「Nothing」と一致するもの

Ekoplekz - ele-king

 エレキング読者のみなさん、はじめまして、こんにちは。禁断の多数決というバンドで音楽活動をしているシノザキサトシです。そして、いきなり宣伝で申し訳ないのですが、禁断の多数決のセカンド・アルバム『アラビアの禁断の多数決』はもう聴いていただけたでしょうか? まだ聴いてない。または知らない方がいらっしゃいましたら、ぜひ聴いてみてくださいね。そして聴いて良いと思ったら、まわりの友だちにも教えてあげてください。きっとエレキング読者のみなさんなら気に入ってくれると思います。そんな、おもに音楽活動をしている自分ですが、縁があってレヴューを書かせてもらえることになりました。自分は音楽も文章も基本的には同じ感覚で取り組んでいます。足したり引いたりしながら、固めていく作業は楽しく、日頃の嫌なことを忘れさせてくれます。ましてや文章は、紙とペンさえあればどこでも書けるのです。漢字ができなくてPCで文字を入力することでしか書けない自分が、紙とペンさえあれば、とか、悦に入って気取ったことを言ってしまいましたが、どうかお許しください。なにせこれが初原稿ですので。そして下記がエレキングでの初レヴューとなります。読んでおもしろかったら、まわりの友だちにも読ませてあげてくださいね。それではよろしくお願いします。

 編集部にお邪魔した際、野田さんからエコープレックズのニュー・アルバム『アンフィデリティ』のCDをポンと渡され、これのレヴューを書いてみるかと言われた。すぐに家に帰ってCDを再生させてみた。そして思ったこと。謎すぎる!! この感覚は久しぶりに味わったように思う。スペインのインダストリアルバンド、エスプレンドー・ジオメトリコ(Esplendor Geométrico)を初めて聴いたとき以来かもしれない。いや、それよりも、もっといびつに聴こえた。

 この掴みどころのなさはなんだろう。〈プラネット・ミュー〉から出したこともあってか、そのワードともリンクして、ブリストル発というより、宇宙発の音みたいに感じる。そして、繰り返し聴いているうちに、ポール・アンダースンのSF小説、『タウ・ゼロ』を思い出したのだった。その理由は後で述べるが、知らない読者に『タウ・ゼロ』の内容を簡潔に説明すると、この物語は、設定があまりにもデカすぎて、語っていることすべて気違いじみていると言うことだ。読んでいるうちに、知らず知らずこの自分の生きている現実の世界が、ちっぽけで滑稽なものに成り下がっていく、そんなリアルさえも危うくさせる恐怖小説。

 こんな書き方をすると、読者は大げさだと思うかもしれないが、読めばきっとわかってもらえると思う。たとえばこうだ「宇宙船は光速に近い速さで進んでいる。その為、船内ではたった数時間の経過も、船外では既に数世紀が過ぎてしまった」と飄々と語って読者を脅かしたと思えば、さらには「ここまで進むと地球はとっくに消滅した、宇宙さえも終焉を迎えつつあるのかもしれない」などと、しれーと言って、読む者を宇宙特有の虚無の世界に引きずり込もうとする。意味わからなさすぎて怖い。だがひっくり返すと全部バカバカしいようにも思えて、妙な多幸感が湧いてきたりする。そして思わずニヤリとしてしまう。それが『タウ・ゼロ』の魅力だ。

 要するにエコープレックズのニュー・アルバムは、『タウ・ゼロ』的な──意味わからなくて怖いけど、でもなんだかバカバカしい、そんな要素が存分に詰まっている作品のように思えるのだ。ニック・エドワーズ本人名義で〈エディションズ・メゴ〉から出している音も聴いてみたのだが、やはり同じことを思った。彼の音には、彼だけが理解している理論や哲学が音に滲み出ていて妙な怖さがある。その反面、チープで若干肩すかしな音を次から次へと散らかしながら出してきては知らん顔をする、子どものような無邪気さもある。そして宇宙のように音の中心がどこにあるのか見つけることができない。もしかしたら当の本人も作品がどこへ向かって、どこに着地するのか見当もつかないで録っていたのかもしれない。ニックがアナログ機材といっしょに宇宙船に乗り込んで、あとは野となれ山となれ、成り行き次第、エフェクター同士の化学反応次第という、カオスな宇宙旅行をして得たものではないのか。

 いまいちピンとこなかった読者のために、もうひとつ書いてみようかと思う。これはずいぶん昔の話だが、学生時代に、エコープレックズを初めて聴いたときのような恐怖体験をしたことがある。それは帰宅途中にカセットテープを拾ったのがきっかけだった。昔は道端にカセットテープやらVHSテープがいかがわしい雰囲気を醸し出しながらよく落ちていたものだ。いまでも自分は、なにかしらの記録媒体が道に落ちていると、必ず拾って持ち帰る。いやらしい気持ちでCD-RとかDVD-Rとか再生させて、何が飛びだしてくるかを楽しむのが好きなのだ。このときもそれと同じ感覚で、デッキにカセットテープをセットして、こっそり再生してみた。そして流れだした音に唖然とし、ショックを受けた。いったいこのテープはなんだ? 流れてきたのは感電しそうなビリビリ鳴ってるだけの電子音やモールス信号のような謎めいた音、怪しく奏でられるストリングスや英語でなにか警告しているように聞こえる男の声。なんだか聴いてはいけないものを聴いてしまったようなヤバい感覚に襲われた。誰かに殺されるかもしれないと真面目に思った。いますぐこのカセットを持って警察に相談しに行こうかと迷ったくらいだ。だが、何度も聴いているうちに慣れてきて、この意味のわからなさが快感になり、結局のところ、しばらくこのカセットを愛聴してしまっていたのだった。
 後にそれは『アウターリミッツ』のなんでもないただのサントラだと知ったのだが、しかし、それと解るまでは、掴もうとしても何も掴めない感覚、ソース不明な怪しさで魅力いっぱいのヤバいものだった。この感じはエコープレックズの音楽とかなりの部分で重なると思う。そして、そういう感性はいつまでも大事にしたい。想像や妄想や深読みの余地がたくさんある作品は、いつの時代であれ刺激的だから。エコープレックズのニューアルバム『アンフィデリティ』はそれをじゅうぶんに満たしてくれた。だからこれからもよくわからないながらも、何回も繰り返し聴くことになるだろう。

