「Nothing」と一致するもの

Cankun - ele-king

 カンクン(CANKUN)のヴィンセントとはかつてローブドア(Robedoor)のサポート・メンバーとしてヨーロッパを周遊した際に旅をともにした。〈ノット・ノット・ファン〉からのデビューに裏打ちされるように、彼も当初はまたサン・アロー(Sun Araw)に多大な影響を受けたワンマン・バンドであった……脱力系ギター・ループを主として構築される、いい加減なポスト・コロニアル的世界観、という意味では同じくフランスで活動するハイ・ウルフにかなり近いスタイルからキャリアをスタートさせている。

 しかしたとえばハイ・ウルフことマックスが鋭敏に現在のシーンの動向をうかがっているのに対して、ヴィンセントはどちらかといえばそういったことに無頓着なように思える。イタロ・ディスコやハウスへの造詣の深さとクラウト・ロックへの傾倒、自身は訪れたことがないというメキシコ南東部の土地への朧げなイメージから触発されるトロピカル感覚などをベースとして、シーンとは無関係に、当初からブレることのない要素を彼なりのプログレッシヴ・ロックとして紡ぎ上げてきた。

 前作、『カルチャー・オブ・ピンク(Culture of Pink)』以来2年ぶり、同じくフランスの〈ハンズ・イン・ザ・ダーク〉よりリリースされた新作、『オンリー・ザ・サン・イズ・フル・オブ・ゴールド(Only the Sun Is Full of Gold)』は、サン・アロー以降のあらゆるローファイ・エキゾチカの最終形態、そのもっとも洗練された形と言っていい。前作でのギターによるファンキーな展開は控えめに、70~80年代のカルト・サーフ・ヴィデオのサウンドトラックのように緩やかに進行してゆく厭味のないサイケデリア、過度に極彩色に彩られることのないそれはまさしくVHS越しに観える色褪せた桃源郷の海辺のようでもある。ヴィンセントの別プロジェクトであるアーチャーズ・バイ・ザ・シー(Archers By The Sea)で長年にわたり追求してきたローファイ・エレクトロニクス・サウンドによって投影される仮想の海辺、その舞台が本作ではもっともいかされていると言えよう。

梅雨入りする前にこれを聴きながら海へドライヴに行きたいなぁ……とかたまには僕だって思うんですよ。


Mark Fell / NHK yx Koyxen - Potato tour 2015 - ele-king

 ナイン・インチ・ネイルズからトム・ヨークまでもが「ファン」を表明、先日はパウウェルのレーベル〈Diagonal〉からの新作リリースと、国際舞台での人気もますます上昇、みんな大好きNHK yx コーヘイが凱旋公演!
 今回はいつものパートナー、マーク・フェル(snd)も同行するのだが、もうひとり、な、なんとラッセル・ハズウェル──〈Mego〉系のアーティストで、メルツバウとの共作をワープから出したり、最近はパウウェルのレーベルからもアルバムやら12インチを出しているIDM界の裏巨匠的な変人──も来日する。
 これは、そうとうラジカルな電子音楽の一夜になるだろう。
 この興味深いラインアップに、DJではNOBUが加わる。
 東京公演は、5月22日の代官山ユニット。



(ちなみに、この日からおよそ3週後の6月13日には、NHK作品のリリース元である〈PAN〉のショーケースもあるんだよな。こっちはこっちで、すごいメンツです。テクノ・ファンは、両方行くしかないか)

■NHKコーヘイ・ツアー・スケジュール

5月 . MAY
20日 NHK Special,9 at DOMMUNE
22日 東京 . Tokyo at UNIT
Phantasmagoria - tba
23日 岐阜 . Gifu at EMERALDA
Taxis - with Dj Conqus, Miyata
24日 大阪 . Osaka at NEW OSAKA HOTEL
-:Consep:- - with Microdiet, Metome, Yaporigami, Yuki Aoe, DJ Mayumi☆Killer

