタ使いがやたらおっさんっぽいんだよね。たまらなくツボ。4曲目「Hero」で爆笑しました。でタイトルが「デジタルジューク」テキトー。でもこれこそがシカゴ。彼のトラックは最近、高確率でプレイしてます。なんせ分かりやすい。

10
PUNPEE / Bad habit Beat by Satanicpornocultshop / 160OR80
https://160or80.bandcamp.com/
 ラップ無しのサタポのオリジナルトラック「Battle Creek Brawl」が先にリリースされてて、その曲が大好きでずっと聴いてましたが、アルバム「160OR80」ではその曲にPUNPEEのラップがモダンなネタに隠れた、ストップ&ゴーを繰り返すフットワークビートを確実に捕らえることで、未知なるグルーヴを放っています。PUNPEE氏に圧巻です。

Rhye - ele-king

 大麻を食べて快感を得る動物も存在するそうだが、人間が持つ快感のメカニズムのなかでも社会的な関係に基づく快感の回路はやはり、非常に複雑らしい。人間には、哀しみや憂鬱を伴う悦びだってある。ポップ・ミュージックに求められることのひとつが快感の多様性だとして、ザ・XXオート・ヌ・ヴの音の快楽性のあり方は小さなリレーションシップとの関連性を強く意識させ、そしてそれこそが現代的であると感じられる。インターネット以後の世界で、ごくパーソナルな関係で巻き起こる複雑な快感を、身体的に響く音の快楽まで持っていくこと。ザ・XXで言えばごく閉ざされたコミュニケーションにおけるモチーフをつねに扱っているし、オート・ヌ・ヴの先のデビュー作のベスト・トラックは精神性と肉体性の関係を迷いなく言い当てた"エゴ・フリー・セックス・フリー"だと僕は思う。そしていま、そのことにもっとも洗練されたやり口で迫っているのがライのデビュー作である。

 ライがシングル"オープン"で男女のセックスをモチーフにしたヴィデオとともに登場したとき、ただただ甘美に完成された滑らかなソウルに驚かされつつ、非常に自覚的なコンセプトの上で成り立ったものであると直感した。男女の性行為を親密に映しながら、ひとりずつ人物が入れ替わっていくその映像(監督は女性)は、性において男と女の立場が等価にあることを示しているようだったし、その上で、インティマシーがもたらす快感はひとを選ばないと告げているようだった。「Stay Open」と繰り返されるフレーズも、非常にセクシャルなものに聞こえる。決定的だったのはセカンド・シングル"ザ・フォール"で、セクシーでアンニュイなヴォーカルが浮遊するそのディスコ・ナンバーは、男女の倦怠の物語を用意していたヴィデオの意図するところとも相まって、聴く者をそこに耽溺させるにじゅうぶんだった。ライのミニマルなダウンテンポ・トラックはエールのイージー・リスニング性やいにしえのディスコやソウルのセクシーさをたっぷりと準備しそれらを材料として、秘めごととしての快楽へリスナーを誘う。ただ、そこまでなら、上質なシーツのような肌触りを持った気持ちいい(だけの)音楽で済まされる可能性もあったわけだが、シャーデーとも比較され誰もが女性だと疑わなかったそのスムースな声の持ち主は、男であったことがのちに明らかになる。ここで俄然、ライの音楽の成り立ち、メカニズムへの興味が加速する。
 はじめ匿名性の高い状態で登場したライは、デンマーク出身のプロデューサーのロビン・ハンニバルとカナダ出身のシンガー/プロデューサーのマイク・ミロシュによってLAで結成されたソウル・ユニットだという。両者ともそれなりのキャリアがある。デビュー作にしてたどり着いているミニマリズムと様式性にはそこで納得するわけだが、いや、それにしても......歌っているのがミロシュだと知った上で繰り返し聴いても、女の声にしか聞こえない。

 「わたしと愛を交わして/もう一度、去ってしまう前に/ここにいて」"ザ・フォール"......女の声になりすましてそう嘆願する男のラヴ・ソングだとすればそれはあまりにも倒錯しているが、タイトルを『女』としながらもライの歌はあらかじめ両性具有的だ。ソウル、R&B、イージー・リスニングの他にオールドスクールなディスコが必要だったのはそういうことだろう。アルバムとしては、頭2曲のシングルが飛び抜けた出来ではあるが、続く"ラスト・ダンス"の腰に絡みつくようなグルーヴも捨てがたい。アナログのB面1曲目を想定したのであろう"3デイズ"はハープの煌く音色から始まり、ストリングスが高らかに歌うハウスへと突入するのだが、そこにほのかに宿る熱の魅惑に僕は抗えない。天上の光を思わせるアンビエント・ポップ"メジャー・マイナー・ラヴ"を通過すると、アルバムは"ハンガー"のディスコ・ファンクでヘレクレス・アンド・ラヴ・アフェアのような、まさにアンドロジニックなダンスへと連れて行ってくれる。そこでベースラインを携えながら、ハスキーからハイトーンまで行き来する(しかしつねにフェミニンな)ミロシュのヴォーカルは性の束縛から自由であろうとするかのようだ。
 ハウ・トゥ・ドレス・ウェルなど(とくにR&B的な音を引き連れた)クイアな男が目立つ昨今だが、ライにおける女性化は女装のレベルではない。アートワークに繰り返し女性の裸体が使われているように、身体性や生理においてこそ女の内部に入り込んでいく。女を擬態し、そのことで性はふたつではなくなっている。その境界がぼやけたところでこそライは愛にまつわるメランコリーや憂鬱を歌いながら、聴き手をベッドルームでシーツを握り締めるようなエクスタシーへと導こうとする。

Gnawa Diffusion - ele-king

 日出ずる国から、"日の没するところ(マグレブ)"に想いを馳せてみる。最果ての地に抱く異国趣味じゃなくて、ただ、地球がそれほどデカくない球体だってことを確認するために。このフランスのバンドがアラビア語で歌う〈アラブの春〉賛歌を東京で流し、それが、スギ花粉やら何やらよからぬものが舞うこの大気にフィットする快感の中に、それを確認するのだ。目を閉じれば、瞼の裏で火器の咆哮が轟き、抵抗の怒号が聞こえる。巻き上がるつちけむりの中に、催涙ガスと発煙筒とキフ(ハシシ)の匂いがする。
 実際に起きていることは違っても、球体の表面は繋がっている。グローバリゼイション。強きを助け、弱きをくじく同じ悪事もまた、この球体を覆い尽くしている──福島を、霞が関/永田町を、高江/辺野古を、ワシントン、ウォール街を、パリを、アルジェ、チュニス、中東を......。
 冴えない日常を忘れるために聴く音楽があるように、目の前の問題から目をそらさないために聴く音楽もある。それが地球の裏側から届き、そこから学び、それで踊ったり、繋がったりする。