R.I.P. Frankie Knuckles - ele-king

 ハウス・ミュージックのゴッドファーザー、フランキー・ナックルズが3月31日、かねてから煩っていた糖尿病の合併症ためにシカゴで亡くなった。言うまでもなく、今日僕たちがハウス・ミュージックと呼んでいる音楽を大衆化したのは、1955年1月18日にブロンクスで生まれ、1977年にシカゴの〈ウェアハウス〉というクラブのレジデントになったこのDJである。

 僕たちがハウス・ミュージックによってどれだけの幸福を味わったのかということを、どれだけ救われたのかということを、いまさら思い返すまでもない。フランキー・ナックルズの功績はあまりにも大きく、その損失は計り知れないほど大きい。ベッドルーム・ミュージックを最初に大衆化したのはシカゴ・ハウスだった。ロックンロールだってハウスに救われた時代があった。
 フランキー・ナックルズは、音楽のみならず、ゲイ・カルチャーにも素晴らしい影響を与えている。彼は、ハウス・ミュージックはゲイに自信を与えることができた文化だと胸を張るのことのできたDJだった。

 すべてのクラブ・ミュージック・ファンにとってのクラシックであり、多くの人たちを最高の気分で舞い上がらせた“The Whistle Song”(1991年)をはじめ、ジェイミー・プリンシプルとのセクシャルな“Your Love”や“Baby Wants To Ride”(1987年)、富家哲との“Tears”(1989年)などなど、彼が残した多くのクラシックはこの先もクラブでプレイされ続けるだろう。若いリスナーにも受け継がれ、聴かれ続けるだろう。永遠のダンス・ミュージックとして。

 いまはただただ悲しい。ハウス・ミュージックの偉人にあらためて最大限の敬意を表し、彼が残した美しい音楽をひたすら聴いていたい。

Shintaro Sakamoto - ele-king

 坂本慎太郎の、セカンド・ソロ・アルバムが2014年5月28日(水)に、彼自身のレーベル〈zelone records〉からリリースされることになった……という情報は、みなさんもご存じかと思いますが、アルバム・タイトルも『ナマで踊ろう(Let's Dance Raw)』に決まったと、レーベルからメールが来ました。以下、レーベルのメールいわく「全くトロピカルではないスチールギターが、底抜けに明るいバンジョーが、人類滅亡後の地球でむなしく鳴り響く。構想&妄想約2年、坂本作品史上最もシリアスで最もポップな、入魂のコンセプトアルバムが完成しました」
 〈zelone records〉、続いていわく。「今回のレコーディングは、もはや坂本作品には欠かせないドラマーとなった菅沼雄太に加え、新たにベーシストとしてOOIOO等で活躍するAYAを迎え、トリオのバンド編成で入念なリハーサルを重ねた後に行われました。M-1のみ坂本がベースを弾いています。菅沼はドラムの他にパーカッションとコーラス、AYAはエレクトリック・ピアノとコーラスも担当しました。その他のゲストプレイヤーには、サックスとフルートに西内徹、ヴィブラホンに初山博、M-1のボーカルとコーラスに中村楓子、そしてエンジニアは中村宗一郎と、いずれも坂本作品ではおなじみのメンバーが強力サポートしています」

 2年前の『幻とのつきあい方 (How To Live With A Phantom)』において、ポップソングを探求した坂本慎太郎が次に何をやるのかは、我々にとって大いなる関心事である。リリースされるのが、とても楽しみだ。曲名を見ているだけでも、ワクワクするね!

www.zelonerecords.com
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2014年5月28日(水) zelone recordsより発売!
──初回限定盤のみ紙ジャケ仕様 / 初回&通常盤共に2枚組仕様──

ナマで踊ろう / 坂本慎太郎
Let's Dance Raw / Shintaro Sakamoto

01. 未来の子守唄
02. スーパーカルト誕生 
03. めちゃくちゃ悪い男 
04. ナマで踊ろう 
05. 義務のように 
06. もうやめた
07. あなたもロボットになれる 
08. やめられないなぜか
09. 好きではないけど懐かしい 
10. この世はもっと素敵なはず 

All Songs Written & Produced by 坂本慎太郎

品番: 初回限定盤: zel-012s / JAN: 4582237829204
通常盤 : zel-012 / JAN: 4582237829211
価格: 初回限定盤 ¥2,600+税 (紙ジャケ仕様/2枚組/BONUS CD付)
通常盤 ¥2,600+税 (2枚組/BONUS CD付)

Distribution: Bridge Inc. 03-3710-8049 https://bridge.shop-pro.jp/
More Info: zelone records: 03-6805 4232 info@zelonerecords.com


■坂本慎太郎 Profile■
1967年9月9日大阪生まれ。
1989年: ロックバンド、ゆらゆら帝国のボーカル&ギターとして活動を始める。21年間で、3本のカセットテープ、10枚のスタジオアルバム、1枚のスタジオミニアルバム、2枚のライヴアルバム、1枚のリミックスアルバム、2枚組のベストアルバムを発表。
2006年: アートワーク集「SHINTARO SAKAMOTO ARTWORKS 1994-2006」発表。
2010年: ゆらゆら帝国解散。解散後、2編のDVDBOXを発表。
2011年: salyu×salyu「s(o)un(d)beams」に3曲作詞で参加。自身のレーベル、zelone recordsにてソロ活動をスタート、1stソロアルバム「幻とのつきあい方」を発表。
2012年: 以前から交流のあるYO LA TENGOのジェームズ・マクニューのソロ・プロジェクト”DUMP”の”NYC Tonight"にREMIXで参加。NYのOther MusicとFat Possum Recordsの新レーベル”Other Music Recording Co" から、「幻とのつきあい方」がUSリリース。
2013年: 1月11日シングル「まともがわからない」(「まほろ駅前番外地」のエンディング曲) と同ドラマ劇中音楽を手掛ける。「攻殻機動隊ARISE」エンディング曲や、冨田ラボのアルバム「Joyous」に作詞で参加。舞台「高校中パニック!小激突!!」では作曲で参加。
2014年: Mayer Hawthorneとのスプリット7inch vinylを、4月19日の全米/全欧のRecord StoreDay限定でリリース(UNIVERSAL/Republic)。
5月28日に2ndソロアルバム「ナマで踊ろう」をリリース予定。

official HP: www.zelonerecords.com


R.I.P. Scott Asheton a.k.a. Rock Action - ele-king

 ストゥージズのドラマーとして知られるスコット・アシュトンが3月15日に亡くなった。

 結局、ストゥージズのオリジナル・メンバーで最後に生き残ったのがイギー・ポップだったことを驚いている人も多いだろう。とはいえスコットも、「PUNK」誌創設メンバーのひとりであるレッグス・マクニールをして「これまででもっとも偉大なサグ・ロッカー」と言わしめたくらいの人物ではある。

