「Nothing」と一致するもの

Syro 2014 西島大介 - ele-king


西島大介
1974年東京都生まれ、広島県在住。2004年に『凹村戦争』でデビュー。代表作に『世界の終わりの魔法使い』、『ディエンビエンフー』などがある。2012年に刊行した『すべてがちょっとずつ優しい世界』で第三回広島本大賞を受賞、第17回文化庁メディア芸術祭推薦作に選出。装幀画を多く手掛け、「DJ まほうつかい」名義で音楽活動も行う。映画『世界の終わりのいずこねこ』脚本&出演など、活動は多岐に渡る。初の作品集『くらやみ村のこどもたち』を刊行。ワタリウム美術館地下オンサンデーズで「くらやみ村のこどもたち」展開催中。

Aphex Twin - ele-king

 彼の前に道は無し、とは言わないが、彼のうしろに道ができたのは事実だろう。エイフェックス・ツインとは、ポップにおける重要な分岐点である。クラフトワークやNYのガラージ・ハウスは理解できたとしても、92年のコースティック・ウィンドウの諸作や160bpmのハードコア・アシッドの「Digeridoo」、青いレーベル面にTHE APHEX TWINというスタンプが押されただけの12インチに関してはさっぱりだった、という人は少なくなかった。いや、その前にそんなものチェックもしてないか。ディスコの文脈では到底聴けたものではなかったろうし、一種の権威たちから評価されなかったものの代表格が、シカゴのアシッド・ハウス、デトロイトのUR、UKのジャングル(あるいはガバ)、そしてエイフェックス・ツインなのである。
 ことAFXに関しては、公に聴かせる音質としては掟破りなまでに歪んだTR606とTB303、それまでの宅録文化の標準クオリティからすればありえない音質……この点に関しては初期シカゴ・ハウス/デトロイト・テクノが先だが、しかしAFXのそれは、退行的な、機械をいじりながらほくそ笑んでいる、ただの子供のいずらに感じられなくもなかった。
 が、しかし、ある世代以降になると、そしてある人たちにとっては、彼の荒削りなテクノ・サウンドは悦び以外の何ものでもなかった。それは来るべき時代のはじまりを意味したのだから(で、実際にそうなった)。
 AFXが、それ以前のUKテクノ(ハウス)──ア・ガイ・コールド・ジェラルドや808ステイト、ベイビー・フォードやLFO──とは異質の存在感をはなっていたことは、デビュー当時の彼が、メディアから天才児扱いされるいっぽうで、「bedroom bores(こもり系)」、「ゲームボーイ世代」などと揶揄されていたことからもうかがい知れる。彼からは、旧来のポップスター文化がよくは思っていなかったパーソナリティー──恋人を誘って外に出かけるようなことはなく、部屋にこもってマニュアル片手に機材をいじり続けるような、ある種のオタク性──が前面に匂ってはいたが、ウケ狙いのDJをすることはなかったし、人に媚びることもなかった。リチャード・D・ジェイムスには、人が求めるようなロックのイディオムというものがなかったし、話題のロック・バンドからのリミックス依頼に関しても「そんなバンド、知らないし」と言う始末だった。

 だからこそ彼は歴史の起点に、ポップに新たな流れをもたらす起爆剤になりえたのだ。彼はメディアから賞賛され、顔が売れてからも、匿名性を捨てず、基本ひとりで作り、作品それ自体においてはアンダーグラウンドな姿勢を崩さなかった(『 ...I Care Because You Do 』以降の露悪的自己パロディも反ポップスター的な性格のねじ曲がった表出とも言えなくはない)。
 彼は、初期アシッド・ハウスやURの過剰さ、アホらしいジャングル(ときにはガバ)とコネクトしながら、最高にいかれた曲を作り、最高にロマンティックな曲を作った。こと90年代前半のエイフェックス・ツイン名義の作品には、無邪気で、彼のドリーミーな気質が録音されているわけだが、僕が『サイロ』の1曲目の“Minipops 67”を最初に聴いて思ったのは、「これって“Analogue Bubblebath”(92)じゃん」、だった。

 冒頭のドラムに続いて入る太いシンセ音とメロディは、間違いなくあの頃の「サウンド」だ。目隠しで聴かされても誰の曲かわかる。録音の良さや緻密に変化する曲のディテールには20年以上の経験が反映されてはいるものの、その出だしが暗示するように、『サイロ』には誰もが思い抱いているであろうAFXテイストが通底している。驚きはないが、親しみやすい作品である。ユーモアはあっても、聴き手を困惑させるような意地悪さもない。「あ、AFXだ」と、20年ぶりにケレンミのない、まとまりの良いアルバムになったと言えるだろう。
 1曲目が“Analogue Bubblebath”なら、2曲目の“Xmas_Evet10”は、『Surfing On Sine Waves』(92)を彷彿させる曲で、当時の言葉で言えば「リスニング系テクノ」だ。美しいメロディは、ある世代にとってレイヴのオプティミズムがいっぱい詰まったあの時代の空気を思い出させるかもしれない。今回のスリーヴ・デザインに使用されているAマークも、『Chosen Lords』(06)のときよりもはるかに、1周まわったからなのか、新鮮に感じられる。リチャード・D・ジェイムスは、「On」(94)以前の、自由気ままに作っていた頃の自分に戻っているんじゃないだろうか……そう思わせなくもないし、実際それは少しあるだろう。

 20年以上前の、機材で埋め尽くされた彼のベッドルームは、クラブのダンスフロアと田舎の牧草地帯の両方に通じていたものだが、『サイロ』にもそのふたつの側面がある。リチャード・D・ジェイムスはエレクロニカ/IDMの起点にもなった人なので、年齢を考えても、そちら側に大きく振れるということも予測されたわけだが、結果、そうはならなかった。
 ひとつ驚きがあったとすれば、『サイロ』ではファンク、ダンス・ビート/ジャングルにこだわっているということである。“4 Bit 9d Api+e+6”なる曲は、アシッディなシンセのうねりとドレクシア直系のマシン・ファンクとの結合だ。ストリングスの入り方はAFXらしいドリーミーな響きを有しているが、ドライで硬質な質感は、クラウトロッカーのメビウス&プランクの一連の作品とも似てなくはない。
 相変わらずよくわからない曲名の“Circlont6a”や“Circlont14”は、コースティック・ウィンドウ名義で試みていたような、悪戯っぽく、コミカルなトラックで、『サイロ』が楽しみながら作られた作品であることをほのめかしている。とくに高速ブレイクビートの“Circlont14”には、リチャード坊(©三田格)の子供っぽさが、あまりにも真っ直ぐ出ている。曲の細部において暴れまわる電子音は、玩具を持ってドタバタ騒ぎまくる幼児そのもので、ふたりの子供がいながらも自身もここまで子供でいられるのは、ある意味すごいとしか言いようがない(笑)。紙エレキングのインタヴューでは、「自分は成熟することを拒否していると言えるだろう」「シニカルな大人になりたくないから」と答えているリチャード・D・ジェイムスだが、『サイロ』を3回目に聴いたとき、僕はこの音楽のあまりの無心さに涙したことを告白しよう。

 実を言えば、『サイロ』を聴きながら「そーいやー、リチャード・D・ジェイムスって、デビュー当時はURのファンだったよなー」と思い出したのは、“Syro U473t8+e”のリズムがURの“Moor Horseman On Bolarus 5“”に似ているからだ。もちろんAFXにあのような勇敢な突進力はない。その代わりに何があるのかは、もう繰り返して述べる必要もないだろうけれど、たとえば、クライマックスとして配置された2曲のドラムンベース、“Papat4”と“S950tx16wasr10”には、彼の「ガール/ボーイ」哲学、いわばシャルル・クロス的ナンセンスが猛スピードで炸裂している。
 ダンスを意識していたとしても、いかんせんガキなので、セクシーに踊っているのではない(やはり、どうがんばっても、グルーヴィーには踊れないだろう)。ただただ身体を動かし、ぎゃーすかと騒いでいる、風に感じられる。試しに、まず覚えられない曲名の“S950tx16wasr10”を僕は5歳の娘に聴かせることにした。反応は予想通りで、AFXの最高作のひとつ、“Girl/Boy Song”の系譜の小刻みなブレイクビートに合わせて彼女は身体をガタガタと震わせた。サブベースが部屋に響くなかで、「ヘンな音楽ー」と感想をもらしたが、良かった、そう言われなければAFXではないのである。

 とはいえ、オリジナル・アルバムでは最後の曲になる“Aisatsana”は、クラスター&イーノ/レデリアスのソロ作品並みにロマンティックな曲だ。彼にとっては異例とも言える、とても真っ当なピアノの独奏によるアンビエントで、13年ぶりの新作を締めるには充分なほど美しい曲である。

 ひとつ種明かしをすれば、あわててスペシャル・リクエストのアルバムをレヴューしたのも、音楽的に『サイロ』と重なるところが多々感じられたからである。『Selected Ambient Works 85-92』(92)がそうだったように『サイロ』も時代と切り離される作品ではない……なんて書きながらも、ここしばらくのあいだAFXばかり聴いていたのですっかり洗脳されてしまったですよ。まずいよなぁ……。

 10月はエレキング月間! いや、正確にはフライング・ロータスを表紙に据えた『別冊ele-king プログレッシヴ・ジャズ 進化するソウル──フライング・ロータスとジャズの現在地』が発売となる9月30日がその皮切りとなります。10月15日には『ele-king』の新刊(エイフェックス・ツイン号!)が登場。そう、10月は“別冊”と“最新号”が揃う特別な月なのです。そして久々のele-king TVも企画進行中。毎度のことながらどちらの内容もウェブでは読めないのですが、お見せできないのがほんとにもったいなくてたまらない……という記事が目白押し。ぜひご購読くださいね!

 では本日は「別冊ele-king」のお知らせから!

■別冊ele-king プログレッシヴ・ジャズ
進化するソウル──フライング・ロータスとジャズの現在地


別冊ele-king
『プログレッシヴ・ジャズ』

Tower HMV Amazon

監修:松村正人
価格:本体 1,700円+税
仕様:152ページ、菊判
ISBN:978-4-907276-20-1
発売日:2014年9月30日

ele-king 別冊第一弾!
ジャズはどこまでジャズか?
ソウル~R&B、ヒップホップ、インディ・ロック、音響、即興、世界と日本、あるいは90年代とゼロ年代に2010年代……いま考えるべきジャズの命題を網羅し、ジャズを逆照射する、一冊まるごとの「ジャズ」号が登場。

●新譜を控えたフライング・ロータスの最新ロング・インタヴュー
●ディスクガイド、ブックガイド100
●FLYING LOTUS、SANABAGUN、Thundercat、Robert Glasper、菊地成孔、SUN RA、スガダイロー、Elizabeth Shepherd、Daniel Crawford、市野元彦×藤原大輔×田中徳崇、大島輝之×大谷能生、中尾勘二×牧野琢磨

 いま欧米のストリートで、ダンス・カルチャーで、エレクトロニック・ミュージックのシーンで、もっともクールなトレンドが「ジャズ」。ロンドンのレコード店に入れば大音量で「ジャズ」が鳴り、ラジオをつければジャズが流れる。DJカルチャーはジャズを堀り、インディ・リスナーはアヴァンギャルドを探求する。テクノにもダブステップにもヒップホップにもジャズが大量に注がれはじめている。
 周知のように、ロバート・グラスパーのグラミー賞受賞をきっかけに、ソウル~R&B~ヒップホップのなかでジャズが再解釈されている。が、現在の「ジャズ」には、さらにもっと自由な風が吹いている!

