「Nothing」と一致するもの

interview with Franz Ferdinand - ele-king


Franz Ferdinand
Right Thoughts, Right Words, Right Action

Domino / ホステス

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 2004年、ひと昔。フランツ・フェルディナンドのファースト・アルバムを手にしたのが、つい3年ほど前のように感じられる人もいるかもしれない。10年も経っていることに驚くのは、単純に「光陰矢の如し」的な感慨なのか、彼らがほとんど古びていないということなのか、それともUKロックに目立った更新がなかったということなのか。久々のフル・アルバムとなる『ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション』を聴いていると、そのどれでもあるように感じられる。

 今作にシンセ・ポップ寄りの嗜好が見られるように、彼らの音楽にはそのときどきのモードを反映したマイナー・チェンジはあるものの、4枚のアルバムを通して大きな方向転換はなかった。大ヒットした"ユー・クッド・ハヴ・イット・ソー・マッチ・ベター"は、ほぼ真っ直ぐに2009年の"ユリシーズ"へと連続している。バンド自体のストーリーとしても、とくにドラマチックな事件や変化を迎えたりはしていない。それで10年も現役としてメジャーな存在感を保っていられるというのが彼らのスペシャルなところだ。
 フランツ・フェルディナンドには何があるのか。
 今回はバンドの支柱とも呼べるベーシスト、ボブ・ハーディに話をきいた。彼らはけっして若さのために輝き、脚光を浴びたのではない。下積みが長いことがよく知られているが、彼らにあったのはずば抜けてクレバーなポップ・バンドとしてのアイロニーや批評性である。「信じるべきものなど何もないと僕は信じてる」("フレッシュ・ストロベリーズ")という一行(しかもカラっとした皮肉をこめて、のびやかに歌われる)は、その意味で彼らの来し方と行く末を照らすものかもしれない。若さやデビューの勢いが減退したからといって、まったく影響を受けない魅力やスタイルを、彼らは当初から備えている。

 何度めかの「ロックンロール・リヴァイヴァル」が終わりかけていた頃、それと入れ替わるようにフランツ・フェルディナンドはロック・アンサンブルをダンス・フロアへと持ち出し、シーンをまるごと踊らせた。そしてその後につづく大きな潮流――空虚さを祭に転換するようなポストパンク・リヴァイヴァル――をある一側面において象徴することにもなった。「信じるべきものなど何もないと僕は信じてる」というのは、思えば一貫したスタイルである。
 しかし、年を重ねること見えてくるものもあるはずだ。彼らにとっていまはどういう時期なのか、これからどんなふうに年をとっていこうと思っているのか。質問に対して、ボブ・ハーディは落ち着いた声と態度で語ってくれた。

「正しい考え、正しい言葉、正しい行動」、この3つの要素を適用すれば、人生のなかの大体のことは成功するんじゃないかな。

今作のタイトルは『ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション』ですが、私ははじめ「ライト」って「light(軽い)」の方かと思ってたんです。その方がいい意味で音楽性にも合っているというか、あなた方が標榜する無神論的な態度やプレイスタイルをよく表しているような気がしたんですね。ですが実際は「right(正しい)」の意味で、どうやら仏教に由来するタイトルであると。
 この「right」には、「ブリティッシュ・ポップ界きってのアホ野郎」とも自称されていたあなたたちの、わりとマジな理念や思考が反映されていると考えていいのでしょうか?

ハーディ:ははは、なるほどね。今回のタイトルに関してはどんなふうにでも意味をとってもらえるような余白があって、けっこういいんじゃないかって思ってるよ。僕らの込めた意味合いとしては、とても前向きなものがあるんだけどね。人生についてポジティヴな思いもあるし、バンド自体にもいまとてもいいエネルギーがあるんだ。「正しい考え、正しい言葉、正しい行動」、この3つの要素を適用すれば、人生のなかの大体のことは成功するんじゃないかな。僕らなりにはそう考えてつけたタイトルなんだ。だけど、全然、どうとってもらってもかまわないよ。

今作はプロデューサー/ミキサーとしてトッド・テリエも参加していますが、あなたがたは一貫して人々を踊らせるというコンセプトを大事にされていますね。デビューから10年、ダンス・ミュージックもさまざまに変化してきたわけですが、エレクトロニックな表現に距離を置いて、あくまでバンドによるセッションのスタイルを大事にされるのはなぜでしょう?

ハーディ:たしかに僕らは「踊れる」とか「クラブ向き」っていうふうに言われてきたけど、そもそもそれを目指していたバンドではないからね。ライヴをやって、ギターがその中心にいて......というバンドのスタイルは最初から持っていたつもりでね。今回のアルバムはとくにその感じが全面に出ているかもしれない。レコーディングの過程を通じて4人がいっしょにプレイするということを貫いているからね。
 トッドに入ってもらったのは、僕らが彼のファンだからだよ。こっちから声をかけたんだ。僕らがやった音の上に何か足せるものがあるかなってふうに呼びかけて、ロンドンのスタジオに来てもらった。音を聴いてもらって、その上でトッドなりに思うところがあれば......っていう感じでね。ベーシックなトラックは作ってあったから、その上にトッドらしい、ダンシーなフレイヴァーを加えてもらったんだ。最終的には彼はそれをオスロに持ち帰って、向こうで仕上げてくれたよ。彼がやってくれた2曲はその後、「エクステンデッド・ミックス」というかたちで8分くらいの尺に延ばしたものになったんだけど、それがすっごくいいんだ。僕らの演奏は生きてるんだけど、それをとてもいいかたちにミックスしたダンス・チューンになったるよ。いずれ2曲を両面に入れたシングルを出すつもり。というか、すぐ出るはずだね!

他に参加しているアーティストにはメロディメイカーが揃っているなという印象もありました。ビヨーン・イットリングとかアレクシス・テイラー、ジョー・ゴッダートというのはポップなソング・ライティングにおいて屈指の存在だと思いますが、起用の理由もやはりそのあたりになるのでしょうか?

ハーディ:才能ということで言えば、アレクシスとジョーのふたりとも、とてもメロディに秀でてるよね。1曲め("ライト・アクション")と10曲め("グッバイ ラヴァーズ&フレンズ")が彼らに参加してもらった曲なんだけど、1曲めの方はアレクシスにメロディを追加してもらってるし、10曲めの方ではキーボード・パートも加えてもらっているよ。10曲めはヴォーカル・ハーモニーもだね。アレクシスの高音のヴォーカルが目立っていると思うけど、ああいう、彼ならではのヴォーカルをあの曲に入れられたのはすごくうれしいなって思うよ。

ああ、アルバム全体のなかでもとても印象的なパートですね。あれはアレクシス・テイラーなんですね。

ハーディ:そう。そしてビヨーンについてだけど、ビヨーンのユニット自体がそうであるように、スウェディッシュ・ポップ自体がもともとメロディを重んじる音楽だよね。「いい曲」を大事にする彼らに僕はすごく惹かれるんだ。メロディメイカーとしてはもちろんだけど、プロデューサーとしての腕も確かで、リッケ・リー(Lykke Li)のプロダクション・ワーク(『ユース・ノベルス』2008年)なんかはほんとによかったな......。

なるほど。リッケ・リー自体も好きなんですか?

