「Nothing」と一致するもの

interview with SHO (Plasticzooms) - ele-king


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 プラスティックズームスのフロントマン、SHOには大きな借りがある。出会いは2010年。大学を中退したばかりの僕は、気分を晴らすためにますます音楽に没頭していた。失ったものの穴を埋めるために必死だったし、いろんなライヴハウスに通った。しかし、やりたいことは定まらず、時間だけが過ぎていった。ライヴハウスに知り合いはいなかったし、常に不安で、孤独だった。
 そんなときに唯一話しかけてくれたのがプラスティックズームスのSHOだった。スタイル・バンド・トーキョーのイヴェントでDJを終えた彼に、僕は自分がライヴ・イヴェントをやりたいことや音楽に関わりたい気持ちなどを素直に話した。彼は純粋な笑顔で、僕に「絶対に出来るよ。なんでも力になるし、僕でよければ手伝うからさ」と言ってくれた。
 あれから3年が経った。僕は去年、初めて自分のイヴェントを開いた。少しずつだが音楽の現場に関わる機会も増えてきた。そして今回は、取材という形で、SHOへの感謝を伝える機会も得た
 3枚目のニュー・アルバム、『クリティカル・ファクター』がリリースされる。レーベルは七尾旅人や前野健太、やけのはらや快速東京などのリリースで知られる〈フェリシティ〉。
 プラスティックズームスのダークウェイブを参照したスタイリッシュでアグレッシヴなサウンドは、ボー・ニンゲンやサヴェージズとも通じるところがある。いまっぽい音なのだ。が、とはいえ、このバンドにはロマン主義があって、それは、1枚目のアルバム『チャーム』の頃から、SHOの優しさのように変わらない。

 高校時代、僕は教師にどうして髮を染めてはいけないのかきちんと説明して欲しいと詰め寄ったことがある。教師は「それが決りだから」とだけ言い残して、教室から出て行った......そして僕はジョイ・ディヴィジョンの『アンノウン・プレジャー』をTシャツを着るようになった。
 ゴシックは、たとえば19世紀末、西欧が近代化を果たしたときに盛り上がっている。電気と機械が生活のなかで普及し、店の照明や街灯によって夜でも世界は明るくなった。そうした変化に違和感を覚えた人は、暗闇や不合理な世界のほうを向いた。ゴシックは、新しい技術や明るさの氾濫のなかで息詰まる人たちの逃げ場だった。ポストパンク時代にゴシックが流行ったことも、インターネットと明るさに翻弄されている現代にゴスの妖しい炎が燃えることも理解しがたい話ではない。ファッショは、マルコム・マクラレンが言うように、つまはじき者たちが変身するための術なのだ。真っ黒な服装に身を包んで、取材場所にもばっちりメイクをして登場したSHOに、彼のゴシック精神について訊いた。

いやもうボコボコだし、ヤンキーのバイクに敷かれたりしましたね(笑)。そういうのは余裕でありました。自分が好きなファッションをしたりパンクを聴くっていうのはある種自分を守ることでもあったんです。

えー、なぜいまゴスなのかっていうところからお話を伺いたいんですけども。

SHO:なるほど、そこですか。

野田:僕なんかはゴス、リアル・タイムだったんだけど、かれこれ30年も昔の話で、だからなんでいまゴスなの? 僕もそこがすごく気になるんですよね。

SHO:はじまりはゴスじゃなくって70's パンクだったんですけどね。中学のときに70's パンクに触れて、80'sハード・コアだったり、ニューウェイヴにハマってゴシックにたどり着きました。でもいまはゴシックも通り越したと僕は思ってます。
 ファッションに関してはそのトータルが黒に繋がったっていう感じです。実際その質問よくされるんですけど、ゴシックのあの雰囲気が自分の性格に合うんです。ファッションにしてもデザイン性が高いし、そういう繊細な部分が自分にフィットするんですよね。

どういうきっかけで70's パンクに出会ったんですか?

SHO:これに関しては親ですね。僕の親がレコードで、ビートルズとかキンクスとかプレスリーなど、いわゆるオールディーズと呼ばれるものもよく家で流れていたんです。他にもクラシックだったりジャズだったり。その反発でもないんですけど、小学生のときにバスケットボールをやってた影響で80~90年代のヒップホップを聴きはじめたんです。で、それのまた反発でパンクに目覚めました(笑)。

一同:(笑)。

野田:でも、オッド・フューチャーとかも、ちょっとゴスっぽいしな。

ちなみにヒップ・ホップってなにを聴かれてたんですか?

SHO:なんでも聴いてましたよ。ランDMCも聴いたし、ビースティー・ボーイズとか。バスケットボールの選手とかがラップをやってたりもしたんで、シャキール・オニールとか。

サウンドもスタイルも全然違うじゃないですか?

SHO:全っ然違う。

パンクに関してはどこにいちばん魅力を感じましたか? サウンドですか? スタイルですか?

SHO:どっちもですね。

野田:いちばん好きなバンドってなんですか?

SHO:うーん、いちばん好きなのか......

野田:じゃあ3つで(笑)。

SHO:えっと、バズコックス、あとは......、たくさんいるんだよなー(笑)

野田:バズコックスはどの時代が好き? ピート・シェリー? それともハワード・デヴォード?

SHO:『シングルズ・ゴーイング・ステディ』が好きで。ピート・シェリーも好きなんですけど、"テレフォン・オペレーター"が特別好きって感じです。ネオン・ハーツとかザ・マッドとかも好きですね。ザ・マッドはスクリーミンング・マッド・ジョージっていうニューヨークで特殊メイクやってる人がやってたバンドなんですけど。でも、音楽とファッションを一緒に考えるきっかけを与えてくれたのはセックス・ピストルズ。マルコム・マクラレンの仕掛けかたとか。ヤバいなと思いました。

野田:ピストルズっていろんなものが詰め込まれていたからね......。彼らのなかで、いちばんピンときたファッションってなに?

SHO:デストロイのガーゼ・シャツですね。基本的に76年のセディショナリーズが好きです。

それって何年の話ですか?

SHO:何年だろ? 中1だから......

野田:完全に変な人だよね。

SHO:僕それで町追い出されたんですよ。

野田:それは追い出す町が間違ってるよ。

SHO:町で問題になってるって母親から聞かされたときはびっくりしましたね。子供に悪影響だからって理由で追い出されたんですよ。

野田:どこですか?

SHO:水戸の下のほうの町です。中学のときはずっとそういう格好をしてましたね。でも高校は転入して通信行ってたので服装も自由だったんでやりたい放題やってました。安全ピンたくさんつけたり、メイクもして。キャット・ウーマンの髪型したり。西暦でいったら2000年の頃とかですかね。

友だちはいました?

SHO:中学の頃はほぼいないです。ひとり暮らしをはじめてからは水戸のパンク軍団と知り合いましたけれど。でもそんな友だちのこと考えたことないです。実際、つい2~3年まえまで誰も信用してませんでしたからね。
 自分は独りで死んでいくんだって思ってました。作るっていう作業を死ぬ準備だと思ってましたね。やっぱり作品を作っていくと同時にいろんな人が集まってくるじゃないですか、自分を必要としてくれる人だったり。でも僕は必要としてくれるっていうところに意識がなかなかいかなくて、むしろそこに偽善みたいなものを見いだしてしまっていたんですけど、今回のアルバムは初めてそこがクリアになった状態で作れた作品なんです。

野田:音楽性なんかは全然違うけど、アウサイダーっていう点では、君は下津君(踊ってばかりの国)のゴシック・ヴァージョンだね!

SHO:ああ!

野田:そんなの格好で地元を歩いてたらオラオラ系とかヤンキーに絡まれたでしょ?

