「Nothing」と一致するもの

踊ってばかりの国×快速東京 - ele-king

 紙エレキング10号、「ANTI GREEK HEROES」特集の表紙を飾ってくれたふたり、下津光史率いる踊ってばかりの国、そして福田哲丸が歌っている快速東京のライヴが12月12日恵比寿リキッドルームであります。いやいや、素晴らしい組み合わせですね。もうこの彼らに関しては説明不要でしょう、2013年は全国のライヴハウスやフェスで、がんがんにショーをやって、ファンもどんどん増やしているこのふたつのバンド、ともに年明けに新しいアルバムのリリースを控えているので、きっと新曲もいっぱい聴けると思います。今年最後のロックンロール・ショーです。みんなで楽しく騒ぎましょう。
 ちなみに、来年の2月には、踊ってばかりの国の12インチ・シングル「踊ってはいけない国EP」をele-king レーベル第一弾の完全限定盤としてリリース予定です。風営法にもの申す名曲“踊ってはいけない国”をDJのヨーグルトさんが陶酔的なハウス・ミュージックに再構築してくれました。レコードには、オリジナルとは別ヴァージョン、最近のライヴの1曲目でお馴染みのディープな超大大名曲“ANTHEM”も収録しています。お陰さまで、すでにかなりの予約が入っています。こちらもお楽しみに!

■東京ダンス
快速東京、踊ってばかりの国
12月12日木曜日@恵比寿リキッドルーム

open/start:18:45/19:30
チケット:前売スタンディング¥2,500(税込) D別/当日料金未定

問:エイティーフィールド 03-5712-5227(平日13:00-19:00)
https://www.atfeild.net
チケット発売:11/16(土)
プレイガイド:ぴあ、ローソン、e+

踊ってばかりの国HP
https://odottebakarinokuni.com

快速東京HP
https://kaisokutokyo.com


The Strypes - ele-king

 カヴァン。(現地出身者は「キャーーヴン」と発音する。その発音はダブリン在住者の間では「田舎者」を意味する表現にもなっている)というアイルランドのカウンティは、わたしにとって縁の深い場所である。若い娘だった頃、カヴァン出身の男と一緒に住んでいた。で、その後、ロンドン出身の男と結婚したら、そいつの父方の家族も代々カヴァンの人びとだった。
 で、このザ・ストライプスもカヴァン出身なんだよねー。みたいなことを言っていると、連合いが言った。
 「おめー見てるよ、そのキッズ。何年か前に、カヴァンで」

 どうやら、カヴァンのロック・フェスに出演している姿を見たらしい。ロック・フェスといっても、修道女と羊ぐらいしかストリート(農道)を歩いていないカヴァンのことである。著名バンドなどは出ておらず、近所のパブに集まるおっさんたちのTHEMのコピー・バンド。とか、子育てを終えたお母さんたちの熟女メタル・バンド。とか、巡査さんの弾き語りボブ・ディラン。とか、そういうのどかなメンツに混じって、たしかにやけに上手いちびっ子バンドが出ていたと記憶している。
 が、あの頃のザ・ストライプスは全然いまとは違うファッションをしていた。なんかこう、袖の長い赤いモヘアのセーターやカラフルなチェックのシャツにブルージーンズ。みたいな、ちょっとアメリカンな、それ故いかにもアイルランドの子供。といった外見だった。平均年齢13歳ぐらいだったろう。ローティーンの子供たちが普通に演奏するビートルズの曲とかを普通に演奏していた記憶があるが、たしかに芸達者だった。しかし、それにしたって、「あいつらは俺ら以上に音楽好き」と英国人も一目置くアイルランドのことである。はっきり言って、あの程度の子供はわりといる。
 ということは、ザ・ストライプスって、あれから大化けしたのね。と思って、おばはんも一念発起して彼らのデビュー・アルバムを聴いてみた。ストーンズ、ビートルズ、ザ・フー、キンクス。などのUKバンドを引き合いに出されることの多いザ・ストライプだが、わたしが連想したのは、アラン・パーカー監督の『ザ・コミットメンツ』のサウンドだった。あの、「アイリッシュはヨーロッパの黒人種だ!」と宣言した映画のアイルランドのパブロック、ならぬ、パブR&Bである。

              **********

 彼らに惚れ込み、自分のマネジメント会社と契約させたエルトン・ジョンは、LGBT運動にも熱心だが、労働者階級という自らの出自にも拘り続けている。UKの労働者階級の若者がもっともクールだったのは60年代だそうだから(ツイッギーやマイケル・ケインの時代だ)、その頃に青春を送ったエルトンが、ブライトンのパブでザ・ストライプスを見てぶっ飛んだというのはわかる。イメージ的にブリティッシュ・ビートっぽいパッケージングが施されているのはそのせいかとも思うが、だからと言って彼らをポール・ウェラーやマイルズ・ケインの少年版と整理しても良いのかというと、それは違う。彼らの音はもっと泥臭いというか、随所で『ザ・コミットメンツ』が毀れている。

 彼らのレヴューには、英日を問わず、ルーツ。という言葉が頻用されている。ロックが好きになった子供が、現在のそれのルーツであるところのストーンズやDr フィールグッドを発見し、さらにそのルーツであるところのチャック・ベリーやボ・ディドリーを発見して、夢中になる。その発見をティーンズが演奏しているのが新しい。というような文脈は、しかし果たしてそうだろうか。と思う。
 なぜなら、このルーツ探しの旅は、昔からロック好きの若者が通って来た道であり、とくにアイルランド(の田舎)のような老いも若きも一緒くたになってパブで音楽を奏でているような国では、ロックンブルーズは不変のスタンダードだ。ザ・ストライプスのサウンドには「温故知新の新しさ」というより、脈々とそこに流れて来たものとしての腰がどっしり入っている。彼らが抜きん出ているのは、むしろ彼らを生み出した土壌のせいだろう。

 最後に、そしてたいへん重要なことに、アイルランドは詩人の国としても有名だが、この点におけるザ・ストライプスはどうなのだろう。

 「彼女が僕のドアをノックするときは、いつもティーカップを手にしている 彼女はミルクと砂糖が欲しいだけ でも僕は彼女が欲しいだけ」“Blue Collar Jane”

 「基本的に、『Snapshot』の曲の歌詞を聞いていると、テレタビーズのほうがよっぽど知的なのではと思えてくる」とSputnikmusicのレヴューでアイルランド人寄稿者は嘆いている。
 とは言え、彼らはジェイク・バグのようなストリート詩人ではなく、ロックンブルーズの兄ちゃんたちなのだから、歌詞はバカで良いのだ。が、せめて同じ紅茶ならば、「絞って僕のレモンを あなたの好きなだけ/たっぷり僕のレモンを あなたの紅茶の中に/アーアーアー ふたりで飲みますレモンティー」と書いた柴山俊之ぐらい肉感的なひねりを見せて欲しい。
 そうしてミルクティーを何かもっといやらしいものに転化できたときこそ、ザ・ストライプスはめちゃうま子供バンドを卒業し、次の地平に進むのだろう。