30日 大分 . Hita at CMVC
with Microdiet
31日 香川 . Takamatsu at RIZIN

with SIX (Dj Zen x vj ツジタナオト), Dj Takimoto Hideaki, REM PLANET
6月 . JUNE
6日 台北 . Taipei at Korner
7日 香港 . Hong Kong at The Empty Gallery
with Lee Gamble

https://nhkweb.info/potato_tour.htm


 2012年にリリースされたPhewと小林エリカ(作家/漫画家)によるユニット=プロジェクト・アンダークのアルバム『ラジウム・ガールズ 2011』(音楽はクラスターのディーター・メビウスが担当!)は、じりじり迫る危うさと同時に、じつに眩しい光を持つ作品だった。筆者もそうなのだけれど、メビウスのシンプルで奥行きのある電子音の上を、事実と妄想を織りまぜたPhewと小林による声/テキストが乗るこのラジウム・オペラをきっかけに、「ラジウム」の恐ろしくも妖しい魅力に取り憑かれた人も多いだろう。そして、プロジェクト・アンダークの発想の元となり、ここでテーマとされる「ラジウム・ガールズ」——1920年代のアメリカのラジウム工場で、時計の文字盤に夜光塗料を塗るペインターとして働き、内部被爆した女工員たち——を主人公にしたドキュメンタリー映画『ラジウム・シティ』(1987)が、28年の時を経て、いよいよ日本で公開される運びとなった。

 ラジウム・ダイヤル社(RD社)が経営するイリノイ州オタワの工場で、ラジウムの知識などまったくないまま(なんと、1920年代には人体組織によく調和する奇跡の万能薬とされていた!)、ペイントする際に筆先をなめて尖らせるように指導されていた女工員たち。その後、少しずつ知らない間に汚染されて被爆していった彼女たちのなかには、腫瘍で命を落とす者や、骨障害を発症する者が現れ、多くの女性たちが苦しみとともに生き抜くことになる。
 そんなラジウム・ガールズたちの女工員時代の華やかな写真、被爆して病に倒れた頃の姿、その後、証言者として登場する彼女たちとその家族、舞台となったオタワの街の死んだような風景とそこで暮らす住民たち、そして、街のいたるところに投棄された放射性がれき、カリカリと不吉な音を立てるガイガーカウンター……。それらが郷愁をそそる古ぼけた映像と、牧歌的でときに宗教的な美しさをもつ音楽にのせて淡く、ただ淡く、淡々と映し出される。その様子に悲劇的なイメージはなく(当時の出来事をユーモアたっぷりに証言する最年長の被爆者、マリー・ロシターの骨格障害によって異様に膨れ上がった足が映されたときだけ一瞬ギョッ! とさせられたが……)、彼女たちがラジウム工場でさまざまな夢を描いて働いていた頃と同じように、そこにはっきりとした輝きと力強さを感じとることができる。マリーいわく「パン屋の2倍にあたる給料をもらい、家族の誰よりも高給取りだった」というラジウム・ガールズたちのとびきり無邪気でオシャレに着飾ったファッション(毛皮の襟のコート、絹のドレス、スウェードの靴を履き、後ろにはいつも高級車!)、フラッパーの時代を駆け抜けた颯爽とした佇まい、そして、自身で人生を切り開く粋なプライドは、その後の彼女たちに訪れる運命と断絶されることなく、いまも変わらぬ眩しい光を放っているのだ——なんと、彼女たちは仕事の合間に暗室でラジウムを顔に塗ったり、ヒゲを書いたり、ある者は歯に塗って笑ったりしてにらめっこ遊びをしていたという!

 そして、物語はラジウムにまつわる狂騒とラジウム・ガールズの宿命だけではなく、そこに立ちはだかる社会の理不尽を、これまた淡々と描き出す。地方に産業と雇用をもたらすという会社(資本主義社会)の口実で大量の女学生を雇い、「中毒のような症状はこれまでいっさいございません、労働条件も最高です」という声明を出すRD社。会社指定の病院に入院させられ2週間後に死亡。夜中の2時頃だというのに遺体をすぐに搬出して家族が知らないところに埋葬しようとしたり、解剖結果による死因をジフテリアにするなどの隠ぺい工作。被爆した少女を診せても「公表できない。職を失いたくないから」と言う医師。相談する弁護士も買収されているため、「できることは何もない。もうよそう、忘れよう」と泣き寝入りする父。元ペインターのキャサリン・ドナヒューがRD社を提訴し、敗訴したRD社がいよいよ閉鎖されるも、6週間後にはルミナス・プロセス社(LP社)と名前を変えて何もなかったかのように工場を開設。おまけに、第二次大戦中、ルーズベルト大統領とアインシュタインがLP社と密談し、女工員には何も知らされることなく、工場を隠れみのにラジウムを再加工して原子爆弾の材料を作らせるなど、悲しみも怒りも疑いも困惑も大きな波に吞みこまれ、さもありなんな様子で進行する狂気じみた現実にこちらのフラストレーションもモヤモヤもたまるばかりだ。