 そのレッグス・マクニールが中心となって膨大な関係者たちの発言を集めたUSパンク・オーラル・ヒストリーとも言うべき『プリーズ・キル・ミー』という本がある。あるも何もぼくが編集者として日本語版を出したのだが、手前味噌だけれどもはっきりいって名著である。残念ながら版権が切れてしまいましたけども。

 この本の中に出てくる“スコッティ”は登場して最初のページでハイスクールをドロップアウト、ウェイン・クレイマーから「あいつはとにかく喧嘩が強い」という称賛を受ける悪童ぶりだ。
 そもそもストゥージズはロンとスコットのアシュトン兄弟およびベースのデイヴ・アレキサンダーがイギーと出会う前に結成したザ・ダーティ・シェイムズがはじまりだ。そして、地元でナンバーワンドラマーとして活躍していたイギーがシカゴで本場のブルースを目の当たりにして挫折、ヴォーカルに転向して3人を誘ったことからザ・ストゥージズがはじまるのである。

 ストゥージズ解散後はMC5のフレッド・“ソニック”スミス率いるソニックス・ランデヴー・バンドやデストロイ・オール・モンスターズなどに参加しており、まぎれもなくデトロイト・ロックの中心的なドラマーだった。ロンがある時期からイギーに軽んじられていくのとは対照的にイギーとの関係も長く続き(『プリーズ・キル・ミー』にはイギーとスコットが一緒になってロンをコケにする場面が出てくる)、ストゥージズ解散後もたびたびイギーのソロにも参加している。

 2003年のストゥージズ再結成には兄弟揃って参加。フジロックでのカオスなステージが個人的には思い出深い。しかしロンが先に逝き、スコットも2011年に倒れたまま、ツアー生活への復帰はできなかった。

 彼が参加した最後の作品は昨年リリースされたイギー&ストゥージズのアルバムだと思うのだが、奇しくもそのタイトルは『レディ・トゥ・ダイ』だった。随所でロン・アシュトンの死が影を落としている作品だったのだが、この日が来ることもどこかで頭の中にあったのかもしれない。
 『プリーズ・キル・ミー』の終盤では次々に登場人物たちがこの世を去っていく。ジョニー・サンダースの死を嘆くジェリー・ノーランがやがて自分も寂しく死んでいく姿は何度読んでも涙を誘う。この本が出たときにはまだロンもスコットも健在だったのだが、この愛憎半ばする兄弟の最期はどのように描かれることになるのだろう。

Illuha - ele-king

 先日僕は、TMTの下山のレヴューを興味深く読んだ。暴論じみてもいるが、日本がどう見られているのか、のぞき見として面白い。もっとも、「日本のロックの歴史は、本質的に、アメリカの文化帝国主義に対する日本人の集合的意識の入口における苛立たしい承認の、アンビヴァレンスの歴史である」という前提は、日本のロック(大衆音楽)を見るときの外側からの視線として、何度か目にした覚えのある言葉だ。
 我々は、いくら『アンノウン・プレジャーズ』のTシャツを着ようが、どうしようもなくジャパニーズであり、そう見る視線からは逃れられない。そして、欧米の急進的なジャーナリズムは、往々にして、無邪気なコピー・バンドを文化的服従だと感じつつも、「日本で人気のあるジャンル──J-ロック、ジャパノイズ、音響系、ハードコア──は、強制的に輸入された欧米文化というテンプレートのうえで自分たちのルーツを(曖昧ながら、あまり意識せずに)持っている」と分析している。そして、ボアダムスやアシッド・マザー・テンプルから下山のような、欧米文化を受け入れながら服従(コピー)しない、日本は欧米の一部という幻想──まさにヴェイパーウェイヴが問うたように、何でも等価のウルトラ・フラッターな世界(1998年生まれのアイドルも石橋英子も見事に並列化される『CDジャーナル』的世界とでも言えばいいのでしょうか……)にも甘んじない、白い文化に一撃を加えるぐらいの何かを持っているバンドの肩を持つ。
 自分の内側の醜さを打ち破るには、内側にはないモノ=異文化に期待したいという衝動は、洋楽ファンである自分にも身に覚えのある話だ。が、この国の音楽がアンビヴァレンスの歴史であり、そして、なかば強引に与えられたモノへの齟齬感、ある種の服従と抵抗が具現化されている音楽が国際舞台における個性だと言うのなら、それはパンク的な記号のみに集約されるとは限らないと思う。それは、アンビエント・ミュージックのなかにこそよりよく見えるかもしれない。

 それはジョン・ケージだとか、鈴木大拙だとか、禅宗だとか、お香だとか、そういうことを言いたいわけではない。そもそも日本人は大人しいし、静かだし──正直、本当にそうなのか疑問を感じることが多々あるが──、とにかくそれを美徳としてきている。その気風は、民主主義的には、あるいはフットボール的には有効的ではない場合もあるが、抵抗となるときもあるだろう。
 アメリカの影響力あるレーベルのひとつ、テイラー・デュプリーの〈12K〉からリリースされるイルハ──伊達トモヨシとコーリー・フラー、日本人とアメリカ人からなるアンビエント・プロジェクト──の新しいアルバムに、静けさを追求するこの作品に、僕は衝突めいた感覚を覚える。2011年のデビュー作『シズク』には、とくにそれが明瞭にうかがえた。アメリカの古い教会で録音されたそのアルバムは、当時、デンシノトさんがブログで書いたように「いわゆる〈日本的なもの〉への適切な距離と美意識が同時に感じられる」作品だが、西欧的なるもの、たとえばモダン・クラシカル的響きがあるとしたら、それがと日本的エートスが仲良く並んでいるのではなく、細部でせめぎ合いながら、彼らの衝突/葛藤は、発狂、怒り、苛立ちといった過剰さから遠ざかり、静けさに戻ろうとする。その「適切な距離」こそが我々の美意識かもしれないし、それはアイデンティティのメンテナンスなのもしれない。