 奴らは言う:働け、黙って身の程をわきまえろ
 身の程を知って、水を飲め
 しかし、何も望むな、文句を言うな
 やつらは僕たちを盲目にしたいのだ
 僕たちを怖がらせて、骨抜きにして
 ぼけて何も分からない麻痺状態にしてしまいたいのだ
(錆びた鋼鉄)

 ブラック・アフリカの土着ビートが、売られた黒人奴隷たちを媒介に、北アフリカにおいてイスラム神秘主義との関わりの中で独自のトランス・ミュージックに発展したグナワ。UKインディアンのタルヴィン・シンが、そのオリエンタルな血の共鳴からモロッコのスーフィー(イスラム神秘主義)音楽であるジャジューカを"エレクトロナイズ"したアプローチが既に古典化しているように、低音のフレットレス3弦楽器ゲンブリ(シンティール)と鉄アレイ型の金属製カスタネット:カルカバのコンビネイションによるミニマルな反復ビートを基底とするグナワもまた、トライバル/グローカル・ビートを取り入れた新種のトランス・ミュージックに目がない人には知られたジャンルになった。
 しかしグナワ・ディフュージョンは、その"グナワ"という言葉と演奏形態を、"イスラム神秘主義的音楽療法"としてではなく、明らかに自由と抵抗のシンボルとして掲げている。フロントマン:アマジーグ・カテブの父=アルジェリアの著名な作家カテブ・ヤシーヌは、絶対自由主義や絶対平等主義を(イスラム教国にあって特に男女同権を)公然と主張して国外追放となった。息子アマジーグは16歳で父の亡命先フランスのグルノーブルに渡り、その地でグナワ・ディフュージョンを結成するが、すなわちサハラ以南からマグレブへ拉致された黒人奴隷の抵抗、そしてアルジェリアからフランスへ逃れたエグザイルの抵抗という二重の抵抗を"グナワ"にシンボライズさせ、世界中の抵抗の民に向けて拡散(ディフュージョン)するのである。

 ビートを強調するグナワと並んでもうひとつ、特に"歌もの"曲において彼らの表現様式の核となるのがアルジェリア・スタイルのシャービ。フランスのコロニアリズムの抑圧からアルジェリア人の精神を解放するために生まれた、言うなれば世俗歌謡だ。同国独立後のシャービでは、国外追放された/亡命した異郷生活者の悲哀が歌われることも多く、その意味でシャービもまた、虐げられ、追われる者の文化だ。

 グナワ・ディフュージョンのサウンドで、それらとほぼ同等に主張されるのがレゲエ(もまた、ジャマイカに拉致された黒人奴隷の歴史に立脚している)。そして、そもそも"グナワ"という言葉が語源学的に(有史来最大の人権犯罪の被害者であるところの)"アフリカ黒人"を意味していて、黒人グループではないこのバンドのロゴの"GNAWA"の中央には、国家という枠組みや民族主義的な考え方を否定するアナキズムのシンボル"サークルA"が置かれている。これが彼らのボーダーレスな視点を何よりもシンボライズしているわけだ──これは地球規模の暴力的なトップダウン体制に対峙する、人種国籍を問わないボトムアップの抗議のグルーヴなんだと。日本でもその存在が知られるようになって久しいグナワ・ディフュージョンだが、北アフリカ・オリジンの民族音楽の系統として認識されるばかりで、そのコスモポリタニズム性から捉えられることはこれまで少なかったように思う。

 再結成を経て放たれた10年ぶりのスタジオ録音は、その聴き方を発見するのに適した、あらゆる音楽ファンの耳に開かれた間口の広い傑作だ。個人的にこれまで若干の軽佻さと違和感を感じてきたダンスホール・レゲエ(ラガ)の手法もこなれ、効果的に馴染んでいる。さらにはロックにファンクに、ジャジーな和音もスクラッチングもダブも一体化する洗練されたミクスチャー・サウンドは、雑多なファクターの寄せ集めをイメージさせるその名称よりも、徹底的に世界主義的なプロテスト・スピリットの具象としての"コスモ・ロック"とでも呼んだ方がしっくりくる。ひとつの完成された表現形態として、いよいよ強靭なのだ。

 アルバムの全貌が明らかになった時点でフランスで最も話題を呼んだのが、1950年代から移民、女性、貧困層や若者といった社会的弱者の代弁者であったアナキスト、反逆のSSWで、フランスの国民的歌手として今も愛され続けるジョルジュ・ブラッサンスの代表曲のひとつ、「オーヴェルニュ人に捧げる歌」のシャービ・カヴァーだった。フランスの典型的田舎の善良な人たちをテーマにした曲が、こぶし回りまくりのアルジェリアン・アクセントで歌われる。このカヴァー行為自体で、政治的な境界(ボーダー)の意味を考えさせてしまう。まさに天国のブラッサンスは、わが意を得たり、と膝を打っているに違いない。

 "時代の棘(Shock El Hal)"とは、すなわち世界を蝕む弱肉強食グローバリゼイション・システムの棘。サボテンは、棘を持ってそれに抵抗する市民。そしてそのそれぞれの"葉"は、世界の各大陸のようにも見える。
 さらに言えば、"shock"はアラビア語の"棘"の発音をアルファベットに転写したものだが、それは〈アラブの春〉〈オキュパイ・ウォール・ストリート〉以降の革命の与える衝撃(ショック)も示唆する。このジャケットだけでこれだけ雄弁なのだが、その中身もまったく期待を裏切らなかった。この豊潤な最新型プロテスト・アルバムを味わい尽くすには、解説と歌詞対訳が充実した日本盤が絶対いい。



interview with Analogfish - ele-king


Analogfish
NEWCLEAR

Felicity / SPACE SHOWER MUSIC

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 最初に下岡晃が提案したアルバムのタイトルは『ディストピア』だったという話を、取材が終わってから知った。しかし、どうした理由からか、下岡はタイトルを『NEWCLEAR』に変更した。政府がいつ再稼働するのかうずうずしているようなときに、ある意味では挑戦的なタイトルだ。
 しかし、さらに考えてみれば、そういう時期に『ディストピア』を大々的に言うことも、面白かったのではないのかと思う。「ノー・フューチャー」とはっきり言うことで開ける未来もあるからだ。あるいは、音楽で「ウィー・アー・フューチャー」と言えば、アシッド・ハウスである。いずれにせよ、人生とはそんないいものではないと言うことは立派な激励で、ことに20世紀のロックは、「いいものではない」と言ってあげる役割を負ってきている。
 だから筆者は、アナログフィッシュがいかなる魂胆で、前向きになっているのかを知りたかった。311直後に『失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい』をリリースして、およそ半年後に『荒野/On the Wild Side』を出したロック・バンドは、311に照準を合わせるかのように、1年半ぶりのアルバムを発表した。1曲目の"Super Structure"は、もったいぶらずにさくっとはじまり、さくっと歌が入る。オーソドックスだが、ドライヴするリズムのハイテンションの曲調のなか、下岡晃が言葉を矢継ぎ早に出す。筆者が思うには、アルバムのベスト・トラックである。