 プログレッシヴ・ロックのアフリカ・ヴァージョンとも呼べるジャズの新局面。シュギー・オーティスの流れを引く俗称「プログ&B」(プログレ+R&Bの略)。デトロイト新世代のカイル・ホールがうながすブロークン・ビーツ・リヴァイヴァル、サン・ラー生誕100周年で再燃するコズミック・ジャズ、デレク・ベイリー再評価のなか広がるアヴァンギャルドへの情熱、そして大友良英の上昇、シカゴ音響派の再評価、ワールド・ミュージックとしてのジャズ、吉田ヨウヘイgroupやサナバガンなど日本の新世代に見るジャズへの偏愛……。
 活況あるジャズの現状を分類しながら、新旧交えて「いま聴くべき」ディスク・カタログ100枚も収録。
 表紙&カバーストーリーは、近々待望の新作リリースが噂されるフライング・ロータス!


Marian McLaughlin - ele-king

 『dérive』と名づけられた美しい(アシッド・)フォーク・アルバム── 「dérive」とは英語で「drift」、漂流の意である。シンプルな弾き語りを基本スタイルとし、スペースのある音づくりのなされた本作には、たしかに身ひとつで漂白するような自由さを感じる。ただし、このタイトルはギー・ドゥボールの「漂流」から採られたということだから、ニュアンスとしては気ままな放浪というのとはすこしちがうようだ。おそらくは能動的に何かを見つけ、動き、展いていくためのひとつの方法、活動、もしくは実験というような意図があるのだろう。だから自由といってもただ束縛がないという状態のことではない。『dérive』には、なにかが生まれる前のような柔軟なエネルギーがたっぷりとふくまれている。そう、このジャケットの写真のように。

 ボルチモアで活動する女性ギタリスト/シンガーソングライター、マリアン・マクラフリン。クラシック・ギターを修め、現在はミュージシャンや詩人や画家などさまざまなアーティストたち集うコミュニティ・スペースで暮らし、音楽活動を行っている。アーティスト同士の共同生活を行ったり「漂流」の概念を引いていたりするからといって、ことさら政治性や運動性を帯びていたりするわけではない。ニック・ドレイクと比較されたりもしているが、どこかブリティッシュ・トラッドな雰囲気の旋律とアレンジには森と霧の匂いがあるし、それに誘い込まれるようにして幻想的な景が広がりさえもする。ときおり感じられるバロック風も、フリーフォークを通過した感性のなかで、一種独特のサイケデリアを築いている。よく聴けばテクニカルなのだろうけれど、なにか太い感覚やイメージの帯のようなものがあり、それにひきずられてぐいぐいと聴いてしまうというところが素晴らしい。
 “ホース”などバンドがバックをささえる曲でも、あくまでマクラフリンの単独の世界はくずれずに、録音のライヴ感とは裏腹に、まるで宅録のごとき趣がある。そしてそのすべてが彼女のギターによって先導される。彼女のアートの芯のようなものに火を点す楽器として、ギターはまるで生き物かなにかのようにふるまう。ギターはマクラフリンにとって、イメージをぶつけ、それを描きこむためのキャンバスのようなものだというが、ただ黙っているキャンバスではない。彼女にたいしてもきっとギターからの応答があるのだろう。そんなふうに、どこかしらにひっそりと生けるものの息吹がまつわりつくようなところも、フリーフォークと呼ばれたアーティストたちの幾人かを思い出させる。マクラフリン自身も特定のものからインスパイアされるわけではないとしながら、ジョアンナ・ニューサムやラーキン・グリムの名を挙げている。もちろん、そこには同時にニック・ドレイクやペンタングルの名も並ぶ。組み立てるのではなく弾き、歌い、イメージに流されることなくそれを操る技量を持つ──シンガーソングライターとして、ギタリストとして、そのどちらの強さも持ち合わせた本当に自由なアーティストだ。

interview with SBTRKT - ele-king


SBTRKT
Wonder Where We Land

Young Turks / ホステス

ElectroUK GarageDubstep

Tower HMV Amazon iTunes

 サブトラクトのライヴが好きだ。ラップ・トップの前に立ってシーケンサーをいじっているだけで「ライヴ」が成立してしまう今日この頃だが、サブトラクトはちがう。モジュラー・シンセを操り、キーボードを弾き、ドラムでグルーヴをする。しかもライヴが中盤にさしかかる頃には、自分自身から自分を「引き算(サブトラクト)」するためのマスクがズレてしまうほどの熱量だ。デジタル機材の助けももちろんあるのだが、やはり人間、体を動かしまくって汗をかいてなんぼのものである。

 2011年のファースト・アルバム『サブトラクト』をリリースしたあと、仮面の主はシンガーのサンファとともに世界を飛び回っていた(日本ではときにサブちゃんと呼ばれた)。ガラージやUKファンキー的な曲だけではなく、ナイーヴに響く“ホールド・オン”や“ネヴァー・ネヴァー”までもがフロアからダンスと歌声を生み出す原動力になるとは、おそらくサブトラクト自身も想像していなかっただろう。本名のアーロン・ジェイムズ名義では綺麗めなアシッド・ジャズを作っていたわけだが、巧妙な引き算と足し算によってそんなキャリアを微塵も感じさせないアーティスト像をサブトラクトは導き出した。

 ミュージシャンからの信望も厚くなり、リル・シルヴァにリミックスをされたり、レディオヘッドをリミックスしたりと人気プロデューサーになった彼だが、それももう2年前のこと。それだけに新作を待ちわびていたファンにとって『ワンダー・ウェアー・ウィ・ランド』のリリースはうれしい知らせだった。ノンビートにベースが放たれる冒頭、ライヴ修行で培われた生ドラムのリズム、ラップがフロウし、歌とピアノのシンプルな曲が差し込まれる──富みに富んだヴァリエーションをともなって、アルバムは展開していく。なにせ、サブトラクトの指揮下でウォーペイントとエイサップ・ファーグがコラボするサプライズまであるのだ。プレイヤーとしても、プロデューサーとしてもサブトラクトは輝かしい「足し算」に成功してしまったようだ(最新のライヴ映像を見たらステージには4人いました)。
 前作から3年経つので、本誌への登場も久しぶり。先日はフジロックで来日し、これからUK、ヨーロッパ、アメリカを巡る予定の忙しいサブちゃん(リスペクトを込めて)に「どこに着地する」のかを訊いてみた。

SBTRKT
UKを拠点に活躍するプロデューサー。
アルバム・デビュー前から、レディオヘッド、ベースメント・ジャックス、M.I.A、アンダーワールド、ゴリラズにリミックスを提供。2011年のデビュー・アルバム『サブトラクト』のヒット後は活躍もワールドワイドに広がり、〈フジロック〉への出演など、数度にわたる来日によって国内においても人気と注目を集めている。


自分の音楽はどこかに属す感じじゃない。それが正にサブトラクトでいることだよ。

2011年に『SBTRKT』をリリースしてから、あなたはツアーにとても力を入れていましたね。日本にも今年のフジロックを含めて4回も来日しています。ツアーを通して音楽的な変化はありましたか?

サブトラクト(SBTRKT 以下、S):変化はあったと思う。いろんな国に行くことで、音楽的な境界線も広がったことはやっぱり否めないね。家にいてずっとPCに向かって作業したり、インターネットでいろいろ調べるっていう環境から、実際に自分の目で違う世界を見るっていう環境は大きな変化だった。それから、いろんな土地でライヴをやって、その場所ごとに曲の尺やアレンジを変えてみたりして、みんなのリアクションを見るのもすごく勉強になった。

2011年にわたしはイギリスであなたのライヴを見ています。フレンドリー・ファイアーズといっしょにヨーロッパを巡っていたのが印象的でした。彼らの活動にはシンパシーを感じますか?

S:おかしなことに、いっしょにツアーに出るまでは彼らのことをじつはあまりよく知らなかったんだ。彼らの音楽を聴いて、ライヴを観て、本当に衝撃だったよ。ライヴに関していうと、すごく自分にとってもインスピレーションを受ける体験だった。とくに彼らは、ライヴ・ミュージックとエレクトロニックが混ざったサウンドだから、ああいう素晴らしいライヴができることにすごく動かされた。自分自身もいつもライヴに関して野心はあったしいろいろ追求していたけど、彼らのライヴを観て自分ももっと実験したくなったよ。いちばん勉強になったのは、ステージに出てただ楽器を鳴らしてるだけじゃダメなんだってこと。ステージに出たらオーディエンスに何かを与えることが大切だってことを教わったね。

あなたの曲は多くのDJたちからサポートされています。ここ日本では、あなたがリトル・ドラゴンのユキミ・ナガノとコラボレーションした“ワイルドファイヤー”がトラップなどのベース・ミュージックのパーティでかかることもあります。自身の曲はどんなジャンルのDJにサポートされていると思いますか?

S:これは、答えるのが難しいね(笑)。僕の曲をかけてくれる人は、これといったジャンルがない人たちな気がするよ。アルバムの中にいろんな曲があるから、幅広く受け入れられている気がする。たとえば、“ワイルドファイヤー”なんかはクラブDJとかヒップホップやダブステップが好きなDJにピックアップされそうだし、“ホールド・オン”はもうちょっとちがうジャンルのDJが、スローモーション・ディスコが流行っているヨーロッパのクラブとかでかかってるイメージ。
 この観点で観ると、今作はさらに幅が広まった気がする。“ワイルドファイヤー”が好きだった層にはど真ん中な作品でもない気がしているんだ。好きな人は好きだろうけど、新しい領域に行ったって感じているよ。ただ、アルバムの中には“ワイルドファイヤー”が好きな層に刺さる曲もある。アルバムの曲ごとに好みのリスナーがいるように、DJに関しても幅広く好みが分かれると思うんだよね。自分の音楽はどこかに属す感じじゃない。それが正にサブトラクトでいることだよ。

2011年の来日時にあなたは〈DOMMUNE〉でDJを披露し、ラップトップでエイブルトンを使ったスタイルは反響を呼びました。自分のDJについてどう思いますか?

S:2012年のツアーが終わった頃はけっこうDJをしてたよ。自分の新しい音源を試してみたりする場にもなるしね。でも生演奏のライヴをやりはじめてから、すごく自分が満たされることに気づいたんだよ。DJをしていた頃は、エイブルトンとかの機材でどこまで追求できるかっていう精神ではやっていたけどやっぱり限界がある。もちろん生演奏のライヴも限界はあるんだけど、領域はDJの可能性よりも10倍ある気がするんだ。観ている人たちのリアクションって自分次第だと思うんだよね。自分が何もやらなければオーディエンスもリアクションしないだろうし、自分が与えれば与えるほど観ている側もそれに返してくれると思うんだよね。もちろんDJでもそれをオーディエンスに与えられると思うんだけど、ライヴだともっといろいろできるから、いまの自分の情熱は確実にライヴにある。そういえば、DJをやっていた頃は、エイブルトンでもう新たなことができなくなってきたら最後の方はトラクターに変えていろいろ冒険してたなぁ。

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僕は曲を書くときはヒットソングを生み出すっていうより、その瞬間を音で生み出しているって思っている。


SBTRKT
Wonder Where We Land

Young Turks / ホステス

ElectroUK GarageDubstep

Tower HMV Amazon iTunes

今回のアルバム『ワンダー・ウェアー・ウィ・ランド』を最初に聴いたときに、前作よりも生楽器の音が多く使われている印象を受けました。これらはご自身で演奏しているのですか?

S:今回のアルバムはたしかにあまりプログラミングの音っていうのはない作品になっているね。ドラムも生だし、いろんなサウンド・エフェクトもスタジオにある楽器から録った音が多い。その瞬間に誕生した、よりオーガニックな楽曲を作りたかったんだよね。べつにもともとめちゃくちゃアナログな作品を作ろうって決め込んでいたわけではない。プログラミングのサウンドがあったからこそ、いまの自分があるからね。でもやっぱりシンセとかで音を出す方が、コンピューターで音をプログラミングするよりもロマンを感じたんだ。だから以前の作品よりもサウンドとかテクスチャーがちがっている。

前作にくらべてR&B色が強くなったのはなぜですか?