ハーディ:ほんと、大好きだよ。それにあのアルバムにはビヨーンのプロデューサーとしての才能が詰まってるよね。

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シニカルというのは、本当に生きることの意味を探しはじめたからこそ出てくるものだとも思うし、僕らのような無神論者がほかになにを信じて生きていけばいいのか――生きていくために必要な、信じるべき対象を探しているという部分が出ているのかもしれない。

そうですね。ところで、先ほどアルバムの大きな性格として「前向き」ということをおっしゃっておられましたが、私もすごくポジティヴなマインドを受け取りました。はじめの2曲なんかも、ほんとに10年前のファーストのときのような活力がありますね。その一方で、歌われている内容自体は、失恋というか、やぶれた関係のようなものがわりとテーマになったりもしています。こうしたテーマは自然に出てきたものなのでしょうか?

ハーディ:そういう音楽が僕は個人的に好きなんだよー。音楽だけ聴いているとアップで楽しいんだけど、詞のほうは逆。シリアスっていうんだろうか。ちょっと惨めなところがあったりね。例で言えばザ・スミス。ジョニー・マーのギターだけ聴いていればすごくエネルギッシュで、だけどモリッシーの歌の内容をきくと、そういうことばっかりじゃないというね。そういう組み合わせの曲の方が僕は好きだし、つい歌いたくなるのもそういう音楽だ。でも僕らのアルバムの詞がずっとそんな感じだからって、壊れた関係や別れってことばかり頭に残るんじゃなくて、音楽に身を任せて気分を上げて踊れるようになってると思うから、そういう両面を楽しんでもらえればなって思うよ。

すでに活動も長いわけで、最初の作品の頃から比べて、人間性に深みが出るというか、苦くなったり影ができていくような部分もあるのかなと思いまして。最後の曲では「恋人が友人に変わる」場面が描かれていたりしますが、それをきれいな思い出としてスッキリ処理しないでくれと呼びかけるくだりは、10代、20代の無邪気さからは遠いものですよね。フランツ・フェルディナンドがどんなふうに年を重ねてきたのか、時間の経過を少し感じさせるように思いました。

ハーディ:この曲は恋愛関係の終わりというよりは、死というか、「葬式」を歌ってもいるんだ。だから、関係の終わりではなくて命の終わりなんだよね。そのなかで、死んだ人が、「こういうことだけはしないでくれ」っていうことをあげつらっている曲なんだ。ポップ・ミュージックは流さないでくれ、とか、自分にそぐわない神話や美談を作り上げないでくれ、とかね(笑)。
アレックスも、べつに自分の葬式を想定しているわけではなくて、別のキャラクターを想定しているんだと思うんだけど、たしかに僕らにも多少シニカルなところは出てきたのかもしれないよね。それはべつに悪いことではないと思ってる。シニカルというのは、本当に生きることの意味を探しはじめたからこそ出てくるものだとも思うし、僕らのような無神論者がほかになにを信じて生きていけばいいのか――生きていくために必要な、信じるべき対象を探しているという部分が出ているのかもしれない。それがタイトルにもつながっていくんじゃないかな。

だけど、まず自分たちが楽しむということ自体がなかなか簡単なことではないんだよ。

なるほど......"フレッシュ・ストロベリーズ"では、「僕らは摘みたての新鮮なイチゴだけど、そのうち腐って忘れ去られるだろう」っていうようなことが歌われてますね。これはもしかすると部分的には自分たちの境遇や、長くアーティストを続けることの比喩だったりするのかなと思いました。

ハーディ:ははっ、そうだね。

いえ、比喩として(笑)。それで、バンドにとって年を重ねることと、クリエイティヴの幅を広げていくこととは、対立することなくうまく結びついていると思いますか? フランツ・フェルディナンドはどのように年をとっていくのでしょう?

ハーディ:あの曲は、腐る直前のあの甘さ......じつはそこがいちばん味わい深く貴重な魅力を秘めているということを歌ってるんだ。それはとても重要なことでもある。
 バンドとしては、これまで学んできたものがあるからいまがあると思っているし、年数を積んできただけのものはあるつもりだよ。たとえば、創造性をうまく保っていくためにはスケジュールに踊らされていてはいけない。スケジュールからも解放され、ツアーからも解放され、お互いからも距離を置いて自分だけのスペースを持つことがどれだけ大切かということを過去の経験から学んだ。そしてこのアルバムを作る前にそういう時間をしっかり設けたということが、この作品の出来につながっていると思うし、そうしないとアイディアが生まれてくる新鮮な感覚が持てなくなってしまうんだよね。書きたいことがなくなってしまうというか。
 でもがんばってツアーなんかをしてきたから――その経験のなかから書くべきことが生まれているとも言えるわけだよね。それがいいかたちでいまの作品には出てると思うんだ。

"スタンド・オン・ザ・ホライズン"なんかはめずらしくストレートに弱みやエモーションを見せている曲だと思うんですが、これは気に入っていますか? わりと湿っぽいことも、そう湿っぽくはしないのがフランツ・フェルディナンドだと感じるのですが、それはバンドとしての姿勢というか、哲学のようなものなんでしょうか?

ハーディ:ああ、"スタンド・オン・ザ・ホライズン"ね、ありがとう! 僕のフェイヴァリットだよ、この曲は。そうだな、ダンス・ミュージックをギターで演じるというのがやっぱり僕らの根本にあるわけだから、音的に高揚感を持たせることは意識しているよ。歌詞のテーマはその都度変わるけれども、ちょっとしたメランコリーのようなものはどうしても出てしまうことがある。だから音によってそこを引き上げようということは、意図的に行ったりはするね。

フランツ・フェルディナンドは優れたバンドであるとともに、優れたエンターテイナーであるからこそ、ここまで人々に受け入れられるようになったと思うのですが、人を楽しませることと、自分が楽しむこととでは、基本的にはどちらが大切だと考えますか?

ハーディ:まずはやっぱり自分たちが楽しむことを大事にしているかな。そうじゃないと続けられないものね。だけど、まず自分たちが楽しむということ自体がなかなか簡単なことではないんだよ。4人の好みもバラバラだしね。そのあたりのチェック・リスト的なものが無意識にあって――たとえば誰かはこれが好きだけどポールはそれでは納得しない、とかってふうにね――そうやってそれぞれの嗜好をすり合わせながら曲を作っていくという過程自体が、広く受け入れられる音楽性を作っていくのかもしれないよね。というか、そうならざるを得ないということに近いかもしれないよ。

ele-king presents "ANTI GEEK HEROES" - ele-king

 もう何回も言ってることだけど、日曜は下北沢THREEで遊ぼうぜ!
先日告知したele-king本誌最新刊vol.10連動イベント「アンチ・ギーク・ヒーローズ」のことですよ。な、な、な、なぁぁぁんと、LowPass、カタコトに加え、ele-kingに欠かせないマン・オブ・タレント、踊ってばかりの国の下津光史(a.k.a The Acid House.)の出演が決定! イエー、ロックンロール~!