 大都市にそびえ立つビルの最上階
 一人たたずむ男はコントロールフリーク
 管制塔から今も君の事じっとみつめてるんだぜ

 決められたルール与えられたコースから
 逃げるルートの裏の裏までもが想定内
 この街の中で彼の目から逃れる事なんて出来ない

 ザ・クラッシュの"コンプリート・コントロール"と同じ主題だ。こうした苛立ちは、"Watch Out(サーモスタットはいかれてる)"という曲にもうかがえる。そう言う意味では、アナログフィッシュは変わっていないと言えば変わっていない。
 とはいえ『NEWCLEAR』には、感傷的な要素も多分にある。失恋とも別離とも受け取れる"Good bye Girlfriend"のような曲はその代表で、それどころか、そのものずばり"希望"という曲さえある。「希望」「希望」「君の存在自体が希望だと思った」という素朴なラヴ・ソングなのだが、その曲に続くクローザー・トラック、やけのはらが客演する"City of Symphony"は、アップリフティングな、心温まるヒューマニズムの世界である......さて、アナログフィッシュがいま見ているところとは......さあ、今回は下岡晃に訊きたいことがたくさんあるぞ!

「忘れないぞ」っていう気持ちもあったし。子どものころ「ニュークリア(nuclear)」ってああやって(newclear)書くと思ってたんですよ。97年に京都議定書のときに言われてたのって、安全だし、CO2も削減できるし、クリーンなパワーだみたいなことばっかり言われてたから。

今日は下岡くんに食ってかかるぞ。

下岡:なんでですか(笑)。

嘘です(笑)。でも、ガンガン意見を言ってください。

下岡:はい。

『NEWCLEAR』というタイトルにしたのは、原発問題が中心にあるということを暗示しているわけですよね。

下岡:たぶんいくつか理由があったと思うんですけど。ひとつは、コンパクトで前向きなタイトルをつけたかったこと。あとは......でも原発のこともきっとあったんだろうなあ......「ニュークリア」って言ってるんだから。

はははは、それはそうでしょう!

下岡:なんか、「忘れないぞ」っていう気持ちもあったし。あと、子どものころ「ニュークリア(nuclear)」ってああやって(newclear)書くと思ってたんですよ。

へえ。核のニュークリアを。

下岡:そう。で、97年に京都議定書のときに言われてたのって、安全だし、CO2も削減できるし、クリーンなパワーだみたいなことばっかり言われてたから。

そうだよね。

下岡:で、ニュークリアって新しくてキレイだし、こうやって書くんだよなって勝手に思ったの。

僕も憶えている。環境問題にひっくるめられて、どんどん原発が促進されていったときだね。たしかにそういう時期がありました。

下岡:俺にとってはニュークリアはそれがいいなっていう(笑)

アルバムのトピックのひとつを言うと、いま下岡くんが言ったように、僕も前向きさにこだわった作品だと思ったんですけれども。この新作の方向性っていうのはどのような経緯で決まったんでしょうか?

下岡:方向性っていうのは、はじめから説明すると、ここに落とそうと思って作った盤ではぜんぜんなくて。あのあとけっこうすぐ、"抱きしめて"って曲を録ろうって話になったんです。

"抱きしめて"があのあとにすぐできた?

下岡:いや、"抱きしめて"も震災前に作ってあったの。で、ああいうこともあって、自分で歌う気がしなかったんです。でもそのうち、歌いたいような気持ちがムクムクと出てきて、で、歌ってみたら「いいぞ」って話になって。それで、まずそれを録ったんですよ。そこから月イチとか2ヶ月に1回とかのゆっくりしたペースで作っていって。それを集めたらこれになったっていうのが一番近いかな。

じゃあとくに意識的に方向性を決めたってわけじゃない?

下岡:ない。でも、最終的にNEWCLEARってタイトルにしようとしたのはまた雲行きが怪しくなってる中でここから新しくはじめようってステートメントを掲げようって思って。それが前向きかはわからないけれど市井のくらしの中にある希望みたいなのは拾っていこうと思った。そういう物まで一緒くたに失われたかのような感じがいやだったから。

"抱きしめて"って曲も311以前だったんだ。

下岡:そうです。

一種の疎開現象みたいなことを匂わせているフレーズが、"Good bye Girlfriend"とか"My Way"とか、いろんな曲で見受けられると感じたんですよ。だから"抱きしめて"なんかはどう考えても311以降に作ったのかなと僕は思っていたんだけど。「危険だから引っ越そう/遠いところへ引っ越そう」っていう言葉からはじまるわけだし。

下岡:作ったときは地震のことを思ってましたね。ずっと自分に来るべきものとして怖がっていたものだから。

ひとが東京から離れていく現象について言及が曲の断片から出てくると思うんだけど、それに関して下岡くん個人はどういう気持ちでいました?

下岡:あのときですか?

うん、だから"Good bye Girlfriend"みたいな曲もそういう想いがきっと入っているのかなと思って。

下岡:あれは(佐々木)健太郎が作ってて。あいつが何を言おうとしたかっていうのは、直接俺がすぐ口にできないんだけど。僕はこれは純粋なラヴ・ソングとして理解してる。でも、疎開現象については......。

僕の深読みなのかな。でも、けっこう周りにいました?

下岡:僕の近くに出てしまったひとはいなかったですけど、みんな考えてたし、一時期いなくなったひとはけっこういましたね。

それはけっこういたよね。

下岡:いました。俺もでも考えたけど、じゃあそこで何するんだろって思っちゃったっていうか。そのときってどうでした?

僕の周りではいるんだよね。子持ちが多い世代だから。

下岡:でも俺も子どもいたら絶対そう思うし。

僕、子どもいるけど思わなかったな(笑)。

下岡:そうなんだ。

周りからは「疎開したほうがいいよ」って言われたんだけど。できるひとは疎開したほうがいいかなって思ったんだけど、僕は現実的にできる状況じゃなかったし、長生きが人生の目的じゃないし。ただ、子供がいるといろいろ難しいよね。やっぱりそこで、最初に心のほうがやられてしまったってひとがいるじゃない?

下岡:たしかに。

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ある人に言わせれば、俺がいま言ってることなんて、「あんなこと言っちゃってるよ」的なことだったりするわけじゃないですか。でも、そういうのを逆にあんまり感じない。俺が見てないだけで、そういうひとは絶対いるんだけど。うん。いるけど、そういう面は少し薄らいできてるんじゃないかなという気がします。

下岡くんのなかで震災後のそういう動きは意識しているんですか?さっき1曲1曲には意味があるって言ってましたけど。

下岡:うーん......そこを意識してるっていうか、たとえば"抱きしめて"って曲で歌われてるのって、震災前にできた曲なんですけど。

じゃあ、そもそもこれは、どういうところからできた曲なんですか?