SHO:いやもうボコボコだし、ヤンキーのバイクに敷かれたりしましたね(笑)。そういうのは余裕でありました。

でもそんなことされて、なおさらそこにとどまることって難しいですよね?

SHO:自分が好きなファッションをしたりパンクを聴くっていうのはある種自分を守ることでもあったんです。僕、自分にジンクスを作る癖があったんですよ。とにかくこうじゃないとダメとか、自分はこれじゃないと自分じゃないみたいなものを作りやすい人間だったんで、たぶんそれが自分を変えない理由で、ここまでこういう風にきた理由なんだと思います。でもひとりで追求するのが好きだったんで、レコード掘ったり、画を描いたりしてました。でもそれはいまも変わらないかな。

ずっと洋楽を聴かれていたんですか?

SHO:ずっと洋楽なんですよね。スーパーとかでかかってたJ-POPとかは自然に耳に入って来てしまいますけれど(笑)。

日本でいま自分たちと似てるなぁと思ったり、なにかしらシンパシーを感じるバンドっていますか?

SHO:ザ・ノーヴェンバーズとリリーズ・アンド・リメインズですね。あとはもう解散してしまったんですけどサイサリアサイサリスサイケとか。あとパープル。サイサリアサイサリスサイケのトオル君とかはいまでも注目してます。あとボー・ニンゲン。ボー・ニンゲンのメンバーもかっこいいなと思います。それこそさっき名前が出た踊ってばかりの国の下津君だったりとかね。

いま挙げてくださった人たちのどういう部分にいちばん惹かれますか?

SHO:まっすぐなところ。そこでしかないです。自分もそうでしかないと思っているし、見ためというよりはその人の目、ですね。僕絶対に人の目を見るようにしてるんですけど、実際ファッションってごまかせるじゃないですか、でもファッショに見合う目をしてたらそれは本物だと思うし、それに似合う音楽をやって、トータルでバランスをとれてる人に魅力を感じるし、僕はそういう人が好きです。いま挙げた人たちは全員そういう人たちだと思います。日本人にはあんまりいないなって思いますけどね。僕そういう意味で安全地帯とかすごい好きですけどね(笑)。

野田:いまのは聞かなかったことにしとこう(笑)。

一同:(笑)

SHO:初めて聴いたときとか超ニューウェイヴじゃん! って思いましたけどね。あとウィンクとか、カイリー・ミノーグのカヴァーですし。リリーズのケント君とそういう会話良くします。

野田:日本の音楽が聴けないんじゃなくて、日本の文化のある部分がすごい嫌で遠ざけてしまうみたいな感じはわかるけどね。自分もそうだったから。

SHO:いまは理解していますよ。プラスティックズームスが英詞な理由なんかも日本人のコンプレックスとかじゃなくて、ただ自分が作った曲に合うのが英語だっただけで、とくにそこに理由なんてないんです。

これから作っていく曲で、日本語に合うサウンドが出来たら詞は日本語っていう場合もありますか?

SHO:かもしれないですね。僕やっぱりほとんどのJ-POPはかっこいいと思えないし、かっこいいと思えるもの以外はやらないですけどね。

野田:だけど、白い人たちの多くはこういうことを言うのね、「黄色い人がロックな服装で英語で歌うのだけはやめてくれ」って。俺らが歌舞伎をやってたらお前らもおかしいと思うだろ? って。そういうことを言われても英語で歌う?

SHO:歌う。僕の価値観でいうと、逆に外人が歌舞伎やってたら美しいと思うもん。

野田:それはいい見解だね(笑)。

SHO:僕は黒人が歌舞伎やってても美しいと思いますけどね。それがたとえ下手でも、その人が好きな気持ちを表現したいものであれば美しいと思います。まぁでもそれをお金とか汚い誘惑のためにやったらダメですけどね。

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実は僕ビーナス・エキセントリックっていうブランドを持ってるんですけど、テーマがブリクサなんですよ。僕、ニック・ケイヴも好きだし、バースデイ・パーティのギターのローランド・S・ハワードも大好きです。スージー・スーとかはファッション的にも影響受けてますね。


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プラスティックズームスとしては、リスナーにどんなことを提示したいですか?

SHO:これは最近ようやく人と交わるなかで見つけたことなんですけど、とにかく自分を持って欲しいなって思います。自分が良いって思えばそれでいいじゃんっていう。日本人は流されやすすぎると思うんです。

流されるっていうのは具体的にどういうことですか?

SHO:誰かがやったからやる、だったり、誰かが良いって言ってたから良い、みたいな。自分で確認はしたの? っていう。そこを明確に生きて欲しいですけどね。僕はプラスティックズームスをパイオニアだと思ってて、音楽とファッションを同列で捉えてこんなことやってる人って実際いないから。まぁでも実際ものすごく孤独ですけどね(笑)。

SHOさんにとってのファッションっていうものを言葉で説明するとしたらそれはなんですか?

SHO:僕です(笑)。

一同:(笑)。

野田:電車とか乗ってたらみんなから見られるでしょ?

SHO:もうすごいですよ。だからいつもサングラスしてるんです。絡まれるので。実はこの下にもメイクしてるんですけどね(サングラスを外してメイクを見せる)

野田:ああ、本当だ!

SHO:出かけるときは必ずメイクしますね。

野田:70年代や80年代って、いまだったら白い目で見られるようなファッション、みんな平気でしていたけど、最近は、バンドやってる子も当たり障りのないファッションをしてるからね。目立っちゃいけないみたいなね。その点、ゴスやコスプレとか、がんばってるよ(笑)。めちゃくちゃ気合いの入ったB-BOYとかね。

SHO:かっこいいし、すごいって思いますよね。それこそボー・ニンゲンのメンバー全員を見たときに「マジでかっこいいな!!」って思いましたからね!

ハハハハ。

SHO:だって普通じゃ考えられない髮の長さじゃないですか。 だから逆にヴィジュアル系とかって言われると本当に嫌ですけどね。そう見えてしまう意味がわからない。最悪な気分です。

野田:ヴィジュアル系もあの姿のままで街を歩いてるんだったらかっこいいと思うんんだけどな。

SHO:でも基本的に違いますよ(笑)。普段ギャル男みたいな人多いじゃないですか。

野田:SHO君はゴスだったら何がいちばん好き?

SHO:実は僕ビーナス・エキセントリックっていうブランドを持ってるんですけど、テーマがブリクサなんですよ(アイテムを見せる)。

野田:ブリクサって、若い頃、ほとんどアイドルだったんだよ。女の子が「キャー! ブリクサ!」みたいな感じで。

SHO:イケメンすぎますよね。僕、ニック・ケイヴも好きだし、バースデイ・パーティのギターのローランド・S・ハワードも大好きです。スージー・スーとかはファッション的にも影響受けてますね。

最近ではサヴェージズも好きなんですよね?

SHO:大好き! 7インチが出たときすぐにファイル・アンダー(名古屋のレコード・ショップ)に連絡しましたもん! それ、ちなみにいま額に入れて部屋に飾ってます(笑)。IPSO FACTOと並べて。

最近聴いたバンドのなかでいちばんのお気に入りってなんですか?

SHO:なんだろうなぁ~......。

野田:遮ってごめん。ねぇマリリン・マンソンはどう?

SHO:嫌い。

野田:なんで?

SHO:嘘くさい。

野田:『シザー・ハンズ』は好きでしょ?

SHO:大好き! 観ると絶対泣いちゃいます。

野田:あれは誰でも泣くよ(笑)。

SHO:最初のシーンからやばいですもん!