 さらにはDJに、いまや売れっ子のライター二木信が登場。某ラップ・ユニットのミックステープではフリースタイルで客演するなど、垣根を超えた活動をするこの男が一体どんな曲をスピンするのか......見所と言えば、もしかしたらこれが一番の......いやいや、新人カタコトを見て欲しい!

 というわけで、今週末、8月25日(日)、18時開場!
 マジ、頼みます。みんな、下北沢THREEで遊ぼう!



ele-king presents "ANTI GEEK HEROES"
8.25 (sun) 下北沢 THREE
OPEN 18:00 / START 18:30
ADV / DOOR 2,000 yen (+ drink fee)
LIVE: LowPass / カタコト / 下津光史(踊ってばかりの国)
Opening ACT: バクバクドキン
DJ: 二木信

*公演の前売りチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netで受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をお知らせください。当日、会場受付にてご精算/ご入場とさせていただきます。
INFO: THREE 03-5486-8804 www.toos.co.jp/3


R.I.P. 山口冨士夫  - ele-king

 たとえば、ジュリアン・コープの『ジャップロック サンプラー』でフラワー・トラヴェリン・バンドなどに較べ、村八分の旗色が悪いのは、英国と日本の間に横たわる歴史、地理、言葉の条件から来る齟齬のめもくらむばかりの溝をどのようにのこりこえるのかという以前に、音楽のオリジナリティをどこに聴きとるかという耳の志向に左右される。いわく、旧弊な日本社会におけるアウトサイダーたちによるストーンズ・タイプのロックンロール・バンドだったがそれ以上ではなかった――これはジュリアンがそう書いているのではなく、あの本で彼のいいたがっていることを私なりに解釈したものだが、私は彼にいってやりたい。ねえジュリアン、オリジナリティって新しい形式をつくることのなの? 一方で、小説を書かないことで知られるアルゼンチンの作家、エルネスト・サバトは『作家とその亡霊たち』のなかの「作家と旅行」と題した短文で「よしきにつけ悪しきにつけ、真の作家は自分が育ち、苦しんだ現実、つまり故郷について書く」と書く。この短い文章をサバトは「一見矛盾するようだが、もし作家が旅するとすれば、それは自分の拠所となる場所と事象を掘り下げるためなのである」と結んでいる。これを山口冨士夫に置き換えると、彼は彼自身の出自と対峙し、血の轍に乗って旅し、その道は「自分が育ち、苦しんだ現実、つまり故郷」に続いていたのかもしれない、と思うのはあまりに物語めいているが、山口冨士夫の訃報の一報に接したときの諦念と、続報で知った事実に、この国のロックンロールが失ったものの大きさを思ったとき、それを埋め合わせるにはなんらかの構図が必要だったのだろう。サバトの言葉はエキゾチシズムを退けるものではない。そしてジュリアン・コープの指標もそこにある。そこから何を聴き、読むかという作品への寄り添い方のちがいでしかない。おしむらくは、村八分に決定的なスタジオ録音があれば、評価もまたちがったかもしれないが、彼らはそれを潔しとしなかった。というより、あまりに音楽の速さにスタジオに篭もってはいられなかった。結果村八分は70年秋から73年5月までの2年あまりの活動期間で〈エレック〉に『ライブ』をのこしただけだったが、ブルースを消化した山口冨士夫のギターと、路傍の宝石の原石のようなチャー坊の言葉のせめぎあいはたやすく形式に定着できるものではなかった。
「一ついいフレーズが浮かんできたら、それについて一日中思いを巡らし、ギターで鳴らし、それでもまだ程遠いわけじゃん。で、だんだん近寄っていくわけなんだよね。自分の体とそのスピリットが。そこで初めて体全体でギターを弾けるようになる。その曲の一部になれる気がするんだよな......。」(山口冨士夫『村八分』K&Bパブリッシャーズ)と山口冨士夫はいう。ここには音楽をむしゃむしゃと咀嚼しりゅうりゅうと血肉化した者だけで語れる身体言語がある。あの瞬発力と強靱なリズム、リリシズムとユーモア。74年の『ひまつぶし』、ティアドロップス、どんとや清志郎たちといっしょのとき、山口冨士夫はゆるぎない全身ギタリストぶりをわれわれに教えてくれた。いや、教えるなどという押しつけがましさはなく、ただそこにいるだけで成り立っていたから「全身」であった。それはたとえ水谷孝の空間を満たすフィードバックの渦に対しても空間をつくり、一歩も引くことはなくじりじりと漆黒の空間を焼いていた、裸のラリーズの山口冨士夫在籍時(1980~81年)のライヴ音源にも明らかである。この地球にはライヴでしか表せない音楽があり、出音すべが生きているロック・ギタリストがいるのだということを山口冨士夫ほど体現していた者はいまい。だからその肉体が失われたことへの悲嘆は深く重い。のこされた数多の楽曲のグルーヴをもってしても、この喪失感はしばらく癒えそうにない。(松村正人)


 音楽ファンとは、ある日突然ひとつの曲を好きになると、その曲ばかりを1ヶ月、下手したら数ヶ月聴き続けるものである。アルバムではない。アルバムのなかの1曲が、そのときの自分には最高の音楽となるのだ。
 僕は山口冨士夫の『ひまつぶし』に入っている"おさらば"を繰り返し聴いていた時期がある。人生の根底が揺らぐような、ヘヴィな時期に聴いていた。別れを主題にした曲は星の数ほどあれど、"おさらば"の、日本的なウェット感を寄せ付けない乾き方は、明日からどうやって生きていこうかと考えている日々にぴったりだった。感傷を抱えたまま腹をくくらせる。家で数回聴いて、外に出て、歩きながら口ずさんだものだ。誰にも会いたくないし、誰とも話したくない。やっとおさらばできる。人生とは定住を許さない旅だ。
 山口冨士夫は生まれからして、戦後日本のロックンロールそのものである。僕は、"おさらば"のような寂しさを表現できるブルースマンを他に知らない。死を美化するつもりは毛頭ないが、福生で米国籍の男に突き飛ばされたという話は、しかしそれでも、どうしようもなく思い巡らせるものがある。当たり前のことを言えば、いまだ真っ当な評価のされていない偉人がひとりいなくなった。合掌。(野田努)

Asian Dub Foundation - ele-king

 2011年3月4日、エイジアン・ダブ・ファウンデイションの、前作『ア・ヒストリー・オブ・ナウ』を引っ提げたツアー東京公演で軽くショックな場面を目にした。ギターのチャンドラソニックの発した「チュニジア、エジプト、リビアの市民にリスペクトを!」というMC(その通りのシンプルな英語だった)に対して、渋谷の会場を埋め尽くし、踊り狂っていた聴衆の大半が、きょとんとして反応しなかったのだ。よりによってこんなタイトルのツアーの公演に詰めかけた"ファン"(という言葉の定義を疑うが、それはともかく)が、あのとき地球上の最大の事件だった〈アラブの春〉に関心を示さない景色は、ステイジの上からどう映ったのだろう?(ピース・サインは、こういうときのためにあるはずなのだが)