 そんな理不尽な物語のなかで、マリーのユーモラスな語り口とともに、至極真っ当な行動でわれわれを安心させてくれるのがケン・リッキである。波風を立てず、流れに従うことをよしとするオタワの風土に逆らい、ガイガーカウンターを手に市内の放射線量を調査する市民活動家だ。この男、もちろん市議会から煙たがられる存在というのはまだ理解できる。しかし、同じ危機にさらされているはずの街の人々からも「暇人が騒いでる」と変人呼ばわりされているのだから困ったものだ。住民にとっていちばんの心配ごとである生活費。それを支えてくれたRD社を恩人と信じていた街の人々にとって、ラジウムによる放射線被爆について語ることはタブーとされているのだろうか。そして、さらに奇妙なことに、彼らはケンのことをオタワの評判を悪くする張本人だとすら思っているのだ。半世紀以上たったいまなお、街のあちこちでホットスポットが生まれているというのに。

 この薄気味悪い閉塞感に、わたしたちは自分たちが置かれた社会状況とラジウム・ガールズたちとを照らし合わせ、彼女たちに猛烈なシンパシーを抱き、否が応にも2011年以降の「もう変わってしまった世界」について考えさせられることになるだろう。1898年にキュリー夫妻によって発見されたラジウムは、暗い放射能時代の扉を開けると同時に(一部のラジウム成金には明るい時代なのだろうが……)、いまなおその目に見えない脅威をわたしたちに突きつけて、それとのつき合い方をわたしたち一人ひとりに選択させる。
 いまこの現在を憂うわたしたちは、あなたたちに変人呼ばわりされていないだろうか? またはその逆で、そんなあなたたちのことを、わたしたちは異常に感じていないだろうか? 本作『ラジウム・シティ』のキャッチコピーに〈これは遠く離れた外国の過去の逸話ではない。わたしたちのいまの姿なのだ〉とあるように、過去は分断されることなくいまのわたしたちとつながっている。けっして他人ごとではない。そして、未来も「もう変わってしまった世界」から分断されることなく続き、いやでも必ずやってくる。すべてはひとつながりなのだ。でも、わたしたちの意識で選択し、変えていける未来もあるはずだ。『ラジウム・シティ』に登場する、暗闇の中で青白く発光するラジウム・ガールズたちはその発想のヒントを教えてくれる。後はそれぞれが考えて行動するだけだ。わたしたちは決してその光から目をそらすことはできない。わたしもあなたも当事者なのだから。

■ラジウム・シティ ~文字盤と放射線・知らされなかった少女たち~

原題:Radium City
(1987年/アメリカ/105分/白黒・カラー/モノラル)

内部被曝の存在が広く知られるきっかけとなったラジウム・ガールズたちの物語と、その後の街に生きる人々を描いたドキュメンタリー。
ラジウム・ガールズとは、1920年代アメリカ、ラジウム・ダイヤル社の工場で時計の文字盤に夜光塗料を塗るペインターとして働き被爆した若い女性たち。筆先をなめて尖らせるよう指導された彼女たちは、その後、腫瘍や骨障害で苦しみ、多くが亡くなっていった。のちに5人が雇用主を提訴、長い裁判を経て勝訴したが、ほどなく全員が亡くなる。

監督・プロデューサー:キャロル・ランガー
出演:マリー・ロシター、エディス・ルーニー、ジェーン・ルーニー、ケン・リッキ、 ジーン・ルーニー、シャーロット・ネビンス、マーサ・ハーツホーン、キャロル・トーマ ス、ジェームス・トーマス、ウェイン・ウィスブロック、ドン・ホール、ロッキー・レイ クス、ボブ・レイクス、メアリー・オズランジ、スティーブン・オズランジ、ジャニス・ キーシッグ、ジョアン・キーシッグ、環境汚染と闘う市民の会

配給:boid

https://www.radiumcity2015.com/

■上映館・イヴェント情報

【東京】
渋谷アップリンク 4/13(月)~不定期上映

〈TALK〉
5/18(月)19:00~ ゲスト:千原航(グラフィックデザイナー)、井出幸亮(編集者)
5/19(火)19:00~ ゲスト:阿部和重(小説家)
5/26(火)19:00~ ゲスト:ヴィヴィアン佐藤(美術家)、篠崎誠(映画監督)
5/27(水)19:00~ ゲスト:大澤真幸(社会学者)

聞き手:松村正人(編集者)

〈上映〉
5/15(金)、5/17(日)、5/21(木)、5/27日(水)15:15~

料金:ライヴ+上映(2,800円)/トーク+上映(2,000円)/上映のみ(1,500円)※各種割引なし
ライヴおよびトークは上映前(約50分予定)