野田:ウィノナ・ライダーが『ビートル・ジュース』で黒い服で出てくるじゃない? あれなんかまさにゴスだよね。

SHO:僕あれに憧れて女優帽被ってます。『キス』っていう漫画知ってます?

野田:ごめん、それは知らないな。

SHO:楠本まきさんっていう漫画家さんが描いてらっしゃる漫画なんですけど、男の子がストロベリー・スウィッチブレイドみたいな格好してるし(漫画をみせる)、キュアーとかが漫画のなかでかかってるんですよ。このあいだこの漫画のヴィデオを手に入れたんですけど、割礼とかさかなが音楽を担当してたり本当にすごいんですよ!

野田:ホントにストロベリー・スウィッチブレイドだ(笑)!

SHO:この漫画に出てくるバンドの名前でこのまえイヴェントを開いたんですが、そしたら作家の楠本まきさんとコンタクトがとれて。感動です。

今日、SHOさんの話を聞いていろんな経験をされてることを初めて知りました。このインタヴューを読む人のなかに、同じとまでは言いませんが、似たような境遇のなかを生きてる人もいるかもしれません。そんな人にこの場を借りて言いたいことなどがあれば是非お願いします。

SHO:生きてるってことは独りじゃないってことですね。あと自分から外に出ること、それと......

野田:...... ねぇ、また遮ってしまって申し訳ないんだけど、ボーイ・ジョージは好き?

SHO:あ、はい(笑)

野田:キュアーは?

SHO:大好き。

野田:ゴスじゃないんだけど、アソシエイツは?

SHO:それは知りません。

野田:聴いたほうがいい。

SHO:帰ったらすぐ聴きます!

野田:えっとごめん、続きをどうぞ(笑)。

SHO:はい(笑)。これは自分への言葉でもあるんですけど、逃げちゃだめで、とにかく自分の道を自分で切り開く勇気を持つことですね。勇気を持つには努力が必要ですよね。努力を惜しまないことが重要だと思います。絶対逃げちゃ駄目です。

新しいアルバム『クリティカル・ファクター』のサウンドにも、SHOさんの堅固な"ブレない姿勢"みたいなものを感じたのですが、実際に、今作はどんなところにいちばんフォーカスしましたか?

SHO:感情的っていうところをとにかく意識しました。ありのままの自分を音に落とし込んだり、それはリリックもそうなんですけど、実際、こんなに感情的になった作品はないです。理性よりも本能で作りました。

5曲めの"SAKURA"と、7曲めの"AV△W"が所謂インストですが、それはそうした曲作りからの影響だったりしますか?

SHO:僕は歌だと思って出来上がりをレーベルに持ってたんですけど、インストですか? って言われて、そこではじめて気がつきました(笑)。このふたつはいろんなバランスを考えて入れましたね。全部言葉だと疲れちゃうんで。

もちろん全部の曲に思い入れがあると思いますが、今作における、SHOさんが思う重要な曲をひとつだけ選ぶとしたらそれはなんですか?

SHO:"PARADE"ですかね。

それはどうしてですか?

SHO:PLASTICZOOMSの今後に繋がる曲だからです。作ったときの達成感もコレ迄でいちばん大きかったです。あともうひとつ、"CRACK"っていう曲もかな。これは自分で抱えてたジンクスみたいなものを全て取っ払えた曲なので。無になれたというか、この曲が出来てすべてがクリアになった気がします。

アルバムのタイトルにはどんな意味を込めましたか?

SHO:喜怒哀楽ですかね。それがもっとも重要な要素です。

今後試してみたいサウンドとか、やってみたいことって具体的にありますか?

SHO:サウンドはいまも今後も自分を越えて進化していくと思います。音楽の他には画を描いたり、映像を撮ったりとかいろいろですね。実は"PARADE""CRACK"のMVは僕が編集したんです。

SHOさんにとって音楽はひとつの表現で、他との差みたいなものってありますか?

SHO:ありませんね。全部同じ。僕はとにかく頭のなかにあるものを外に出して表現したいんです。自分が出来ることすべてで自分が生きてるってことを表現したいですね。

野田:普通の仕事とかってしたことあります?

SHO:高校生の頃は早朝のファミレスで働いてました。あとお花屋さん。理由は髮の色を明るくてもよかったからと店の前にレコード屋さんがあったから(笑)。東京に来てからは専門学校に入ったり、バンドをはじめたりでやってないんですけど。そもそもプラスティックズームスを結成したきっかけが、ANNA SUIが学校に来て、「自分がいちばん得意なことを仕事にしろ」って話たんです。その言葉に感銘を受けましたね。

バンドを続けるのも大変じゃないですか?

SHO:大変です。バンドは大変なんだなってつくづく思いました(笑)。

野田:昔の自分みたいな子たちがライヴに集まってきたりしますか?

SHO:ライヴに来た子で僕を見てバンドをはじめたって子がいたんです。凄く嬉しかったです。ファッションに関しては、女の子が真似てくれているのかなって感じはします。自分にもそういうアイコンがいたんで素直に嬉しいですよね。ジョニー・ロットンとかスージー・スーとか。

野田:SHO君に集まってくる子とかけっこうな異端児でしょう?

SHO:だと思います。だからなんか似てると思うし、繋がりみたいなものをすごく感じますけどね。メンバーもスタッフも。

野田:80年代は流行だったからみんな黒かったけど、いまは違うからね。黒い人は珍しいじゃない。

SHO:もう宿命ですよね。体験したかったですけどね、80年代!

野田:いや、そんな良いものでもないよ(笑)。だいたい、いまゴスやってるほうがよほど勇気いるでしょう。がんばってね。

SHO:はい、サブカルで終わらせないようにがんばります。

野田:ハハハハ。

(このあたりで、菊地、SHOとの間の思い出が蘇り、感極まって、涙腺ゆるんでしまう)

SHO:大丈夫?

......は、はい......

野田:なんか、いろいろ思い出しちゃったんだね。

昔、すごく励まされたことがあって......この場をお借りしてSHO君にあのときのお礼を言いたいんです。あのときSHO君が声を掛けてくれて僕本当に救われました。今日こうしてお会い出来たことが本当に嬉しいです...。

SHO:僕も嬉しいよ。インタヴュアーが決まったとき「やった!」って思ったし、あのとき話したこととかちゃんと覚えてるよ。お互いとにかく必死だったもんね。こういう瞬間はさっきの話じゃないけど、生きててよかったって思える。今日は本当にありがとうね。

こちらこそありがとうございました......

野田:なんか、いろいろあったんだね。

SHO:そうなんですよね......

なんか急にすいませんでした。では、最後に、SHOさんの最大の目標をお聞かせください。

SHO:自分がやってることを世界に発信して、とにかくそれを受け入れてくれる人を増やすってことですね。だからこそまずは日本から。僕は日本で暮らしているので。

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 友人の友人にタイムトリップができるという人がいる。なんでも、気づけば戦国時代にいたりすることがあるそうだ。小学校のころのクラスメイトは、昨日じいちゃんが雷をつかまえて、それがいま冷蔵庫に入っていると言っていた。こちらはかわいらしい。キャンディ・クロウズのソング・ライター、ライアン・ホヴァーは自らが「2013年にバンドをやっている夢を見ている白亜紀の恐竜」であると述べている。ふたりに負けず劣らず、なかなか気がきいていると思う。
 彼はつめたいドリーマーだ。この恐竜発言と彼らの作品の裏には、ただ突飛で不思議な発想だと評するには周到すぎる設定がある。2枚めとなるアルバム『セレス・アンド・カリプソ・イン・ザ・ディープ・タイム』は、骨と雪でできた小さなアザラシのセレスと、少女カリプソとの中世代の旅を描く作品。そこは恐竜たちが闊歩する世界であり、シダの下には人も眠るというファンタジックな場所である。古生物学者Hans-Dieter Suesの著書『ブラッド・アーク』から着想を得たといい、同書からそのイメージのもととなった箇所をいくつも挙げている。バンド・メンバーもこの世界においてそれぞれ役柄を担っており、ホヴァーは恐竜であると同時に「深い時間(ディープ・タイム)」でもある。
 こうしたことが明かされると、彼らの音がどんどん解けていく。アニマル・コレクティヴを瓶のなかで熟成させたようなドリーミー・サイケ。それが今作でノイジーなシューゲイズ色を強めているのは、この「ディープ・タイム」というアイディアの引力によるものではないかと思う。音が理屈で分節できないということはない......というか、ホヴァーの想像力のなかには、ぶっ飛んでいるようでいてじつは緻密で繊細な構築性がある。「つめたいドリーマー」だというのはそういう意味だ。深い時間というのは、現実の世界をうつろうさまざまな事象に対する深い距離でもあるだろう。ホヴァーの音楽はそれを切なくなるほど美しく描き出している。