 活動歴20年を数えるエイジアン・ダブ・ファウンデイションのヴェテラン・サポーターに対しては釈迦に説法だろうが、ADFは言わばひとつの学校のようなものである。そもそも彼らはベンガル(バングラデシュ、インド)・オリジンの恵まれない若者たちに音楽を教える東ロンドンの民間ワークショップ《コミュニティー・ミュージック》を背景に結成された。Dr.ダス(b.)やチャンドラソニック(g.)はそこで演奏を教える側にいたのだが、社会的バリアーによって抑圧されているマイノリティーの若者が同所で演奏技術を学ぶということは、社会に対して自分の意見を表明することと同義だった。そこでの教育とは、〈きみが大衆の前で演奏できるなら、政治的な集会で発言だってできる〉というものだったからだ(つまりその主眼は、社会的弱者として泣き寝入りしないために、音楽を通して社会に意見することを学ぶことにあった)。
 その後ADFは、《コミュニティー・ミュージック》をモデルとして、自分たち独自のネットワークの中に《ADFED(Asian Dub Foundation EDucation)》という、同目的の教育部門を作っている。若者たちに無料で音楽を教え、機材の使い方も手ほどきして自由に使わせ、卒業制作的に録音もでき、その曲は《ADF Sound System》でプレイされたり、実際にそこで作曲者がマイクを握ってオーディエンスに実地披露できたりもする。そういう組織体の前面に、アーティスト名義(バンド)としてのエイジアン・ダブ・ファウンデイションが存在してきたわけだ。
 例えば2000年の『Community Music』を最後に天才肌のMCディーダー・ザマンがグループを去ったあとにやってきたフロント2名:MCスペックスとアクターヴェイター(要するにあの「Fortress Europe」の2人)だって、別のグループのメンバーでありながら《ADFED》カリキュラムに参加した、同制度の最初期の"生徒"だったし、2人はその後《ADF Sound System》を経てADFの"本体"に抜擢されたわけである(その後スペックスは07年にフォーメイションから離れた。アクターヴェイターは一度離れたが再加入:現行メンバー)。

 つまりADFは、南アジア・オリジンの在英エスニック・マイノリティーの視点から、植民地政策、新自由主義経済システム、人種差別、宗教対立などに関する重大な問題にスポットを当て、リスナーを啓蒙し、考えさせるメディアであり、そして、自分たちと同じように音楽を媒体として世の中にプロテストする若者を育てる学校として機能している。そこでの"音楽"とは、社会的弱者のための厳然たる政治手段であり、カリキュラムとしてラヴ・ソングは扱われず、民族主義や権威主義は明確に忌避され、宗教的にもニュートラルであり続けている(今作からレゲエ・シンガーのゲットー・プリーストが戻ってきた現ADFでは、"違う神"を信じるムスリムとラスタファリアンが並んでマイクを握る)。
 そうしたスタンス/ポリシーと、そこから発せられるメッセージの質が厳格であればあるほど、それを高次で中和、かつ補強するための音楽的快楽を必要とする。それが彼らの"エデュテインメント"であり、そのために、バングラ・ビートなどのオリエンタル・ルーツ・ファクター、ブレイク・ビーツ、レゲエ、ラガにジャングル、ハード・パンク、ダブ・ステップ etc. が渾然とする彼らのサウンドがある。そのCDを買ってきて鳴らすことは簡単だが、共鳴することはまた別の話だ。それは、大なり小なり自分で学び、考えることを抜きにしてはあり得ない。
 ......と言うと堅苦しく聞こえるかもしれないが、ちなみにぼくがそのためにやっていることは単純だ。ADFの新作は、毎回必ず日本盤を買い、解説原稿と歌詞対訳を熟読しながら聴き込むのだ(彼らの曲を真に楽しむには、まず彼らのアクションや楽曲の意味を知ることが不可欠。各曲の背景に最初から通じていて、英語の聞き取りに問題のない人なら解説も対訳も不要だろうけれど、ぼくは残念ながらそうではない)。

 常に世界情勢に敏感に反応するADFだけに、今回は2011年のロンドン(とイギリス各地の)暴動や、〈アラブの春〉以降の世界を彼らがどう見ているのかに興味が湧くわけだが、今回も解説や歌詞対訳からいろいろな知識が得られた。大石始さんによる優れた解説原稿には、それらの出来事以外にも(2005年フランス暴動の問題の核心をその10年前に描いていた)マテュー・カソヴィッツ監督のフランス映画『憎しみ(La Haine)』と本作との関係性についても詳述されていて興味深い。ADF2003年の名盤『Enemy of the Enemy』にその名も「La Haine(ラ・エンヌ)」という同映画へのオマージュ曲が入っていたことを思い出して聴き返したり、あの映画が今も変わらずADFと深く通じていることを知って、久しぶりに観返したくなった。こうした発展的な刺激を与えてくれる解説原稿は楽しい。

 訳詞を読んで即、疑問が氷解したのが、アルバム2曲目のタイトル・チューン"The Signal and the Noise"の意味するところだ。先行公開されたPVを観ても漠然としていてよくわからなかったのが、訳詞を調べてピンときた。"the signal and the noise"は通信工学用語で("S/N比"はオーディオ用語としても知られるが)、これはそのまま、アメリカの若き統計学者ネイト・シルヴァーによる2012年のベスト・セラー本のタイトルでもあったのだ。で、ここでの意味は──世界は意味のある信号(有益な、正しい情報)と、ただ思考を惑わすだけのノイズ(ニセ/操作情報)の混交体であり、現象の正確な把握のためにはそれらの見極めが必要だ──という、つまり世に溢れる情報に対する注意を喚起する曲だったのだ。そう思ってPVを観返してみると、(動きを監視されている)白人青年が一体何に翻弄されているのか? ネクタイを締めたADFのメンバーが誰を演じているのか? ビルの屋上に逃れた若者は何を目にするのか? そのすべてがスッキリ理解できる。歌詞も映像もわざと抽象的に作ってあり、こちらに一歩踏み込んで考えさせる、さすがにうまい作りだ(すぐわからなかったオレが愚鈍なだけかもしれないが......)。

 アルバム・オープナー"Zig Zag Nation"は、問題が次々に生じて人びとが対立し、地域や国家の中に新たなジグザグした分断線が引かれていく状況を歌った曲だが、そのサビ部分の歌詞〈ジグザグな時代に生きる/厳しいかもしれないが、直線よりマシだ〉の、最後の部分にもしみじみ考えさせられた。日本でも、原発、憲法改正、米軍基地、歴史認識、多民族共生等々の問題が人々をジグザグに分断している。スッキリ直線的に二分されて両陣営が膠着してしまうより、むしろジグザグの突起部分が相手側に入り込み、刺激し合って対話を絶やさないところから距離を縮め、解決の糸口を探っていくしかない......というメッセージだと解釈したがどうだろう? そうだとすると、この"Zig Zag"という短い響きが含蓄するものは、この地球全体をもすっぽり飲み込んでしまう大きなものだ......。