S:とくに意識はしてなかったなぁ。ただ、一つ意識的にやったのは、ハウスっぽい要素にならないようにはしたかなぁ。前作と比べたらテンポ感も変わったから、そこもそう感じる一つの要素かもしれないね。

“ヴォイセズ・イン・マイ・ヘッド”はウォーペイントの演奏に合わせてエイサップ・ファーグがラップをするというユニークな構成でした。まるで自分自身のバンドを結成したようですね。今回、コラボレーションにもとても力を入れていますがなぜでしょうか?

S:そうだね。ここがいちばん難しい部分でもあるんだ。自分に合うコラボレーターを見つけるのは、そもそもそんなにも簡単なことではないからね。自分のヴィジョンを満たしてくれる人ってそんなにもすぐに見つかるものではないから。もちろん素晴らしいアーティストは溢れているし、光栄なことにいっしょにやりたいって言って来てくれる人もたくさんいるんだけど、自分のコンセプトに完全にマッチする人を見つけるとなると本当に難しい。“ワイルドファイヤー”が人気になった途端、有名無名に関わらず、50くらいのアーティストにコラボレーションを持ちかけられたんだよね。でも僕のスタンスとしては、オファーのあったヴォーカリストに合った曲を書くっていうスタンスではない。ローリーなんてアルバムができる数ヶ月前にようやく出会った逸材だし、タイミングもすごく重要だなぁって思う。自分を追い込んでプレッシャーを与えてしまうと、ぜんぜんいいものにならないしね。
 だから、メジャー・レーベルのように期限が設けられて、決められた法則でヒットソングを書いて歌詞の方向性も決められて……っていうやり方は絶対に自分にはできない。僕は曲を書くときはヒットソングを生み出すっていうより、その瞬間を音で生み出しているって思っている。前作も今作も含め、自分のコラボレーションにはすごく満足が行っているし、いいコラボレーションができているって思っているよ。

今作にもサンファが参加しライヴもいっしょにやっています。“イフ・イット・ハップンズ”はピアノと彼の歌のみの構成で、サンファの歌唱力に対する信頼感が感じられます。現在の彼をどう評価しますか?

S:サンファは音楽をいっしょに作っててすごく楽しい相手だよ! じつは今回、彼は演奏をまったくしなかったんだよね。ピアノも全部僕なんだ。でも彼とは本当に息が合っているから、僕が何か音を出せば彼がそれに歌を合わせるという作業が普通にできるんだよね。その逆もあったりするよ。彼にメロディ・アイディアが浮かんだら、僕もそのキーにあった演奏を考えてみたり。そういう自由度のある作業がいっしょにできる関係ってすごく貴重だと思ってるよ。何かのフォーマットや手法に沿ってやるわけではなく、セッションから音楽が作り上げられることに幸せを感じるんだ。

“デイ1”や“デイ5”といった曲名やデザインに使われている世界地図から、テーマに「移動」や「旅」を感じました。そういったコンセプトが今作にはあるのでしょうか?

S:そうだね。少しあったかな。今回、僕にとって大切だったのが、自由に音楽が作れるフォーマットを作ることだった。ツアーとかでいろんな場所に回って世界を見る「旅」という意味ではなくて、いろんな国に自分がコラボレーションしたいアーティストがいたり、レコーディングしてみたいスタジオがあったり……、そういう意味での「旅」なんだ。それと、アルバムを作りはじめた島の影響は大きかったと思う。いつも生活している土地とはちがう不思議な環境に行くことで、なんか「場所」っていう感覚に特別な気持ちが芽生えた感じがした。

ジャケットの動物があなたのマスクを被っている理由はなんですか?

S:そもそもSBTRKTのマスクの意味は、自分(人物)と音楽(音)をかけ離して考えたかったからなんだ。音楽っていうのを自分の日常生活と離して見てほしかった。でも今作は前作と比べたらもう少し日常的になってる気もするかなぁ。今回の動物は、メキシコの神秘的な動物の木造を見て、それに影響を受けて動物を使いたくなったんだ。その神秘にすごく魅了されたんだよね。そのメキシコの動物の木造たちは謎がいっぱいで、とても神秘的な感じで、そこに自分とのシナジーを感じたんだよね。そのアイコンに自分のアイデンティティを残したかったから、マスクを被せた。

ヴァンパイア・ウィークエンドのエズラ・コーエンが参加した“ニュー・ドロップ. ニューヨーク”は彼らしいユーモアがタイトルや歌にも表れた曲ですね。彼にはどういうリクエストをしたのでしょうか?

S:いっしょにスタジオに入ったのは一日だけだったんだけど、その中でいっしょにセッションを行った。そのときにエズラが昔ラップを書いてみたことがあるっていう話をしてくれて、その時にニューヨークがテーマになった歌詞のアイディアが思いついたみたいで、そのアイディアをシェアしてくれたんだ。それを元に僕も音楽のアイディアを出して、彼もメロディのアイディアを出して、すごく自然なプロセスを進めていたらああいう曲になったんだよね。

今後、マスクを外すことはありますか?

S:外す必要性はないかな。だけどアートワークとかも含めて、アーティストとしての演出って音楽で変わるものだよね。そのときどきの音楽によってそういう部分も変化していくものだとも思っているよ。

interview with Diamond Version - ele-king


Diamond Version
CI

Mute/p*dis

Minimal TechnoExperimental

p*dis online shop

 今年で設立15周年を迎えたドイツの電子音響レーベル〈ラスター・ノートン〉。美しくもエッジの効いたミニマリズムを基調に、抜群のアイデアと最先端のテクノロジーを融合させた活動は、いまも変わらず現代エクスペリメンタル・ミュージックのひとつの指針であり、それを指向するもの皆の憧れの的である。そんな〈ラスター・ノートン〉を主宰する旧東ドイツ出身のふたり、ミュージシャン/ヴィジュアル・アーティストのカールステン・ニコライ(アルヴァ・ノト)と、ミュージシャン/デザイナーのオラフ・ベンダー(バイトーン)によるユニットがダイアモンド・ヴァージョンである。

 さて、2012年に活動を開始したこのダイアモンド・ヴァージョンだが、何やら動機がものものしい。というか、たのもしい。何でも「ブランド・スローガンや派手な広告、そして滑稽なPRなどのマーケティング合戦の時代に対する反撃」を目的としているというから、元来の〈ラスター・ノートン〉の色からするとじつにお行儀が悪く、また、要所に差しこまれる大味なシンセのメロディや音色など、これまでのふたりの活動には見られなかった下世話さも加味されていて大いに信頼できる(リリースが自身の〈ラスター・ノートン〉からではなく、老舗〈ミュート〉からというのも納得だ!)。これを「ポップ化」と解釈するとじつに収まりが良いのだが、彼らの「ポップ」は一筋縄ではいかない。ミクロレベルにまで細分化された非楽音によるグリッチ&リズムから、織り重なるレイヤーが無限のパターンを作り出す「ずれ美」によるモアレ&ドローンを経て、2000年代後半あたりからメッセージ性を強く含む、重く軋んだインダストリアルなビートが顕著になってきたカールステンたち。そんな彼らが変換する「ポップ」は、じつに論理的で構造的で、さらにすこぶる批評的で……知らず知らずのうちにマーケティング合戦に侵されて、もはや機械化してしまっているわたしたちの認識・判断・行動の装いに鋭いメスを入れ、誇大妄想にさらされたハリボテのような世界の内実をあらわにしてくれる。

 また、彼らのリリース形態も戦略的で、活動開始当初から「EP5枚を発表した後にアルバムをリリースする」と宣言していたが、その言葉どおり、今年いよいよアルバム『CI』をリリースした。モデルでポエトリー・シンガーでもあるレスリー・ウィナー、ペット・ショップ・ボーイズのニール・テナント、〈ラスター・ノートン〉初の女性アーティストとしても話題のベルリン在住の日本人トラックメイカー、Kyokaらのヴォーカル(ラップ?)をフィーチャリングするほか、ライヴでは何度も共演済みのオプトロン奏者・伊藤篤宏も参加という、理路整然としながらもとても肉体的で、実験的というよりもどこか開放的でにぎやかな内容になっている。
 そして、昨年の〈TAICO CLUB'13〉と〈EMAF TOKYO 2013〉出演に伴うジャパン・ツアーに続いて、早くも3度目の来日が決定しているダイアモンド・ヴァージョン。しかも、今回はエンプティセット、Kyoka、まもなく〈ラスター・ノートン〉よりEPをリリースするUENO MASAAKIらも帯同するレーベル・ツアーというから、期待は高まるばかりだ。
 広告文句が垂れ流す──わたしたちのより良い生活を約束する──企業スローガンなんてまったくもって絵空事にしか聞こえないが、ダイアモンド・ヴァージョンが視覚と聴覚を越えて繰り出すハードでダンサブルなテクノロジー攻撃は(一見、無機質で非感情的に見えるが)、間違いなく、わたしたちがより豊かにより人間らしく生き抜くためのひらめきを与えてくれる。

パンク・ロックやインダストリアルの影響はずっとありましたよ。そもそも、私たちは消費社会非難を表現したいんではなく、グローバル化された経済界と私たちの関係性をより強く反映させたいんです。

ダイアモンド・ヴァージョン(以下、DV)のなかで、カールステンさんとオラフさんの明確な役割分担などはあるのですか?

DV:それぞれの具体的な役割分担はありません。すべてのトラックとヴィジュアルを共同作業で行うようにしています。もちろん、それぞれ特定のことにはっきりとしたフォーカスを向けていますが、トラックやヴィジュアルなど、メインの仕事は常にふたりで作業していますよ。

2012年の結成当初から「EPを5枚リリースした後にアルバムを発表する」と宣言されていましたね。ひとつひとつ段階を踏むことにより、私たちリスナーはDVが最終形に向かって「自己生成」していくプロセスを楽しめるように感じました。このようなリリース形態にした意図を教えてください。

DV:そうです。5枚のEPのレコーディングは過程であり、私たちはリスナーにそれを共有してほしいと思いました。すべてのレコーディングが終わるまでにほぼ1年かかり、5枚めのEPがどんなサウンドになるのか、あまりはっきりしていませんでした。私たちはプロジェクトがどのように成長し、どのような方向に発展するのかを見てみたかったんです。これは、DVをオープンな状態にしておくために非常に重要なことでした。

5枚のEPとアルバム『CI』を通して、すべての曲にフックがあり、さまざまな側面をもちながらも統一感のある内容になっていますね。ふたりの間でコンセプト作り、曲作りはどのように行われるのですか?

DV:私たちにとってDVは、違った形の音楽を実験する場所なんです。自分たちのソロ作品とあまり近くない、別のスタイルに関わってみたかったんです。これに挑戦するために作品のモードを多様化させたり変化させたりしてみました。また、ファイル・シェアリング、同時進行レコーディングからライヴ・セッションまで、これまでのコラボレーションとは異なる方法も試してみました。最初にたくさんのスケッチを作り集めて、どのアイデアやトラックが好きか、どれを精巧に作り上げていくか、などはいつも後で決めています。また、アイデアのひとつにヴォーカルとのコラボレーションを除外しないというのがあったんで、私たちは歌詞の内容になるようなトピックや可能性のあるアイデアについて話し合いました。それが、私たちに広告の世界やメディア・カルチャーのすべての形に関心を持たせたんです。私たちは避けようとしても毎日スローガンにさらされています。だから、企業スローガンはレコーディングのアイデアのキーエレメントになりました。

あなたたちが鳴らす音の核をじっくり聴くと、キックの位置からスネアのタイミングひとつにしてもはっきりとした意思があり、意味をもたせているのを感じます。その姿勢、社会に対する強烈な批評性には電子音楽がもつ冷たさというよりも、パンク/ハードコアがもつパワーとエネルギーを感じます。あなたたちのルーツにパンク/ハードコアはあったりするのですか?