下岡:これは、僕は子どもの頃から地震が怖くてしょうがなかった、とにかく。長野で育ったんですけど、地震が怖くてどうしようもなくて。この曲作るときも「じゃあ、音楽やめて安全な所に引っ越すのか?」とか「そもそも安全な所ってあるのか?」ってずっと考えてて、で結局僕は東京に住んで音楽をやるっていうのを選んだんですけど。そうしていないと僕には意味ないから。

長野には地震ないじゃないですか~。

下岡:でも僕の住んでいたところは東海地震のナントカ区域にギリギリ入ってて。けっこう大規模な避難訓練とかがあったりして。そういうことを一回聞くと、「怖い怖い」ってなっちゃう子どもだったので、とにかく怖くてしょうがなくて。東京出てくるときにも引っかかったのが、関東大震災っていうのがあったって知ってるから、どうしようと思って。バンドやりたいけど地震が起きるかもしれないしっていうのは、ずっと考えながら暮らしてたから。
 で、抱きしめてを書いた後に地震があって、最初はやっぱり不謹慎じゃないかとか誰かを傷つけるんじゃないかとか思って歌えなかったんですけどニュースとかで震災の事を見てるとやっぱりどこにも行けなさっていうか、逃げ場の無さみたいな物を感じざるをえなかったり、被災して途方にくれてる人とか見てるうちになんかフツフツと歌おうかなって気に徐々になって。

サウンド的に言うとね、一言で言っちゃうとグルーヴを意識した作りになってるなと思ったんですけど、下岡くん的にはどんな風に今回のテーマと絡めて考えてました?

下岡:作りに関しては最初はサウンドのことがあって、ドラムとベースとギターがあるけど、ギターがなるべくコードを鳴らさないでって。

あんまガチャガチャしてないし、ストイックだよね。

下岡:ストイックにして、ドラムのリズムと言葉で持ってくようなイメージがあって。だから1、2曲目の感じ。

1曲目はほんとそれが顕著に出てるね。

下岡:1、2曲目の感じでぜんぶ作ろうという青写真を描いていたんですけど、作りはじめたらそうならなかったっていう(笑)。

でもギターの音数を減らして、ドラムやベースも派手なラインを弾くわけじゃないですか。そのミニマル感っていうのは今回のアルバムのテーマとどんな関係にあるんでしょう?

下岡:テーマとの関係っていうよりは音の少なさとグルーヴ感っていうのは今自分が伝えたいメッセージっていうか歌詞を伝えるのに一番理想的な形だったからですね。で、『荒野』でそういうのをやりはじめて、で、いちばん最初にアルバム作ろうって思ったときにそれをもう少し突っ込んでやろうってことだったんですよね。

今回のアルバムを作る上での最高のモチベーションって何だったんですか?

下岡:モチベーションっていうか、さっき言ったみたいに月に1曲とかふた月に1曲とかで曲を作ってたんですけど。まさにそれが言いたいことだったから、それを形にしたいっていう気持ちと、あとはその活動しているときに、たとえばライヴが盛り上がったりとか、動員が少し増えていったりっていう実感が伴ってたから、そういうものでしたね。

じゃあ活動そのものの手ごたえみたいな感じ?

下岡:うん、『荒野』以降の。

311直後にちょうど『失う用意はある?』が出たよね。あのタイトルが、はからずとも、現状ではマズいと思っていたひとたちの気持ちを代弁するような言葉になってしまったということを、2年前に話したと思うんですけど。実際、311以後、我慢するということを真剣に考えるようになったり。そういう、アナログフィッシュのメッセージ性に共振しながらリスナーは増えていってるわけだよね?

下岡:全然そうだと俺は思いますけど。言ってることは伝わってるって......そう思っているひとがいるんだなっていう理解の仕方をしてます。

具体的にどういうリアクションがあったの?

下岡:具体的にって言われると難しいですけど、単純にライヴが盛り上がるとか、あとは「あの曲のあの歌詞が好きです」って言われるとか。たとえば"HYBRID"っていう前作った曲とか、"PHASE"の「失う勇気はある?」のラインに何かを重ねてくれるひともいるみたいだし。
 でも、なんだろうな、それはバンドだから音楽が鳴っているときだけ作用するじゃないですか。俺はさっきそれが伝わっていると思うと言って、それは間違いないと思うけど、それはメッセージというよりは音楽全体についてみんな言ってるんだと思うし。ある人に言わせれば、俺がいま言ってることなんて、「あんなこと言っちゃってるよ」的なことだったりするわけじゃないですか。

政治アレルギーとか、シニカルに見れば「何を偉そうに」みたいなね。

下岡:そうそう。でも、そういうのを逆にあんまり感じない。俺が見てないだけで、そういうひとは絶対いるんだけど。うん。いるけど、そういう面は少し薄らいできてるんじゃないかなという気がします。

たとえば僕が住んでいるところの駅のTSUTAYAがあれ以来ずっと節電してるのね。夜になっても暗いわけですよ。でも、TSUTAYA全体が節電してるかと言えば、そういうわけじゃなくて。やっぱりそれに対して意識的なひとと忘れてしまったひとと、けっこう分かれている感じも片方ではして。

下岡:テレビとか見てても、アベノミクスみたいな論点がすごくクローズアップされていて、「いやいや俺忘れてないぜ?」っていう。

そこは今日の重要な議題だよね(笑)。

下岡:結局、あのときで俺がいちばん話したかった論点は、アベノミクスじゃなくて、どうやって幸せになっていくんだってことを考えるってことじゃないの、っていうかさ。アベノミクスっていうのはまた元の状態に戻そうって声高らかに言い出したようにも見えるから。だから、巻き戻るんじゃないかって気がしてるけど。疲弊してる経済を立て直すって事自体は大切なことだけど、経済大国を維持するために弊害もいっぱいあったのに。

ある意味、311直後にインタヴューしたときよりも、現在の方が希望が見えなくなってる感じもあると思うんですよ。たとえば、テレビなんて観るのも嫌になるぐらいのところがあるじゃないですか。

下岡:ありますね。

で、たまたま本屋に言ったらさ、『週間金曜日』が〈絶望〉の特集をしてたんだけど(笑)。

下岡:何それ(笑)?