 "The Signal and the Noise"にも先んじて、今年5月に本アルバムから最初に発表された曲が、アルバム3曲目の"Radio Bubblegum"。このヴィデオはストーリーがわかりやすいが、これも訳詞を読むと相当辛辣な内容であることがさらによくわかる。国が推奨するバブルガム(おこちゃま向け)なラジオ局への批判だが、金と権力を握る者たちがコントロールするラジオ放送とは、連中の金儲けとプロパガンダのためのメディアであり、市民を自分の頭で考えることのできない"おこちゃま(未成熟)"にしておくための装置だ、という曲だ。映像では、どんなものをラジオから流せばリスナーがイカれてしまうか(効率よく国民を"バカ"にできるか)を研究している。
 この曲に関してもう1点特筆すべきことがある。今作ではADF創始者のDr.ダスをはじめ、ドラムズのロッキー・シン、ヴォーカリストのゲットー・プリーストがバンドに正式に戻ってきたことも大きな注目点だが、その新生ADFの最初の曲のヴォーカリストが、わざわざバンド外部からフィーチャーされたLSKだったということだ。本アルバムの総合プロデュースは、『Enemy of the Enemy』以来となるエイドリアン・シャーウッドで、たしかにLSKはシャーウッドのお気に入りの歌手だ。しかしそれ以上に、この起用の仕方がADFという組織体の本質をはっきり示していて、その意味からも、活動20周年を記念する新アルバムのリード曲としてふさわしかったと思う。
 これまでを振り返っても、ADFはインストゥルメンタリストどころか、ディーダー・ザマンにはじまるヴォーカリスト(フロントマン)さえ代替可能な集団だったし、今回のように新生ADFのお披露目の曲にメンバー以外のシンガーを大々的にフィーチャーすることもできる。つまり肝心なのは誰が"メンバー"かではなく、誰が参加しても組織と音楽の性格が不変であることなのであって、それが彼らの政治運動体としての"コミュニティー・ミュージック"の肝なのである。極端な話、誰が入って、抜けて、戻ってもよく、運動体内部にヒエラルキーはなく、無論マイクを握る者に特別な権威を与えることもない。同じ敵に向かうのであれば、誰が声を上げてもいい(The enemy of the enemy / He's a friend)のであって、肝心なのは歌う人格ではなくて、歌われるメッセージだからである。

 と、ここまでいろいろ書いてきたけれど、これでもADFの新作から、ただ単に頭の3曲を紹介したに過ぎない。あとは各自、国内盤CDを買って1曲ごとじっくり取り組んで欲しい。最後まで強烈な、カッコいいアルバムだから。
 しかしこの国内盤......その内容の良さに加え、充実した解説、対訳ばかりかボーナス・トラックまで付いて1,980円というのは普通に考えてちょっと安過ぎる。言っておくけど、ぼくはレコード会社から飼われてはいない。ADFのファンであることを真剣に楽しんでいるだけだ。その点は信用して欲しい。


The Signal And The Noise


Asian Dub Foundation Ft. LSK - Radio Bubblegum

Prrrr... hello!! hello!?... - ele-king

 世界レベルで語られているTOKYOストリート・アイコンSk8ightTingを中心にT.Feltwell、Y.Hishiyamaらで奏でるアパレル・ブランド〈C.E〉と、セレクト・ショップの代表格のひとつ〈ユナイテッドアローズ〉が展開する人気ライン〈BEAUTY&YOUTH〉がオーガナイズするフリー・エントランスなパーティが大阪・心斎橋のONZIEMEにて8/30(金)開催される。

 原宿の格好いいレコ屋さんBIG LOVEからアルバムもリリースし、ele-kingにも何度も登場いただいているSapphire Slowsや、〈C.E〉からはスケシンさんトビーさんがDJとして参加(『ele-king vol.10』の特集を万が一読まれていない方はぜひ読んでファンタジー感アップして出かけましょう!!)。そしてグラフィック・デザイナーとしても広く認知される石黒慶太こと1-DRINKさんに、先日の〈TOTAL FREEDOM〉来日公演でもVJをかましていたBECONクルー(個人的に熱視線ちう)と、TOKYOストリート~ベースメントに乱反射するミラーボールの光が心斎橋に降り注ぐこと必至! 一方で地元大阪からはMobbinHoodのオーガナイズやノイズ・ビート・ダウン・バンドshe luv itにも参加するCE$がDJとして参加する。その存在感からてっきり首都圏にて活動していると思われても不思議ではないCE$とのシンクロニシティを、われわれは必ずや目撃することができるだろう。8月に終わりを告げる最終金曜日、大阪心斎橋。エントランス・フリーでもあるこのパーティはExpress Yourself、21st的に記すとExtreme Yourself、なのだ。


■DIAL: HELP!

LIVE:
Sapphire Slows (100% SILK/Not Not Fun Records/BIG LOVE)

DJ:
Sk8ightTing (C.E)
Toby Feltwell (C.E)
CE$ (she luv it/MobbinHood)
1-DRINK
POOTEE (BACON)

VJ:
BACON

DATE:
2013/08/30/FRI/8:00 PM~

ENTRANCE:
FREE (1 drink purchase required)

PLACE:
ONZIEME
Mido-suji Bldg. 11F 1-4-5 Nishishinsaibashi Chuo-Ku Osaka 542-0086
☎06-6243-0089
https://www.onzi-eme.com/




Luke Wyatt - ele-king

〈PPU〉のスリーヴ・デザインや映像作家として人気のルーク・ワイアットがこれまで使ってきたトーン・ホーク名義のセカンド・アルバムを自身のレーベルから、そして、本人名義のデビュー・アルバムをニック・ナイスリーのレーベルからほぼ同時にリリース。いずれもクラウトロックを基本としたもので、非常にフレッシュな感性を縦横に展開している。リーヌ・ヘルやエメラルズのようにノイズ・ドローンを起源に持つ世代とは明らかに咀嚼の仕方が異なり、ヴェイパーウェイヴのような抜け殻モードでもない。クラウトロック・リヴァイヴァルからコニー・プランク的な人工性を抽出し、しっかりと現在のシーンに定位置を見定めている。

 イーノ&クラスターにクラウス・ディンガーが加わったような『ティーン・ホーク』はこれまでの集大成といえるだろう。シャキシャキとしたパッセージで穏やかなメロディを引き立てるあたりは往年のクラウトロック・マナーそのままにも関わらず、ノスタルジーに回収されてしまう余地は与えず、全体的にシャープでさわやかな感性がキープされる。小刻みに反復されるドローンにも類まれなる抒情性が持ち込まれ、それほど音数は多くないのにイメージの広がりも圧倒的。これが本当にアメリカ人の音楽なのかと思うほど人間不在の自然観が伝わってくる。素晴らしい。