 『アカリ』は、イルハにとって3年ぶりのセカンド・アルバムで、録音は、かのZAK氏のST-ROBOスタジオでおこなわれている。最近の彼らのライヴを見ている人は知ってる話だが、ラップトップは使われていない。アナログ・シンセ、オルガン、ギター、小型エフェクターやアナログミキサーやカセットテープ、安価で揃えられる多くの機材を工夫して使っている。録音は手間暇をかけたであろう、ただそれだけ酔えるほど素晴らしい録音で、イルハならではの叙情性と言えるモノも広がっているには広がっている。「いわゆる〈日本的なもの〉への適切な距離と美意識」は今作にもある。
 僕は『アカリ』に、畠山地平とのオピトープによる新作『ピュシス』との連続性も感じるかもしれない。作っている人間もひとり違うし、『ピュシス』の録音は2008年から2011年なので、新作との連続性を言うのはこじつけがましいのだが、音の間の空き方で言えば、『アカリ』は前作『シズク』より『ピュシス』に近い。
 が、『アカリ』には、『ピュシス』の滑らかさと違って、やはり何か衝突めいた感覚が潜んでいる。わりとメロディアスで、メロウに浸れる過去の作品と違って、『アカリ』は、普通は印象に残るはずの旋律的な要素は目立たず、ときおり鳴り出す無旋律/ドローンめいた音響は耳に付く。ときには中心よりも背景が、表側よりも裏側が目立つように仕組まれているが、結局は、どちらかが一方的に際立つことはない。
 細かい音の断片──ピアノ、具体音、電子音などなど──は、いままで以上に細かく断片化されている。露骨ではないが、フリー/インプロヴィぜーションへのアプローチも今作の特徴だ。音は、それ自体が単調/モノトーン/フラットであっても、ゆっくり、やがてさざ波のようにたがいに干渉し合って、他の何かを醸成していく。
 また、“音の持続への重力の関係”だの、“共鳴音の身体的な解釈のダイアグラム”だの、曲名の意味は僕にはさっぱりだが、この作品は1曲目の最初から聴くことを強制しない。つまり、矛盾した言い方をするが、3分聴いても60分弱のアルバム全体はつかめないが、3分のなかに60分弱のすべてがあるとも言える。

 座禅の経験者や日常的に黙想をしていた人にはよくわかることだが、ゆっくり流れる時間感覚は、早いそれよりも順応しづらいものだ。黙想していると時間の流れは遅くなるし、大量の情報を浴びていると時間の経過は早く感じる。テンポの速い曲のほうがポピュラーだし、メインストリームだし、売れ線だ。疲れを知らない我が家の幼児もハイピッチの曲にはノるが、疲れを知っている遅い曲にはノれない。歳を重ねるごとに良くなってくるのがアンビエントだと言いたいわけではない。たんに僕は、あまりにも長いあいだ、疲れ知らずという美学に拘泥していただけの話である。
 伊達トモヨシとコーリー・フラーは、何気に、すでに新しい場所へと進出しているのかもしれない。彼らの音楽へのアプローチにならって言えば、イージー・リスニングとアンビエントとは、やはり別モノである。気休めの音楽としても楽しめるかもしれないが、本質はそうではない。繰り返すが、そこにはむき出しにはならない、確固たる衝突、ひいては抵抗があるように感じる。
 そして、あからさまに言わないだけで、いつもは、この忙しい日常生活では、なかなか振り向かない角度に我々の関心を惹きつけているように思える。それがアンビヴァレンスの歴史からの逸脱なのかどうかは僕にはわからないが、自分に夢中の人がやっている音楽とは明らかに一線を画している。

※最近は、アナログ盤のみのリリースだったアルゼンチン人のフェデリコ・デュランドと伊達トモヨシとのメロディア名義の作品『サウダーデス』のCDもリイシューされる。

※また、彼らはただいま絶賛ツアー中です

GREAT 3 - ele-king

 もう、いったい何度聴いたかわからなくなってしまった。2004年2月のライヴを最後に活動停止状態だったGREAT3。彼らが再び活動を開始し、9年ぶりとなるアルバム『GREAT3』をリリースしてから約1年ぶり/結成20周年となる通算9枚目の本作に、目下のところ筆者は中毒状態だ。
 94年、元ロッテンハッツの3人により結成されたGREAT3のファースト・アルバム『Richmond High』を、初めて聴いたときの衝撃はいまもハッキリと覚えている。60年代ロック、フォーク、AOR、パンクなど、あらゆる音楽スタイルをぶち込み、現在進行形のサウンドとして鳴らす作曲&演奏能力。海外文学からの影響を感じさせつつも、当時20代だった筆者の心にリアルに響く、狂おしいほど切なく切羽詰まった歌詞の世界。一瞬で虜になった。そんな彼らがシーンから姿を消していたこの数年間は、心にぽっかりと穴があいたような気持ちがしたものだが、3人とも充実したソロ活動をおこなっていたから、まさかこうして彼らの新作を心待ちにする日が来るとは夢にも思わなかった。

 白根賢一(ドラム)の自宅スタジオで制作された前作は、「とにかく、いますぐにでも音を出したい」という思いが爆発したような、荒削りなサウンドが印象的だった。本作では、そうした初期衝動を内包しつつも、本来の彼らの特徴である「練りに練った一筋縄ではいかない楽曲」が、まるで生き物のようにひしめき合っている。高桑圭(現Curly Giraffe)に代わって新加入したベーシスト、Janの弾き語り曲“丸い花”で幕を開け、ナイル・ロジャースばりの軽やかなカッティング・ギターと、地を這うようなベースがファンキーな“愛の関係”、90年代UKギター・ロックを彷彿とさせる“穴と月”、ニューオリンズ風のビートがグイグイと高揚感を煽る“5.4.3.2.1”、怒濤のヘヴィ・サイケ・メドレー“マグダラ”、オートチューン(?)でエフェクト処理された片寄明人のヴォーカルが官能的な“モナリザ”、そして、ジルベルト・ジル&ジョル・ジュベンの共演作『ジル&ジョルジ(Gil e Jorge)』を彷彿とさせるようなスリリングなアコギ曲“魂消”と、古今東西の名曲を片っ端からYouTubeでザッピングしているような、変わらぬ守備範囲の広さに圧倒される。しかも、目まぐるしく展開してゆく曲構成や突如鳴らされる奇妙な音色、動物の鳴き声など、一曲ごとに仕組まれたギミックも楽しく、聴き手を最後まで飽きさせないし、全編アナログ・レコーディングというだけあって、曲間にかすかに聞こえるヒスノイズにもワクワクさせられる。メンバー全員、「新譜を聴いて、こんなに楽しい時代は初めてだ」と口を揃えているというが、朋友・長田進(Dr.StrangeLove)を迎え、溢れるアイデアに興奮しながらレコーディングをしている様子が目に浮かぶようだ。