DV:はい、パンク・ロックやインダストリアルの影響はずっとありましたよ。私たちのソロ作品ではこのルーツを常に消している一面もありますが、DVはこの古いルーツに再び関わる正しい時期だと判断しました。そもそも、私たちは消費社会非難を表現したいんではなく、グローバル化された経済界と私たちの関係性をより強く反映させたいんです。あなたがどのくらいの割合でこのシステムの一部として構成されているのか、という答えを見つけようとしているんです。ここにパンクとの繋がりは見えますが、私たちはこのシステムのなかで、私たちみんなが演じる二重の役割を非常に意識しています。

アルバム『CI』では、レスリー・ウィナー、ニール・テナント、Kyokaら一筋縄ではいかないヴォーカルをフィーチャリングし、革新的な音を使用しつつも大衆に訴えるポピュラリティを獲得していることに驚きました。最初からヴォーカルを入れようと決めていたのですか?

DV:はい、それもアイデアのひとつでしたよ。私たちはアーティスティックな方向をとり、過去には戻りたくありませんでした。レコーディングだけではなく、ライヴ・パフォーマンスもできるようなコラボレーションを試みようと、はっきりと考えていました。そこで、私たちの音楽スタイルからできるだけ遠い人たちで、可能性のあるコラボレーターの名前をリストアップしていきました。私たちは単に衝突のようなものを引き起こしたのですが、この衝突は私たちの音楽制作の古いパターンすべてを無くすためにとても重要だったんです。

なかでも、とくにレスリー・ウィナーの参加には驚かされました。レスリー・ウィナーといえばブランドの広告塔ともいえる元スーパーモデルであり、80年代にはDVが攻撃の対象とする「ブランド・スローガンや広告の嵐、滑稽なPRなどのマーケティング合戦」の最前線にいた女性だと思うのですが……。彼女に参加してもらった経緯は?

DV:これは有名なシンガーとのコラボレーションというアイデアだけではなく、私たちがファッション世界のアイコンを探していたからなんです。コラボレーターをモデルやファッション業界から探していたところ、友人がレスリーを推薦してくれました。彼女の過去の背景だけでなく、音楽とファッションにおける役割としても完璧な選択でしたし、もちろん、レスリーのユニークな声と私たちのサウンドの相性がとても良かったんです。

レスリー・ウィナー、ニール・テナント、Kyokaら3人のヴォーカリストにどんなことを求めましたか。また彼女たちがDVにもたらしたものは?

DV:DVでは私たちの過去のプロジェクトを壊し、コントラストや緊張を生み出すために、すべてのコラボレーションに対して可能なレベルでオープンでいるというメインのアイデアがあります。だから伊東篤宏、レスリー、ニール、Kyokaたちとのコラボレーションは非常にうれしいことでした。私たちは〈ラスター・ノートン〉のアルヴァ・ノトとバイトーンのアルバムを生み出したかったんではなくて、いつもの道から離れて新しい空間に自分たちを置いてみたかったんです。これはとても挑戦的なアイデアでした。時々、アーティストは新しいものに挑戦するために困難な道を選ぶんです。

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DVのコンセプトは「アンチ・ラスター・ノートン」だったので、〈ミュート〉は正しい場所かもしれないと感じました。また、私たちには常にアーティストとレーベルオーナーの2つの役割があるんで、この役割を無くし、ただレーベルのアーティストになりたいと思ったんです。

2009年にふたりにインタヴューさせていただいたとき、カールステンさんが「ポップ・ミュージックを変換させたものが将来的な音楽像になるのでは」とおっしゃっていたのがとても印象的でした。まさにDVがそれを体現しているように思います。今もその意見は変わらないですか?

DV:はい。私たちはポップとの関わりを除外したくないと思っていました。実際にこのアイデアの変形をペット・ショップ・ボーイズのニール・テナントとのコラボレーションという選択で提案してみました。

DVの作品は自身のレーベル〈ラスター・ノートン〉ではなく、エレクトリック・ミュージックの老舗〈ミュート〉からのリリースとなっていますね。その経緯を教えてください。

DV:レコーディングをはじめたとき、ダニエル・ミラーに〈ミュート〉からアルバムをリリースしないかとオファーされました。DVのコンセプトは「アンチ・ラスター・ノートン」だったので、〈ミュート〉は正しい場所かもしれないと感じました。また、私たちには常にアーティストとレーベルオーナーのふたつの役割があるんで、この役割を無くし、ただレーベルのアーティストになりたいと思ったんです。

若かりし頃に〈ミュート〉に対する思い入れはありましたか?

DV:もちろん! ファド・ガジェッド、 デペッシュ・モード、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテン、ライバッハ、スロッビング・グリッスル、ニック・ケイヴなどにはじまり、すべての〈ミュート〉の音楽を聴いています。80年代の中頃は〈ミュート〉をぴったりと追いかけていましたよ。

あなたたちは旧東ドイツ出身ですが、政府による検閲が厳しかった東ドイツ時代に、西側諸国の音楽を自由に耳にすることはできたのですか?

DV:この時期はとても制限されていましたが、私たちは簡単には手に入らない色々な種類の音楽に興味がありました。アンダーグラウンド・ミュージックを聴くことは、私たちにとってとても重要だったんです。ポップ・ミュージックに興味は無く、いつもとても変な音楽を探していました。それを手に入れるためにテープを作ったりレコード交換をしていましたよ。

東ドイツ出身のアーティストで、あなたたちに影響を与えた人がいれば教えてください。

DV:ロックやポップ・ミュージックのジャンルではあまり面白いと思うものはありませんでした。私たちは当時のフリー・ジャズやハプニングなどの芸術運動により大きな興味を持っていて、そのシーンをアーティスティックだと感じていました。大きな影響力のあるバンドは東ドイツにはあまりいなかったんで、私たちは外国の音楽により興味を持っていました。

DVの宣戦布告ともいえる、さまざまな企業の経営理念が次々と無機質に通り過ぎる“Mission Statement”の映像も衝撃的でしたが、女性モデルが登場するコスメティックCMのような“Live Young”、土着的な映像がリズミカルにカットアップされる“Make Believe”など、これまでのあなたたちのイメージを覆す、生身の人間が登場する映像もさらに刺激的でした。DVにおけるヴィジュアル/イメージの取り扱い方について教えてください。

DV:ここではファッション、企業、美、生活様式など、私たちが常にさらされている固定観念──広告のなかの幸福で美しい世界──の上に、トラックの内容を構築するアイデアを見ることができます。あの"Mission Statement"のスローガンがとても過激に聞こえるのは、たんに企業の誇大妄想の結果です。私たちではなく、企業自身がこれらの恐ろしい概念の世界を作り出しているんです。

〈ラスター・ノートン〉の設立当初は、アーティストがレーベルのコンセプトに合わせている印象が強かったのですが、最近ではアーティストの個性が前に出て、逆にレーベルカラーを更新しているように感じます。〈ラスター・ノートン〉設立から15年経ったいまの心境を教えてください。

DV:何年か前から、それぞれのアーティストの個人的なアイデンティティをより打ち出すようにしています。その結果のひとつとして、現在レーベルはよりアーティスティックな多様性を持つようになりました。これはとても意識的なステップでしたね。

〈ラスター・ノートン〉は、グリッチ&リズム〜モアレ&ドローンを経て、2008年のアルヴァ・ノト『Unitxt』、バイトーン『Death of a Typographer』あたりから強いメッセージ性が表面に出てきて、ハードでインダストリアルな方向に向かっているような気がしています。最近、電子音楽界に蔓延しているポスト・インダストリアル的なムードについてどう思いますか?

DV:私たちにとってスタイルはあまり重要ではないんで、次にどうなるのかという質問には答えたくありません。私たちはアーティストにホームを与え、現時点での彼らのそれぞれの方法を信じなければいけません。ジャンルの定義ではなく、個々のクオリティがより重要なんです。私たちはふたつの言葉で言い表せる音楽レーベルにはなりたくないですし、過去、現在、そして、未来のエレクトロニック・ミュージックを反映したいと思っています。

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あの"Mission Statement"のスローガンがとても過激に聞こえるのは、たんに企業の誇大妄想の結果です。私たちではなく、企業自身がこれらの恐ろしい概念の世界を作り出しているんです。

今回〈ラスター・ノートン〉ツアーで大阪、京都、東京を回られますが、ずばり今回のツアーの見どころを教えてください。

DV:日本のフェイヴァリットなクラブのひとつでもあるメトロや、ひさびさにプレイするUNITで、エンプティセット、Kyoka、Ueno Masaakiらと一緒に大きな〈ラスター・ノートン〉ナイトを作り出します。今回はエンプティセットの初来日となるので、これはみんなにとって本当にプレミアですよ!

カールステンさんは、坂本龍一、池田亮司らとのコラボレーションのほか、2002年にワタリウム美術館で開催された『カールステン・ニコライ展』、『横浜トリエンナーレ2011』でのインスタレーション、現在開催中の『札幌国際芸術祭2014』にも映像作品を展示されるなど、日本にもずいぶんと馴染みがあるかと思います。新たに日本で体験したいこと、挑戦したいことなどありますか?

DV:日本はいつも私にインスピレーションを与えてくれる重要な場所です。また、私たちの作品を受け入れてくれてることにとても感謝しています。これがたくさんの自分の作品を日本で最初に見せている理由です。現在は、芸術と音楽の作品両方を結合させたパフォーマティブ・インスタレーションのような、もっと没入型のインスタレーションに集中したいと思っています。

DVの今後の展望をお聞かせください。

DV:DVは可能な限りオープンなプロジェクトとして続けていく予定です。変わったコラボレーション、メディア・フォーマット、パフォーマンスができるさまざまな場所を探したり、通常のツアーバンドのようにならないために、大きなフェスティバルから小さなクラブまで、すぐに対応できる異なるセットアップを発展させていきますよ。

【RASTER-NOTON JAPAN TOUR 2014】

電子音楽レーベルの最高峰、ドイツのRASTER-NOTONが3年振りとなるジャパンツアーを大阪、京都、東京の3都市で開催!

今年6月に待望の1stアルバムをリリースしたRASTER-NOTONのツートップAlva NotoとByetoneのユニット<Diamond Version>をはじめ、初来日となるブリストルの実験インダストリアル・デュオ『Emptyset』、レーベル紅一点のスウィート・カオス・クリエーター『Kyoka』、そして9月にRASTER-NOTONよりEPをリリースする期待の才能『Ueno Masaaki』ら4組がツアーに帯同。また、京都と東京ではAlva NotoとByetoneによる『DJ Alpha & Beta』のDJセットも行われます。絶対にお見逃し無く!!