 一転して、メビウス&プランクを思わせる『10・フォー・エッジ・テック』はインダストリアルな要素も上手く取り入れた新機軸。これはフィンランドの海運業者から依頼を受けてつくったものだそうで、タグボートが氷を砕いていくときのBGMだかなんだかに使われるものらしい(ホントかなー)。強迫的なメトロノミック・ビートや全体として与えるシャープでさわやかな感触には変わりがなく、ダンス・ミュージックは意図していないのかもしれないけれど、妙なスウィング感まであって、この暑いのについつい体が動いてしまう(......ゲロゲロ)。

"スリー"

 ミニマルとしても目新しいし(とくに"ナイン")、アンディ・ストットとプラスティックマンが合体したような"シックス"が氷を一気に掻き砕くかと思えば、スーサイドを思わせる"フォー"はそれをじわじわと溶かし、ビート・ダウンした"セヴン"もじつにいい。単にダイナミックなだけではなく、相反するような音響効果を仕掛けることで、激しさのなかにも優しさを持たせてしまうところがこの人のセンスなんだろう。いや、もう、降参です。ルーク・ワイアットという人は、けっこう控えめに言ってもクラウトロックの新たなフォーマットを生み出してしまったのではないだろうか。考えてみればOPNに驚いたのがもう3年前。USアンダーグラウンドはとどまるところを知らず、2013年にはアレックス・グレイ、マシュー・セイジ、そして、このルーク・ワイアットをフロントラインに浮上させてきた。

John Frusciante - ele-king

"はみ出る"ための試行錯誤 文:小野田雄

 ジョン・フルシアンテは、そのキャリアを通じて、「独自の音」を追求し続けてきたアーティストだ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下RHCP)のギタリストとして、そして、ソロ・アーティストとして、はっきりとその「独自の音」を感知できるのは、ギター・サウンドだろう。使用するギターやアンプ、エフェクターの種類やそのプレイ・スタイル、ソングライティグなどの試行錯誤を通じて、一聴した万人に彼の音であることを認識させるサウンド・キャラクターを確立したという一点において、彼の目的はすでに達成されたといえる。

 また、一見すると混沌としているように感じられる作品も彼のなかではチャレンジングなテーマが設けられていて、一時離脱したRHCPに復帰を果たす1999年以降は、ロックの発想やアプローチから離れ、エレクトロニック・ミュージックの発想や制作スタイル、レコーディングにおけるエンジニアリングやプロダクションの知識・経験を自分のものにしようという試行錯誤が重ねられてゆく。たとえば、2004年から2005年にかけてリリースされた6枚の作品は、その直前に制作され、莫大な費用と時間が費やされた『シャドウズ・コライド・ウィズ・ピープル(Shadows Collide With People)』とは真逆のアプローチで、RHCPの活動がはじまるまでの6ヶ月間という短期間に、60年代、70年代のアナログ・レコーディングの技術を用いて6枚の作品を録音するというコンセプトで作られたものだ。それぞれの作品も、アコースティックな『カーテンズ(Curtains)』は60年代後期に作られた8トラック/1インチのテープ・レコーダー、『ザ・ウィル・トゥ・デス(The Will To Death)』と『インサイド・オブ・エンプティネス(Inside Of Emptiness)』は16トラック/2インチのテープ・レコーダーによる録音。また、フガジのイアン・マッケイによるプロデュース、〈ディスコード(Dischord)〉御用達であるインナー・イヤー・スタジオのエンジニア、ドン・ジエンタラの仕事を学ぶために『DC EP』を制作し、『ア・スフィア・イン・ザ・ハート・オブ・サイレンス(A Sphere In The Heart Of Silence)』は、後にジョンの後釜としてRHCPに加入するジョシュ・クリングホッファーとの共同作業で、シンセサイザーやアナログ機器を用いた実験を繰り広げたりと、作品ごとのテーマが設定されていたことは、アメリカの『TAPE OP』誌のインタヴュー記事において、本人と当該作のエンジニアであるライアン・ヒューイットの口から語られている。

 そうしたジョンのアナログ・レコーディング経験を総括した作品が、スタジオそのものをひとつの楽器として捉えて制作された2009年のアルバム『ジ・エンピリアン(The Empyrean)』だ。48トラックのアナログ・レコーダー2台を用いて録音したこの作品は、テープの切り貼りやシンセサイザーをはじめとするアナログ機材で音を加工しながら、現代的なエレクトロニック・ミュージックのサイケデリックな音響やサウンド・テクスチャーの発想を活かしたサイケデリック・ロックを高い完成度で結実させた傑作といえる一枚。そして、この作品でアナログ・レコーディングでの学習に区切りが付いたからこそ、その後の彼はセルフ・エンジニアリングによるデジタル・レコーディングへと劇的な転換を図ったのだろう。昨年リリースされたEP『レター・レファー(Letur-Lefr)』とアルバム『PBX・ファニキュラー・インタグリオ・ゾーン(PBX Funicular Intaglio Zone)』、そして、今回のEP『アウトサイズ(Outsides)』は彼がエレクトロニック・ミュージックやDTMの手法や発想を修得する過程で生み出された習作だ。

 エイフェックス・ツインやオウテカのプロセッシングからインスピレーションを得たり、アシッド・ハウスやドラムンベースの荒削りな部分を補うように耳を傾けてみたり、はたまた、ブレイクコアを代表するアーティストであるヴェネチアン・スネアズことアーロン・ファンクとのセッションを数百時間以上重ねたりすることで刺激された創作意欲は恐ろしい速さで彼にとっての未知なる領域を開拓している。サンプラーやドラムマシン、シーケンサーを複数台同時に走らせ、エレクトロニカ・アーティスト御用達のトラッカー・ソフト、Renoiseを駆使しながら、ロック・バンドの曲作りやレコーディングとは異なるエレクトロニック・ミュージックの発想や制作アプローチを無邪気に学ぶ彼は、しかも、既存の音楽フォーマットに当てはまる、あるいはリスナーを意識した整然とした作品を作るつもりは全くないようだ。というよりも、『レター・レファー』以降の作品から感じられる収まりの悪さは、むしろ、積極的にはみ出してゆくことで何かを得ようという彼の意志の現れと考えるべきだろう。

 本作『アウトサイズ』を幕開ける10分超の長尺曲"Same"にしても、形式的にはブレイクビーツとギターソロを組み合わせた楽曲であるが、彼が曲中で延々と弾きまくるギターはロックのクリシェや手癖から脱却した奏法を模索するべく運指の実験をしているように聞こえるし、リズム・トラックもギターに寄り添うように細かくパターンを変化させており、彼なりの意図があって、制作に相当な時間と労力をかけている。そして、2曲めの"ブレシアックBreathiac"と3曲めの"シェルフ(Shelf)"はともにオーケストラのサンプル・フレーズを用いた連作と思われる楽曲。ドラム・マシーンやイクレディブル・ボンゴ・バンド"アパッチ(Apache)"ほかのドラム・サンプル、アシッド・シークエンス、デルタ・ブルースを思わせるギターや歌の断片などをヒップホップでいうところのメガミックス形式で繋いでおり、彼の意識はサウンドスケープの移ろいに注がれているように思われる。そして、これら3曲ではプリセットを安易に用いるのではなく、モジュラー・シンセサイザーなどを通すことで丁寧に加工されていて、冒頭で述べた通り、この作品においても彼は一聴してジョン・フルシアンテのものであることがわかる独自のサウンド・キャラクターを追求していることは明かだ。