 サウンド的にはダフト・パンク最新作のディスコ路線、MGMTやテーム・インパラに代表される新世代サイケデリアあたりとの共通点を感じさせるが、思い返してみればGREAT3の音楽には、初期の頃からそうした要素は含まれていたわけで、「影響された」と言うよりは「共感し、触発された」と言った方が的確だろう。

 表題曲“愛の関係”で、片寄は歌う。「どうせいつか/死ぬんだろ/崖っぷちで/笑いたい/泣きながら/生き抜いて/出来る事を/やり切って/あとは/天に任そう/これでいいんだ」と。それはまさに、GREAT3が一貫して持ち続けている哲学そのものだ。希望と絶望、歓びと哀しみ、生と死、すべてを丸ごと抱え込んで、「泣き笑い」で突き進んでいく。そんな、どうしようもなく無様でカッコいい彼らが、いままたこうして最高傑作クラスのアルバムを作り上げたことを、心からうれしく思う。

Rainbow Disco Club 2014 - ele-king

 良いフェスの条件とは? 良い音楽があること。良い場所でおこなわれること。良い人が集まること。良い音楽は、良いオーディエンスを呼ぶ。会場の雰囲気が良いことは、音楽以上に、君の気持ちをあげてくれる。
 いまからGWの予定を考えている方に朗報。4月29日の昼前から夜にかけて、晴海客船ターミナルにて開催される「Rainbow Disco Club 2014」、ラインアップを見るだけでもワクワクする。
 ヘッドライナーにはムーディーマン。で、プリンス・トーマス、ヘッスル・オーディオ、マジック・マウンテン・ハイ……。まったく素晴らしい。
 まずは、主な出演者を簡単に紹介しましょう。

■ムーディーマン
 デトロイト・ハウスの……いまや巨匠と呼べばいいのか。90年代後半にこの人とセオ・パリッシュが出てきたとき、人がどう捉えたのかは1997年頃のele-kingを読むとよくわかる。はっきり言って、度肝のを抜かれている。いまでこそ、黒いだの、ファンキーだのと言われているが、当時彼のハウスは、実験的で、レフトフィールだった。先日リリースされたアルバム『Moodymann』は、日本でも異例のロングセラー。その直後の、しかも2年ぶりの来日になる。
 面白いのが、とかく「黒い」と評されるムーディーマンだが、彼のDJでは、マッシヴ・アタックもかかるし、ローリング・ストーンズさえかかる。音楽に人種も国境もない。フットボールにも。
 ムーディーマンは作品も良いが、DJも良い(マイクを握ることも多々あり)。選曲にも意外性がある。彼は間違いなく君に嬉しい驚きを与えるでしょう。

プリンス・トーマス
 ノルウェーのDJ/プロデューサーで、リンドストロールとともに、コズミック・ディスコ(プログレッシヴ・ロックとイタロ・ディスコの出会い)大使として知られる。2005年のアルバム『Lindstrøm & Prins Thomas』はマスターピースとして知られている。幅広い選曲からか、バレアリックとも言われるが、本人は地中海ではなく北欧の人。情報筋に寄れば、日本のインディ・シーンまでチェックしているそうなので、今回のRDCのメンツのなかでどんな選曲になるのか興味深い。

ヘッスル・オーディオ
 もっとも評価の高いポスト・ダブステップのレーベルで、運営する3人──ピアソン・サウンド/ラマダンマン(デヴィッド・ケネディー)パンジア(ケヴィン・マックオーリー)、そしてベン・UFO(ベン・トーマス)がそろってDJする。ピアソン・サウンドとパンジアは、ともにUKガラージ/ポスト・ダブステップからミニマル/テクノへとアプローチ。ジョイ・オービソンやボディカ(あるいはカッセム・モッセ)らとともにテクノのニュースクールの潮流として注目されている。
 ベン・UFOは、レーベルの看板DJとして活躍中。昨年のRDCにも出演している。また、昨年は、ファブリックからミックスCD『Fabriclive 67』をリリースしているが、その選曲を見れば、彼の趣味の良さがわかる。そこには、オリジナル・シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノとベース・ミュージック、あるいはハーバートからカイール・ホールまで、この20年のダンス・カルチャーの素晴らしい部分が切り取られ、繋げられている。はっきり言って、かなり期待できるDJ。

■マジック・マウンテン・ハイ
 90年代から活動するベテランのムーヴ・D率いるプロジェクト。ハウス、アンビエント、テクノの折衷主義で、昨年末〈ワープショップ〉からアルバムを出して、大いに話題になったばかり。
 いま、マジック・マウンテン・ハイは、新譜を出せばレコード店で面だしされるほど注目度の高いので、現役で12インチを買っているリスナーには「おっ」という名前だが、ムーヴ・D自体は、この20年テクノを聴いているリスナー(それもかなりディープに聴いている層)には馴染みの名前である。90年代のムーヴ・Dは、自身のレーベル〈ソース〉をはじめ、アンビエント・レーベルで知られる〈FAX〉、あるいは〈ワープ〉などからも作品を出しているほど。エクスペリメンタルでありながら、メロウなところもあり、野外で聴く彼らの音響は、オーディエンスに良い夢を見させてくれること請け合いである。

 ──という、良いメンツを休日の昼から夜にかけて聴けるのである。
 ちなみに、会場は、先述したように、東京湾に面する晴海客船ターミナルという場所なのだが、実は東京オリンピックのための再開発によって、いま見える景色は来年には見れなくなる。かつてウェアハウス・パーティの会場だったテームズ側沿いの倉庫街が、再開発によってなくなったように……。
 そんなわけで、新自由主義的に亡くなっていく風景を心に焼き付けながら、ムーディーマンやマジック・マウンテン・ハイを聴こう。もう来年には、そこで踊ることはできないのですから。
 渋谷からだと40分〜50分で行ける。会場内には、Red Bull Music Academyによるセカンド・ルームも設置される。
 また、当日は、夜になると東京タワーもレインボーに発光するらしい……です。(野田努)