Destroyer - ele-king

 フェニックスのレヴューで、「日本人は英語でロックを歌うべきだった」と書いたけど、デストロイヤーの最新EPはスペイン語で歌われている。どないなってるねんである。

 デストロイヤーことダン・ベイハーがスペイン語で歌っていると聞いたときは、ウェス・アンダーソンの映画『ライフ・アクアティック』で話題になったあのデヴィッド・ボウイのいなたいスペイン語ボサノヴァ・カヴァーな感じでくるのかなと思ったら、けっこう正統派でびっくりした。『カプート』でデストロイヤーの音が完全に完成したから、それをぶち壊したという意味でのスペイン語だったと思うのだが、ただスペイン語で歌っているだけやん、と笑ってしまった。

 でも、音楽を変えるとかじゃなく、違う国の言葉で歌うことで、新しい音楽を生もうとしているのは、なかなか面白い試みだなと思った。デストロイヤーは音楽スタイルを変えることで前進してきたのかなと思っていたのですが、違っていたのですね。彼が自らの音楽を「ヨーロピアン・ブルース」と言っていた意味がなんとなくわかりました。彼にとって表現とは旅なんですよ。彼はずっとどこにも所属しない異邦人なんです。唯一彼を癒してくれるものは音楽だけだった。彼にとって言葉はただの記号で、それほど重要なものじゃなかったのでしょう。メロディに癖を与えてくれるものくらいにしか考えていなかったのでしょう。

 このEPで、僕はデストロイヤーというアーティストが、どういうアーティストかというのがよくわかりました。彼が好きであろう、スコット・ウォーカー、ダンカン・ブラウン、ダンカン・ブラウンを彼が好きなのかどうなのか、僕は知らないですが、でもデストロイヤーを聴いていて、いつも僕が思い出すのはメトロなんです。異邦人の音楽ですよね。

 この頃、日本人は英語で歌えと思っていたんですけど、このデストロイヤーのEPを聴いていて、日本人はもっと異邦人にならないといけないんじゃないという思いました。

 デストロイヤーの気持ちよさってこれですよね。帰るところのない人間の悲しさ。そんな人には言葉なんて無意味なんですよ。ジプシーたちはまさにそんな感じで旅をしながら、そのエリアの言葉をマネして、小銭を稼いでいたんだと思います。僕らの音楽の原点にはそういうものがあるんですよ、きっと。
ちょっといろいろ考えさせられたデストロイヤーの新作でした。

Ryan Hemsworth - ele-king

 OPNがサウンドトラックに参加していることで話題のソフィア・コッポラの『ブリングリング』は、たしかにこれまでと違って物欲盛んな悪ガキたちを主人公にしているが、結局彼女の少女たちの捉え方は『ヴァージン・スーサイズ』の頃から変わっていないように思える。ただ、思春期の虚無感が融解する先がインターネット・カルチャーとセレブリティ・カルチャーに向かったのが前者で、70年代のノスタルジーに封印されたのが後者だとすれば、より幸福で美しいのは自死を選んだ少女たちのほうなのだろうか。そこでその「揺らぎ」は永遠になり、ソフィアもまたそれをデビュー作に据えたことで、彼女自身がそのイメージを引きずっているように見える。



 カナダ人のDJ/プロデューサー、ライアン・ヘムズワースのことが気になったのは、多くのひとが即座に『ヴァージン・スーサイズ』を連想したであろう“カラー&ムーヴメント”のややサイケデリックなヴィデオを見ていると、そこからエリオット・スミスの“エヴリシング・ミーンズ・ナッシング・トゥ・ミー”のサンプルが聞こえてきたからだ(同曲ではドイツのロック・バンドであるノーツイストのサンプルも使用している)。大きく言ってヒップホップのトラック・メイカーであるヘムズワースだが、突然この世から消えてしまったシンガーソングライターのいまにも壊れそうな歌声を取り入れる彼の感性は、他のトラック・メイカーにはなかなか見当たらないものに思えたのだ。俄然彼に興味が沸き調べてみると、メイン・アトラクションズのトラックを担当することもあるという22歳の青年だという。それが今年の頭のことだ。それから様々なところで彼の名前を見るようになり、本作が現在は23歳の彼のデビュー・アルバムとなる。
 様々なところ、とはライやフランク・オーシャンからカニエ・ウェスト、グライムスまでのリミックスであり、あるいは逆に情報デスクvirtualによるリミックスなどなど、だ。要するにクラウド・ラップ、チルウェイヴにチル・アンド・ビー、さらにはヴェイパーウェイヴまでをまたぐ領域にいるということで、実際、『ギルト・トリップス』からはそれらの反響がすべて聞こえてくる。もう少し離れて見れば、ハドソン・モホーク以降のチップチューンのアップグレード版も微妙にあるし、〈ロウ・エンド・セオリー〉周辺と共鳴するものもあるだろう。ヘムズワースはLA拠点のプロデューサー集団〈WEDIDIT〉のメンバーでもあり、LAビート・シーンはおそらく彼の音楽的アイデンティティの置き場だと考えられる。
 けれども、アルバムを聴いていてもっとも尾を引いて残るのは、「ドレイクのエモ・ヒップホップとサンプルを基調としたエレクトロニカの接続」と説明されるときの「エモ」の部分だ。彼の発言によると10代の頃はエリオット・スミスとブライト・アイズが好きなインディ・ロック少年だったそうだが、『ギルト・トリップス』でももっとも大切に扱われているのは、その、いまなお引きずる思春期性ではないか。オープニングの“スモール+ロスト”でスムースな女性ヴォーカルが演出するメランコリーの純度の高さを聴くとそんな風に思わずにはいられないし、バスが参加した“スティル・コールド”なども、驚くほどナイーヴでささやかなトラックだ。ビートがアグレッシヴなほうの“ハピネス&ドリームス・フォーエヴァー”でさえタイトルから想像されるようなフラジャイルさを湛え、タイトルに自分の名前を出してしまう“ライアン・マスト・ビー・デストロイド”でも電子音が物悲しく歌う。ライアン少年はアコースティック・ギターを持って歌う可能性だってあっただろうが、だがヒップホップ・ビートでこそ彼のエモーションを丹念に滲ませていく。
 ここには現在の彼の「揺らぎ」が漂っていて、しかしそれはサウンドともに今後変わっていくだろうという予感がある。非常な旬な音がヴァラエティ豊かに本作にはあるが、そのコアはまだ見出しにくいからだ。だが、だからこそどんな方向にも行けるだろう。そのとき彼の感情のアウトプットがどのような姿になるのか、僕は強い興味を掻き立てられる。が、『ギルト・トリップス』にはナイーヴな青年の甘美なメランコリーがあり、いまはそれでじゅうぶんだ。