 マイ・ブラッディ・ヴァレンタインと比較するレヴューもあるが、今回シューゲイズ色を強めたというのはバンド・サウンドが意識されているということでもある。ギター・ノイズやバタバタと鳴るドラムの音を意外な思いで聴いた。サーフ・ロックへのオマージュたっぷりな"フォールン・トゥリー・ブリッジ"など、リフだけ聴けばほとんど別のバンドかとすら思う。ポップスとしてのフォームをきちんと備えたそれらの楽曲にはリニアな時間が流れ、白亜紀と現代とをつなぐ超時間的なテーマとは一見相反するようにも感じられる。しかし、とてもドラマチックになった。映画音楽やラウンジ・ミュージックからの影響もよく指摘される彼らだが、いま思えば前作にはドラマがなかった。デビュー作『ヒドゥン・ランド』......桃源郷、隠された生活、あの作品では終わりもはじまりもないようなドリーム・ポップが、アワ・ブラザー・ザ・ネイティヴのような得体のしれなさをまとって鳴っていた。今作においてリズムとギターは彼らの無時間的な世界にドラマをもたらし、時を動かしはじめたのかもしれない。曲名のあとに舞台となる場所や場面設定が簡潔に付されているが、ゲームなどで場所や場面ごとにBGMが設定してあるように、曲を飛ばす行為が、ある場所からある場所への移動に重なるようにも感じられ、これはすなわち時に対して場所、縦に対して横、垂直に対して平行の動きも同時に得たのだと言えるだろう。「動く」キャンディ・クロウズも大好きだ。
 今作が『ブラッド・アーク』をヒントにしているように、前作『ヒドゥン・ランド』にはリチャード・M・ケッチャムへの献辞があり、ホヴァーの夢の根本に科学や歴史への嗜好性があることがうかがわれる。物語から物語を空想することを女性的だと言うのは短絡かもしれないが、それに対して科学と歴史を空想の端緒とするホヴァーの作品には男の子っぽさがあり、筆者はそこも隠れた魅力だと思っている。ただ、何もないところに何かを生み出す想像力ではなく、あったかもしれない何かをあとから補うような、切ない想像力だ。「ぼくらの音楽はドリーム・ポップだよ」と自覚的な物言いをする彼は、夢を見るということに対してわれわれよりつねに一枚上手である。

Janelle Monáe - ele-king

 「戦争より愛 火種はこりごり 暴動ではなく静寂/音楽を演奏して 踊って愛し合うんだ/石を投げない 窓を割らない お尻だけ振って/激しく振って ベイビー/エレクトリック・レディ 105.5WORDを聴きながらね」

 アルバム中に何度かラジオ番組を模したインタールードで、DJがノリノリでそう告げるのが心地よくて、飛ばさずに全部聴いてしまう。ときは2719年......とするにはどこか不釣合いの、なにやらレトロなラジオ番組。ジャネール・モネイのありようが、このインタールードにとてもよく表れているように思える。すなわち、遠い未来のディストピアでも、そこで生きる人間たちはパーティをして「お尻を振って」いるに違いない......という、あっけらかんとした、しかし確信に満ちた楽観主義である。世界中から賞賛されたアフロ・フューチャリズム『ジ・アークアンドロイド』に連なる物語を持ったアルバムである『ジ・エレクトリック・レディ』においても、その舞台は階級闘争が激化するメトロポリスなのだが、そこで描かれるのは闘い以上に、パーティだ。
 ここでキャラクターとして設定された「エレクトリック・レディ」とはジャネール・モネイにとってのスーパーヒーローの象徴だそうで、ステージ上で、あるいはレコード上で彼女はつねにそんな姿で現れる。強くてキュートな、打ちひしがれた人びとを鼓舞するために颯爽と登場するヒロイン......どう考えても、ジャネール・モネイは現代における最高にクールなポップ・アイコンである。

 『ジ・アークアンドロイド』における成功は本作においてゲストを大勢呼ぶことにも繋がったようで、いきなりのプリンスからはじまり、エリカ・バドゥ、(ビヨンセの妹の)ソランジェ、ミゲル、エスペランサといった面々が集まり、このパーティを盛り上げていく(日本盤のボーナス・トラックには彼女を見出したビッグ・ボーイとシーローも登場する)。しかしながら非常に雑多な音楽ジャンルがミックスされた本作を聴いていると、ここにはもっと大勢のミュージシャンが住み着いているように錯覚する。サン・ラからファンカデリック、スティーヴィー・ワンダーからジャクソン5、ボブ・マーリーからアウトキャスト......。ファンク、ソウル、ヒップホップにジャズにロックンロール、エンニオ・モリコーネのサウンドトラックをシャッフルして平然と着こなすジャネールのアルバムは相変わらずパワフルで、色彩と生命力に満ちている。セクシーなファンク"ギヴン・エム・ホワット・ゼイ・ラヴ"でプリンスと絡めば、ミゲルとデュエットを取る"プライムタイム"ではメロウなR&Bヴォーカルを披露し、モータウン・ポップ調の"ダンス・アポカリプティック"ではファンキーに弾けてみせる。
 本作のリード・トラックとなったエリカ・バドゥとの共演ファンク・ナンバー"Q.U.E.E.N."において「あんたがそうやってドープ(麻薬)売ってる間 わたしたちはホープ(希望)を売り続けるから」とラップされるのが印象的だが、その「ホープ」を売りつける相手をモネイは決して見失わない。ネグロイドやゲイ、移民や労働者、そしてとりわけ、すべての女性たち......に"Q.U.E.E.N."は捧げられている。この曲でモネイはセクシズムに対抗するために「ガール、大丈夫よ」と自信を持って囁いてみせる。続くゴージャスなポップ・ナンバー"エレクトリック・レディ"においても同様で、ここで彼女はあらゆる「レディ」を太いベースでともに踊らせることを目論んでいる......そうして、女性たちをセクシャリティとジェンダーの束縛から解放しようとする。そして何より、それをフェミニズムと呼ぶときの「イズム」の堅苦しさを軽やかにかわすように、激しく腰をシェイクする。