いや、立ち読みしたんだけど、「自分たちから絶望を奪うな」って話なんだけど、僕には共感できる部分があった。絶望っていうのは必ずしもネガティヴなことではなくて、とことん絶望するっていうのは実は前向きなことだっていう話もあるしね。そういう意味で言うとさ、今回はアナログフィッシュはすごく希望を歌いたがっていると思ったのね。

下岡:たしかに。

なにゆえそこまで希望を歌いたかったのかっていうのが今日の取材の主題かなと思ったんですよ。

下岡:"希望"って曲がありますからね。

そう。

下岡:たしかになあ。

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あのときで俺がいちばん話したかった論点は、アベノミクスじゃなくて、どうやって幸せになっていくんだってことを考えるってことじゃないの、っていうかさ。アベノミクスっていうのはまた元の状態に戻そうって声高らかに言い出したってことだから。


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"抱きしめて"みたいな曲は、希望に溢れている曲とは思わないんですけど、やけのはらが参加した最後の曲("City of Symphony")なんかは、ちょっと無理してるんじゃないかなと思ってしまったぐらいで(笑)。

下岡:たしかに。でもさっきの「自分たちから絶望を奪うな」じゃないけれど僕も絶望することっていまとても大事な事だと思うんですよ。けど、僕が思う奪われるべきでない絶望ってのは例えば仕組みとか、システムとかそういうものについてであって、生きていくこと自体にじゃないって思うんですよね。このアルバムで僕らが歌った希望はただ生きてくことの個人的な希望で、いまの社会で生きる事への漠然とした不安とかについてだと思う。逆に仕組みとかについてはいままで以上につっこんで表現したつもりですけど。
 "City of Symphony"に関して言えば、ちょうどさっき言っていたみたいに疎開というか、ひとが出て行っちゃう、俺自身もそういうことしたほうがいいのかなって考えてる時期があって。でもあるときに、東京に住み続けようって世のなか的にも気持ちがぐっと戻ってきた瞬間があったんですよ。で、そのタイミングでその勢いをそのまま作ったっていう感じなんですよね。

なるほどね。

下岡:希望に満ちていると言いつつ、"Super Structure"とか、こうやって自分の作った曲見てると――。

前作からの延長は感じるよね。その"Super Structure"の曲中で、曲の場面が転換する部分、「踊る阿呆に見る阿呆」っていうのは何を意味してるんですか?

下岡:自分の好きなようにやろうってことじゃないですか(笑)。

ははははは、でも大事なことだよね。

下岡:あと持つ者と持たざる者じゃないけど、そういう奴らと僕も含めてつい踊らされてしまうひとたちのことです。

その踊らされてしまうひとたちも、べつにいいじゃんって感じなの?

下岡:この「踊らにゃソンソン」は、自分の好きなように踊れよっていうことです。風営法のこととかもあったし、911の後とかすごくよく覚えてるんですけど、あの後にテレビが保険のCMをガンガンやりはじめた感じとか。そういうのにかこつけて固まっていく感じっていうか、ああいうのがすごく気持ち悪いんですよ。

なるほどね。ちなみにこの1曲目の"Super Structure"は、最初のヴァースの、どこに息継ぎがあるんだっていうのもミソですよね(笑)。

下岡:そうですね(笑)、たしかに。上京してすぐのときに金がなくて、けっこう都庁で時間を潰したんですよ。タダで上れるじゃないですか。で、都庁ってスーパーストラクチャー工法っていう構造で作られてて。

へえー。

下岡:そのときに俺それ覚えて。10年以上前だけど、ずっと気になってて。石原さんみたいなひとが、あのてっぺんから見下ろしているイメージっていうか(笑)、なんかこうやってるイメージとか浮かんで。

社会っていうとすごく大きな言葉だけど、具体的に下岡くん個人がとくに問題意識として考えていることは何なんでしょう?

下岡:僕がいま気になってることは倫理とか道徳とかモラルとかって呼ばれる物がこの先どうなっていくんだろう? って思ってる。やっぱりどんどん薄まっていってる気がするから。僕自身もきっと僕の上の世代より希薄だし。
 でも例えば原子爆弾を作れるってなったら原子爆弾が作られてしまうように、きっとクローン技術であるとか永遠の命であるとか、そういうのっていつも興味が倫理観を越えていっちゃうから。なんかそれってどうにもなんないのかなって考えてる。平和とか幸せとかってなんかその先にある気がいまはするから。全部無いほうがおもしろいとか思うときもあるけど。あとはいまの形の資本主義やお金のこと。

そのあたりのことは今回のアルバムではとくに......?

下岡:やっぱり"Super Structure"とか"Watch Out(サーモスタットはいかれてる)"とかだと思う。

"Super Structure"みたいな曲は、歌っててやっぱり気持ちよさっていうのはある? 言いたいことをわーっと言ってるみたいな。

下岡:いやあ(笑)。アップアップしてます。息が続かないっていうか。

いや、気持ちよさそうに聞こえますよ。

下岡:ほんとですか。でもいいリズムのノリがありますけどね。

佐々木健太郎さんが歌詞を書いている"STAR"という曲で「聞こえてくるシュプレヒコールが僕を歩かせようとしたけれど/あの夜僕を閉じこめたのは同じ声だった気がしていた」っていうフレーズがありますよね。これがどういう意味なのか、彼には聞かなかった?

下岡:俺は聞かなかったです。

(笑)なんで? いちばん気になるフレーズじゃない(笑)!

下岡:うん。

受け取り方によっては、デモに対する違和感なのかなっていう(笑)。

下岡:俺はそういう風に取らなかったな。俺は最近の何となく忘れていったり、違うところに焦点を合わせようとしてるような、ぼんやりとした空気とかに対して歌ってると理解してる。とりあえず目先の希望みたいな。それって何となく僕らや、世界をここに導いたものと同じなんじゃない? って。だいたい僕らデモに対してそんなに違和感ないですからね。そうやって自分の意志を表現することは別にちっともおかしいことだと思わない。もっといろんな手段があっていいとは思うけど。

下岡くんはデモには行かないの?

下岡:行かない。行かないっていうか、いまのところ行ってないですね。あ、でも1回行きました。

アメリカではブルース・スプリングスティーンみたいな人が、そういうところにも積極的に参加するよね。アナログフィッシュにはブルース・スプリングスティーン的なところもあると思うし。ああいうさ、社会の矢面に立つ著名なミュージシャンは、日本では坂本龍一ぐらいしかいないと思うんだけど、そういうものに対する共感っていうのはやっぱりあるわけでしょう?

下岡:共感は全然あるし、ブルース・スプリングスティーンも好きなんだけど――。「ちょっとな」って思う部分もなくはない。音楽として最高に好きな音楽じゃないっていうのはあるけど、最高に憧れはしないです。坂本さんは尊敬してるし、すごくカッコいいと思ってるけど、自分がそういうことやるかって言ったら、少し違うとは思う。

スプリングスティーンのちょっと違うかなっていうのはどういうところ?