12月の素敵な悪夢をBathsとともに - ele-king

名門〈アンチコン〉から2枚のアルバムをリリースし、フライング・ロータスやデイデラスにつづく血統書付きの才能として注目されてきた「LAビート・シーンの鬼っ子」、バスが、3たびの来日を果たす。 ジブリを愛してやまないこの「大きな子ども」は、子どもなんかよりよっぽど奔放で、ドリーミーで、センチメンタルで、おそろしいほど感情豊かだ。その大きくうねるエモーションの帆布を満帆に張って、めくるめくノイズと旋律を放射していく彼のパフォーマンス、その異形のドリーム・ポップを、あなたはいちど目撃せねばならない。 どことなく浮つく12月の夜の空気を、バスの音はいっそうそわそわとふくらませることだろう。黄色や赤や青の光。オーナメントのシルエット。白い息。凍える梢。その奥に広がる夜空から、バスの魔法はちらちらと降ってくる。そしていつしか激しく吹きすさぶだろう。

各公演を彩るアクトも強力! 名古屋ではDE DE MOUSE + his drummer (Akinori Yamamoto from LITE)、京都ではSeihoとMadegg、東京ではTaquwami(とお馴染みアンチコンのsodapop!)、いまをときめく国内勢がバスと掛け算する、心地よくも濃密な時間を楽しもう。

LAが誇る若きビートメーカーBaths来日公演!!
Tugboat Records presents Baths Live in JAPAN 2013

■12/13(金) 名古屋池下CLUB UPSET
OPEN / START 24:00

ADV ¥4,200 / DOOR ¥4,700(共にドリンク代別)
Act:Baths, DE DE MOUSE + his drummer (Akinori Yamamoto from LITE)
DJ: I-NiO, sau(otopost), LOW-SON(しろー + オクソン)
VJ: Clutch

[Buy] : 9/7(土曜)〜
チケットぴあ(P: 211-365)
ローソンチケット(L: 41184)
e+(https://eplus.jp)

※名古屋公演はオールナイト公演ですのでIDをご持参下さい。

■2013.12.15(日) 京都メトロ
OPEN 18:00 / START 18:30

ADV¥4,000(+1Drink)/DOOR¥4,500(+1Drink)
Act:Baths,Seiho,Madegg

[Buy] : 発売中
チケットぴあ(P: 208-539)
ローソンチケット(L: 59065)
e+(https://eplus.jp)
前売りメール予約→ticket@metro.ne.jpでも受け付けています。
前日までに、公演日、お名前と枚数を明記してメールして下さい。
前売料金で入場頂けます。

■2013.12.16(月) 渋谷WWW
OPEN 18:00 / START 18:30

ADV¥4,500(+1Drink)/DOOR¥5,000(+1Drink)
Act: Baths,Taquwami,Sodapop (anticon. Label Manager)

[Buy] :発売中
チケットぴあ(P: 208-502)
ローソンチケット(L: 79947)
e+(https://eplus.jp)

DJ NOBU× NHK yx koyxeи - ele-king

 〈ラスターノートン〉や〈エディションズ・メゴ〉のファンはクラブで踊るのでしょうか? アヴァンギャルドとダンスはつねに分離しているのでしょうか? 今週末の12月6日(金)からDJノブとNHKコーヘイのツアーがはじまります。6日はの岐阜Emeralda、7日は名古屋Mago、10日はDOMMUNE、14日は東京のSolfa。
 ベルリン帰りのNHKコーヘイは、最近、〈PAN〉(ヨーロッパでは人気のリー・ギャンブルなど、実験電子系で知られる)からの『Dance Classics』シリーズ3部作の最終作を発表したばかり。エンプティセットやピート・スワンソンのファンも、要チャックですよ。レジデント・アドヴァイザーに、彼のインタヴュー記事がアップされています
 電子音楽は、ダンス文化の良きパートナーとして拡張しています。DJノブとNHKコーヘイとのセッションもあるらしいです。

https://nhkweb.info/

Burkhard Stangl - ele-king

 オランダの即興ギタリスト、ブルクハルト・シュタングルのアルバムが、英国の実験音楽レーベル〈タッチ〉からリリースされた。ブルース・ギルバート&BAWの、ミカ・ヴァイニオ&ジョアシャン・ノードウォール、そしてフィル・ニブロックの新作など今年の〈タッチ〉はかなり充実した(勝負に出た?)リリースが相次いでいるのだが、そのなかでも本作は、いわゆる音響/実験音楽ファンのみならず、より多くの音楽ファンに聴いていただきたい作品に仕上がっている。なぜなら、そのギター演奏に環境音などの簡素/豊穣なレイヤーが重ねられることによって、聴く者の心に深い余韻と、耳に豊穣な快楽を与えてくれる作品に仕上がっているからだ。

 まずは軽く経歴をおさらいしていこう。ブルクハルト・シュタングルは1992年に最初のEP、1995年にファースト・アルバムを発表して以降、EP、コラボレーション・アルバムを含め20作品以上の作品をリリースしてきた。コラボレーターにはクリストフ・クルツマン 、杉本拓、ジョン・ブッチャーなど。

 この新作アルバムは〈タッチ〉からのリリースということもあり、マスタリングをデニス・ブロックマンが手がけ、プレ・マスタリングはクリスチャン・フェネスが担当している(一部の楽曲はフェネスのスタジオで録音された)。となるとフェネスが半ば、コ・プロデューサー的に本作の制作に協力したのではないかとも想像してしまうが、そもそも00年代初頭にギターとノイズをまったく新しい形で融合させた『エンドレス・サマー』を生み出したフェネスは、このアルバムの録音・制作においてはベストなコラボレーターであったのかもしれない。本アルバムの夜の海辺を捉えたアートワークや、“メロウ”、“セイリング”、“エンディング”などの曲名、そしてギターのメロウな和声、音響感覚は、どこか「ポスト・エンドレス・サマー」的な響きを感じるのだ。

 その仕上がりは、まさに演奏=音楽=音響の境界線を緩やかに溶かしてしまう見事なものであった。演奏と環境音を含めてそのノイズのコンビネーションの作品という意味では近年、稀にみる独自の音響空間を生み出しているように思える。実際、ここでの演奏はノイズとなんら相反することなく、同居し融合し空気のように、そこに流れている。本アルバムは18世紀~19世紀の英国の画家、ウィリアム・ターナーの絵画にインスパイアされて制作されたというが、確かに空気や雲、光などの質感と、本作に満ちた静謐かつ生々しい環境音などのアトモスフィアな響きには、どこか共通する質感を感じてしまう。