アップリンクHPにて予約受付中!! www.uplink.co.jp

【横浜】
シネマジャック&ベティ 5/9(土)~1週間上映予定

〈TALK〉
5/10(日)13:50~ 鎌仲ひとみ(映画監督、ドキュメンタリー作家)

当日のみ 一般¥1,800 専門・大学生 ¥1,500 高校以下・シニア ¥1,000
(会員:一般¥1,500 専門・大学生 ¥1,200 高校以下・シニア ¥1,000)

【大阪】
第七藝術劇場 5/2(土)~5/8(金)17:20

料金:前売り1,300円
当日一般1,500円 専門・大学生1,300円
中・高1,000円 シニア1,100円 会員1,000円

【名古屋】
名古屋シネマテーク 5/16(土)~5/18(金)18:35  5/19(火)~5/22(金)10:30

料金:当日のみ
当日一般1,500円 大学生1,400円 中高予1,200円 シニア1,100円
会員1,200円 学生・シニア会員1,000円

【京都】
みなみ会館 5/23(土)~5/29(金)13:10 5/30(土)~6/5(金)17:45 2週間上映

〈TALK〉
5/23(土)13:10~ ゲスト:廣瀬純(龍谷大学准教授、映画批評家)

料金:前売り1,300円
当日一般1,500円 専門・大学生1,300円
中・高1,000円 シニア1,100円 会員1,000円

その他全国劇場一覧はこちら
https://www.radiumcity2015.com/theater2.html

プロジェクト・アンダーク(フュー,小林エリカ)+ディーター・メビウス(クラスター)
ラジウム・ガールズ 2011
BeReKet / Pヴァイン


Tower HMV Amazon

 3月29日の晩、代官山ユニットは超満員。オウガ・ユー・アスホールマーク・マグワイヤは初めて対バンした。この鼎談は、ライヴの翌日に収録したもの。
 ミュージシャン同士、それも国が違う者同士が話し合いあうと、面白い発見がある。たとえば、マーク・マッガイアの、オウガの音楽に「ソウル」、つまり、ブラック・ミュージックからの影響を感じたという感想は、いままで日本の音楽メディアで見られなかった。「ノイ!だ」と言うと思っていたのだが、マーク・マグワイヤは「シュギー・オーティスだ」と言った。
 それでは、前口上はこのぐらいにして、どうぞ楽しみを。ちなみに、彼らから最高のプレゼントもある。ライヴのアンコールでの、オウガの「ロープ」にマーク・マグワイヤがギターで参加した当日の動画だ。正直、この演奏を聴いたとき、ele-kingからまた12インチで出したいと思ったほどだったが、彼らは無料で公開しようと言った。なので、いま、みなさんは、この鼎談の最後に、そのブリリアントな演奏を聴くことができます。

オウガ・ユー・アスホール(出戸学、清水隆史、馬渕啓)×マーク・マグワイヤ
司会:野田努=■
通訳:高橋勇人=△


マーク:まだ知ったばかりのバンドだったけれど、一緒にやっても絶対にうまくいくなという確信もりました。一緒にやった曲の音階も好みでしたね。メジャーがきてマイナーがきて……、何という音階かはわからないんですけどね。

出戸:僕たちもわからないです(笑)。

まずは、なぜ今回オウガ・ユー・アスホールの方からマークさんと一緒にやりたいと思ったのかという話しを聞きましょうか。

出戸学(以下、出戸):ホットスタッフの松永くんという僕たちの都内でのライヴの制作をやってくれているひとと、代官山ユニットとの共同で今回の〈””DELAY 2015””〉をやったんです。対バンのツーマンで〈””DELAY””〉という企画をやっていこうと思っていて、それで誰がいいか相談したんですよ。みんなで会議をしていろんな候補が出たときに、「マーク・マグワイヤがいいんじゃないか?」「何とか日本に呼べるかも」ということになったんです。

マーク・マグワイヤ(Mark Mcguire以下、MM):実現してくれて本当に嬉しいです。

清水隆史(以下、清水):音もすごいディレイだし。

MM:ハハハハ。いつもですよね(笑)。

出戸:実際にやってみてどうでしたか?

MM:音も空間もいい会場でしたし、素晴らしいバンドとプレイできて光栄でした。実ははじまるまで少し緊張していたんですよ。ひともたくさん入っていましたからね。アンコールで一緒にオウガ・ユー・アスホールのみなさんとステージに立ったときは、自分の音が大きくなり過ぎないよう、バランスに常に気を使いました。自分ひとりでステージにたつときは、音が全部ミックスされてモニターから聴こえるから音の調性が容易にできます。でも、バンドとなるとその聴こえ方も全然違いますよね。

一緒に“ロープ”をやることはいつ決まったの?