下岡:うーん......。なんだろうなあ......。少しマッチョな感じがする。そうやってひとの心をひとつにすることは、俺すごいと思うしカッコいいと思うけど、もしかしたらそういう風な束ね方をしたいんじゃないんじゃないかって感じが俺はすごくしてるっていうか。

もうちょっと違う伝え方をしたいっていう。

下岡:そうですね。なんかみんな自由にやってほしいって思いますね。

ところで、さっきラヴ・ソングという話が出たけど、今作はラヴ・ソングに落とし込もうとしているような痕跡がいろんな曲で見受けられるんですけど、それはどうなんですか?

下岡:健太郎に関してはわからないけど、でもこの"Good bye Girlfriend"って曲がほんと俺好きで、秀逸だなと思うけど。でもなんか、ラヴ・ソングを書いたっていう気は俺としてはあんまりないんだよな。たとえば"Isay"にしても――。

えー、これもかなり直球なラヴ・ソングな感じだけど。

下岡:そうですよね。「愛されるより愛せ」って思ったんですよね、ほんとに。

それはパーソナルな出来事なの? それともこれは象徴的な言葉として自分で書いてる?

下岡:あー、どっちなんだろうな。両方あるけど......

キリスト教だったら「隣人を愛せ」って言ったときに寛容さとか、そういうようなことを意味するじゃない?

下岡:そういう意味ではパーソナルな出来事かもしれないけど、なんかI sayってメッセージを歌ってるって意識なんですよね。自分にとってラヴ・ソングってそういうものじゃなくて。
 震災のニュースとか見てたら大事な人のこと考えちゃって。僕は結婚もしてないし子供もいないんですけど。僕もやっぱり愛されたいし、それ自体は否定しないけど、「愛する」があって「愛される」があるんだなって思ったんですよね。その逆じゃなくて。
 コンビニで音楽が流れてるじゃないですか。聴いてたらアイドルが「愛してる」っていう主旨のことを歌ってて、で、アイドルが歌ってる「愛してる」って結局あのひとたちは愛されるためのひとたちだから、「愛してる」って歌ってるけど表現の全体としては「愛して」っていう表現になってるっていうか。だから「愛せ」っていう表現ってそんなにあるのかなって思ったことをいま思い出しました(笑)。

そこが重要だったんだ(笑)。

下岡:いやわかんない。それが重要だったかは(笑)。でも、ラヴ・ソングっぽく聴こえる曲がけっこうあるんだな。自分が書いた曲に関してはラヴ・ソングと思って書いた曲はほとんどないんですけどね。

結果そうなったんだね。

下岡:うん、ないと思う。

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911の後とかすごくよく覚えてるんですけど、あの後にテレビが保険のCMをガンガンやりはじめた感じとか。そういうのにかこつけて固まっていく感じっていうか、ああいうのがすごく嫌いなんですよ。

下岡くんは時間があれば、わりとテレビのニュース番組とか見るの?

下岡:僕テレビ持ってなくて、観ないんですけど。地デジになったときにもういいやと思って。それでネットする時間がけっこう長くなってきてて、ネットしてると、テレビ観てるほうがいいなっていう気になってきてて(笑)。これやってるんだったらって、いま思ってるとこです。

ほう、それはなんで?

下岡:NHKとかすごく観たい番組があって。ダイオウイカのやつとかネットで見たんですけど。俺それすげー観たかったなと思って。

何それ?

下岡:深海にいるすごく巨大なイカの番組。世界ではじめて撮ったみたいなやつで。それ観たいなと思ったりとか。あとは、ネットでニュースを検索してて、意見とかコメントとかを見ると、けっこう気が滅入りません?

PCの前に座ると人格変わるひとがいるんだよ(笑)。僕はツイッターは、ele-kingで更新情報を流すぐらいで、個人的にはやらない。ただでさえ情報過多なのに。あれ、得意不得意があるじゃない?

下岡:はい、あります。俺もツイッターやらないですけど、なんかヤフーニュースとか見てると、下のほうにひとが書き込んでたりしてて。で、けっこう「ああー」ってなったり。でもこういうのが見られるっていうか、双方向性が魅力なのかなって思いもするけど。ひとが見るところは、テレビと同じで大きなお金を払っているひとたちのものがそこにあるから。結局どれだけ違うのかなと思ったりして。

僕とか櫻木(景、レーベルのボス)さんみたいなひとはサッカーを観るためだけにテレビがありますけどね。

(一同笑)

下岡:そう、スポーツが観られるっていうのがテレビのいいところですね。

ありがたいね(笑)。

下岡:いやマジで。スポーツとか、あとはNHKの自然ナントカみたいなやつとか。

(笑)たしかに。話を戻しましょう。"Watch Out(サーモスタットはいかれてる)"って曲も、"SuperStructure"と並んで、下岡晃節が出てるクールな曲だと思うんですけれども、この曲についてコメント下さい。

下岡:これは、えっと、資本主義的なことと、最近の中国との関係みたいなこととかレイシズムのことです。でもこれは去年の11月からああいうのが問題になって。なってっていうかずっと問題だったんだろうけど、なるべく浅く書くって言うと変だけど、あんまり掘らずにぱっと書こうと思って書いたから、いま聴いててもちょっとフワフワした気持ちになる自分がいる(笑)。

衝動的に書いたんだね。

下岡:音の感じとか言葉の出し方とか、ヒップホップ的にでなくやるのってどういうやり方があるのかなってずっと思ってたけど、すごく難しいんだなと思って、やってるときに。でももう少しそういうのをやってみたいなって気はしてます。

ヒップホップ的なやり方っていうのは、1曲目もそうだもんね。

下岡:でも音節の割り方がなんか違うんですよね。入れ方が。だからやけ(のはら)さんに聞いて勉強しようと(笑)。

それでやけさんが登場する......わけではないでしょ!?

下岡:(笑)わけじゃないけど。

ははは、今回、やけちゃんを呼んだのはなんでなんですか?

下岡:ちょうど櫻木さん繋がりで飲んだこともあるし、やけのはらさんも『荒野』もこれもいいって言ってくれてるし、僕もやけのはらさんのアルバムもすごく好きだったから。あれはほんと素晴らしい。新しいのもすごくいいけど。なんかシンパシーを感じるんだよな、あのひとの書くことに。

ほう、どういったところに?

下岡:うーん......なんか俺と似たようなことを言うときがあると思う。あとは――。

サンダル履いてるところとか?

下岡:(笑)それも好きです。あと、声と言葉の関係っていうか、やけさんと話してるときに、やけさんはマーシーの歌詞が好きだった言ってて、俺もそれはすごくよくわかって。好きなんだろうなって、なんかピンと来て。で、俺もすごく好きで。そういう美的感覚が、聴いてて安心するし。

さっき僕が「ちょっと無理してるんじゃない」って言った最後の曲は、どうやって作ったの? あらかじめコンセプトを打ち合わせて作った感じなの?