 むろん、だからといって、ブルクハルト・シュタングルのギターが希薄というわけでは、まるでない。いや、むしろ反対である。ここではまずギターの濃厚な響きや揺れに、環境音(ノイズ)と見事、融解しているのだ。近年、楽器+環境音のエレクトロニカ系のドローン/アンビエント作品は多くリリースされているが、それらとはまったく違う濃厚で個性的なギターの音、響き、微かな旋律、気配が横溢しているのだ。

 ブルクハルト・シュタングルのギターは当然即興で演奏されており、その途切れがちな音の連なりは、霧の向こうの光のような響きと同居することで、聴き手の音の遠近法をズラしていく。だからこそ環境音とのレイヤーが大きな意味を持つのだ。それはただ音を重ねただけのサウンドではない。まるでストローブ=ユイレの映画のショットのような、天井のないような開放感と、木々の葉の揺れを肌で感じるような空気感が成立しているのである。世界の音のありようを即興演奏とともに、ありのままに捉えること。絵画にインスパイアされて制作された本アルバムの音響は、「映画」のもっとも純粋でコアな表現のもとに交錯していく。

 いうなれば、デレク・ベイリーとクリスチャン・フェネスの間を埋める音楽=演奏を、ストローブ=ユイレ的な音響で音盤化したというべきか。この音楽=音響は呼吸を深くする。同時に耳にやさしく触れる風のようもある。そして耳をくすぐる音の快楽に満ちている。その意味で難解な作品ではまるでない。インプロヴィゼーション・ギターの音(=響)の豊穣さ、そしてそれを包み込むサウンドスケープに素直に身を委ねていればいいのだから。

 個人的には全33分に及ぶ1曲め“メロウ”のラスト5分間が堪らない。断片的になったギターの音と、映画のショットのような環境音。遠くで鳴るカラカラと乾いた音。その空気とフィルムのようなサウンドスケープが耳を潤すのだ。そして小ギターの一音の微かな爪弾きで終わる見事な幕引き。つづく2曲め“セイリング”は環境音のアンビエンスからはじまり、やがて世界に自然に介入するかのようなギターの音。なんという見事な構成だろうか。そしてラスト曲“エンディング”は、これはアルバムの終わりであると同時に、冒頭へのループのようでもある。世界のざわめきへ繋がる音響のようでもある。

 本作を聴き終えたとき、あたりに立ち込める濃厚な音と空気の気配に、名盤の誕生に立ち会ったかのような静かな興奮を覚えた。2001年の晩夏と2013年の遅い夏の終わりを繋ぐ音響がここにある。素晴らしいアルバムだ。

interview with CORNELIUS - ele-king


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

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 つづら折りになったジャケットには、内側になるにしたがってどんどん小さくなっていくように四角い穴がくり抜かれ、あたかも「記憶」のより深層へと降りていくかのような演出が施されている。キャラ絵や作品タイトルこそを見せたい・見たいはずのアニメのサントラ盤にあって、これほどミニマルでデザイン性の高いジャケットを提示することはずいぶんと挑戦的であるようにも思われるが、これが『攻殻機動隊』シリーズの劇場版最新作のサントラであること、そしてコーネリアスの仕事であることを考えれば納得だ。シリーズに通底するテーマと世界観がとてもシャープに表現されている。

 監督や脚本、キャストが一新され、“第4の『攻殻』”とも言われる『攻殻機動隊ARISE』。特殊部隊「攻殻機動隊」創設までのエピソードを、ヒロイン・草薙素子の過去に光を当てるかたちで描き出す最新作であり、全4部作となるうちの1作め『攻殻機動隊ARISE Border:1 Ghost Pain』が今年6月に公開、つづく『攻殻機動隊ARISE border:2 Ghost Whispers』が11月30日より全国劇場にて公開となり、注目が集まっている。

 コーネリアスはこのシリーズのサントラを手がけるとともに、「ゴースト・イン・ザ・マシーン」と名付けられたブッダマシーンの最新モデルなどの企画も行っている。経典音読マシンがルーツだったというあの四角い箱のコアに素子ともおぼしき女声(=ゴースト)を宿らせたこのモデルに筆者は震えたが、何よりも、コーネリアスの音楽自体が「楽曲を作る」ということで単純に完結してしまうものではないのだろうということを感じさせる。ヴォーカルにsalyu、青葉市子、歌詞に坂本慎太郎を加えた新鮮なコーネリアス・パーティも、期待を掻き立てるものだ。

 インタヴューでは「空気感」という言葉をひとつのキーワードとして感じた。そしてそれは、筆者が『攻殻機動隊ARISE Border:1 Ghost Pain』のトレイラーを初めて観たときのちょっとした違和感と驚きの源でもあったかもしれない。
 コーネリアスは、ロジカルでディストピックな『攻殻機動隊』の世界に奇妙な空間性を開いている。たとえばこれまで激しいブレイクビーツが多用されてきたような、タフでハード、隙間なくテーマ性と論理が敷き詰められたシリーズのなかに、まさに「空気感」という曖昧なものを感受しかたちにするコーネリアスの手つきは、何か新しい光源をもたらしてはいないだろうか。それはシリーズを一新する本作にちょうどふさわしい違いかもしれない。筆者にはその僅かな違和が、相対的な明るさとして感じられる。 

明るい作品じゃないですか?

でもコーネリアスにしてはダークだと思ったよ。
――うん、そうだと思うんだよね(笑)。

映画の劇伴というのは、依頼がまずどーんと来て、テーマ曲から作りはじめるというような進行なんですか?

小山田:そうですね、まさにそんな感じですね。

オーダー・リストみたいなものがあって、それに従って作っていくというような……?

小山田:そうです。そんな感じです。

そのリストというのは、場面みたいなものが書かれているんですか? 感情みたいなものが書かれているんですか?

小山田:まず台本みたいなものがあって、それに従って音響監督が、「このシーンでこういう音が欲しい」というようなことを指定してくるんです。「何秒で落ちる」とか「何秒でまたアップ」っていう感じで。

なるほど作るのも秒単位なんですね。その指定に基づいてどんどん収めていくわけですか。

小山田:基本的にはそうなんだけど、結果として指定された箇所とは違うところで使われたり、まるまるなくなっていたりすることもありますね。場面に合わせて編集されていたりとか。だから、言われたとおりに作るんだけど、言われたとおりに使われるとは限らないという感じです。

お題というよりも、台本に沿ってオーダーがあるんですね。

小山田:そうですね。でも、言われていたシーンと違うところで使われるのが逆におもしろかったりはしますね。

どう使うかということですよね。……ということは、作りはじめる前に台本なりを通して作品への理解がはっきり生まれているわけですか。

小山田:うっすらと(笑)。

(一同笑)

では作品理解ありきというよりは、コーネリアスというアーティストとの綱引きが求められている感じなんでしょうか?