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【大阪公演】

Date:2014年10月2日 (木)
Venue : 大阪 CONPASS
(大阪市中央区東心斎橋1-12-20 心斎橋ダイワビルB1F)
Time:OPEN 18:30 / START 19:00
Ticket:前売 3000円 / 当日 3500円

LIVE:Diamond Version / Emptyset / Kyoka / Ueno Masaaki

Information: CONPASS (06-6243-1666)

Ticket Info:
ローソンチケット (TEL 0570-084-005): [ Lコード 54122]
チケットぴあ(TEL 0570-02-9999):[ Pコード243-732]
e+

【京都公演】

Date:2014年10月3日 (金)
Venue : 京都 METRO
(京都市左京区川端丸太町下ル下堤町82 恵美須ビルBF)
Time:OPEN / START 22:00
Ticket:前売 3000円 / 当日 3500円

Live : Diamond Version / Emptyset / Kyoka / Ueno Masaaki / Psysex

DJ : DJ Alpha & Beta (Alva Noto + Byetone) / Tsukasa / Tatsuya Shimada (night cruising)

Information: METRO (TEL 072-752-4765)

Ticket Information:
ローソンチケット(TEL 0570-084-005):[Lコード 58334]
チケットぴあ: (TEL 0570-02-9999) [ Pコード242-177]
e+

【東京公演】- UNIT 10th anniversary –

Date:2014年10月4日 (土)
Venue : 東京 UNIT
(東京都渋谷区恵比寿西2-34-17 ザ・ハウスビル)
Time:OPEN / START 24:00
Ticket:前売 3500円 / 当日 4000円

Live : Diamond Version / Emptyset / Kyoka / Ueno Masaaki

DJ : DJ Alpha & Beta (Alva Noto + Byetone)

Information : UNIT(TEL 03-5459-8630)

Ticket Information:
e+
ローソンチケット (TEL 0570-084-005): [Lコード 73883]
diskunion 渋谷/新宿/下北沢 Club Music Shop, diskunion 吉祥寺,
DISC SHOP ZERO, JET SET TOKYO, TECHNIQUE, UNIT

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【Diamond Version】

90年代後半よりポスト・テクノ〜音響シーンをリードするドイツの電子音楽レーベルRaster-Notonの主宰者であるAlva Notoことカールステン・ニコライとByetoneことオラフ・ベンダーが結成したユニット、Diamond Version。これまでにイギリスの老舗レーベルMUTEより2012年〜2013年にかけて5枚の12インチ(『EP1』〜『EP5』)をリリースし、バルセロナのソナー、日本のTaicoclub、EMAFなどのフェスティバルや、デペッシュ・モードのツアーサポート公演に出演。ユニークなコンセプトと独自のポップセンスを盛り込んだアグレッシブなインダストリアル・エレクトロサウンドと刺激的なヴィジュアルがシンクロする圧倒的なライブパフォーマンスは世界中から賞賛と注目を集めている。そして2014年6月、ニール・テナント(Pet Shop Boys)、レスリー・ウィナー、Kyoka、伊東篤宏らをゲストに迎えた待望の1stアルバム『CI』をリリース。

https://www.diamondversion.info

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【Emptyset】

2005年にジェイムス・ギンズバーグとポール・ポーガスが結成したプロダクション・プロジェクト。音の物理的性質、電磁気学、建築、画像生成を駆使し、パフォーマンス、インスタレーション、映像といった幅広い分野で活動を行う。構造主義/物質主義的なアートおよびノイズ〜音楽間の領域を考察するアナログメディアの遺産的な性質を特徴とした作品を制作。これまでに、raster-notonから12インチ『Collapsed』(2012年)とフルアルバム『Recur』(2013年)を、またSubtext Recordingsから『Medium』(2012年)をリリース。ロンドンのTate BritainやThe Architecture Foundationでのインスタレーション制作を行い、CTM、Kunsthalle Zurich、Sonic Acts XIV等のフェスティバルに出演。

emptyset.org.uk

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【Kyoka】

坂本龍一のStop Rokkasho企画やchain musicへの参加、Nobuko HoriとのユニットGroopies、Minutemen/The Stoogesのマイク・ワットとのプロジェクトを行う、ベルリン〜東京を拠点に活躍するスウィート・カオス・クリエイターKyoka。これまでにベルリンのonpa)))))レーベルからの3枚のミニアルバムを発表後、Alva NotoとByetone率いるドイツのRaster-Notonからレーベル史上初の女性アーティストとして2012年に12インチ『iSH』、2014年には待望のフルアルバム『IS (Is Superpowered)』をリリースする。そのポップとエクスペリメンタルを大胆不敵に融合させた、しなやかなミニマル・グルーブは様々なメディアで高く評価され、Sonar Tokyo 2012、FREEDOMMUNE 0<ZERO>ONE THOUSAND 2013へも出演を果たす。

www.ufunfunfufu.com

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【Ueno Masaaki】

桐朋学園大学音楽学部作曲科、同研究科修了。作曲、ピアノ、指揮を学ぶ。第76回日本音楽コンクール作曲部門入選。在学中から、コシノジュンコ/伊藤五郎ファッションショーへ選曲/音源提供で参加、NHK大河ドラマ「功名が辻」のサウンドトラック及び劇中曲の指揮、宮本亜門演出「テイクフライト」に副指揮として参加するなど活動を始める。近年では、現代音楽作品やP±H名義でエレクトロニックミュージックを用いたインスタレーション作品を製作/出品し、2013年からは Ueno Masaaki / ΩPROJEKT名義で電子音響作品の発表を開始。2014年9月、ドイツのraster-notonより1st EP 『VORTICES』をリリースする。

https://oooprojekt.com/

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Photo: Szary / Modeselektor
Editing: Julija Goyd

ENDON - ele-king

 東京発、ディオニューソス主義者どもによるエクストリーム・バンド、エンドンによるファースト・フル・アルバム。
 スイスはローザンヌでの〈LUFF(ルフ)フェスティヴァル〉、その最高峰のサウンドシステムの中で観たエンドン、エンプティセット(Emptyset)という連チャンが、昨年のライヴ観覧ハイライトであったことは間違いない。プロデュースにボリス(Boris)のAtsuo氏、エンジニアに中村宗一郎氏、リミックスにゴッドフレッシュ(Godflesh)のジャスティン・K・ブロードリック、ヴァチカン・シャドウ(Vatican Shadow)のドミニク・フェルノウを起用した本作品は、エンドンが内包するヴィジョンを2014年現在へ最大限具現化したものといえる。初めてディスコダンスアクシス(Discodanceaxis)やカタルシス(Catharsis)を聴いたときの衝撃に近いなこりゃ。

 僕はこのアルバムを聴きながら、数ヶ月前におこなったボリスの最新作『ノイズ(Noise)』のウェブ掲載用インタヴューの中で、Atsuo氏がそのアルバム・タイトルを「当初ものすごくブルータルなイメージが沸いていたが、結果的にボリス史上最も音楽的なアルバムとなった」と発言していたことを思い出した。または数年前のピート・スワンソン(Pete Swanson)のインタヴュー中の発言、「音楽における究極性である“ノイズ”を表現しながらも聴者とのコミュニケーションとして成立させたい」という言葉も脳裏をよぎる。

 エンドンのサウンドは限りなくノイジーで、そのパフォーマンスは限りなく暴力的であれど、それは非常に音楽的で愛に満ちている。圧倒的なスキルでバンドの基礎を支えるギターとドラム、肥えた耳と緻密な計算で紡いだノイズ/エレクトロニクスが縦横無尽に空間を駆け巡り、獣のごときボーカルが全感情を(死ぬ)限界まで表出させる。その5人をつなぐピアノ線のような緊張の糸は、つねに最大のテンションで張りつめているのだ。迂闊に飛び込むとこちらの手足が切れちゃう! みたいな。世界広しといえども、いわゆるバンド編成による音楽の究極性をここまで追求したアホどもを僕は知らない。

 ちなみにヴィデオはロカペニスこと斉藤洋平氏、ジャケットは河村康輔氏。マジでやり過ぎでしょ君たち。凡百のオカマ系インダストリアル・ムーヴメント(僕を含む)を完膚無きまでに破壊し尽くすであろう、きたるレコ発は100%流血沙汰。僕も火に油を注ぎに行きます。ピュア・ファッキン・ディストラクト・カオス!

もっとも艶やかなアンダーグラウンド - ele-king

 グラフィックと音によって独自のカルチャーを作ってきた〈ナイト・スラッグス〉。UKファンキーとグライムをミックスしたサウンドと、ネット世代のデジタルな感覚によって表現された「ストリート」デザインは、UKを中心としながらも世界的な、そしてジャンル横断的なシンパシーを集めています。本誌でも、これまで〈ナイト・スラッグス〉周辺のアーティストのインタヴューや、その特異なグラフィックを取り上げてきました。

 そして2014年9月22日、とうとうレーベル首領のボク・ボクがL-Vis 1990とガール・ユニットを引き連れ日本にやってきます! 同レーベルのアーティストでは、先日東京で行なわれたヘリックスのプレイが記憶に新しいですが、今回も〈ナイト・スラッグス〉のイメージを更新する一夜になることでしょう!

■Red Bull Music Academy presents Night Slugs Label Showcase

日時:9月22日(月)
OPEN/START 23:00
会場:UNIT(代官山)
出演:
〈Night Slugs〉
Bok Bok, L-Vis 1990, Girl Unit
〈Support〉
A TAUT LINE (GREEEN LINEZ / DISKOTOPIA)
1-DRINK
ENDLESS (NEO TOKYO BASS)
FRUITY (SHINKARON/FLIGHT MUZIK)
PENPEN 922 (KOKO MIYAGI + KONIDA)
TOMAD (MALTINE RECORDS)
LICAXXX
BACON(VJ)


料金:前売 2,500円 (税込) / 当日 3,500円 (税込)

チケット情報(8月8日から発売中)
LAWSON[L-code 70667]/e+/DISK UNION[渋谷クラブミュージックショップ/新宿クラブミュージックショップ/下北沢クラブミュージックショップ]/TECHNIQUE/BEAMS RECORDS/JET SET TOKYO/UNIT
* 20歳未満の入場不可。要写真付身分証

〈Red Bull Music Academy〉
https://www.redbullmusicacademy.jp/jp/events/red-bull-music-academy-presents-night-slugs-label-showcase/

〈代官山UNIT〉
https://www.unit-tokyo.com/

■出演アーティスト紹介

Bok Bok(ボク・ボク)
ロンドンを拠点に活動するDJ/プロデューサー、またレーベル、Night Slugs(ナイト・スラッグス)のディレクターとしても知られるBok BokことAlex Sushon(アレックス・スション)。2009年にL-Vis 1990と共にリリースした"Night Slugs EP"にてデビュー。2011年5月には自身のレーベル、Night Slugsから"Southside" EPを発表し、収録曲"Silo Pass"がクラブヒットした。2013年にはLAの姉妹レーベルFade To Mind(フェイド・トゥ・マインド)より鮮烈なデビューを果たしたシンガー、Kelela(ケレラ)のミックステープ"Cut 4 Me"に楽曲を提供。2014年には三年ぶりのソロ作品"Your Charismatic Self"EPを発表し、Kelelaの歌声をフィーチャーしたシングル"Melba's Call"では、スタイリッシュなPVとともに、官能的かつ機械的なその独特の世界観が貫かれている。


L-Vis 1990 (エルヴィス1990)
Brighton出身のDJ/プロデューサー、L-Vis 1990ことJames Connolly (ジェームス・コノリー)。2008 年に"L-Vis 1990 EP"にてデビューし、同年Bok Bokと共にクラブイベント"Night Slugs"をスタートする。翌年にはMad Decent(マッド・ディセント)やSound Pellegrino(サウンド・ペレグリーノ)などの大御所レーベルからも作品をリリースする。2011年に発表したアルバム”Neon Dreams”ではシンセポップを、2013年にDance System名義で発表した"Dance System EP"ではクラシックなシカゴハウスのサウンドを鳴らすなど、レーベルの多岐にわたる音楽性を体現しているアーティストである。