下岡:コンセプトは打ち合わせました。コンセプトは、街を歌うってことと、僕が好きな東京の景色があって。埼玉のほうから川沿いを走って池袋のほうに抜けていく高速を走ってるときの、うっそうと茂った東京がばーっと出てくる、で、日が暮れていく感じがすごく好きで。その気持ちを曲にしたいということを言って、はじめたと思う。

それは面白い話だね。町にプレッシャーを感じるんじゃなく、いつもとは違った眺め方、道順で接することで解放される心理地理学って、フランスの60年代の思想家は定義しているんだけど、その発想に近いかもね。ラッパーが町を描写したがるのもそういうことだと思うだけど、どうして自分の好きな東京を歌おうと思ったの?

下岡:ひとつは、さっき言ったみたいな疎開していく感じから、自分がぐっと東京に住むぞって感じとか、世のなかのひとたちが東京でやっぱりいいのかなって思いだしたタイミングが俺のなかではあって。そう思ったタイミングだったからっていうのと、もうひとつは、元も子もないですけど(笑)、やけさんも俺も小沢健ニさんの〈東京の街が奏でる〉を観に行ってて。

櫻木:元も子もない(笑)。

はははは。

下岡:(笑)で、その話をいっしょに飲んでしてたんですよ。「あれが良かった」とか「あそこは」とか。で、それもわりとそういうテーマだったんです。それもあったと思う。

どういうインスピレーションを与えたの? きっかけになったっていうのは。それはどういう作品なんですか?

櫻木:Tシャツとかも自分の好きな街のスカイラインみたいなのを描いてて。東京の街のペン画みたいなのを。オペラシティで2週間ぐらいやってたんですよね。

下岡:で、往年のヒット・ソングもやるんですけど、合間でポエトリー・リーディングみたいな感じで街のことを話したりして。それを話題にするなかで、俺たちも街のことを歌ってみるみたいな感じもあったんじゃないかな。

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たとえば話戻っちゃうけど、原発反対ってなったときに俺みたいに「反対だから反対だ」って思うひともいれば、「反対だけど、わたしも使ってる立場だから反対って言えない」みたいなひともいる。そういうのから自由になりたいっていうか。


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なるほど。では、最後の質問ですが、アナログフィッシュが理想とする社会っていうのは何なのでしょう?

下岡:(笑)それすごいですね。デカい質問。俺はなんか、もう少し自由でいたいと思うんですよ。いつも。なんか、絡め取られたくないっていうか。

法律に?

下岡:法律は、幸せに暮らすためには俺はある程度ルールは必要だと思うけど、そのルール自体がひとを見ていてほしいというか。ひとを向いていてほしい。

システムのためのルールではなくて、ひとのためのルールになってほしい?

下岡:なってほしいし、さっきの話したプレイグランドをもう少し離れて自由にやりたいと思ってる。自分の思うように。

何から一番自由になりたい? せめて大麻くらい合法にしてくれという自由であるとか。

下岡:(笑)。

真剣に医療に使ってる国だってあるわけだから。

下岡:はい、はい。

あるいは、フェミニズム的な自由であったりとか、同性愛的な自由であったりとか。環境問題的なことだったり。下岡くんが一番気にするところの自由っていうのを教えてほしいなと。

下岡:なんだろう、言うこときかされないっていうか。もう少しきっと明確に言えることがありそうなんだけど。たとえば話戻っちゃうけど、原発反対ってなったときに俺みたいに「反対だから反対だ」って言おうと思うひともいれば、「反対だけど、わたしも使ってる立場だから反対って言えない」みたいなひともいる。そういうのから自由になりたいっていうか。

(笑)それは何からの自由だろうね。

下岡:そういうのが無数に絡みまくって俺たち生きてて、べつにそれでやっていけはするけど、何だろう、あの共犯意識みたいなもので誰も何も言えなくなる感じが。

それは真面目さと言うよりも、誤謬だよね。

下岡:いやいや、それ思ったら言えよっていうところあるじゃないですか。でもその共犯意識も、何も言えなくなるためにあるじゃないかって気も考えようによっちゃするし。あの感じがイヤですね。

集団や規律みたいなものを優先してしまうというか。

下岡:想像力の無さから自由になりたいです。でも「反対だけど、わたしも使ってる立場だから反対って言えない」って人も想像力ってゆうかやさしさがありますよね。でもどう思ってるか表明した上で話した方がいい気がするけど。

じゃあ逆にさ、海外の文化でいいなって思うのはある?

下岡:ああー。たとえば俺はアメリカはすごくイヤなところもあるけど、あのひとたちって資本主義は資本主義で、原発はリスク高いから金出さないとかさ、なんか一貫してるじゃないですか。

でもその代わりにシェール革命っていうのがあるしねー。

下岡:そうそうそう! アメリカはそんな好きじゃないんだけど、そういう一貫してるのはいいと思うな。

いわゆる民主主義ってものに対して?

下岡:そうそう。あと、僕オーストラリアに住んでたけど、あのひとたちのひとのよさっていうか、単純に。変にアメリカを意識して、頑張ってはねつけてる感じとかも好きだな。

日本を見るときに海外から照射するっていうやり方もあるよね。日本のことだから日本にいれば、日本のものだけ追っていれば見えるって言うのも意外と違っていたりしてね。

下岡:俺すごく覚えてるんですけど、日本のひとたちがイラクに入っちゃいけないって言われているのに入って人質になって、「自己責任」って言われたことがあったじゃないですか。自己責任だから、国益を損ねてまで助けることないって。でもフランスかどこかが「彼らは守るために行ったんじゃないか、なんで日本は自己責任とか行ってるんだ」みたいなことを言ったら、もう世論がひっくり返って、「自己責任って言ったやつどいつだよ」みたいな話になったんですよ。なんか、その感じっていうか。最初に自己責任っていうものが出てきちゃう感じとかも、なんでかなって思う。
 でも、なんでかなって言いながら、俺も最初自己責任だろってそのとき思ったんだよね。俺そのときすごく後悔したの、なんか。俺ってなんか、ほんとつまんねーやつだなって思って。もうこんなこと絶対やだぞって思った。でも俺が政治的な音楽をやりたいかっていうと、べつにそんなことしなくてよければそれが一番いいなと思うし。必要があると思うことを、しないのが変だなと思って。

なるほど。なんか言い足りないことってある?

下岡:いや、どうかな......(笑)勘違いされたくないのは基本的にはこの世のなかが好きってことですね。

はははは、アナログフィッシュが理想とする社会とは何か?

下岡:そうですね。俺の理想か。

Jリーグの試合があるときは絶対仕事を休まなきゃならないとか。

櫻木:そうそうそう!