小山田:いえいえ、そこは作品ありきなんですけど、それも感じつつ自分なりの解釈で作っていくということかなと思います。

「サントラってこういうものだな」とあらためて感じられた部分はありますか?

小山田:やっぱり、基本的に暗い話なので、感情も限定されてくるというか。そんなに明るい感情というのはなくて、ちょっとしたユーモアみたいなものはキャラクターによってはあったりするんだけど、中心になるのはダークな世界観ですよね。あとはバトルとか心理的葛藤とか。それも段階がいくつかあって、すごい深いものからニュートラルなものまで幅があるんだけど、基本的なところは限定されていきますかね。この映画の世界観に沿っていくと。
そういうものは自分のなかに日常的に持っているわけではない、パーセンテージとしてはわずかにしかない感覚なので、そこを増幅して作品にできるのはおもしろいなと思いました。

ああー、まさにそこもお訊きしたかったんですが、『攻殻機動隊』って近未来の過剰な管理社会をディストピックに描くものですよね。おっしゃるように基本的に暗い世界だと思うんですが、サントラにはわりと一貫して明るい印象を受けるんです。柔らかい光源を感じるというか。明るさを意識したりはしませんでしたか?

野田:でもコーネリアスにしてはダークだと思ったよ。

小山田:うん、そうだと思うんだよね(笑)。

そうですか。小山田さんの特徴というだけのことかもしれないですが、でも暗いイメージに寄り添う以外に、ご自身のなかにもう少し違うイメージがあったりはしませんでしたか?

小山田:うーん、そんなに強く意識はしてないんですけれど、無意識に自分にちょうどいいバランスに調整している部分はあるので……。まあ、こういう感じになっちゃったというところ(笑)。


「音楽メニュー」と呼ばれる楽曲のオーダー・リストには、カット番号と「混乱」などの簡潔なテーマが記されている。 はじめはミュージック・ヴィデオのように細かくタイミングを合わせて作っていたものの、セリフ等との兼ね合いもあり、その後の段階でのエディットは音響制作側にまかせたとのこと。

音にするときに、とくにポイントになる視覚的要素というとどんなところですか?

小山田:それはたくさんあって、最初はそういうものに偏執的に合わせて作ってたんだけど(笑)、結果ズレていったり修正が大変だったりして。

要素としては動きとかになりますか?

小山田:うん。動きですね。あと、色味が変わるとか、カットが変わるとか。

表情とかエモーションとかっていう内面的な要素よりは、アクションとか場面転換みたいなものに音が影響されるという?

小山田:それは両方ですね。

今回の『ARISE』は、まだ未熟な(草薙)素子の揺れる内面とか、孤独な闘いとかが印象的ですよね。昔のシリーズ(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』)は公安9課というチームワークもあったりしてグルーヴィーなんですけど、それに比べてよりインナーなテンションがあるように感じます。でも、小山田さんの音楽って、そういうインナーなもの……気持ちみたいなものを文学的にしないというか、そういうものをどちらかといえば無視していくもののように思うんです。

小山田:なるほどね。気持ち……。気持ちというより雰囲気という感じですかね(笑)。

ああ、なるほど。空気みたいなものとかでしょうか。

小山田:ストリングスで泣きメロを入れたりとか、そういうハリウッドっぽいスコアリングじゃなくて……。そうですね、メロディってエモーショナルで内面的なものを表すって一般に言われるけど、もうちょっと空気感で内面的なものを表すことができるっていうか。まあ、「内面的なもの」って、わかんないんだけどね(笑)。空気感で「内面」とかその状況を表すという、どちらかというとそんな要素の方が大きいのかもしれないですね。

よくわかります。小山田さんは、近年は『デザイン あ』とか『CM4』ですとか、リミックスとかサントラのリリースが続いていますけれども、そういうものはオリジナル・アルバムでキャリアをつきつめていくというのとは逆で、人と人との間とか、社会のなかで機能する音を考えていくという仕事になると思います。小山田さんには、そうした作品制作を通して見える、社会の色とかってありますか?

小山田:うーん、色って言われて思い出したのは、オウムの事件があったときに「世界は黄色だ」っていうような歌を歌っていたことですかね。テレビで、誰だったか容疑者の人が「世界は黄色だ」って。

ええー、すごい感性ですね。黄色ってちょっと出てきませんでした。それはなんだかインスパイアされるお話です。

野田:すごいねえ。

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アニメOPの条件

アニメのオープニング・テーマって、タイトルも言ってほしいし、必殺技の名前とかもできれば言ってほしい(笑)。


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

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野田:映画のサントラとかって、今回が初めて?

小山田:ちゃんとしたのは初めてだね。

野田:サントラとか好きだったじゃない? いまはないけど、渋谷の「すみや」っていうレコード屋で、日本盤で出てないイタリア映画のサントラとかを漁っていた人なわけだから。

小山田:あははは。そのときからそうなんですけど、観たことない映画のサントラとかを聴いたりしていて、それ自体は何かの映画のなかで機能させるために作られたものなんだけど、iPodとかで聴くとまったく別のもののようにも聴こえるというか。その映画と切り離されたところで楽しめる部分っていっぱいあって。
そういう意味では音楽って器というか、何かのために作られたものが別のかたちで機能することがありますよね。サントラはとくにそうかも。だから、僕はこのサントラを『攻殻機動隊』のために作ったけれども、それを切り離した部分でも聴けるものにしたいなというところはありますね。

アニメ音楽で参照されたものとかはありますか?

小山田:わざわざ聴いたりとかはしていないんですけど、“ゴースト・イン・ザ・シェル・アライズ”っていう『ARISE』のテーマ・ソングでは、頭にあったのは『ルパン三世』のはじめの曲ですね。「ルパン~ルパン~」って、ひたすらルパンっていうタイトルを連呼する曲で、それを意識しました。「ゴースト・イン・ザ・シェル」をひたすら連呼する、みたいな。

へえー。

野田:なんで『ルパン』だったの?

小山田:『ルパン』がっていうより、タイトルを連呼するっていうところですかね。僕のなかでは、アニメのオープニング・テーマって、タイトルも言ってほしいし、必殺技の名前とかもできれば言ってほしい(笑)。ちゃんとそのコンセプトに合ったものが入っていてほしいっていうのがあって。それで、アニメ「らしい」オープニング・テーマというと、どうしても『ルパン』が出てくるという感じです。

小山田さん的なアニメOPの条件みたいなものが、ちゃんと入っているんですね。

小山田:うん。それに、ひたすら繰り返すから曲のミニマルな構造に合うというか。そういう曲って他にないなと思って。

連呼というところでは、「きおくきおくきおく……」(“じぶんがいない”)もそうかと思いますが、「記憶」も『ARISE』のひとつのテーマですよね。記憶が勝手に操作されたりいじられたり、不安定で信用できないものとして描かれています。この曲はそのテーマをそのまんまというか、かなり直接的に使っていておもしろかったんですが、音節ごとに「き」「お」「く」と切ってエディットされているのも、やっぱり「記憶をいじる」というようなテーマを意識してのことなんですか?