 ただ、問題なのは、筆者のように楽器演奏や機材に明るくないリスナーにとって、それぞれの楽曲で彼が設定したテーマや意図が把握しづらい点にある。さらにリスナーを意識して作品制作を行うこともなく、また、表立ってインタヴューに応えるつもりもない彼の現在のスタンスを考えると、「『レター・レファー』以降の作品は仰々しいオナニーである」という批判は致し方ないだろう。しかし、その一方で制作意図が掴めず、どうにもすっきりしない部分を想像し、補いながら楽しむことができれば、この作品には尽きない魅力があるだろうし、アナログ・レコーディングでの試行錯誤を経て、完成度の高い『ジ・エンピリアン』にたどり着いたように、この先、新たな高みが彼を待っているとしたら、『レター・レファー』以降の習作はその過程を読み解くヒントになるのではないだろうか。そんな推理を働かせつつ、ジョン・フルシアンテの音楽世界は依然としてミステリアスなままだ。


文:小野田雄

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静かな狂気、そしてブルース 文:天野龍太郎

 ジョン・フルシアンテが昨年リリースしたEP『レター・レファー』とそれに続くフル・アルバム『PBX・ファニキュラー・インタグリオ・ゾーン』は、アナログ・シンセの温かくも物悲しい響き、ドラム・マシンないしサンプリングによるせわしないブレイクビーツ、美しいコーラス・ワークで彩られたヴォーカル、そしてロック・ギターの過去と未来をいびつに接ぎ合わせたような変幻自在のギター・サウンドによって構成された異形の作品であった。
 ジョンの最新EP『アウトサイズ』のサウンドは、その延長線上にある。とはいえ、音楽のカタチはより抽象的になり、音と音との間には隙間が生まれてルーズな感覚が滑り込み、エクスペリメンタルな方法論はいちだんと深化している。なにより『アウトサイズ』にはジョンのヴォーカルがほとんどない。『PBX』において中心のひとつを占めていたヴォーカリゼーションはすっかり鳴りを潜め、最終曲"シェルフ"の最後の1分間になってやっと添え物のような歌声が聴けるほどだ。それゆえに、酩酊するわけでも逃避するわけでもなく、ただただ前を見据えるかのような静かな狂気がこのEPには凝集しているように思える。

 10分にも及ぶ"セイム"は、バタバタと落ち着かないドラム・パターン上で途切れることのないギター・ソロが演奏される楽曲で、まさにそういった平静さを保った狂気によって駆動しているかのような異様な緊張感を纏っている。『ジ・エンピリアン』(2009)の"イナフ・オブ・ミー"のソロを拡張したかのようなギター・プレイは、ただひたすらにずるずると引きずって蛇行するようなトーンの軌跡を聴き手に突きつけている。曲が進むにつれモジュレーションによる音の揺らぎが次第にキツくなっていき、ギター・サウンドの変調が頂点に達すると、永遠に続くかに思われた奇妙なギター・ソロはあっけなく幕を閉じる。
 オフィシャル・サイトに掲載されたジョン・フルシアンテ自身による説明によれば、"セイム"は「わたしのプレイを聴いてそれに反応しながらも、同時にわたしが応えられるような確実なアンカーを、通常なら存在する時間差なしに提供してくれる」理想のドラマーによる演奏とギターとの相互作用によるインプロヴィゼーションである。現実的には不可能なこの演奏を実現するため、リピートする2小節のビートに対してギターを演奏したのち、ギター・ソロに対応するようにビートをチョップした、と彼は書いている。それはつまり、『PBX』において掲げた「マシンの知能と人間の知能が刺激し合って、その相互作用によって生まれる音楽」へのさらなる漸近を目指す実験のひとつなのだろう。
 そうなるとこの『アウトサイズ』という作品がなぜ「歌っていない」のか、ひとつ仮説が立てられる。つまり、あまりにも人間的な歌というものを禁欲的なまでに排除することによって、マシンと人間とをより近くへと引き合わせ、その境界を曖昧化しようと試みているのではないのだろうか。

 2曲目の"ブレシアック"は3分にも満たない小曲で、サンプリングとプログラミングによるビートが継ぎ接ぎされた本作中最もアブストラクトな曲だ。次の"シェルフ"はよりファンキーではあるが同様にせわしなくビート・パターンが変化し、両曲ともにフリー・ジャズのドラムを素材としたビートが多く聴こえてくる。『PBX』における大きなトピックだったドラムン・ベースの導入は、この"ブレシアック"や"シェルフ"、あるいは『PBX』収録の"サム(Sam)"のフリー・ジャズ風のビートと突きあわせて聴くとそれほど唐突には聴こえない。おそらくジョンのなかではフリー・ジャズのビートとドラムン・ベースは一本の線で繋がっているのだろう。その間隙を埋めるのが、ファンクであり、アシッド・ハウスであり、ヒップホップのビートなのである。

 しかしながら『アウトサイズ』を一聴して直感したのは、これはジョンにとってのブルースである、ということだった。それはやはり"セイム"の長大なギター・ソロに依るところが大きい。歌はなくとも......やはりギターが泣いているように聴こえるのだ。それは"シェルフ"の中間部のソロも同様である。キリキリとした鋭利なトーンではあるが、そこにはブルージーな哀感が潜んでいる(「驚いたことにブルース・ギターがうまくハマったんだ」と彼は認めている)。
 ジョン・フルシアンテ自身が「プログレッシヴ・シンセ・ポップ」と呼ぼうが、「現代音楽のわたしのヴァージョン」と説明しようが、この『アウトサイズ』というEPは、いびつな形ではあるがブルースというひとつの軸で貫かれている。そう思えてならない。


文:天野龍太郎


SEIHOU
Abstraktsex

DAY TRIPPER

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 勢いが止まらない! そして夏休みは終らない! 先月インタヴューにてele-kingにも登場してもらったSeihoのセカンド・アルバム、『ABSTRAKTSEX』リリース・パーティーがすごいぞ。ゲストにはUltrademonが参加! Seapunkがモニターを飛び出す! 迎えうつゲスト勢も、tomadからAvec Avecら盟友がズラリと一同に会した豪華な布陣。いま彼らのまわりに何が起こっているのか、目撃するチャンスは今日&明日。今年最高の「陸の海」へと、さあ、繰り出そう!


いよいよ今週! トロピカルなモチーフでファッションのトレンドにもなった10年代のネット/ユース・カルチャーを象徴する #Seapunk のオリジネーター Ultrademonが遂に日本へ初上陸!東京公演では新世代ビートメーカーの旗手Seihoのセカンド・アルバム『ABSTRAKTSEX』のリリパにゲスト出演!!