■Rainbow Disco Club 2014
■開催日:2014年4月29日(火)
■料金:前売チケット6500円 / 当日8000円
■時間:10:00 OPEN/START 〜20:00 CLOSE

■RDC STAGE:
MOODYMANN
PRINS THOMAS
MAGIC MOUNTAIN HIGH
HESSLE AUDIO
SISI

■RBMA STAGE
Special Secret Guest
San Soda
Kuniyuki
Hiroaki OBA
Kez YM

■チケットプレイガイド
CLUBBERIA https://www.clubberia.com/store/
イープラス https://eplus.jp/
Smart e+ https://sm.eplus.jp/e/170
楽天チケット https://ticket.rakuten.co.jp/
tixee https://tixee.tv/
Resident Adbvisor https://jp.residentadvisor.net/event.aspx?555668

■店頭発売
DISC UNION https://diskunion.net/
Technique https://www.technique.co.jp/
JetSet https://www.jetsetrecords.net/
Light House https://lighthouserecords.jp/

■MORE INFO:
RDCオフィシャルウェブサイト
www.rainbowdiscoclub.com


KUJITAKUYA (HOLE AND HOLLAND) - ele-king

https://www.hole-and-holland.com/

DJ schedule

2014. 4.9(金) BLACK WATER @神宮前BONOBO
https://bonobo.jp/schedule/2014/04/001315.php

2014.4.18(金)OPSB & HOLE AND HOLLAND Presents [UP] @中野heavysick ZERO
https://www.heavysick.co.jp/zero/

チャートテーマ

1. 2014/4/18金曜日@中野heavysick ZEROにて開催される、OPSB & HOLE AND HOLLAND Presents [UP] に持って行こうと思っているレコードです。

2. 昨年末の大盛り上がりだった[UP]の後、レコバッグをなくしてしまい、その中に入っていたレコードですw。また買います。

3. HOLE AND HOLLAND関連のpv とsoundcloudです。


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OPSB - CHANGE YOUR ROUTINE - room full of records

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TAMBIEN - THE TAMBIEN PROJECT2 - public possession

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DJ RASHAD - I DONT GIVE A FUCK - hyperdub

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CRATEBUG - TUGBOAT EDITS PRESENTS CRATEBUG EDITS - tugboat edits

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JURNY - ONLY WHEN I'M DREAMING - NO MORE HITS

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SSK - I'M LOST DOWN - SSK VERS

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FUSHIMING - SERENADE (PV)
https://www.youtube.com/watch?v=FMDsCt55d40

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EDO KANPACHI - KOUTA RAP REMIX
https://soundcloud.com/edo-kanpachi/kouta-rap-remix

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KUJITAKUYA - FEELING OF A BIRD
https://soundcloud.com/nosetail92/feeling-of-a-bird

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RIDE MUSIC EP RELEASE TOUR 2012 (PV)
https://www.youtube.com/watch?v=JLGC0BhzuAE

St. Vincent - ele-king

 多くの文系女子に「あれはかつてのわたしだ」と言わせてみせた『ゴーストワールド』(テリー・ツワイゴフ、01 )のイーニド少女、あれから10年以上経つけれども、彼女はバスに乗ってどこに行ったのだろう? 退屈なアメリカの田舎町で、その聡明さと傲慢さゆえに自意識と孤独をくすぶらせていた彼女は、自分を開放することができたのだろうか。僕はあの映画を観たとき、あの痛ましさにうろたえながらも、しかし彼女の未来は明るいのだろうと根拠もなく予感したのだった。それは、孤独に育った少女はその個性を発揮することがかならず叶うのだと、僕が信じたかったからなのだろう。彼女はアンダーグラウンドのアーティストになっただろうか、もしかすると作家に、デザイナーに……? あるいは、セイント・ヴィンセントに。

 アニー・クラークがセイント・ヴィンセントを名乗った時点で、それまでの自分の内面の問題を異化し、そのことによってその彼女自身を解放しようと決断したのではないか。彼女がこの新作について説明するインタヴュー内でプロデューサーのジョン・コングルトンとの繋がりを語る際、故郷のテキサスの田舎町について触れていて、僕はふっとイーニド少女の退屈そうな顔を思い出したのだ。「こんな田舎を発って、ビッグになるって言い放ったわ」、そうして彼女は、アートとポップのバランスを取りながら、他の誰でもない存在感を発揮し続けている。
 だからセルフ・タイトルとなるこの4作めが、もっとも躍動感に満ち、複雑で、しかしある種の烈しさを伴っていることに胸がすく想いがする。これまでのアルバムにおいてもセルフ・ポートレイトの趣が強かったが、ここで自分の「設定」としての「セイント・ヴィンセント」を改めて掲げることは、その表現のあり様に自負があるからだろう。1曲め、“ラトルスネイク”のエレキの音を聴けば、アニー・クラークの内なるものに電圧がかけられて、高らかにセイント・ヴィンセントへと変換される瞬間の興奮を覚える。続く“バース・イン・リヴァース”……「さかさまに生まれる」というタイトルが象徴的だが、彼女自身手に負えなかったのであろう自らの異物感がしかし、ここではアップテンポに炸裂する。
 アルバム全体のテーマは現代社会だというクラークだが、ブラスがそこここにファンクの跡を残すそのダンス・フィールとともに、ロウなコミュニケーションへの欲求が幾度も綴られる。「あなたの心を独占したいのに」、「イエスよりもあなたの愛が欲しい」、「口にした言葉よりも飲み込んだ言葉を後悔する」、「愛をよこして、あなたの愛すべて、あなたの愛を」……。デヴィッド・バーンとの共作からの連続性を強く感じさせるファンク・ポップ“デジタル・ウィットネス”の「デジタルの目撃者たち」というタイトルも示唆的で、身体性が疎外される現代のコミュニケーションのあり方に明らかに彼女は苛立っている。そして流麗なコーラスと荒々しいギター、つっかかるようなリズム感覚を縦横にはしゃがせながら、獰猛に愛を欲望する。

 アニー・クラークの、いや、セイント・ヴィンセントのエキセントリックな内側が、きれいに外側にひっくり返ったアルバムだ。奇怪でごつごつしたサウンドを聴く者に丸ごと受け止めることがここでは要求され、だからわたしたちは身体にそれを直接響かせる。かつての鬱屈したイーニド少女たち、彼女たちも何も悩むことはなかったのだと、このフリーキーなポップ・ミュージックを聴いていると楽しくなってくる。どこかメロウで安らかなクローザー、“セヴァード・クロスド・フィンガーズ”で「歯車から吐き出されるはらわた」というフレーズにぎょっとするが、しかしそれでいいのだ。「断ち切られた幸運の祈りを、あの瓦礫のなかから探し出して」。そして女たちははらわたの感触をたしかに覚えながら、自らの欲求を止めないことで彼女自身を解き放っていく。

Road 2 Battle Train Tokyo - ele-king

 恵比寿のリキッドルームで、日本初のフットワーク・バトル・トーナメントが開催されます。3月29日(土曜日)に、激しいダンス・バトルが見れます。興味のある方、ぜひ、足を運んで……いや、足を高速に動かす人たちを見物しましょう!