小山田:歌詞は坂本(慎太郎)君が書いてるんだけど、それは曲の後にできたものなので、最初から音のなかに「記憶」という言葉が当てはまっていたわけじゃないんだよね。ただ、素子が「義体」というキャラクター――人間とロボットの中間、アンドロイド的なものなので、あんまり人間ぽくない編集で作ったヴォーカル・ラインが合うのかな、とは思っていて。
歌詞は、最初に「き、き、き」ときて、次に「きく、きく、きく」ときて、最後に「きおく、きおく……」となるんですけど、「一文字でも意味があって、二文字でも意味があって、三文字でも意味があって、という構造になっている言葉が何かないかな?」って坂本くんに相談したら、「きおく」っていう言葉を出してきてくれたんです。

へえー、必ずしもテーマから来たものではないんですね。

小山田:もちろん坂本くんは、ちゃんと脚本を読んで言葉を選んできたとは思うんだけれども。

なるほど。戦後詩では最初、谷川俊太郎の『ことばあそびうた』みたいなものが精神的に低いものとして厳しい評価を受けていたようですけれども、言葉遊びみたいなものの方が、逆に空気を受容する器にはなりやすいのかもしれないですね。
 詞が後に上がったということですが、今回、詞のついているものは全部そうですか?

小山田:うん。

それをまた組み替えるということですか。

小山田:あ、組み替えはしないですね。

そのままでしたか。では、本当にうまくはまっているんですね。

小山田:そうですね(笑)。

ブッダマシーンは草薙素子の夢をみるか

あれは、もともと中国にあった「電子念仏機」っていう機械がモデルになっているんですよ。

なるほど。ところで、「ゴースト・イン・ザ・マシーン」という新しいブッダマシーンとダミーヘッド・マイクを使って、動画を撮っておられますね。あれはどこから来たアイディアなんですか?

小山田:ダミーヘッド・マイクに関しては、たまたま使っていたスタジオにあったんですよ。ブッダマシーンを作ったんですけど、あれってたくさんで鳴らすとおもしろくって。いろんな層で音楽が流れていて、ずっとドローンで、ピッチも変えられるし、演奏みたいなこともできるし。あのときは同時に4台使ってるんですけど、おもしろかったですね。

ダミーヘッド・マイクって、まだまだおもしろい使い方があるんでしょうか? ドラマCDみたいなものではさかんに使用されていますけれども。

小山田:ん? ドラマ?

はい。お話とかセリフの朗読が収録されているCDなんですけど、耳もとで甘い言葉を囁かれるとか、そういうことがリアルに感じられるようにダミーヘッドで録音されていることが多いんです。でも、音楽でそんなふうにうまいこと使用されている例はあんまりありませんよね。

小山田:たしかにね。CDでやってもあんまりよくわかんないというか。ダミーヘッドを使ってる例だと、マイケル・ジャクソンとかルー・リードとかもやっているんですよね。

へえー。

野田:ルー・リードも?

小山田:そう、他にもいろんな人がやってるんだけど、「ギター、ドラム、ベース」みたいな音楽で使ってもべつに何もおもしろくないというか(笑)。

それはそうですよね(笑)。以前に読んだインタヴューで、髪の毛を耳元でちょきんと切られる音が立体的に再現されたCDで感動されたというお話をされていたように思うんですが……。

小山田:うん。やっぱりいちばんおもしろいのは髪の毛をきってもらったりとかだよね。

なるほど(笑)。このマイク自体はけっこう歴史の長いものなんですね。

小山田:うん。80年代くらいからかな……。70年代くらいからあったっけ?

その頃からの進歩ってあるんでしょうか?

小山田:だいぶ進歩しているんじゃないですか? ダミーヘッドじゃなくてさ、ヒューゴ・ズッカレリっていう人がいて、知ってる? アルゼンチンかどこかのちょっとマッド・サイエンティストみたいな人で、詳細は明かしていないんだけど、立体音響に関してちょっとすごい録音技術を持っている人なの。マイケル・ジャクソンとかはそのやり方を使っているみたいなんだよね。それはダミーヘッドではないって言われてるんだけど、どういうノウハウかはわかってない。

へえー。

小山田:サイキックTVとかもそうだよね。80年代後半とかに、一時期すごい話題になってた。

野田:あー、そうだったね。

あの動画に関しては、「あ、頭の後ろ通った!」っていう気持ち悪い感触とかが生々しくあって、おもしろかったです。小山田さんにとっては、旋律とかそれがリニアに導いていく物語じゃなくて、こういう体験のようなもののほうにより興奮があるんじゃないかなと思いました。

野田:ほとんどそうでしょう。ライヴとかを観るとほんとにそうだよ。

小山田:はははは。

音響体験のほうが優先される。

小山田:まあ、このサントラに関してはわりとそういうものですよね。

GHOST IN THE MACHINE
https://www.jvcmusic.co.jp/ghostinthemachine/

テーマ性がたしかに色とか空気みたいなものとして感じられます。では、ブッダマシーンのほうはどうでしょう? そもそもはあのガジェットのなかにブッダがいる、というジョークみたいなものだったように思うんですけれども。

小山田:あれは、もともと中国にあった「電子念仏機」っていう機械がもとになっているんですよ。お経を自動で流してくれる機械。それをみんな流しながらお祈りとかをしていたみたいで。それを、中身をミニマルっぽくしてあんなかたちに仕上げたのがブッダマシーン。

実用的なものだったんですか!

小山田:そう。昔、中国に行ったときにお土産でもらったことがあって、それには本当に念仏が入ってた。形とかもだいたいあんなものですね。わりと最近になって中国の若い人がブッダマシーンのかたちにしたっていう。

そうなんですね。わたしもシリーズの最初のマシーンから知っているんですが、てっきりヨーロッパが作り出したオリエンタルなジョークみたいなものだと思っていたんです。そんな日用品だったとは意外ですね。

小山田:うん。ふつうにあったものなんだよね。

なるほど。そうすると余計おもしろいんですが、『攻殻機動隊』には、ロボットとかマシンみたいなものにゴーストが宿ることがあるか、あるとすればどんな条件のときか、っていうようなテーマも通底していますよね。ブッダマシーンの「機械のなかに宿った声(=ゴースト)」っていう性格は、なんてこの作品にぴったりなんだろうって思ったんです。

小山田:はははは。「ゴースト・イン・ザ・マシーン」っていう名前つけてるしね。

野田:あ、意識しているんだ。

小山田:もちろん。

あれ? このブッダマシーンのアイディア自体、小山田さんのものなんですか?