Girl Unit(ガール・ユニット)
ロンドンを中心に活動するDJ/プロデューサー、Girl UnitことPhilip Gamble(フィリップ・ギャンブレ)。 2010年に"I.R.L" EPにてNight Slugs(ナイト・スラッグス)よりデビューし、同年同レーベルより発表したシングル"Wut"がクラブヒット。クラシックな808や909のリズムにラップやグライム、R&Bのトラックをミックスする彼の独創的なスタイルはUSクラブサウンドのポップネスとUKサウンドの伝統を兼ね備えている。2012年にはアナログ機材を使用して作られた6曲入りEP"Club Rez"を発表。2013年に、Hysterics(ヒステリックス)名義で発表した"Club Constructions Vol.5"ではインダストリアルで冷たいダンスビートを披露している。現在自身初のLP作品を製作中である。

interview with NEW HOUSE - ele-king


New House
Kaleidoscopic Anima

Second Royal Rec

Psychedelic RockAcousticExperimentalAnimal Collective

Tower HMV Amazon

 洋楽かぶれ──、僕もそのひとりだが彼らもかなりなもの。たくさん聴いたうえで作ることがメインストリームで奨励されることはないが、90年代初頭は邦楽を更新する活力剤にもなっている。
 もう5年以上も前の話だが、ニュー・ハウスの名前を知ったのは、やたらマニアックなインディ・ミュージックに特化したレコード店のスタッフに、「日本にアニコレみたいなバンドはいないの?」と訊いたときだった。乱暴な会話だが、これはひとつの喩えで、「たとえばアメリカにおけるアニマル・コレクティヴのような、おもしろいアイデアと因習打破の姿勢を持ったバンドはいないの?」という話である。それでもらった答えのひとつが「ニュー・ハウス」だった。
 とはいえ、僕が以下のインタヴューで使っている「アニコレ」は、半分冗談を込めながらも、アニマル・コレクティヴそのものを指している。率直に言って、似ていると思う。模倣だとは言わないが、そのサイケデリアとコーラスの感じが似ている。似てはいるが、ニュー・ハウスなりの発展をしているのが今作『カレイドスコピック・アニマ』である。
 60年代のサイケデリック・サウンドの引用、悪戯っぽい音響的な仕掛けと多彩なメロディ、ドゥーワップ、エスニック・サウンド……、シッド・バレット時代のピンク・フロイドが〈サブライム・フリーケンシー〉から出したような、アニマル・コレクティヴがソフト・ロックにアプローチしたような、要するに甘い幻惑を誘う、「面白いアイデアと因習打破の姿勢を持った」作品だ。昼間にコーヒーを飲みながらトリップしよう。

■NEW HOUSE / ニューハウス
2009年あたりに結成され、東京を拠点とするインディ・バンド。現在はYuta(Vo.Gt)、Seiya(Dr)、Punpun(Gt. Cho)、Moro(Ba)、Komuro(key)の5人体制で活動。結成同年の11月にファースト・ミニ・アルバム『Want Alone But Help Me』、2012年にファースト・フル・アルバム『Burning Ship Fractal』をリリース。BLACK LIPS、VIVIAN GIRLSなど海外バンドの日本公演をサポートし、USツアーの敢行、〈SXSW〉への出演も果たした。


流れでルーム・シェアすることになって。一軒家、ボヤ家があるんですけど(笑)、そこに住むようになって。(Yuta)

まず自己紹介からお願いします。

Punpun:こんにちは、ニュー・ハウスのギターを担当しておりますPunpunでございます。

Yuta:僕はヴォーカルとサンプラーとか、ギターを担当しておりますYutaです。

Moro:僕はベースとサンプラーをやっているMoroっていいます。

そもそもニュー・ハウスっていつ結成されたんですか?

Yuta:結成は2009年ぐらいに。

そこそこなキャリアですよね、もう。

Yuta:でもその2009年のときに文化祭の後夜祭? ……みたいなやつに出たいからやりたいっていうような、それで結成っていうよりは1回ライヴやって、そのあと普通に卒業して仕事したくねーなって感じだったよね。

じゃあメンバーみんな同じ大学なんだ?

Punpun:僕だけ違う大学で。

Yuta:僕がファッション専門学校で、そのときは別にギターがいたんですけど。

え、ごめんなさい、ちょっと話が前後しちゃうんだけど、みんな東京なんですか?

Moro:僕だけ神奈川です。

Yuta:他は東京ですね。

なるほど、レーベルの〈セカンド・ロイヤル〉が京都だから、京都のひとなのかなって。

Moro:むしろなんで俺らが京都のレーベルなのか、みたいな(笑)。

ずっと東京で活動してるんですね。

Yuta:はい、ずっと東京でやってますね。

それで学生時代にみんな知り合って。

Yuta:僕らは専門学校時代に知り合って、彼(Punpun)は僕の地元の友だちなんですよ。茨城なんですけど。

Punpun:高校生のときからライヴハウスでライヴをやったりとか。

Yuta:バンド友だちみたいな感じで。で、Punpunは大学生のとき出てきていて、僕はファッションの専門学校で出てきていて、流れでルーム・シェアすることになって。一軒家、ボヤ家があるんですけど(笑)、そこに住むようになって。

そこからニュー・ハウスって名前が来たとかじゃないの(笑)?

Yuta:いやあ(笑)、活動が新宿だったから当て字でただニュー・ハウスってしただけで、意味はまったくないです。ニュー・ホテルだとちょっとラブホすぎるなって(笑)。もう深い意味はまったくないです。

あまりにも新宿って匂いはしないバンドだよね(笑)。

Yuta:そうですか(笑)。たしかに新宿の闇覗いてないし(笑)。

Punpun:代々木側だったからね。歌舞伎町じゃなくて、南口寄りだったからね(笑)。

Yuta:ライト層です(笑)。

なるほどね。じゃあ2009年にはいまのメンバーがそろって。

Punpun:最初は違うギターでずっとやっていて、1枚めのEPのときは──

Yuta:まだその子がいたんですけど、リリースしてライヴが忙しくなった時期がありまして、で、俺はライヴやめるぞ、的な……(笑)。

Punpun:リリース・パーティはもう、アルバムに関わってなかった自分だったみたいな感じです。

Yuta:なんかもう、とりあえずギター助けてほしいって(笑)。で、彼はもうひとりで音楽を作っていて、できるのはわかってたんで、ちょっといいすかって(笑)。って言ったら快諾してくれて、芋づる式にこう(笑)、いまだに続いてるっていう。

Punpun:そうですね。

なるほどね。じゃあすっげー上手かったんだ、関わったときから。

Yuta:そうですね、ハイスタとかブラフマンはもうけっこう弾けてて。かなり。

(一同笑)

Punpun:そこの評価ポイントなんだ(笑)。

Yuta:だって俺うまく弾けないから、こいつ弾けるなってとことはやっぱありましたね。そこで俺の上手いっていう評価が(笑)。それを指標にしてました。これはマジだからね(笑)。

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俺らは『フィールズ』とか、あそこらへんのライヴを観て。(Yuta)


New House
Kaleidoscopic Anima

Second Royal Rec

Psychedelic RockAcousticExperimentalAnimal Collective

Tower HMV Amazon

そんなハイスタとかブラフマンとかいうのは対岸にあるようなサウンドをやっているわけだから。だって、ニュー・ハウスといえば、やっぱアニマル・コレクティヴとかなわけでしょう?

Yuta:(笑)まあ、いろいろ聴いてますけど。

Punpun:ハイスタとかブラフマンっていうのは中学校のときよく聴いてて。当時はそこらへんが共通していて仲良くなって。

Yuta:最初の共通点はそこらへんだよね。

アニコレが好きで結成したわけじゃないんだ(笑)?

Yuta:全然そういうのじゃないです、はい(笑)。

Punpun:まあこっち来てからいろいろ音楽掘ったりしてて、そういう音楽も好きになったし。

そうか、2009年って――

Yuta:ちょうどニューウェイヴ・リヴァイヴァルもあったり、ダブステップとか。

ダブステップは一番ピークだったよね。

Yuta:そう、スクリームとかですね。懐かしくね? ブリアルとか。

僕はどっちかと言うとアニマル・コレクティヴとかに飽きてた頃で。

Yuta:はいはい。『ストロベリー・ジャム』が終わって『メリウェザー〜』が出てる頃ですね。

そうだね。あれが一番ヒットしたアルバムだけど、やっぱり好きだったの?

Yuta:わりとでも、俺らは『フィールズ』とか、あそこらへんのライヴを観て。

僕なんかオヤジだから、みんなとは入り方が違うと思うけど、みんなはどういうところからアニマル・コレクティヴとかブラック・ダイスって聴いたの?

Yuta:でもけっこうナチュラルだったよね。

まわりにハイスタとかブラフマンみたいなバンドがいるなかで、どうだったのかなと。たとえば俺がどういうふうに聴いたかというと、アニコレは『サング・トング』が好きで、あれが2004年だよね。

Yuta:タワレコでもまだニューエイジのコーナーにしか置かれてない頃ですね。たしかPVつきで流れてたのを見て、ああこれカッコいいなと思った記憶がある。


高校生ですね。だから地元にいて入ってくる情報って『ロッキング・オン』とか『スヌーザー』とかってぐらいで。(Punpun)

とにかくすごく衝撃を受けたんだけど、それはなぜかと言うと、〈ファット・キャット〉って元々テクノを出してたレーベルから出してるんだけど、テクノとかエレクトロニック・ミュージックがものすごく行き詰ってたときだったんだよね。だからギターの使い方とかヴォーカルの使い方とかも含めて、すごく新鮮に思えたんですよ。よくビーチ・ボーイズだとかサイモン&ガーファンクルだとか言われたんだけど、自分のなかではテクノ耳で聴いてたんだよね。っていうのが僕の文脈なんだけど。ニュー・ハウス的にはアニコレみたいなものってどこから知ったの?

Punpun:でもあの頃って、ラプチャーとかもあって。

ラプチャーはディスコっていうかさ。

Punpun:そこらへんが一回流行って──まあ俺が聴いたのが『フィールズ』からで、そこから『サング・トング』へさかのぼったんだけども。そのあたりのディスコとかエレクトロニック・ミュージックをカッコいいと思っても、その後出てきたのをおもしろくないと思ってたときに出会ったのがアニコレって感じなので、すごく求めてた感じのもので。

ちなみに2003、4年って何歳?

Punpun:高校生ですね。だから地元にいて入ってくる情報って『ロッキング・オン』とか『スヌーザー』とかってぐらいで。

Yuta:それぐらいだったね。ネットのブログもそこまで充実してなかったし。

Punpun:まだYouTubeもそこまでだったし。シガー・ロスとか聴いてて。

Yuta:(笑)そうだ。

だって僕もあれは〈ファット・キャット〉から出てたから買ったけど、もしUSのインディ・レーベルから出てたら、あの時点ではまず聴かなかったと思うんだよね。やっぱりニュー・ハウスって、ざっくり言ってしまえば、2000年代のブルックリンへの日本からのリアクションじゃないの?

Yuta:まあ系譜としてはぜんぜんあることだとは思います。

少なくともロンドンへの回答ではないでしょう(笑)?

ブルックリンは「アニコレ、カッコいいな、ブラック・ダイス、カッコいいな、ギャング・ギャング・ダンスいいな」とか、掘ってけば掘っていくほどおもしろかったから。(Punpun)

あのへんにハマるころには、僕らはもうニューウェイヴやクラウトロックも相当聴いていたので、それがまず根底にあったんじゃないのかな。(Yuta)

Punpun:(笑)高校生のときとかって、やっぱり僕レディオヘッドとかああいうのが好きで、もっと音楽を掘りたいって気持ちが強くなったときで。で、ロンドンっていうかイギリスの音楽を掘っていくんだけど「もう無理だ」ってなって、USに目を向けるとたぶんストロークスとかラプチャーとか出てきて、でも「なんかちょっと違うな」ってずっと思ってて。
 レディオヘッドみたいなオルタナティヴなものを探してたところで、アニコレとかブラック・ダイスみたいな存在はすごいビックリして。最初ちょっとどう受け入れていいかわからないけど、どんどんハマっていった。普通だったら掘っていくごとにどんどん薄まっていくところなんだけど、ブルックリンは「アニコレ、カッコいいな、ブラック・ダイス、カッコいいな、ギャング・ギャング・ダンスいいな」とか、掘ってけば掘っていくほどおもしろかったから。それでのめり込んでいきましたね

Yuta:でも、あのへんにハマるころには、僕らはもうニューウェイヴやクラウトロックも相当聴いていたので、それがまず根底にあったんじゃないのかな。だって90年代のテクノとかも少しは耳に入れてましたけど、ベタかもしれないけどキャバレー・ヴォルテールとか、スロッビング・グリッスルとかも聴いてたし、Pファンクとは別のベクトルの70年代ファンクも聴いたり。インクレディブル・ストリングス・バンドとか聴いてたじゃん、もう。

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〈サブライム・フリークエンシーズ〉があったりして……(Punpun)