 昨年10月にリキッドルーム2階奥のKATA + Time Out Cafe & Dinerにて開幕した日本初のフットワーク・バトル・トーナメント=Battle Train Tokyo(略してBTT)。今年6月28日(土曜日)に開催されるBTTに向け、その前哨戦となる"Road 2 Battle Train Tokyo(略してR2BTT)が3月29日(土曜日)に決定! まずはR2BTTを勝ち抜きBTTのシード権をその手につかもう! 競いしフットワーカー/ダンサーの勇姿をみなで刮目しましょう!

 シカゴ・ハウスを源泉にまさにそのシカゴのローカル・シーンにて独自の進化を続け高速化した音楽スタイル「ジューク」が、足技に重きを置いたダンススタイルと密接に関連し、低音と三連譜などトリッキーなリズムが強調され「フットワーク」という音楽/ダンス・カルチャーとして広がり進化/発展。この国でもさまざまなイヴェント/パーティー/ワークショップなどが開催されるなか、BTTはBPM160のジューク/フットワーク・トラックの上でさまざまなダンサーたちがスタイルやルーツ、世代を超えて競い合えるオープンなバトル・トーナメントの場として、この国のジューク/フットワーク・シーンを支えるDJやトラックメーカー、ダンサーたちと一緒にさらなるこのシーンの燃焼と循環を目指します。毎月第三水曜日にはフットワークDOJO=Battle Train Tokyo Express(略してBTTE)も同会場にて開催中。

※3月19日(水曜日)19:00(ジューク日、ジューク時)より、同会場にて第三水曜日に定期開催されているフットワークDOJO=Battle Train Tokyo Express(略してBTTE)が開催! 概要は下記リンク先をご参照ください。
https://www.kata-gallery.net/events/BattleTrainTokyoExpress_3/

《概要》
Road 2 Battle Train Tokyo

@KATA
Judge:HARUKO(RudeGirl3),
KENT ALEXANDER(PPP/PAISLEY PARKS), Takuya(HaVoC) and You
Host:ヒューヒューBOY(GROSS DRESSER/MAGNETIC LUV)
Exhibition:HARUKO(RudeGirl3) x Takuya(HaVoC)
Guest DJ:SEX山口
Chicago Legacy Set:D.J.April(Booty Tune)
Sound by:Booty Tune, DjKaoru Nakano, DJ SEKIS & DJ DIKE, SHINKARON

@Time Out Cafe & Diner
BTT Lounge presents
JINTANA&EMERALDS "DESTINY" pre-release party supported by PPP
special oldies B2B and live session:JINTANA&STRINGSBURN
DJ:LUVRAW, iga-c, Kent Alexander

《バトルへのエントリー/ルールについて》
・バトルは個人戦のみです。2ターン(1バトル5分ほど)になります。
・ダンス・スタイルは自由ですが、バトル中に流れる楽曲はジューク/フットワーク・トラック(BPM160)のみとなります。
・バトル時の選曲は主催者側でご用意させていただきます。
・オーディエンスの声援と審査員によるジャッジ・システムを採用致します。
・バトル・トーナメントへのエントリー・フィーは2,000円となります。
・優勝者には6月28日(土曜日)に開催されるBattle Train Tokyoのシード権、優勝賞金10,000円を進呈させていただきます。
・前回のBTT優勝者、準優勝者のエントリーは今回はありません。
・バトル・トーナメントへのエントリーは件名を「3.29 R2BTT」として<entry@liquidroom.net>までメールにてお願い致します。ネーム表記と連絡先(氏名/電話番号)も合わせてお送りください。なお、お送りいただきました個人情報は今回の「R2BTT」に関わる目的にのみ使用し、他の目的には使用致しません。

2014.3.29 saturday evening
KATA + Time Out Cafe & Diner[LIQUIDROOM 2F]
open/start 17:00/18:00-22:00
battle tournament entry fee 2,000yen / admission fee 1,500yen

info
Battle Train Tokyo twitter | Facebook
KATA https://www.kata-gallery.net
Time Out Cafe & Diner 03-5774-0440 https://www.timeoutcafe.jp/
LIQUIDROOM 03-5464-0800 https://www.liquidroom.net

《出演者紹介》
▼HARUKO(RudeGirl3)
コンテスト受賞歴:BIGBANGダンスコンテスト特別賞/femal trouble 3位/tokyo dance delight特別賞/BTT準優勝
13歳の頃ブラックミュージックと出会い、ヒップホップダンスを踊り始める。その後レゲエミュージックと出会い、ヒップホップ、レゲエを共に、独自に踊り始める。2003年ニューヨークで本場のストリートダンスのレッスンをうける。その後クラブでのショータイムに出演しつつ、インストラクターとして活動、2009年にはジャマイカに渡り現地のdancehallqueenコンテストにも出場。セカンドラウンドまで勝ち残る。そしてヒップホップ、レゲエなどをミックスした独自のダンススタイルを確立する。そして、2013年BTTにて準優勝。footworkの活動を開始する。現在は都内のクラブでのショーやバトルで活躍中。

▼Takuya(HaVoC)
東京都在住。本場シカゴでも有数のフットワーク・クルーHaVoCに唯一の外国人として名を連ねるフットワーカー。高校時代よりダンスを始め、ブレイキン、ソウルダンス、ハウスなど様々なジャンルをどん欲に学ぶ。2011年、ダンスバトルの世界大会Juste Deboutで活躍するFootworKINGzに衝撃を受け、フットワーカーとしてのキャリアをスタート。ほどなくして開設したYouTubeチャンネルにアップした動画をきっかけにH.a.V.o.Cにスカウトされる。その多彩なステップはフットワーク専門サイトFORTUNE&BANGに取り上げられるなど、本場シカゴでも高く評価されている。2012年10月に開催されたTRAXMANの来日公演にダンサーとして帯同。そのフットワークで各地に熱狂をもたらした。2013年はPaisley Parks、MOP of HEADのミュージックビデオに出演するなど、活躍の場を広げている。
https://twitter.com/TAKUYAxHaVoC