小山田:そうです。

そうなんですか! これ、すごくびっくりしたんですよ。よく『攻殻』とブッダマシーンが掛け合わさったなって、すごく不思議だったんです。いままでのブッダマシーン・シリーズでいちばん気がきいていると感じましたし。実際に声優さんの声が入ってるんですか?

小山田:声優さんの声は入ってなくて……、あ、ちょっと入ってるか。でも基本は声優さんの声じゃないんです。

へえー。「機械のなかの心」みたいなものへのロマンチックな気持ちは、小山田さんのなかにありました?

小山田:……なかったね(笑)。

(一同笑)

野田:そこまで少年じゃなかった(笑)。

ははは。すっごいドライなんですね。バトーさんが天然オイルを与えつづけたタチコマにだけは、ゴーストが宿った? みたいなエピソードもとても印象でしたけれども、そういうロマンティシズムも作品を牽引する強さだと思うんですね。ものに宿るゴースト、みたいなものはぜんぜん感じませんか。

野田:『ファンタズマ』の人だもんね。

小山田:(笑)そういうのとはちょっと違うかもしれないんだけど、何かつかみきれないものというのは意識していて。曲の構造だったりもそう。“ゴースト・イン・ザ・シェル・アライズ”も、ただ「ゴースト・イン・ザ・シェル」って言っているだけなんだけど、頭のなかに残らないというか……。同じように展開しているように聴こえるかもしれないんだけど、実際はぜんぜん解決しないままどんどん進行していくっていう構造になっていて、そこはつかみきれない感じを意識してはいますね。

すごく複雑で、複雑すぎて不透明になっている感じでしょうか。でも、そういうつかみきれない模糊としたものが表現されつつ、やっぱりコーネリアスって、音は透明になる感じがするんです。その透明な感じは、この新しいシリーズのなかにも大きなインパクトを与えていると思うんですけどね。

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おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった

「おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった/ほら 静か」(“外は戦場だよ”)っていうところがあるんだけど、そういうところに共感しますね。


Cornelius
攻殻機動隊ARISE O.S.T.

flying DOG

Tower HMV iTunes Amazon

ここ数年、音楽シーンのひとつのモードとして、ちょっとニューエイジなものがリヴァイヴァルしているところがあるんですね。(クリスチャン・)ラッセンにスポットが当たったり、「シーパンク」って呼ばれるようなファッションが注目されたり……

小山田:ええ! ラッセンなの?

そうですね。何かとイルカなムードなんです。

野田:ほら、90年代リヴァイヴァルでもあるからさ。

小山田:ああ、(ジ・)オーブとかの感じ。

野田:そうそう。

はい。一方にそういうちょっとドリーミーでメディテーショナルな感覚があって、そこではあんまり暗い気持ちとか、絶望みたいなものは鳴らされていないんですね。どこかでそういうモードを感じられていたりしたところはありませんか?

小山田:そういうムードがあるっていうのは知らなかったけど(笑)。

ふだんは社会というところが暗いというふうに感じますか?

小山田:まあ、暗いといえば暗いし……。

すみません(笑)。「暗い曲が多い」という認識に対して、どこか明るく感じられるところにこだわりたかったので……。90年代リヴァイヴァルということについては、何か感じられている部分はありますか? ハウスとかR&Bを中心にして、いま本当にそんな機運なんですよ。

小山田:あんまり感じないですけど、まあそろそろかな、という気はしますよね。

野田:これからどんどん感じると思いますよ。

小山田:ひととおり80年代の巡回も終わってるように見えるから、90年代にちょっとフレッシュな感じがあるんだろうなとは思います。

野田:フリッパーズ・ギターとかがね。

血を引くような存在が出てきていますよね。

野田:フリッパーズ・フォロワーみたいなバンドが、新鮮な感じで受け入れられているんだよね。

小山田:ほんと? 絶対(フリッパーズのこと)知らないでしょう?

野田:いやいや、ぜんぜん知ってるよ。20歳くらいの子たちにしてみれば90年代ってすごく新しいからね。

小山田:そっか。年齢的には僕らの子どもくらいになってくるよね。その子たちが生まれたころが90年代くらいでしょ? ちょうど、僕たちに60年代とか70年代のものがカッコよく見えたのとまったくいっしょなことなんだろうね。

リヴァイヴァルっていう意味はおいておくとしても、ハウスを意識した部分はなかったですか? わりと「ドッチンドッチン」っていうトラックが入っているんですけれども、ちょっと新鮮でした。

小山田:うん、「ドッチンドッチン」はわりと入ってますね。

躍動感を出すため、みたいな理由でしょうか。いまわりと世間的にこういう気分だっていうふうに感じていた部分はないですか?

小山田:うーん、両方かな……。

野田:でもダンス・ミュージックを作ってるっていうところは、トピックだね。わりと直球なね。

そう思います。

小山田:うーん、そうかもね。

野田:だって、『カメラ・トーク』の福富(幸宏)さんがリミックスした曲(“ビッグ・バッド・ビンゴ”)、あれをいまみんな探してるんだよ!

小山田:ええ、うそ! へえー……。若い子が?

野田:そう。しかも日本人だけじゃなくてね。

小山田:そうなんだ。

あとはクラウトロックっぽいものの気分もありました。2000年代後半は、若いバンドやアーティストにすごく参照されて、スターも生まれて。“スター・クラスター・コレクター”とかも、ちょっとそういう琴線に触れるんじゃないかと思います。

小山田:へえー、そうなんだ。でもまあ、どっちも偶然かなあ。クラウトロックはずっとあるといえばあるし。

それもたしかにそうなんですけど、ジャンルをまたいで一気にメディテーショナルなモードが広がって、そのなかでクラウトロック的なものの存在感はとても大きいものだったんです。
……というムードもまだ余韻を引いているなか、“外は戦場だよ”というボーダー2(『攻殻機動隊ARISEborder:2GhostWhipers』)のエンディング曲が鮮やかでした。小山田さんには「外は戦場」というような感覚はありますか?