出戸:前日くらいですね。

清水:前々日くらいから一緒にやる?って話がきて、ずっと迷っていたんだよね。

馬渕啓(以下、馬渕):どの曲でやるかということも話してましたね。

俺はたぶん共演するんじゃないかと思っていたけどね。 “ロープ”しかないだろうって。

マークさんはいつ曲を最初に聴いたんですか?

MM:どの今日をやるかはほんの数日前に聞ききました。そのとき僕は大阪のホテルにいて、ギターを弾きながらアイディアを練りました。

マークさんはライヴをやる前にオウガの音楽を聴いたことがあったんですか?

MM:新しいアルバムはまだ聴いていなかったんです。でも最近出た曲を聴かせてもらいましたよ。とても滑らかでサイケデリックなサウンドがとても好きです。まだ知ったばかりのバンドだったけれど、一緒にやっても絶対にうまくいくなという確信もりました。一緒にやった曲の音階も好みでしたね。メジャーがきてマイナーがきて……、何という音階かはわからないんですけどね。

出戸:僕たちもわからないです(笑)。

オウガは自分たちの大きなインスピレーションのひとつにクラウトロックがあって、そこがマークさんと共通するところなのかなと思います。

MM:そうなんですね。たしかに僕にとってもクラウトロックが重要な要素です。とても形式的で衝動的な部分もあり、それなりに技術も必要ですよね。

清水:クラウトロックはずっと聴いていたんですか?

MM:最初にクラウトロックを発見したときはとにかくたくさん聴きました。19歳のときだったと思います。当時に比べたらいまはそこまで聴いてはいませんが、自分自身の重要な核になっています。
きのうオウガのみなさんと話していたんですが、最近はシュギー・オーティスのようなソウルやファンクからもインスピレーションを感じます。

清水:きのうの夜にソウルの話をしたんですよね。

出戸:僕らも黒いのにハマってますからね。

MM:僕がはじめてオウガ・ユー・アスホールを聞いたときにブラックミュージックの要素を感じたんですよ。もちろん、それはひとつの要素に過ぎず、いろんな影響が交ざり合っていて、それらがクリエイティヴなサウンドを織り成しているんだと思います。一緒に“ロープ”を演奏したときには曲や歌から、様々な影響が生み出すダイナミズムを感じましたね。
 きのうも僕がシュギー・オーティスを感じた曲を演奏していたんですが名前が思い出せない……。ギターが印象的でテンポは遅い曲なんですけどね。

清水:なんだろうな“ムダが無いって素晴らしい””かな。

出戸:最近、僕も清水さんからシュギー・オーティスを教えてもらって聴いているんです。

清水:定番というか、再発見系ですよね。

90年代にデヴィッド・バーン発掘したんだよね。オウガはマークさんと一緒にやってみてどうでした?

清水:演奏がすごく丁寧ですよね。

出戸:ギターがすごく上手いと思いました。アンプを使わないでラインで音を出していることにもびっくりしました。そのギターの音色がやっぱり独特なんです。僕らもレコーディングでラインはかなり使いましたけど。

馬渕:ライヴだとやっぱりラインの音は異質感があって面白かったです。

出戸:ラインだけでギターを弾いているひとのライヴって初めてみたかも。

MM:実験的な音楽を演奏するようになってからはずっとラインで弾いていますね。自分はトーンに拘るタイプだったんですが、ラインのトーンに慣れてしまったのでアンプに戻ることはありませんでしたね。それでできたのがいまのスタイルです。

出戸:なるほど(笑)。とても綺麗な音でしたね。

僕もあなたのギターの音が好きです。とくにロングトーンがシンセサイザーみたいに聴こえるんですよね。

MM:ギターと他の音をミックスして出したりもしています。でも基本的にはギターだけでギターだとは思えないような音を作っていますね。よく僕のアルバムを聴いたひとが「あの部分はシンセを使っているんだよね?」って聴いてくるんですが、だいたいはギターだけで作った音なんですよ(笑)。

出戸:映像も自分で作っているんですか?

MM:そうですよ。自分で作った映像と見つけてきた映像を組み合わせて編集しています。映像と音楽を一緒に作るのは映画を作るみたいな感覚です。その異なるふたつの要素がうまく組合わせるのが楽しいんですよ。

出戸:じゃあ映像もバラバラではなくて同期させてセットで流しているんですか?