ティアーズ・フォー・フィアーズとか80sポップスの影響もあると思います。エレクトロニクスに演歌っぽいメロディが乗る感じは。(Yuta)


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2000年代半ば頃までは僕もブルックリン系の音が好きで追ってたんですよ。で、日本からたくさんリアクションが出てくるかなって期待してたんですけど、気がついたら、ニュー・ハウス以外にあんまりいないよね。

Yuta:たぶんあんまりいないと思います。いかにも僕らみたいなのは。

ブラック・ダイスみたいなのが出てきたらいいのにね。

Yuta:出てきたら俺は感動して対バン申し込みますけどね(笑)。もうちょい地下とか行くとまた別になってくるんだろうね。

Punpun:たまたま僕らが出会ってないだけで、ほんとは探せばいるのかもしれないですよ。でも、僕らって歌ものでもあるから、アングラ・シーンに寄っていけない気持ちもあったし、でも聴いてる音楽はノイズ・ミュージックだったりとか。

Yuta:ごった煮していきたいっていうところはある。

でも……、これだけアニコレ、アニコレって言われたら抵抗あると思うんだけど(笑)、でもやっぱりヴォーカル・ラインはアニコレの影響が残ってると思うんだよね。とくにコーラスとか。

Punpun:これは自分でもわからないですけど、アニコレとかそこらへんの人たちもだけど、先に〈サブライム・フリークエンシーズ〉があったりして……ワルシャワってレコード屋が好きだったし、高円寺のスモール・ミュージックとか、変なワールド・ミュージックを掘り集めたりしてて。

ワールド・ミュージックとか〈サブライム・フリークエンシーズ〉の文脈とアニコレとは、別物だと思うんだけどね。

Punpun:メロディ・ラインとかで言うと、ああいう、何ていうか民謡チックなラインとかコード進行とかがやっぱり好きだったし。それをエレクトロニック・ミュージックでやるとなると、アニコレの影響もあったのかもしれないけど。

Yuta:僕はティアーズ・フォー・フィアーズとか80sポップスの影響もあると思います。エレクトロニクスに演歌っぽいメロディが乗る感じは。ソフト・セルとかああいうのもすごく好きだったし。

Punpun:ああいう節回しっていうのは、アニコレが好きだからそういうのが好きになったのか、最初からそうなのか、どっちかわからないですけどね。

Yuta:まあでも気持ちいいよね(笑)。言ってみればゴスペル・チャントみたいなものも聴いていくし。

あれは多重録音をしてるの?

Yuta:ものによってはPunpunに重ねてもらったり、僕が5回も6回もガーッて重ねてって。けっこうしんどかったです(笑)。

Punpun:僕は各国の民謡とかが普通に好きだから、ああいうのがいちばん気持ちいいなと思うんですけどね。でも今回はインスト2曲入れてますよ。

はじめにあった今回のテーマとしても、ギターをもっと聞かせたいっていうのがあってレコーディングがはじまったんで。(Yuta)

あれいい曲だよね。演奏の音の隙間は、ニュー・ハウスのほうがあると思うんだよね。アニコレってすごく詰まってるでしょ。あんまり空間的じゃない。今回2曲入ってるインスト、とくに最後から2曲はニュー・ハウスの新しい境地なのかな?

Punpun:前作って僕らが25とかのときなんですけど、まだブルックリン勢の勢いがあったときだったんですけど。あの頃のほうが、アニコレに限らず、あそこらへんのエクスペリメンタルでもポップだし、エレクトロニックだし、って音楽を聴いてたのはたしかです。でも、あの頃より、いまのほうがバンドの演奏を大事にしていると思います。

でも、ニュー・ハウスはロック的なイディオムを目指してるわけじゃないでしょ?

Yuta:たしかにロック的なものはまったくないですね。ただ、前作ではシーケンスが強まってたところがあったから。はじめにあった今回のテーマとしても、ギターをもっと聞かせたいっていうのがあってレコーディングがはじまったんで。そのバランスというか、揺らぎというか、比重が少しだけそっちにいったぐらいですけど。

完成度は高いと思いますよ。

Yuta:ほんとですか(笑)。

でもロックのリスナーって保守的な人が多いでしょう?

Yuta:数で言ったらそれはあると思いますね。

そういうなかで、対バンするバンドとかもいないでしょう。

Yuta:(笑)わかります? でも、僕らの周りは音楽的な共通点ではなくてアティチュード的な、共通する志で対バンはできてるなと思います。

ニュー・ハウスって、USツアーやったり、都内でもけっこうライヴやっているんですよね。

Yuta:ライヴ観てよかったと言ってくれる人も、そこにいるすべてではないけど、何人かはいられるので(笑)。やればやったで、数名は確実にいて。

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「自分たちの目指すものは自分たちでしか完成させられないんだね」って、自分たちでやりましょう、ってはっきりと決めた。(Punpun)


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今作の曲作りのプロセスでは、何が重要な要素となえりましたか?

Punpun:やっぱりミックスまでを自分たちで完成させるって決めたことは大きかったですね。「自分たちの目指すものは自分たちでしか完成させられないんだね」って、自分たちでやりましょう、ってはっきりと決めた。それは絶対ありますね。

Yuta:“Blow Wind Blow”という、PVになってる曲があって、まあそれができて、2、3曲できてきたあたりから、これアルバムに向かっていってるなって意識が完全に出てきたよね。それが夏前だと思うんですよね。で、ラフ・ミックスしたものをシングルなんかで打診していく上で、さっき言ってたような「これ、人に頼むの無理なんじゃないの」っていう結論になりましたね。「俺たちでやっていったほうが絶対良くなる」っていう(笑)。

スタジオ録りした音源を全部バラして家でミキシングしたって感じなの?

Punpun:いや、ほとんど家で作って。

Yuta:素材録りはスタジオに行ったりとか。サンプリングとかも外に行ったりはしてるんですけど、RECした素材を集めてミックスしていったりするのは我が家でした(笑)。けっこう時間かかりました。

Punpun:1年ずっと──

Yuta:ミックスとかずっとやってて、けっこう。これじゃない、これじゃないって言って。次の週来たら俺がまた変えてたりね(笑)。「これどう?」っつって。ただ、結果としてみんなで聴いて共感できるサウンドにしようっていうのが最終目標だったんで、僕がミックスするにしても僕が満足するだけじゃなくて、みんながわかってくれるものにはしたいっていうのはあった。

さっき、Punpunくんが「民謡」ってキーワードを言ってたけど、今回のサウンドをクリエイトしていく過程をもうちょっと話してくれる?

Yuta:僕がまず最初にトラックを勝手に作って、じゃあ乗せますか、みたいな。

Punpun:僕はそこに演奏的な面とかアンサンブルの面とかで少しでもよくできればいいなって気持ちで、協力者のようなつもりです。その上で民謡的な旋律とか、共通する目標があるので。

Yuta:こういうニュアンスが、とか。

Punpun:コーラスがこういう風にあったらいんじゃない、とかそういう話をしていたぐらいで。

ライヴはもっと肉感的だよね。けっこう荒く歌うところもあるとは思います。高校時代からウワーって叫ぶ音楽をやってたから(笑)。(Yuta)

これって、多重録音しているから表現できているわけですよね?

Yuta:だから、ライヴはもっと肉感的だよね。けっこう荒く歌うところもあるとは思います。高校時代からウワーって叫ぶ音楽をやってたから(笑)。キッズな音楽をやってたんです。やっぱそういうのも実際残ってるから。

Punpun:それはあると思う。ハードコアから来てるのは絶対ある。

Yuta:俺もそれがすごく残ってて。ソフトなイメージで来るとちょっと違うとは思う。わりと音はガチッと出したいと思ってやってるから。

Punpun:逆にああいう、柔らかな民謡みたいなイメージは与えられてないのかなって。節回しはそういう感じなんですけど、聞こえるものとしてはもっとドロッとグチャッとしたものかもしれないですね。

Yuta:EPのときにはすでに実験的な音楽を作ってみたいとか、そういうところはありましたし、そこのあたりからじょじょにやってきたものがあって、内心次に何をやるかとか、すぐ決めるわけではないですけど、苦ではないというか。「次はもうちょっとこういうものやりたい」とかすぐ話すんですよ。もうちょっとバンドのここのニュアンスを強めたいとか。

彼(Punpun)がチカーノ・バットマンも持ってきて聴いたら、そのフィーリングがさらにアップデートされたというか。(Yuta)

もともとのテーマは何だったの?

Yuta:前作の反動がけっこうあって。前作はダークでジャム感があって、ギュンとした感じだったので(笑)、わりと今回ライトな、フォーク的なものとアンビエンスが混ざったサウンドで行こうというのはあった。

Punpun:前のアルバムを録り終えるぐらいのときから、なんかそういう話はもうしていて。今回入ってる中に“Natural Blessings”って曲があるんですけど、そのあとすぐできたものです。こういう、もっとフォーキーだけど、っていう曲を増やそうって。

Yuta:もっとフィジカル感があったり、響きがちょっとひねってあるというか、そういう風に聞こえればいいなとは思って。

Punpun:2年は経ってるけど最初からそういう話はしてたなと、いま思いました。

ここ2、3年でバンドのなかで話題になった音って何がありましたか?

Punpun:新しいのであえて出すとすれば、チカーノ・バットマンとか。

意外だね。そんなのまで聴いてるんだ!?

Punpun:あれはけっこう、このアルバム作ってるとき聴いてましたね。

じゃあほんとに〈サブライム・フリークエンシーズ〉とか好きで聴いてるんだねー。

Yuta:ちょうど僕がペルーとかの60sのものにハマっていて。ウィ・オール・トゥギャザーとか、トラフィック・サウンドみたいな。ああいうのを聴いてて、彼がチカーノ・バットマンも持ってきて聴いたら、そのフィーリングがさらにアップデートされたというか。そういうのもちょっといいねって、共有できたと思います。

Punpun:僕は演奏面とかそういう肉感的なものを求めてたので、あれがすごい良かったなと思うんですけどいかがですか(笑)。

家に行くとエンヤ聴きながらコーヒー淹れてるっていう。(Punpun)

Yuta:いや、俺もあれは借りてすごい良かったなと。

Punpun:ほかに何かないかなって。ぜんぜん違うの聴いてたから。

Yuta:エンヤも聴いたし――。

(一同笑)

Punpun:エンヤ聴かされた(笑)。

(笑)マジっすか。

Yuta:ぶっちゃけエンヤの影響がある。

Punpun:家に行くとエンヤ聴きながらコーヒー淹れてるっていう。

Yuta:(笑)俺ニューエイジ志向だったから。ヤソスとか、ドローンとか聴いたり、エンヤとか聴いたり。基本ラリー・ハードとか、アンビエンスがある打ち込みとか、そういうものは好きなので。

Punpun:だからチカーノ・バットマンとエンヤですね。

Yuta:ヒドいな(笑)。

それはヒドい(笑)。でも良かったね。エンヤ好きなひととチカーノ・バットマン好きなひとが同じバンドにいるってなかなかないもんね。

Punpun:いろいろありましたけど、いまとくにパッと浮かんだのがそのふたつ。

たぶんこのインタヴューを読んでもぜんぜんわかってもらえないね(笑)。音わからないけど逆に謎めいていていいかもしれない。

Punpun:(笑)でもほんとに南米の音楽とかですね。

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デタラメな英語ではないつもりです。わりとしっかり書いてます(笑)。(Yuta)


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言われてみれば、アプローチは似ているのかもしれないね。UKの〈サウンドウェイ〉が出してるような感じというか、モダンな感覚が注入されたワールドっていうか、エスニック・タウンのエスニック・レストランというか。ニュー・ハウスって、そういう意味では新宿っぽくなってきたじゃないですか(笑)。

Yuta:やっと謎が紐解かれてきました(笑)。

そうだね(笑)。まさに多国籍的な。

Moro:でも、ダンス・ミュージックはすごく取り入れていて。

Yuta:モデル500とか──

それもぜんぜん感じないけど(笑)。

Yuta:俺めっちゃ好きなんだけど。サン・エレクトリックとか、そこらへん。

サン・エレクトリックはちょっとわかる。チルアウトな感じがちょっと似てるかもしれない。

Yuta:ガンガンにレイヤードしていく感じとかも影響受けてますし。

たくさん聴きすぎてるんじゃないの?