小山田:外は戦場……。うーん、どうなんだろうね。

言葉尻からすると酷薄な世界観のようにも見えますけれども。

小山田:いや、そういうことよりも……。なんて言ったらいいのかな……。最後の方に「おおきなこえをだすひとたちはみないなくなった/ほら 静か」っていうところがあるんだけど、そういうところに共感しますね。

ああ……。それは、「おおきなこえをだすひとたち」は、干渉するものっていうような感じでしょうか。暴力とかもふくめて。

小山田:うーん、そうね……、ほっといてほしい感じ。……何なんだろうな(笑)。

ここはとっても両義的な部分かと思うんですが(※)、「ほら 静か」は、肯定的な感じですか? そうならざるを得なくなってなったという静かさですか?
(※詞のなかばに「心配ない/見て/外は/戦場だよ」という逆説がある)

小山田:うーん。

より自分にとって居やすいところになったのか、その逆なのか……。

小山田:なったんだかなっていないんだか、実際はよくわからないんだけど、どっちも含んでいる感覚なのかな。

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順不同。最近よく聴いたりプレイしているものです。


Don't DJ - RID.EM (Diskant)

Gunnar Haslam - Mimesiak (L.I.E.S)

Muruga & Big Black - Sangoma Drums (Sagittarius A-Star)

V.A - Livity Sound (Livity Sound)

Floorplan a.k.a ROBERT HOOD - Paradice (M-Plant)

Och - Surveillance Network EP (Sect)

Dino Sabatini Meets Donato Dozzy - Journey Back To Ithaca (Outis Music)

Miles - Faint Hearted (Modern Love)

元 ちとせ - ワダツミの木 with Sly&Robbie

Lindamann - Ritual (Golinda Recordings)

Jazzdommunisters - ele-king

 このコンセプト・アルバムは複数の位相において挑戦的で、作品を賞賛すること自体も挑戦となるかもしれない。え、あの菊地成孔と大谷能生のヒップホップ・アルバムでしょう~という先入観と偏見が、ある人はどうしてもあるでしょう。なにせ、あの、ひとクセもふたクセもある菊地成孔と大谷能生だ。僕自身にもそれがまったくなかったとはいえない。たとえば、理詰めで作られるヒップホップに生気はあるのか──もし君がそう思っているなら、間違っている。多かれ少なかれ、理屈がなければ作品は作れない。音楽に気持ちが必要だとするなら、『Birth of Dommunist』には唖然とするほど気持ちが横溢している。そして、彼らは自分たちをさらけ出している。格好付けているが格好付けていない。こそこそしていない(ま、ドミューンにはじまっているのだからこそこそしようがない)。
 なんて、偉そうなことを僕が言えた義理でもない。僕がこのCDと出会ったのも探求心からではなく、偶然によるものだった。たまたま、数年ぶりに見たデート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの素晴らしいライヴ演奏が、会場で売られている本作を買うことに迷いを与えなかったのである。ジェイク・バグは新作で、「俺たちはそれを言葉にすると誰かがツイートするんじゃないかと恐がっている」と歌っている。それではツイッターを恐がらずに書いてみよう。我々は村社会を出て、アーバンに生きているのだから。

 そして、俗事に耽り、ゴミの山から聖なるものをほじくりだそうとする。『Birth of Dommunist』からは、まずはそんなアンビションを感じる。ジャズとヒップホップ、そのふたつの混合に関しては、マッドリブにせよ、フライング・ロータスにせよ、目新しい試みではないのだが(20年前は、ジャズをサンプリングしただけでジャズ・ヒップホップなんて呼ばれましたな)、ジャズドミュニスターズのジャズ・ヒップホップは、彼らなりの根拠にもとづいている。ジャジーな雰囲気を楽しむものとは違って、より実践的で、よりコンセプチュアルだ。ラップのフロウ(フリースタイル文化)はジャズの即興性において再解釈され、ヒップホップ・ビートの先鋭性は彼らの回路のなかで読み取られる。彼らなりの確固たるジャズがあり、ヒップホップがある。新宿二丁目を彷彿させるニューウェイヴ・ディスコ風の曲もある。

 ジャズとヒップホップ、言うまでもなく、ともに夜の都会の喧噪のなかで研ぎ澄まされた夜行性の文化だ。陶酔がなければ人は集まらないし、高揚がなければ人は喜ばない。ゲスで、なおかつ高尚でなければならない。『Birth of Dommunist』はそうした要望に応える。アルバムのオープニングは、ばかばかしく、酔っぱらっているかのように、ふざけている。フランス語と英語を交えての悪ふざけは、かたや呆れられ、かたや彼らへの偏見を逆なでするかのようだが、2曲目の、絶妙につんのめるエレクトロ・ファンク・ビートが鳴り響けば、場面は転換して、数秒後にはこの音楽から離れられなくなっている。菊地成孔からOMSBへとマイクは渡され、『Birth of Dommunist』のいびつさの片鱗が見えはじめる。いびつさ、猥雑さ、カオス……
 飲み屋のカウンターにずらっといろんな世代が並んでいるように、ベテランのジャズマンが20代のラッパーとマイクを交換し合っている。それ自体が画期的といえば画期的だ。複数のラッパーがいて、アルバムのなかではフロウの種類の違いを意図的に見せているという話を、次号紙エレキングの取材において菊地成孔はしてくれたのだが(本人のラップは、近田春夫をはじめとする日本のオールドスクールを意識したもの)、MOEが参加しているように、『Birth of Dommunist』はラップ以前のポエトリー・リーディングにもアプローチしている。語彙の多さはジャズドミュニスターズの武器のひとつだ。饒舌で知られるふたりは、なかばダーティに、言葉で楽しませることを忘れない。
 もちろん、OMSB、DyyPRIDE、MARIAといったシミラボからの3人、MOE、市川愛らの客演も“売り”になろう。個人的に言えば、シミラボの3人が参加しているということも購入の動機になっている。だが、このアルバムの大きな魅力は猥雑さにあると僕は見る。猥雑さは、放漫さは、ジャズドミュニスターズの衣装であり、素振りであり、故郷だろう。
 「街の中で、生まれるということは、 一生を放浪して過ごし、自由であることを意味する。」──“HERE & THERE”において朗読される吉田健一の訳によるヘンリー・ミラー『暗い春』に、菊地成孔はジャズドミュニスターズのコンセプトを代弁させている。そして、この見事な引用は、いまも呼吸しているアーバン・ミュージック/ストリート・ミュージックへの賞賛と共感を意味しているかのように聴こえる。都会の詩人は他界したが、都会の詩は生き続けているのである。
 だが、『Birth of Dommunist』がベテランのジャズマンと若いラッパーによる、よく練られた都会の叙情詩というだけの作品であったのなら、僕はこんなレヴューを書かなかった。アルバムの本当のクライマックスは、DyyPRIDEとMOEをフィーチャーした“Agitation”という曲にある。こんなにもむき出しに、怒り、アンガーを表明にしている菊地成孔は見たことがない。いちど聴いたら忘れらないほど、その怒りは堂々としていて、力強い。そのとめどなく溢れる感情は、知性のある、大人な彼らをもってしても、予想外の、即興的な発露だったのではないだろうか。

 追記:本日29日、エレグラで出店しております。橋元優歩もいるので、彼女に励ましのひと言を! 編集部はつねにヒップな殺し屋=ライターを募集しておりますので、そんな夢のある方も声をかけて下さい。午前2時ぐらいまでなら、生きていると思います。

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