下岡:俺の理想は、将来の不安がないことですね。

安心して老後を過ごせる社会、自分も老年期に入りそうだから、なおさらそう思う(笑)。

下岡:そうですね。はははは! いきなり現実的になっちゃった(笑)。でも、僕社会のこととか、モラルとか倫理とかの話になると、絶対自分の祖母が出てくるんですよ。で、本とか読むよりも、祖母がああだったなって考え方をするほうが腑に落ちて好きで。俺の年だとそういうのができないからな、って思って。たとえば祖母は、いい悪いもすごくはっきりしてるし、で、彼女自身は大正に生まれてて、若いときはいまみたいに女性が自由に生きられたことは絶対ないだろうけど、でも全然不幸じゃなさそうだったし。ずっと土を触ってるとかさ。

おばあちゃんは大正のどのくらいの生まれなの?

下岡:えっと、大正11年の生まれですね。

じゃあ戦争を経験してるんだ。

下岡:経験してる。

けっして順調な人生だったわけじゃないよね。

下岡:じゃないはず。でもあのひとは、いい悪いがはっきり決まってて、そういうのが俺すごく好きだったんだよな。羨ましいと思ったし。

おばあちゃんの世代とは違って、いまの社会は流動化しているから、自分が生まれた場所で孫に話すことが限りなく少なくなっているというか。

下岡:でも、いまみたいな社会を維持していこうとしたときに、やっぱりまたひとが田舎に戻っていくってことはないのかな。

いや、それこそ現実に疎開現象とかさ。

下岡:Uターンみたいなものでひとが入ってるとは聞くけど。それだともたないんだよな、絶対。田舎って。何て言うんだろう。たとえば僕が田舎にいたときに、都会のひとが帰って来てはじめるお店とかって、都会のひとに向けてやってるお店っぽくって。田舎を売りにしたお店っていうか。田舎のひとが必要としてることじゃないって感じがして。いま田舎にひとが行ってるのって、もっと地に足がついてるのかな。もっと地に足着いてたらいいんだけど。

でも、福岡なんかは、311以後、人口が増えちゃって、音楽のシーンが賑やかになっているって二木信が言ってたよ。東京もローカルな感覚を取り戻しているし、なんか変わってきているよね。まあじゃあ今回はそんな感じで。

下岡:じゃあ、次にはもっと言えるように(笑)。

じゃあ、次のアナログフィッシュは『サージェント・ペパーズ~』だね(笑)。

MALA IN JAPAN TOUR 2013 - ele-king

 UKダブステップ・シーンのオリジネイターのひとり、シーンの精神的支柱のひとり、アンダーグラウンドの栄光、ダブ/レゲエからの影響をミキシングしたドープなサウンドでファンを魅了し、そして昨年の『マーラ・イン・キューバ』が国際的にヒットしたマーラが4月の後半、来日します。待望の再々来日ですね!
 盟友、ゴストラッドも出演します。行きましょう。

===================================================
〈MALA IN JAPAN TOUR 2013〉
4/19(FRI) 沖縄 at LOVE BALL 098-867-0002
4/20(SAT) 東京 at UNIT 03-5459-8630 www.unit-tokyo.com
4/21(SUN) 大阪 at CONPASS 06-6243-1666 https://www.zettai-mu.net/ https://conpass.jp
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DBS presents
"MALA IN JAPAN"

2013.4.20 (SAT) at UNIT

feat. MALA - DIGITAL MYSTIKZ

with: GOTH-TRAD
Jah-Light
Helktram

Vj:SO IN THE HOUSE

open/start 23:30
adv. 3150yen door.3800yen

info. 03.5459.8630 UNIT
https://www.dbs-tokyo.com

★UKダブステップ界の最重要人物MALA-DIGITAL MYSTIKZ。その存在はシーンのみならずジェイムス・ブレイク、エイドリアン・シャーウッド、ジャイルス・ピーターソン、フランソワKら世界中からリスペクトされている。キューバ音楽の精髄を独自の音楽観で昇華した金字塔アルバム『MALA IN CUBA』でネクストレヴェルへ突入、UKベースカルチャーとキューバのルーツミュージックを見事に融合させた音楽革命家である!4/20 (土)代官山UNITで開催する"MALA IN JAPAN"は、MALAの音を200%体感すべくUNITが誇るハイパワー高品質サウンドに加え、超強力サブウーファーを導入決定!共演はMALAのレーベル、DEEP MEDiの主力となる日本の至宝GOTH-TRAD。"Come meditate on bass weight!!!!!!!!!!!!!!!!" one love

★MALA - DIGITAL MYSTIKZ (DMZ, Deep Medi Musik, UK)
ダブステップのパイオニア、そしてシーンの精神的支柱となるMALA。サウス・ロンドン出身のMALAは相棒COKIとのプロダクションデュオ、DIGITAL MYSTIKZとして名高い。ジャングル/ドラム&ベース、ダブ/ルーツ・レゲエ、UKガラージ等の影響下に育った彼らは、独自の重低音ビーツを生み出すべく制作を始め、アンダーグラウンドから胎動したダブステップ・シーンの中核となる。'03年にBig Apple Recordsから"Pathways EP"をリリース、'04年には盟友のLOEFAHを交え自分達のレーベル、DMZを旗揚げ、本格的なリリースを展開していく。そして名門Rephlexのコンピレーション『GRIME 2』にフィーチャーされ、脚光を浴びる。また'05年からDMZのクラブナイトを開催、ブリクストン、リーズでのレギュラーで着実に支持者を増やし、ヨーロッパ各国やアメリカにも波及する。'06年にはDMZから"Ancient Memories"、"Haunted / Anit War Dub"のリリースの他、Soul Jazzからのリリースで知名度を一気に高める。また同年にMALAは自己のレーベル、Deep Medi Musikを設立、以来自作の他にもGOTH-TRAD、KROMESTAR、SKREAM、SILKIE、CALIBRE、PINCHらの作品を続々と送り出し、シーンの最前線に立つ。'10年にはDIGITAL MYSTIKZ 名義となるMALAの1st.アルバム『RETURN II SPACE』がアナログ3枚組でリリース、壮大なスケールでMALAのスピリチュアルな音宇宙を明示する。MALAの才能はFRANCOIS K、ADRIAN SHERWOOD、GILLES PETERSONらからも絶賛される中、GILLESの発案で'11年、彼と一緒にキューバを訪れたMALAは現地の音楽家とセッションを重ね、持ち帰った膨大なサンプル音源を再構築し、'12年9月、GILLESのBrownswoodからアルバム『MALA IN CUBA』を発表(Beatinkから日本盤発売)、キューバのルーツ・ミュージックとMALAのエクスペリメンタルなサウンドが融合し、ワールド・ミュージック/エレクトロニック・ミュージックを革新する。『MALA IN CUBA』によって新次元に突入したMALA、一体どんな旅に誘ってくれるのか必聴の来日公演!"Come meditate on bass weight!"
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Ticket outlets:NOW ON SALE!
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渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、
TECHNIQUE (5458-4143)、GANBAN (3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)、Bonjour Records (5458-6020)
原宿/GLOCAL RECORDS (090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、
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