Yuta:たぶんそれもありますね。でもポップなものが好きだよね。聴いていて掴まれる感じが好き。

歌詞に意味はある?

Yuta:歌詞は散文的ではありますね。自分のなかのフィーリングが出るような言葉を書いている。デタラメな英語ではないつもりです。わりとしっかり書いてます(笑)。

日本語では歌わないんですか?

Yuta:お互いソロとか、個人的にやってるものは日本語で歌ったりしてるんで。

Moroくんは?

Moro:僕は制作はしてないんですけどDJをやってます。

担当はベースとサンプラーだよね。サンプラーはけっこうたくさん使ってる?

Yuta:けっこう使ってますね。ただ今回のアルバムに関しては減りました。減らしたって感じだよね。前ほどは絶対使わないと、って曲ではないので。

Punpun:ライヴでも1曲めなんかは一切使ってないよね。

Yuta:久々のバンド・サウンドが俺らにとっては新鮮だったりしてるし。

前回はスタジオでの録音だったけど、今回は自宅でのスタジオ・ワークだったり、アートワークも自分でやった。そのアットホームな感じというのは出ていると思う。(Yuta)

ジャケットにもうひとつ候補があるとしたらどんなジャケット?

Yuta:ジャケットに関しては全部俺がやってるんです。今回、こういうシンメトリーな模様にしたのは、サウンドとリンクするような、惹かれるものがあるからなんです。シンメトリーだったり対比的なものがあったり、複雑に組み合わさってるけど細かく同じようなものが並んでたりっていうのが僕のヴィジョンのなかにあって。でも、わりとシンプルなものを心がけたっていうところは絶対あると思います。

具象的なヴィジュアルな前作とは大きく違うところだね。

Yuta:今回自分たちでやったことがもっと多いよね。前回はスタジオでの録音だったけど、今回は自宅でのスタジオ・ワークだったり、アートワークも自分でやった。そのアットホームな感じというのは出ていると思う。

それは出てるよね。

Yuta:それは大事だったと思うし、やってよかったなって思う。

Punpun:僕らはもちろんライトに作ってるわけじゃないんですけれども、ライトに聴けるものをっていうテーマがあって、こんなふうに出来上がったのはほんとによかったなと思っていて。

ライトに聴けるものっていうのは、逆に言うと重たく捉えないでほしいっていう気持ちがあって?

Punpun:まさにそうだし――

Yuta:複合的にライトなものじゃない? 音楽性とかじゃない、もっと昼間とかの暖かいときにパッと聴いてほしい、バンド・サウンドだけど部屋でもぜんぜん聴いてほしいというか。

Punpun:しきりにライトにライトにって言ってた気がする(笑)。

Yuta:聴く場所を選ばないものにしたいっていうか。耳障りにはしたくないとか、そういう意味で。

僕らはもちろんライトに作ってるわけじゃないんですけれども、ライトに聴けるものをっていうテーマがあって、こんなふうに出来上がったのはほんとによかったなと思っていて。(Punpun)

ああ、なるほど。じゃあ最後に、これぜったい日本語のタイトルにしなければいけないって言われたら何ていうタイトルにしました?

一同:……(笑)。

Yuta:でもまあ、そんなにサブカル感も出ないと思うし、翻訳したものでもぜんぜん納得したとは思いますよ。「新しい家の万華鏡の命」とか「生命」とかでも、僕はぜんぜん納得いくかもしれませんね。ポルトガルのフォークとかもそういうタイトルが多いですし。そう書いてあったら僕が気になりますね。新しい家って。

ちょっとスピッてるな(笑)。

(一同笑)

Punpun:ちょっとじゃないかもしれない(笑)。

Yuta:こいつキテるなー(笑)ってなるかもしれない。

Yutaくん大丈夫(笑)?

Yuta:自主制作盤だろこれってなっちゃいますね。

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「新しい家の万華鏡の命」とか「生命」とかでも、僕はぜんぜん納得いくかもしれませんね。(Yuta)

作ったのがだいたい真昼間で、大体週末だったんで、「休日」とか「昼下がり」とか。(Moro)


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Kaleidoscopic Anima

Second Royal Rec

Psychedelic RockAcousticExperimentalAnimal Collective

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そうだね。じゃあこのアルバムのイメージを日本語で一言で表すとしたら?

Yuta:「一年」じゃないですか?(笑)

Punpun:ええー。何だろうなー。

まあ2ワードぐらい使っていいよ(笑)。

Punpun:「環境」とか。

ええー!?

Punpun:作ってるときのことを思い出すから──いや、「環境」っていうのは、作ってるときの生活の感じがそのまま出たし、そういうものを作りたかったっていうのはあるし。ごめんなさい、パッと出るのはそんな感じですね。

Moro:作ったのがだいたい真昼間で、大体週末だったんで、「休日」とか「昼下がり」とか。

それは僕も感じる。その感じは出てるね。

Moro:制作の面ではこのふたりだったりしたんで、一歩引いた目で見てたから。「昼下がり」ぐらいの気持ちで聴けるように結果的にはなってるかなと。

Yuta:言うねー。

スピッてる感じはそんなしなかったねー(笑)。

Punpun:そういう意味で言うとやっぱ「環境」でいいんじゃない?

なんで?(笑)

Punpun:ライトに聴いてほしい、聴く場所を選ばない、とか。

Yuta:環境音楽好きだし(笑)。エリック・サティ大好きだし。家に置いていても違和感がない、そんなデザイン。

Punpun:いいの思いついた……「血肉」。いや、やめよう。

(一同笑)

フル試聴可!
https://secondroyal.bandcamp.com/album/kaleidoscopic-anima
https://secondroyal.bandcamp.com/album/burning-ship-fractal
https://secondroyal.bandcamp.com/album/want-alone-but-help-me

New House - Blow Wind Blow

■NEW HOUSEライヴ情報
2014.09.26(金)@下北沢 Daisy Bar
2014.09.27(土)@渋谷 Burrow
2014.11.23(日)@京都nano
2014.11.30(日)@渋谷HOME
https://www.newwwhouse.jp/

ニッポン辺境7インチ! (and more !) - ele-king

 個人的に最近は7インチを買うのが楽しい! ので、最近かっこよかった日本のバンドの新作7インチを紹介したい。

HOMMヨ / ライカ

 東京で活動する3人組ガールズ・バンドで、過去にスタジオ・アルバム3枚とライヴ・アルバム1枚をリリースしたのち初のアナログ・リリースとなるこの7インチ。これまでの音源と同様レーベルは〈Good Lovin' Production〉(山口富士夫の発掘音源などのリリースで知られる)。ちなみにその後もう一枚、最新アルバムを同レーベルからリリースしたのだがそっちはまだゲットしてないので後日じっくり紹介したい。シングルA面に収められたのは毎回ライヴの最後に披露されている曲で、これまで音源化されていないのが大変に惜しまれていた名曲である。

 タイトルのライカは犬の名前であり、「うーわんわん」というコーラスもあって古川日出男の『ベルカ、吠えないのか』なんかを想起させるとともに「Golden Years」「God knows I’m Good」といったデヴィッド・ボウイからの引用と思われる言葉が出てくるあたりは宇宙犬ライカを主人公とした『スペース・オディティ』のようなストーリーなのかもしれない。

Young Parisian / Last Time Boogie

 グラムロック研究家として執筆活動も盛んに行っているTsuneglam Sam率いるグラムロックバンドのこちらも初アナログ作品。ジャケットは新品ながら中古盤の風格のあるダメージ加工風のデザイン。
 ゲイリー・グリッター風の「ドッドタッタ」ドラムからはじまるT・レックス風のブギーという、これぞグラムロック! な必殺ナンバーを収録。録音はパブ・ロック・バンド、ザ・ニートビーツのPANが運営する〈Grand-Frog Studio〉自慢のアナログ機材を駆使して行われた堂々のヴィンテージ・サウンド。
 現在、欧米のアンダーグラウンド・パンク・シーンではグラムロックのテイストを取り入れたパワーポップ・バンドがけっこう出てきているのでちょこちょこチェックしているのだが、彼らのオリジナル・グラムロックに対する強いこだわりと探究心はちょっと群を抜いている。

The C-3’s / Wild Wind ep

 四日市で〈Vortex〉というパンク・スペース(1階がショップ、2階がライヴ・スペースになっている。インドネシアのMarjinalも日本ツアーの際に立ち寄るなど、中京地区のパンク・シーンでは重要な拠点)を運営するメンバーによる女性3人組。サウンド、歌詞ともにPoinson Girlsあたりの〈Crass Records〉周辺バンドを思わせる力強いポスト・パンク。

Boys Order / Tomorrow Dancing

 ガールズ・ガレージ/パワーポップ・バンドのPramathで知られる「関西パンク・クイーン」チヒロ・イサドラをフロントに擁するパワーポップ・バンド。2011年のデビューEPにつづく初7インチ。A面はジューシィフルーツなんかを思わせるダンサブルなニューウェーヴ・ポップ。B面はちょっとゴツゴツしたギターリフから煌びやかなシンセの乗ったBメロに展開したと思うと高速で畳み掛けるサビに突入、最後にガレージ/サーフ系のかっこいいリフが出て来たなと思うとバツっと終わるという目まぐるしくもキラキラしたパワーポップ。

碧衣スイミング

 ついでにおもしろいライヴ・アクトも合わせていくつか紹介しよう。まずは札幌で角煮という奇っ怪な女性ニューウェイヴ・バンドを経て現在は東京に拠点を移して活動する女性シンガーの碧衣スイミング。カシオトーンの弾き語りで「わたしは中腰でスパゲティを食べてみたい」(“中腰スパゲティ”)「告白されて、激怒したー」(“告白されて”などなど強烈に歌詞が耳に残り、一度聞いたらしばらく頭の中で鳴り止まない。個人的にはJON(犬)以来の衝撃である。
 ソロではこれまで3枚のCD-Rをリリースしているが、『クール・ポップ』『アンバランス上等』『誰も見てない舞台でオールナイト』といったタイトルからもそのパンク精神がうかがえるだろう。
 現在は半額という2人組シンセ・パンク・バンドでも活動しており、やはりCD-Rを1枚リリースしている。

その他の短編ズ

 もともとソロで弾き語りによる活動していた森脇ひとみと、別バンドRMでも活動する板村瞳の2人組。基本的にはアコースティック・ギターとキーボードを用いた囁くような弾き語りだが、演劇的な部分もあればB-Boyへの憧れを歌い上げたラップもある。
 後述するMCビル風の主宰するパーティ〈HOMEWORK〉に出演、対バンのERAなどを見に来たとおぼしき(想像ですけど)B-Boyたちのハートを鷲摑みにしてCD-Rが飛ぶように売れていたのが印象的。これまでに3枚のCD-Rアルバムを発表、最新作『3』は限定50枚だがbandcampでも購入可能。

https://kirigirisurecordings.bandcamp.com/album/3

MCビル風

 ロードサイド感あふれるリアルでしょぼくれた日常を描いたリリックと熱いライヴ・パフォーマンス、そしてちょっとほろっとくるような叙情性はイルリメに通じるものも感じさせる若手ラッパー(そんなに若くもないかも……)。
 南池袋〈ミュージックオルグ〉を拠点にオーセンティックなヒップホップとジャンクなオルタナティヴ・ミュージックを横断する意欲的な自主企画〈HOMEWORK〉を精力的に続けているのだが、これがまた毎回間違いない素晴らしい内容なので要注目。

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