▼KENT ALEXANDER(PPP/PAISLEY PARKS)
ヨコハマ【PAN PACIFIC PLAYA / Бh○§†】所属。BAYなJUKE/FOOTWORKチーム【PAISLEY PARKS】構成員。まるでRAVECOREなDJチームTERROR Pとしても爆笑中。ゲットーレイブ育ちのDJ。インターナショナルスクール時代からアングラパーティー活動のしすぎでアメリカへ落ちる。2012年末、横浜帰還。シカゴのラジオ局のDJMIX SHOWに出演して、PAISLEY PARKSオンリーミックスを披露したり、日本で初めてのFOOTWORK大会【BATTLE TRAIN TOKYO@KATA】を主催するなど、JUKE/FOOTWORK周辺に集まる最もクレイジーな連中の1人。これまでにSWEET SOULのMIX ”Sweet Temptation”と、PAISLEY PARKS音源をアシッドEDITした”THE MIX”を発表。和訳、英訳のお仕事承ります。陽気な大きい弟系の通訳/アテンドもお気軽に◎
https://twitter.com/kent045
https://www.panpacificplaya.jp/blog/
https://ghost045.bandcamp.com/

▼ヒューヒューBOY(GROSS DRESSER/MAGNETIC LUV)
ヨコスカン&ミウラーノ光る海岸系DJユニット『GROSS DRESSER』で活動中。チルってなんぼなメロウトリッピンMIXCDをALTZMUSICAより発表。ハッピーな目つき「MAGNETC LUV」所属。LUVRAW&BTBのライブで、にぎやかしい司会を担当。好評と酷評の間で居眠り一千万。江ノ島OPPA-LAの便所や各種野外パーティーでUP&DOWN、毎年好評の秘密ビーチパーティーも欠かさず解放中。彼の作るホットサンドを食べた内、3人くらいが人生を成功させたようだ。司会、ホットサンド、DJのご用命はお気軽に☆

▼SEX山口
1976年生まれの牡羊座。神奈川県出身の脱力系アイドル。マイケル・ジャクソンと井手らっきょを同じ目線で愛し、FUNKとお笑いを同じ目線で体現したパフォーマンスを得意とする。ダンサー・エロ本編集者・DTPデザイナーを経て、最近はやたらしゃべるディスクジョッキーとして各所でメイクサムノイズ中。インターネットラジオ、block.fmにて生放送でお届けする「SEX山口のGWIG GWIG RADIO」(毎月第2月曜日20時~)ではメインMCとしてZEN-LA-ROCKと共にグイグイっとおしゃべり中。自身のアパレルブランド「S.E.X.Y. by NAOKI YAMAGUCHI」のアイテムや各種おMIX CDも随時デリバリーしてまっす♪
https://secscreativeworks.tumblr.com/
https://twitter.com/sexyamaguchi
https://sexybyny.theshop.jp/
https://block.fm/program/gwig_gwig_radio.html

▼D.J.April(Booty Tune)
Hardfloorでシカゴハウスに目覚め、そんなサウンドをらりくらりと追いかけつつ、Jukeレーベル「Booty Tune」のPR&ARをしております。
https://twitter.com/deejayapril
https://bootytune.com/

▼Booty Tune DJs[D.J. Kuroki Kouichi, Yuki aka 3D, D.J.April]
https://bootytune.com/
https://bootytune.bandcamp.com/
▽D.J.Kuroki Kouichi
1999年 DJ開始。同時期に1人焼肉デビュー。
2001年 DJデビュー。地元の焼肉屋を卒業。都内各地の焼肉屋にて武者修行開始。
2004年 100%ゲットーパーティー「CHICAGO BEEF」を、焼肉屋の上にあるクラブで主催。DJと肉が融合。
2007年 肉好き集団を率い肉を食べまくる肉パーティー「肉GROOVE」を主催。
2008年 下北沢「肉人」に出会う。ホルモン革命が起きる。
2009年 赤身からホルモンまで、あらゆる肉の部位を完璧に焼けるようになり、「肉マスター」就任。
2010年 焼肉対決で「焼肉大王」に勝ち、2タイトル制覇。日本一の焼肉屋「スタミナ苑」の常連入り。
2011年 Juke/Ghettotech専門レーベル「Booty Tune」に加入。
2012年 Booty TuneのCOO(スィーオウオウ)就任。狩猟免許取得。
2013年 シカゴハウスの伝説的レーベル「Dance Mania」の全カタログをコンプリート。
あまり意味が無くてカッコいいダンスミュージックをプレイするよう心がけています。
▽Yuki aka 3D
Booty Tune所属22歳のJuke/Footwork DJ。通称てっどまん。
▽D.J.April
Hardfloorでシカゴハウスに目覚め、そんなサウンドをらりくらりと追いかけつつ、Jukeレーベル「Booty Tune」のPR&ARをしております。

▼DjKaoru Nakano
大阪府出身。14才頃からblack music, rockのレコードを集めだし、18才頃DJを始める。garage, houseなどを経て2009年頃からminimal dub, technoなどでDJ活動をリスタート。2010年頃からjukeに傾倒。2013年11月にNODEレーベルよりmix CD「footwork & smooth」をリリース。Track makerとして日本初のjukeコンピレーション"Japanese Juke & Footwork Compilation"に参加。
https://soundcloud.com/kaorunakano

▼DJ SEKIS & DJ DIKE
JUKE/FOOTWORKのPRODUCER。ホームグラウンドである吉祥寺・西荻窪にて主に活動中。
▽DJ SEKIS
https://twitter.com/djsekis
https://soundcloud.com/dj-sekis
▽DJ DIKE
https://twitter.com/DJ_DIKE
https://soundcloud.com/dj-dike

▼SHINKARON
FRUITY、BoogieMann、Weezy、吉村元年、芝田創、VaEncから成るクルー。 2009年3月よりノンジャンルパーティとしてスタートし、現在はjuke/footworkのレーベルとしても活動中。所属メンバーの他DJ Roc、Paisley Parksなど、国内外問わず様々なアーティストのリリースを手掛ける。
https://shinkaron.info/


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