【Ultrademon Japan Tour 2013】

■8.16 (FRI) @ Circus Osaka with idlemoments
OPEN/START 18:00
ADV 1,500 yen / Door 2,000 yen (+1drink)

LINE UP:
Ultrademon
gigandect
Avec Avec
Terror Fingers (okadada+keita kawakami)
SEKITOVA
eadonmm
doopiio
kibayasi
Alice
?
VJ:
Tatsuya Fujimoto

FOOD:
カレー屋台村山ねこ

more info: https://idlemoments-jp.com

■8.17 (SAT) @ UNIT with Seiho ABSTRAKTSEX Release Party
OPEN/START 23:00 | ADV 3,000yen / DOOR 3,500yen

LINE UP:
[UNIT]
Seiho
Ultrademon
LUVRAW & BTB + Mr.MELODY
RLP
Taquwami
terror fingers (okadada & Keita Kawakami)
tomad
eadonmm

VJ:
ネオカンサイ
Kazuya Ito as toi whakairo

[SALOON]
Licaxxx
Redcompass
Mismi
Hercelot
FRUITY
andrew/Eiji Ando

more info: https://www.unit-tokyo.com


 新世代のラッパーたちよる9つのインタヴューを収録した、巻紗葉『街のものがたり』(ele-king books)が、このたびスタートする音楽トーク・イヴェント・シリーズ〈Songs in The Bookshelf [本棚の音楽]〉第一回で取り上げられることになりました! 当日は著者・巻紗葉(ロールシャッハ)も参加。切れ味するどいゲスト・スピーカー、三田格&矢野利裕両氏との会話のなかで、きっとこの本の新たな魅力が発見されるはずです!

ジュンク堂書店池袋本店で今週末から開催の「編集者が選ぶ本フェア」にはele-kingからも野田・橋元師弟コンビが選書に参加していますが、このフェアはもともと「(写真メインのものではなく)テキストを主体とした批評色の強い音楽雑誌やカルチャー書が売れている」という書店の現場での実感がもとになっています。

そんな状況を鑑みてele-kingにも時折寄稿している音楽書編集者の大久保が、音楽書の新刊を取り上げるイヴェントを立ち上げることになりました。単に本を紹介するだけでなく、本の中で扱われている音源を聴き、また関連する他の書籍なども取り上げながら、著者や識者を招いてお話を聞き、内容を掘り下げつつ、音楽を言葉で語ることの意味、音楽書の面白さと可能性に迫っていきたいと思っています。

第一回として取り上げるのはele-king booksより『街のものがたり』。ここに登場するラッパーたちはそれぞれに強い主張と思慮深さを併せ持った面々が並んでいます。そして黒子として彼らの言葉を引き出すことに徹したこの謎めいた著者は何を思ったのか。

ゲスト・スピーカーとしては矢野利裕さんと三田格さんをお招きしました。今年大谷能生氏・速水健朗氏とともにジャニーズについて考察した『ジャニ研!』を世に問うたのも記憶に新しい矢野さんは、独自に様々なラップ・ミュージックを継続的にチェックしてきたこともあり、また違った日本語ラップ観を持っているはずです。
三田さんはそこまでディープに最近の日本語ラップを追っておられないかもしれませんが、むしろこの本はそういう人にこそ読んでほしい本でもあるし、また日本におけるクラブ・ミュージックの受容をずっと見てきた方ならではの視点があるでしょう。

当日はほかにもここ最近のヒップホップ/日本語ラップ関連書を取り上げて紹介します。会場は壇上と客席の距離がとても近い店なので、来場の方もお気軽にご意見・ご質問いただければと思います。

■Songs in The Bookshelf [本棚の音楽]#1
「文化系のための"日本語"ラップ入門」
『街のものがたり ―新世代ラッパーたちの証言―』をめぐって

https://boutreview.shop-pro.jp/?pid=62135018

[出演] 巻紗葉、矢野利裕、三田格、大久保潤
[日時] 2013年8月19日(月) 開場・19:00 開始・19:30
[会場] Live Wire Biri-Biri酒場 新宿
     東京都新宿区新宿5丁目11-23 八千代ビル2F
    ・都営新宿線「新宿3丁目」駅 C6~8出口から徒歩5分
    ・丸ノ内線・副都心線「新宿3丁目」駅 B2出口から徒歩8分
    ・JR線「新宿」駅 東口から徒歩12分
[料金] 1500円 (当日券500円up)

※終演後に出演者を交えてのフリーフード&フリードリンクの懇親会を開催します。参加費は2800円です(当日参加は3000円)。懇親会参加者には、入場時にウェルカムの1ドリンクをプレゼント。参加希望の方はオプションの「懇親会」の項目を「参加する」に変更してお申し込みください。参加費も一緒にお支払いただきます。
※懇親会に参加されない方は、当日別途ドリンクチャージ1000円(2ドリンク)をお買い上げください。
※領収書をご希望の方は、オプションの「領収書」の項目を「発行する」に変更してお申し込みください。当日会場で発行いたします。
※ご注文者には整理番号をメールでご連絡します。
 お申し込み時に住所をご記入いただきますが、チケットの送付はいたしません。
 当日会場受付にて、名前、電話番号、整理番号をお伝えいただければ入場できます。
※満席の場合は、立ち見をお願いいたします。
※お支払い後のキャンセルは一切受け付けませんのでご注意ください。
※銀行振り込み決済の締め切りは8/16(金)午後3時、カード決済の締め切りは当日午前0時です。

■街のものがたり
著者:巻紗葉
判型:四六判/256ページ
価格:税抜き1900円
発売日:2013年6月28日
ISBN:978-4-907276-01-0

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FUSHIMING 1st 12"EP "HEAVY MOON EP"が、HOLE AND HOLLANDから7月24日に発売されます。
ALTZ氏、KZA氏、INNER SCIENCE氏、SANDNORM氏がすでにプレイしています。コメントもALTZ氏、高木壮太氏、KZA氏、箭内健一氏から頂いてますので下記ホーランドのWEBにてCHECKしてみて下さい。

https://www.hole-and-holland.com
https://soundcloud.com/hole-and-holland
https://www.jetsetrecords.net/FUSHIMING-HEAVY-MOON-EP/p/724004639262

最近頻度の高い12インチシングルを選びました。


1
Thompson Twins - In The Name Love 12"Dance Extension - Arista

2
Venus Dodson - Where Are We Headed - WB/RFC

3
Sebastien Tellier - Broadway - Lucky Number Music

4
Azymuth - Ta Nessa Ainda Bicho_(Zed Bias 4×4 Remix) - Far Out

5
Blackjoy - Moustache - Yellow

6
Popnoname - Surrounded By Weather Remixes B1 - Italic

7
Torch Song - Prepare To Energize12" - I.R.S

8
Trussel - Gone For The Weekend - Elektra

9
Fernando - Endless Disco - Redux

10
Rharaohs - Island Time 12" - Spinning Wheel
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