 正直に告白すると、ネットなんかでジャネール・モネイの海外でのステージ・パフォーマンスを観ていると、何度となくどうしても目頭が熱くなってしまう。大勢のステージ・メンバーたちほぼ全員が演奏の合間に、いや、演奏をしながらでも踊りまくり、その中心でまるで少年のようなモネイが堂々と楽しそうに、じつに楽しそうに駆け回ってみせる。そこではひとつの理想的なコミュニティが示されており、そして彼女は人びとを楽しませることに全身で自分を捧げている。その目的をけっして見失うことがないからだ。
 ジャネール・モネイがぶち上げる歴史もジャンルもごちゃ混ぜになったパーティは、マイノリティや疎外された人びとを一堂に集め、彼らや彼女らをお互いにミックスする。彼女はたしかに差別や格差やあらゆる束縛と闘うアイコンであろうとしている......が、そこには拳も武器もなく、いかめしい教条もなく、多様性とピュアな高揚がある。アルバムのクロージング・トラック"ホワット・アン・エクスペリエンス"はラヴァーズ・ロックのスウィートネスに乗せて、こんな風に歌われる。「この世界はいつか消える運命/そして全てのパーティはいつか燃え尽きる/でも想い出たちはよみがえる、そうなのよ/不思議よね、曲と一緒に思い出したりするの」。もし未来と呼ばれるものがあるのならば、それはそんな風に生み出されていくのだと、ジャネール・モネイの音楽はわたしたちにそう信じさせてくれる。

ele-king vol.11  - ele-king

〈インタビュー〉はJポップ・シーン未来の革命児tofubeats
第一特集 ディストピア世界で笑おう
対談、コラム、徹底ディスクガイド、ブックガイド !!
☆宇川直宏×tomad

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ele-king presents
of Montreal Japan Tour 2014
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【of Montreal】

 〈TAICOCLUB'13〉での圧倒的パフォーマンスに続き、待望の5年ぶり単独来日公演が決定! 1996年にジョージア州アセンズにて結成され、その後作品を発表するごとにミラクルを連発。いまやチャートにも食い込む人気バンドに成長したof Montreal(オブモン!)ですが、まだまだ彼等のポップ道は続くわけでして! 最新アルバム『ロウジー・ウィズ・シルヴィアンブライアー』では、2週間メンバーと寝食をともにしながら生まれた心身燃えたぎるピチピチの音魂が爆発! それはまるでオブモンの原点に戻ったかのような究極のバンド・サウンドで、無邪気な子ども心とユーモアの奥に、しっかりとアーティスティックで辛辣なメッセージが抱えこまれています。全世界の空に向けて放たれるこのメロディー、このハーモニーは、どこまでもいつまでも私たちに笑顔と感動を与えてくれる! そして定評あるそのライヴ・パフォーマンスは、まさに完璧なエンターテイメント・ショー! 本国アメリカではアイドルのコンサートに通じる黄色い奇声が飛び交っているとか。はてさてどんな衣装で出てくるのか? 衣装替えはあるのか? 裸になるのか? メイクは? 風船は? 紙吹雪は? 水とかクリームのぶちまけは勘弁してほしい。馬は絶対ムリ!! ......なにやら準備がかなり大変そうですが、その爆笑&感涙のポップ・ワールドにぜひぜひご期待下さい!



ライヴとの連動シリーズ、「Beckon You !!」スタート!!!!
作品を購入→ライヴに行ったら会場でキャッシュ・バックしちゃいます!!


注目の新世代アーティストを中心に作品とライヴを連動させちゃうのがこの「Beckon You !!(来て来て〜おいでおいで〜の意)」シリーズ。
10/2リリース、オブ・モントリオール『ロウジー・ウィズ・シルヴィアンブライアー』貼付のステッカーを公演当日にお持ちください。その場で500円をキャッシュバック致します。もちろん前売り券でも当日券でもオッケーです!


ele-king presents
of Montreal Japan Tour 2014

1/28(火) 渋谷TSUTAYA O-WEST (03-5784-7088)
of Montreal / ELEKIBASS
adv 5,000yen door 5,500yen (without drink)
open 18:00 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:P:213-275)
ローソンチケット(Lコード:77039)
e+

ELEKIBASS

2013年秋に7度目のアメリカツアーを、USインディーを代表するレーベル〈K〉所属のバンド、LAKEのソングライター/マルチプレイヤーのAshley Erikssonと行い、そのツアー会場限定のシングルでもあったアメリカのエレファント6/アップルズ・イン・ステレオのロバートシュナイダー提供曲「Garden Party」が収録されたニューミニアルバム「Home Party Garden Party」が2014年1月22日に発売された、60年代後半のブリティッシュロック、ブルース調のリズム、ミュージックホールメロディー、そして風変わりなサイケデリックさの要素をあわせ持つバンド、ELEKIBASS。

1/29(水) 東心斎橋CONPASS (06-6243-1666)
of Montreal / Foodie
adv 5,000yen door 5,500yen (without drink)
open 18:00 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:213-331)
ローソンチケット(Lコード:58283)
e+

Foodie

マキ ; Vo, B, Gt, Track (ex mummy the peepshow, Sentinels)
サーヤ ; Gt, Syn, Cho (ex リトルフジコ, サンキュー)
ハルロヲ ; Gt, Sampler, Cho (manchester school≡, BRONxxx)

2012年1月結成。大阪を拠点に活動中のポップバンド。同年9月、ネットレーベル"ano(t)raks"が発表したコンピレーションアルバム"Soon V.A."に参加。2013年2月配信の"Upwards And Onwards V.A."、11月配信の"B.D.V.A."にも参加している。
https://anotraks.bandcamp.com/
2013年9月、アメリカ西海岸ツアーを敢行。ロサンゼルスとサンフランシスコでライブを行う。同年11月、ロサンゼルスのLolipop Recordsより1st EP"Chopstick Chick"がカセットにてリリースされた。
https://lolipoprecords.com/


1/30(木) 名古屋APOLLO BASE (052-261-5308)
of Montreal / tigerMos
adv 5,000yen door 5,500yen (without drink)
open 19:00 start 19:30
チケットぴあ(Pコード:213-270)
ローソンチケット(Lコード:43272)
e+

tigerMos

2012年名古屋にて結成。
Yusuke Ikeda(ex.LEGO WORKS)荒木正比呂(レミ街/fredricson)を中心としたユニット。
2013年より本格的にライブ開始。バンド編成にてフェス、エレクトロ、アコースティック等数多くのイベントに出演、話題を呼ぶ。それぞれの共通ルーツであるフォーク、エレクトロニックミュージックを抜群のセンスでブレンドした食欲旺盛なサウンドを作りだしている。
https://tigermos.tumblr.com

*追加公演決定!!!!!!

1/31(金) 渋谷TSUTAYA O-nest (03-3462-4420)
of Montreal / flight egg
adv 5,000yen door 5,500yen (without drink)
open 18:00 start 19:00
チケットぴあ(Pコード:213-279)
ローソンチケット(Lコード:77043)
e+
(チケット発売12/28〜)

flight egg

2005年、高校入学の年の夏に同級生同士で結成。
2008年、現在の編成(2gt,ba&vo,dr)になる。
東京を中心に活動中。
https://flightegg.com/

*各公演のチケット予約は希望公演前日までevent@ele-king.netでも受け付けております。お名前・電話番号・希望枚数をメールにてお知らせください。当日、会場受付にて予約(前売り)料金でのご精算/ご入場とさせていただきます。


主催・制作:ele-king / P-VINE RECORDS
協力:シブヤテレビジョン ジェイルハウス スペースシャワーネットワーク 
TOTAL INFO:ele-king / P-VINE RECORDS 03-5784-1256
event@ele-king.net
www.ele-king.net


オブ・モントリオール
『ロウジー・ウィズ・シルヴィアンブライアー』


PCD-93758
定価2,415yen
Release:2013.10.2
解説:清水祐也

Amazon

1. Fugitive Air
2. Obsidian Currents
3. Belle Glade Missionaries
4. Sirens of Your Toxic Spirit
5. Colossus
6. Triumph of Disintegration
7. Amphidian Days
8. She Ain't Speakin' Now
9. Hegira Émigré
10. Raindrop in My Skull
11. Imbecile Rages
12. Jigsaw Puzzle (Bonus Track)

目印はtofubeatsのいい顔 - ele-king

 さあ! 新刊本日発売です!!
 昨日DOMMUNEで「ele-king TV」を観てくださった方は、宇川直宏氏も太鼓判を押す今号の中身をチラ見していただけたはず。
 Vol.11は、「ディストピア世界で笑おう」をテーマに、インターネットを活躍の舞台とし、音楽~アート~ファッションにまたがって広がりを見せている様々なインディ・ムーヴメントを探索する号です。目印はtofubeatsの「いい顔の表紙」だッ!
 ぜひぜひ書店、レコ店、Amazonでお探しください!
 大好評につきAmazon品切れ中! こちらのページよりお買い求めいただけます!