MM:はい。なので映像の長さに合わせて自分の曲の長さも調性することもあります。きのうもギターを弾きながら後ろをちょくちょく振り返って映像を確認していたんですが、そのためです(笑)。

では映像をコントロールしているひとがいたわけではないんですね?

MM:いません(笑)。映像が決まったときに再生されるようプログラミングをしているので、ちゃんと映像がはじまるのか気を使いますね。

最後の映像がすごかったよね(注:水爆実験や第二次世界大戦の映像、政府を批判するスピーチなどが引用されていた)。オウガは観てたの?

出戸:最後、見てました。

清水:激しい終り方でしたね。

MM:あの映像と曲を作っているとき、歴史的な出来事の裏で政治や宗教がどのように動いていたのかに関心がありました。たくさんのひとびとが様々な形でひとつの瞬間に関わっていたわけですからね。そして、そのなかで多くの考えや憶測が生まれました。あの映像のなかでは9.11は裏で大きな工作があったんじゃないかというスピーチも引用しています。
 ひとびとに学ばれる歴史は戦勝国などの大きな権力をもった者が作り出したものです。僕はアメリカ人でアメリカの教育を受けてきました。だからこそ、アメリカが他の国々にどんな影響を及ぼしたのかとても興味があるんです。2013年に広島の原爆ドームに行って深く感銘を受けました。過去を振り返ることによって明らかに間違いだと思うこともたくさんあり、そういうものを自分で学んでいきたいんです。(日本語で)コノオンガクヲヘイワノタメニ。

一同:おー!

[[SplitPage]]

マーク:僕がはじめてオウガ・ユー・アスホールを聞いたときにブラック・ミュージックの要素を感じたんですよ。もちろん、それはひとつの要素に過ぎず、いろんな影響が交ざり合っていて、それらがクリエイティヴなサウンドを織り成しているんだと思います。

出戸:ギターがすごく上手いと思いました。アンプを使わないでラインで音を出していることにもびっくりしました。そのギターの音色がやっぱり独特なんです。僕らもレコーディングでラインはかなり使いました。

マークさんがはじめて来日したときのライヴはもっとアンビエント・フィーリングが強くて、きのうのライヴとは違う感じだったんだよね。もっとマニュエル・ゴッチング的だったというか。

MM:そのときに比べると、使っている機材にも変化があったので当然サウンドも変わっているでしょうね。サンプラーやドラムマシンなどを使かうようにもなりました。でも、「単に成長しているだけ」という風には捉えられたくはなかったので、またギターだけのスタイルに戻って新しいアイディアを試しつつアンビエント・テイストの曲を作ることはいまでもしますよ。そうやって違ったことにチャレンジしていきたいんです。

清水:マークさんはライヴとアルバムでアレンジを変えていますよね? きのうのライヴでやっていた曲と新しいアルバムに入っていた曲を比べてみても、どの曲が一致しているのかわからなかったりしました。

MM:レコーディングとライヴは別物ですからね。レコーディングは音のパーツのたくさんの層のように積み重ねていますが、ライヴをその単なる再現にはしたくないんです。それに再現してみても決して同じものにはならないでしょう。だから意識的にライヴをレコーディングとは違うものにしようと思っています。

エメラルズもそうだったけどマークさんの以前の作品はわりと自然がテーマだったりしたんだよね。リリースの形体自体も、アナログ盤とカセットテープしかないものもすごく多くて。たとえば『ギター・メディテーションズ』(2008年、〈Wagon〉)というアルバムはカセットでしか出ていないんですよ。それがすごくいい作品なんですけど、いまだにカセットでしか手に入らない。

MM:現代社会の毎日の多忙な生活から抜け出すためにアンビエントや自然は役割を果たしていると思います。たとえばヨガの瞑想にしてみても、現在ではなくて過去の意識を呼び起こすような効果がるので同じことが言えるでしょう。音楽にも自己の存在が消えてしまうような感覚をもたらすことがありますよね。

きのうのライヴは過去のものと比べたら、すごく抽象的な言葉で言うと力強いものを感じたというか。

MM:アグレッシヴな曲も最近は作っているんですが、さっきも言ったようにアンビエントな要素とのバランスも考えたうえで実験的な試みをやっています。ライヴに来てくれたお客さんにとってもそっちの方が変化があって面白いでしょうからね。

きのうみたいにライヴを一緒にやって、最後にギターを一緒に弾くことはアメリカではよくあるんですか?

MM:そんなに頻繁にあることじゃないですね。僕は基本的にいつもひとりでライヴをやるので、自分が演奏しているときに誰かがステージに入ってくるのは嫌なときもあります(笑)。

下村A&R: マークはアフガン・ウィッグスと共演しましたよね。

MM:そうですね。彼らのアルバムに参加していくつかライヴもやりました。フル・バンドで演奏したことはかなりためになりましたね。昨晩、オウガのステージに立てたことも同じです。素晴らしいエネルギーを感じることができました。曲を聴いているときの感覚と、実際に演奏してみる感覚とではやはり大きく異なるんですね。

清水:オウガもライヴで誰かと一緒に演奏するのは初めてだったんじゃないかな。メルツバウとやらせて頂きましたが、楽器を使ったセッションとは少し違ったし。

マークさんはメルツバウを知ってますか? オウガはいままでメルツバウとしか共演したことがないんですよ。

MM:はい、もちろん! ハハハハ。それはすごいですね。きのうは彼と同じくらいラウドにはプレイできませんでした(笑)。

清水:マークさんは共演することにむしろ慣れていると思っていました。

出戸:リハーサルのときの方がもっとアグレッシヴに弾いていたんですよ。本番のときは抑えていたんじゃないかな。

MM:本番は緊張しちゃったんです。リハーサル、すごく楽しかったですよね(笑)。リハーサルをするまでは、プレイヤーで曲を聴きながらしか練習をしていなかったので、僕のプレイを評価してくれたのはすごく嬉しいです。

音源を出してほしいですね。オウガは日本のなかですごく特殊というか、ある意味では孤立しているというか。

清水:そうですか(笑)。

アメリカのインディ・シーンにはエクスペリメンタルな音楽をやるひとやレーベルもたくさんあります。

MM:アメリカのシーンでも僕はある意味ではオウガと同じ状況にいますよ。僕のサウンドはエクスペリメンタル・シーンに完全に合うものでもないし、インディ・ロックに当てはまるものでもありません。どこに自分はいるべきなんだろうと居場所を探している感じがするんです。オウガの音はとてもユニークで様々な音楽の影響を隠さずに表現しているので、僕と同じようにどこにもフィットしないんでしょうね。
 アメリカのリスナーには自分が聴いている音楽をカテゴライズしたがる傾向が少なからずあって、未知なる音楽に出会ったときに「これは面白い曲だ!」ではなく「これは何ていう音楽なんだろう?」と反応するひとが多いんです。ジャンルが交ざり合うことを嫌うひともいますからね。それに対して日本のリスナーは音に対して心が広くて、「ジャンルで分ける」聴き方をしないひとが多いような気がしました。

清水:なるほど。ジャンルにこだわってはいないよね?

馬渕:わかりやすくジャンルが別れているロックって日本にあるのかな?

出戸:ヴィジュアル系くらいじゃないかな。

ガレージ・ロックとかポスト・ロックとかね。

MM:アシッド・マザーズ・テンプルを聴いてみても、やっぱりジャンル分けするのは不可能ですもんね。でもそれがいいところだと思うんです。

出戸:そうかもしれないけど、日本では逆にシーンが見えにくいということがありますよね。

清水:世界的な目で見たら、日本自体が全体的にサブカルチャーっぽいもんね。

MM:少し前のバンドですが、ファー・イースト・ファミリー・バンドは「ジャパニーズ・サイケデリック」というシーンを象徴するような存在です。そういうひとたちもいるにはいるんですけどね。

柴崎A&R:アメリカではジュリアン・コープが書いた『ジャップロックサンプラー』がすごく影響力が強いんですよ。

MM:僕も読みましたよ。

日本のなかで有名な日本のバンドと、海外で有名な日本のバンドって違うんだよね。

柴崎A&R:いわゆる、はっぴいえんど史観がないですからね。

もっと言うと、はっぴいえんどは海外ではあまり知られていないからね。

MM:細野晴臣はYMOのメンバーなので聴きましたが、はっぴいえんどのことはあまり知りません。日本の音楽の独自性みたいなものはYMOにも表れていると思いますね。海外の音楽を単なるコピーではなく、自分たちのオリジナリティを持ったミュージシャンもしっかりといるということです。そういうひとは海外で影響力をいまでも持っているんですよ。YMOもそうですがアメリカのシーンにはボアダムスみたいになりたいひとも多いです。多過ぎるくらいですね(笑)。