特集 ディストピア世界で笑おう
ユートピアの対義語であるこの言葉を肯定的にとらえ、テクノロジーを逆手にとった、インターネット・パンクともいえるまだ誰も語っていない最新動向を探ります!

成功は最高の復讐――
Jポップを変える! 表紙&巻頭インタヴューはJポップ・シーン未来の革命児tofubeats(トーフビーツ)ロングインタヴュー!

第一特集 ディストピア世界で笑おう

対談、コラム、徹底ディスクガイド、ブックガイド !!
☆宇川直宏×tomad
☆飯田一史×海猫沢めろん
☆ディストピア・ディスクガイド 40
☆ウルトラ・デーモン
☆特別インタヴュー Oneohtrix Point Never

第二特集 ポップ↔アート↔ミュージック

インタヴュー
☆オノ・ヨーコ
☆卯城竜太(Chim↑Pom)
☆蓮沼執太

巻頭フォトギャラリー
☆塩田正幸

特別対談
☆保坂和志×湯浅学

第三特集
アナザー・ワールド・トリップ!
新世代ワールド・ミュージックを概観&濃縮レヴュー

大好評連載中!

☆ブレイディみかこ 
「アナーキー・イン・ザ・UK 外伝」
第二回 ロイヤル・ベビーとハックニー・ベビー

☆金田淳子 
「光と闇がそなわり最強に見えるレヴューV2 ~どうやってベストセラーだって証拠だよ!~」
第二回 70年後の君へ 『進撃の巨人 Before the fall』

☆人気の連載陣
西村ツチカ、磯部涼、山本精一、二木信、tomad


interview with Austra - ele-king

 ケイティとマヤ。アウストラにおいてはふたりの女性が曲作りとバンド自体のコアを成している。男女比1:2で6人の男女が絡まるアーティスト写真には艶っぽい魅力があるが、もともとギャラクシーというライオットガール・バンドに在籍していたという彼女らは、どちらかといえば硬派、ゴリゴリの女系グループである("ホーム"のMVにおいては、ライアン・ウォンシアクが女装させられている)。そのことは、彼女たちの音楽を理解する上で大事な要素のひとつだ。バンド名も「光の女神」に由来しているくらいである。


Austra
Olympia

Domino / ホステス

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 先月セカンド・アルバムを発表したエレクトロポップ・バンド、アウストラは、トロントで結成され、そもそもはケイティとマヤがベースにドリアンを迎えるかたちの3人組としてスタートしている。2011年のデビュー・アルバム『フィール・イット・ブレイク』で脚光を浴び、活動の幅をワールド・ワイドに広げた。
 折しも同郷のグライムスがブレイクするタイミングであり、クラシック・ミュージックの高度な専門教育をバックボーンに持つような女性トラック・メイカーたちが、奔放に斬新にポップ・ソングをデザインし、どんどんと存在感を増していった時期だ。ジュリア・ホルターやジュリアナ・バーウィックのようにハイカルチャーへと突き抜けるような個性もあれば、ゾラ・ジーザスなどのようにゴシックな世界観やオペラ的な方法を展開するウイッチたち、マリア・ミネルヴァやローレル・ヘイローなど秀才型のIDM、そしてグライムスやグラッサーなどウィスパリングなドリーム・ポップなどなどが競い咲くシーンのなかで、アウストラのデビュー作はゾラ・ジーザス寄りのグライムスとでもいうべき象限に浮上してきた作品だった。ダークウェイヴのムードにも合流し、サイケデリックなジャケットのイメージも相俟って、わりととんがった女性ユニット/バンドとして存在感を放っていたように記憶している。

 セカンド・アルバムは装いも新たにリリースされた。ファーストの性格を良く言って「実験的」、悪く言って「生硬」だとするならば、今作は両者がするっと取れたグラマラスなポップ・アルバムになっている。これは、バンドにとって歓迎すべき変化ではないかと思う。エイティーズ・マナーなディスコ・ナンバーを中心にプロダクションも格段に洗練され、愛聴できる曲が増えた。バック・コーラスとキーボードを加えた6人編成となったことで安定感とダイナミズムも生まれている。確実にステージを上げ、良質なポップスとしてキリっとした輪郭が備わったと言えるだろう。それに、総じてのびのびと制作されているように見える。『フィール・イット・ブレイク』において奇妙なピアノやヴォーカリゼーションとなってポップスの枠を逸脱していこうとするケイティの情熱。その勢いを削ぐことなく、かつ曲の理性として働いているマヤのドラミング。それらがやっとしっくりと自らを収めるべきフォームに収まったという印象だ。この変化はジャケットのアートワークにも象徴的に表れている。

 一方で彼女たちのストレートでこそあれスマートではない表現欲求も減速していない。「彼女をあたためる代わりに/わたしたちは火を起こす/火そのものになる」("ファイア")......聴く者に効率よく快楽を与えるよりは、自らが快となり楽となること自体に意義を見出す、そう読み替えたくなるような熱源の思考が、彼女の風変わりなフレージングによく表れている。その熱はたとえばミューズに捧げられ("アニー(オー・ミューズ、ユー)")、あるいはアウストラ――光の女神へと捧げられているのだろう。思いは過剰にあふれて楽曲に凹凸を作ってしまう。ジョルジオ・モロダーからシカゴ・ハウスまで意識されているようだが、どこかそうした凹凸のためにダンス・ミュージックとしてはビートがおぼこくなるのが感じられるだろう。それが彼女たちの音楽の特質であり愛すべきところでもある。
 また、エレクトロ・ポップ・アルバムという性格を持ちつつも、トム・エルムハースト(ファックト・アップなど)をプロデューサーに起用したり、何かといえば生楽器とバンド編成にこだわるところなどは、彼女たちのロック・バンドとして出自やそれへの矜持とともに、火や光へ寄せる彼女ら独特の敬意の示し方を表しているのかもしれない。

 今回メール・インタヴューに応じてくれたのはマヤ・ポステップスキー。当初ケイティに宛てた質問だったこともあり回答を得られなかった質問が多いのは少し悔やまれる。

ティーンエイジャーのときはスパイス・ガールズにハマっていたの。それがわたしのポップ・カルチャーにおけるいちばんの冒険だったかも。でもすぐに飽きちゃった。あ、あとアンジェリーナ・ジョリーが大好きだったわ。

子どものころはポップスにあまり興味がなかったのですか?

マヤ:あったわよ、毎日ウォークマンで聴いてたわ。当時のわたしの持ち物のなかでいちばん重要な財産だったわ。いまでも持ってるけど少し壊れちゃった。わたしのお気に入りの音楽は、両親がディナー・パーティーを開くときにお父さんが作ってたミックス・テープで、ティナ・ターナー、ブライアン・フェリー、デヴィッド・ボウイ、クイーン、グレース・ジョーンズ、レッド・ツェッペリン、ロキシー・ミュージックとか入ってたわ。未だにどのアーティストも大好きだし、わたしの音楽性は彼らから強く影響されているわ。

テレビやポップ・カルチャー全般への興味はどうでしょう?

マヤ:小さいころ長時間テレビを観ることを禁止されてたの。でもピングーにかなりハマっていたわ。いまでも朝食の時間にたまに見るのよ。ティーンエイジャーのときはスパイス・ガールズにハマっていたの。それがわたしのポップ・カルチャーにおけるいちばんの冒険だったかも。でもすぐに飽きちゃった。あ、あとアンジェリーナ・ジョリーが大好きだったわ。

学校で専門に音楽教育を受けておられるのですか? 学校ではどのような分野を修められたのか、どのような学校生活を送られたのか、教えてください。

マヤ:小さいころからずっと音楽を演奏していたわ。4歳からピアノをはじめて、ずっと勉強しながらテストを受けたりコンペに出てたわ。
パーカッションと出会ったのは9歳のときで、美術学校に通っていて専攻を決めなきゃいけなかったの。ダンスも演劇もアートも好きじゃなかったから、そのときはまったくパーカッションがなんなのかわからないまま消去法で選んだの。けれど、自分のドラム・スティックをもらった瞬間に完全に心を奪われたわ。それからオーケストラでパーカッションを演奏したいと真剣に思いはじめてきて、すごい勉強してトロント大学に入ったの。そこでパーカッションの学士をとったのよ。
学校ではクラシック・パーカッションを学んだわ、それでオーケストラに入りたかったの。でも他にも世界のパーカッションを勉強したわ、バリのガムランや和太鼓、ガーナのドラムやダンスもね。とくに和太鼓がいちばんわたしに影響を与えたわ。いまだに好きだし、ドラムの演奏の仕方やドラムの音についての考え方が本当に変わったの。

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フェミニストだからとか必ずしも政治的であるからという理由では音楽はつくらないけど、そういう考えはいつでもわたしたちのなかにあるし、内面の深いところの一部なのよ。

クラシックの素養があり、先鋭的なエレクトロニック・ミュージックを制作する宅録型の女性アーティストがとても活躍していますね。 ジュリア・ホルターやマリア・ミネルヴァ、ゾラ・ジーザス、ジュリアナ・バーウィックなどのアーティストをどう思いますか?

マヤ:彼女たちがいてくれて本当に幸せに思うわ! とても大切で美しい音楽を作っているに違いないわ。ジャンルやスタイルをミックスすることに興味を持っていて、かつ才能に溢れている若いアーティストがたくさんいて本当にすばらしいことだと思うわ。そのほうがおもしろいでしょ!

『オリンピア』は前作に比べてもかなり明確にダンス・アルバムとして仕上がっていると思います。ダンス・ミュージックとの出会いは、いつごろ何を通してだったのでしょう? また、参照点としてはジョルジオ・モロダーが体現したようなディスコ・ミュージックが挙げられるかと思いますが、そのように一種のレイドバックに向かうのはなぜなのでしょうか?

マヤ:小さいときからずっとディスコ、ダンス・ミュージックが聴いてきたわ。完全にハマってて、毎週末新譜を自分のためにご褒美で買ってた。毎回エレクトロニックのセクションにいて、そこのお店のお兄さんが、10歳くらいのわたしがプロディジーやケミカル・ブラザーズを買ってるのを見てクールだと思ってたらしいのよね。変な音や激しいドラム音が大好きだったの。友だちの家でテレビゲームしているときに爆音で流すのが最高だったわ。

あなたはギャラクシーというライオットガール・バンドにいたそうですが、クラシック音楽とライオットガール文化という振れ幅に驚きました。「運命」という言葉や戦いの象徴があなたの曲ではよく使われていたり、「たくましく前に進む」というような雰囲気があなたの曲にはありますが、これは一貫性のあるテーマなのですか?

マヤ:わたしたちは長い間音楽をつくることに飢えていたんだと思う。わたしたちの音楽を作ることに対するエネルギーや興奮は尽きないように感じるの。すべての曲やプロジェクトがわたしにとってはエネルギーの爆発のようだし、よりたくさんの作品を作ることに夢中なのよ。ライオットガールの戦う精神はいつでもわたしたちのやることの一部だし、わたしたちってフェミニストなの。フェミニストだからとか必ずしも政治的であるからという理由では音楽はつくらないけど、そういう考えはいつでもわたしたちのなかにあるし、内面の深いところの一部なのよ。

前作『フィール・イット・ブレイク』には"ザ・ビースト"などじっくりとピアノを聴かせる弾き語りが収録されていたりとかなり個性的で、あなたの音楽遍歴をよりダイレクトに表すものだったかと思います。前作と今作とでは人々の反応も少し違うのではないかと思いますが、いかがでしょう?

マヤ:わたしが思うに、みんなまだそれに慣れようとしているところなんじゃないかしら。『オリンピア』はヒット曲満載っていうレコードではないの。より瞑想的だし、たくさんの感情や音が混在しているのよ。ソングライティングや音楽的美学の成長を聴いてもらうためにみんながこのアルバムを何回も聴く忍耐力を持っていてくれればいいんだけど。わたしたちはアルバムが厳選された質のよいものになるように、できるだけたくさんのアナログでアコースティックな楽器を使って、すべての音をおもいやりがあって特別なものにするようにしたのよ。

あなたはご自身について、よりどちらの性質が強いと捉えていますか? ヴォーカリスト? トラックメイカー? それとも?

マヤ:このバンドでは、わたしは自分のことをどちらかというとプロデューサーやビートメイカ―だと捉えてる。ケイティはすばらしいソングライターだし、わたしとドリアンに楽器のチョイスを通してこのバンドの美学を作り上げさせてくれるの。わたしはキーボードのパートを書いて曲のアレンジを形づくる手伝いもするけど、リズム・セクションを請け負って、それぞれの曲に命や魂を吹き込むのが楽しいのよ。

Bruce Gilbert And BAW - ele-king

 パンクの波が押し寄せる76年。三十路に差し掛かる頃にギターをはじめ、「ロックでなければ何でもよかった」バンド、ワイヤーに加入(←この発言、どうもメンバーによるものではないようだが、そんなことはどうでもいい。とにかく彼らのすべてを言い得ているのだから)。その特異なグループのなかでもひと際異才を放っていた男がブルース・ギルバートだ。79年に放送されたドイツのTV番組「Rockpalast」出演時の演奏を収録したCD+DVDアルバム『WIRE on the BOX:1979』で動く彼をたっぷりと堪能できるのだが、このプレイが異様にぎこちない。というか何をやっているのかわからない。ほとんどヴォーカルのコリン・ニューマンのギターしか聴こえなかったりするのだが、時折現れるブルース・ギルバートのギター・フレーズ、その誰にも真似のできない音色は、演奏を彩るというよりは楽曲に鋭利で潤いのあるメスを入れ、冷たく金属的な切断面をひりひりと露呈させる。ああ、なんて美しい耳触り。
 
 軋みと振動。80年初頭にブルースがワイヤーのベーシスト、グレアム・ルイスと結成したウルトラ実験音響デュオ、ドームに対するノイズ/インダストリアル愛好家からの羨望は言わずもがな。ブルースのアヴァン・サイドが容赦なく発揮されたソロ・ワークはいつの時代も好奇心旺盛な音フェチ諸氏の耳の内奥をくすぐり、心の臓を突き破る。そして、〈ミュート〉~〈テーブル・オブ・ザ・エレメンツ〉~〈エディションズ・メゴ〉と名だたる実験音楽レーベルを渡り歩き、現在はイギリスの名門〈タッチ〉から作品をリリースするなど、つねに時代の最深部で試みに没頭するブルース・ギルバート。御年67歳が4年ぶりにアルバムを発表した。

 名義を見てわかるように、今作はロンドンを拠点に活動するヴィジュアル/サウンド・アーティスト、デヴィッド・クロウフォースとナオミ・サイダーフィンによるユニットBAW(Beaconsfield ArtWorks)とのコラボレーションである。最初、アートワークにあるように、洗面器に流れる水が排水口にじゅぼぼぼぼぼぼぼと回転しながら吸い込まれていくような音を想像したりしていたのだがこいつはスケールが違う。全然違う。なんでも地球温暖化による海面の上昇、それがもたらす大洪水をテーマにしているのだから。しかもこのプロジェクト、2011年よりスタートして①インスタレーション②エキシヴィジョン③サウンド・リリース(本作)という3ステップを経て完成した大作であり、天地創造にまつわる作品とまで宣うものだから、こちらの耳も少し襟を正し、行儀よろしく構えてしまうわけだ。
 が、しかし。ぽっかり空いた虚空を渦巻くような電子音、シャープで即物的な音粒とともに折り重なるダーク・アンビエントはまさにブルースのサウンド。凝りまくった音響というよりも、少々無骨でたとえようのない気配がじわじわとにじみ寄りざわざわと動揺する。耳をくすぐる細かいノイズ、大きくうねるエレクトロニクス。かつての軋みと振動から間を置きつつも、洗練とはほど遠いラディカルな突起がそこここに仕掛けられているから不安で安心だ。そして、本作をこれまでの彼の作品とひと味違うものにしているのは、やはりBAWの参加によるところが大きい。ナオミ・サイダーフィンによってサフォークとロンドンの海岸で採集されたフィールドレコーディング----穏やかな波のせせらぎからはじまり、天地を揺るがす大洪水、やがて訪れる静寂、さらに周辺の生き物たちの生態音を切り取り/加工されてブルースとデヴィッドが生成した電子音と合流。そう、それは電子音+フィールドレコーディングにありがちな「さもありなんなもどかしさ」とは無縁の「風味のある実験」であり、てっぺんから先っちょまで明確な意識の下に置かれた合流。ラッセル・ハズウェルの巧妙なマスタリングも手伝い、そのコントラストは75分近くにも及ぶ物語の輪郭をあいまいにすることなく時間をあいまいにし、すれ違いと摩擦が産み出す冷めたミニマリズムを吐息のようにほとばしらせる。

 奇しくも、今年〈タッチ〉からリリースされたクリス・ワトソンの新作『IN ST CUTHBERT'S TIME』もイギリスの辺境の地にある海辺の絶景音をとらえたフィールドレコーディング作品であり、こちらはあくまで自然音のみでコンポジションされたものであった。クリスの耳を通した音をさらにリスナーの耳に通して初めて記録が音楽として成り立つ作品、とでもいえるだろうか。これと比較して本作『ディルーヴィアル』を聴いてみると、音楽家の耳、フィールドレコーディングの素材に対する哲学の違いを顕著に聴きとれておもしろい。現実世界に対する新世界。本アルバム中で最もノイジーな"ドライ・ランド"では、すべてをなぎ倒す暴風雨のような電子音とフィールドレコーディングの境界が失われ、こちらの意識は濁流とともに人ばなれした新しい世界にもっていかれる。恐れとも希望ともつかないまったく新しい世界。そして気がつけば、我々は暗い色調を帯びた、しかしクリアな開放感に包まれた海と陸をゆるやかに円環している。

Varisou Artists - ele-king

 〈グリーンスリーヴス〉といえば、オーガスタス・パブロの『オリジナル・ロッカーズ』(1979年)、ドクター・アリマンタドの『ベスト・ドレスド・チキン・イン・タウン』(1978年)といった70年代末の名作もあれば、ヒュー・マンデルの『アフリカ・マスト・ビー・フリー』のようなルーツの名盤の再発も手がけている。ジョン・ホルトの『ポリス・イン・ヘリコプター』(1983年)のような隠れ名盤もある。と同時に〈グリーンスリーヴス〉は、80年代のダンスホール時代を代表するプロデューサー、ヘンリー・ジュンジョ・ロウズと彼の〈ヴォルケーノ〉レーベルの諸作を世界に広めたレーベルとしても知られている。12インチ/45回転のディスコ・シングルのリリースも有名だ。
 後に拠点をニューヨークに移し、近年でも商業的なヒットを出しているレーベルだが、古くからのファンにとって〈グリーンスリーヴス〉らしさが滲み出ているのは、ルーツとダブからダンスホールとディージェイの80年代初頭へと展開した時期の諸作だろう。80年代前半のレゲエ界のスターだったイエローマンの『ミスター・イエローマン』(1982年)、レーベルの看板のひとりバーリントン・リーヴィの『ロビンフッド』(1980年)、ディージェイの系譜ではトーヤンの『ハウ・ザ・ウェスト・ワズ・ボーン』(1981年)、トーヤンとニコデマスの『DJクラッシュ』(1981年)、クリント・イーストウッド&ジェネラル・セイント『トゥー・バッド・DJ』(1981年)、政治から性(スラックネス)へと主題が変わった時代を物語るクリント・イーストウッドの『セックス・エディケーション』(1980年)などなど、この時代だけに絞っても多くの名作が思い付く。そして、重要なのは、〈グリーンスリーヴス〉、あるいは〈ジャミーズ〉のようなレーベルの躍進が、日本でレゲエが大衆化されていった時代に重なっていることだ。いよいよ街のちんぴらの元にレゲエが届くようになるのだ。
 当時の〈グリーンスリーヴス〉の多くのヒット作のリディムはルーツ・ラディックスによるもので、多くの名作でエンジニアを担当したのはサイエンティストを名乗るホープトン・オーヴァートン・ブラウンだった。当時『FINE』を読んでいたようなサーファーは〈グリーンスリーヴス〉を通じてスタイル・スコットのドラミングを聴いて、サイエンティストのダブにしびれていたのである。

 本作は、稀代のレコード蒐集家MUROによる〈グリーンスリーヴス〉音源のミックスCDである。〈グリーンスリーヴス〉がライセンスした、80年代前半のジャマイカを代表する〈ボルケーノ〉や〈ジャミーズ〉をはじめとする音源が30曲収録されている。今回のCDのためにあらたに声を乗せたダブプレートも混じっているようだ。昔、マッドリブが〈トロージャン〉音源を使ってミックスCDを出したことがあるが、あれが70年代ならこちらは80年代、ジャマイカにおけるアメリカ支配がはじまり、経済的により厳しさの増した時代に大衆化受けしたダンスオールにスポットを当てている。
 サイエンティストのナンセンスなダブから内省的でシリアスなものまで幅広いことをやっているレーベルだが、MUROが選んだのは後者だ。前半はテンションの高いディージェイで盛り上げつつ、中盤ではウェイリング・ソウルのような深いコーラス隊へと突入し、ジュニア・マーヴィンやシュガー・マイノット、殺害されたヒュー・マンデルの美しいソウルを経ながら、後半のブラック・ウルフの勇ましいルーツ・サウンドへと繋がれている。物語性のあるミックスで、80年代前半のこのレーベルの魅力を押さえつつも、ミックスの後半ではメロウかつメランコリックなフィーリングを際立たせている。そのあいだ、あなたはいくつもの美しい瞬間を耳にするでしょう。スリーヴのイラストは、ルーツ時代の作品、ランキン・ジョーの『ウィークハート・フェイドアウェイ』(1978年)のアートワークを引用している。

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