出戸:逆にいまの日本ではYMOのフォロワーはそんなにいないですよね。

清水:たしかに。はっぴいえんどは多いけどね。

今度はマークさんを長野に呼んだ方がいいんじゃない? 東京から車で2時間くらいかかるけど、自然がすごく綺麗な場所らしいですよ。

清水:出戸くんなんか標高1300メートルのところに住んでるんですよ。

出戸:家の前で鹿が寝てますからね。

すごいね(笑)。彼らはそこにスタジオを持っているんですよ。

MM:素晴らしいところですね! 是非行ってみたいです。

ジム・オルークさんも彼のスタジオによく行くみたいですよ。マークさんはジムさんと仲がいいんですよね。

MM:初めて日本に来たときにジムさんとは知り合ったんですよ。

出戸:ジムさんは新宿の飲み屋で会ったって言ってましたね。

MM:そうなんですよ。ピス・アレイ(ションベン横町)で会いました(笑)。

清水:英語でピス・アレイって言うんですね(笑)。汚くて治安が悪そうな名前ですね(笑)。

出戸:マークさんとジムさんが出会った飲み屋には僕らもたまに行きます。

MM:そうなんですか! 食べ物も美味しくて素晴らしいお店ですよね。

絶対に長野に呼んだ方がいいよ。

出戸:じゃあ次は呼びますね。

そこでセッションして曲をつくるとかね。

MM:実現したら最高ですね。(日本語で)ソンケイシマス。

今回、マークさんは大阪と新潟までギターを持ってひとりで行って、新潟から東京に戻って来たんですよね。

MM:はい。

清水:すごいな。よくわかりましたね。

MM:日本語が読めるわけではないんです。初めて来日したときにひとりで地下鉄に乗ったんですが、パソコンで事前に調べたり標識に書いてある言葉を携帯で調べたりして頑張りましたね(笑)。日本は標識がたくさんあるから比較的親切ですよ。

日本に住んでいてもたまに標識に迷うことがあるけどな(笑)。

清水:すごくマジメですね。

オウガにピッタリなアメリカのレーベルって何だと思いますか?

MM:良いレーベルはたくさんありますからね。うーん。自分は多くのレーベルに関わっているわけではないですが、〈ドラッグ・シティ〉なんかはやっぱり合っているんじゃないでしょうか? あのレーベルにはかなり幅広いスタイルのミュージシャンが所属していて、しっかりとサポートもしてくれます。ミュージシャンがどのような路線に進んだとしてもそれをしっかりと受け入れてくれるのは素晴らしいですよね。ジム・オルークも〈ドラッグ・シティ〉のことを評価していましたね。ジムさんはいろんな経験をしているから、やっぱり彼の意見は参考になりますね。僕も大きいレーベルと仕事をしたことがありますが、やっぱり小さいインディペンデント・レーベルの方が柔軟に対応してくれるんです。

清水:しかし……そもそもオウガ・ユー・アスホールって名前ですからね(笑)。

MM:名前の由来がすごく気になっていたところです(笑)。

それってUSのインディバンドからきてるんだよね?

出戸:前のドラマーが高校生のときに来日したモデスト・マウスのライヴに行ったんですよ。そのときに腕に「オウガ・ユー・アスホール」ってサインをもらって、それがバンド名の由来なんですよ。ちょうどそのときが自分たちのライヴの直前だったんですけど、名前を付けてなくて「あのサインでいいんじゃない?」ってなってから10年以上ずっと同じ名前です(笑)。

MM:すごいエピソードですね。とても目立つ名前だなと思っていました(笑)。初めて名前を見たときには「一体どんなサウンドなんだろう?」と想像力をかき立てられたのを覚えています。「オウガ」(「鬼」の意味)という言葉からラウドな演奏をするバンドなのかなとか思っていました(笑)。

清水:よく「パンク・バンドなの?」とか言われるんですよね。

今回の来日でレコードは買いましたか? 普段からよくレコードを買うそうですね。

MM:今回はレコード屋さんに行けていないんですよ。僕のレコードコレクションはいまのところ2、3000枚くらいですかね。初めて日本に来たときはJポップをとてもたくさん買いました。1枚200円くらいで買えるのに驚きましたね。一緒に行ったひとからは「そんなのお金のムダだよ!」って言われましたが(笑)。YMOや各メンバーの作品もけっこう買いました。日本以外のものでも安く売っているのは助かります。アメリカでは西海岸に住んでいたころはいつもレコードを買っていました。ですが引越をしたときにあまりにも荷物が多くなることに気付いて、最近は前に比べたらあまり買っていないんですよ(笑)。いまは故郷のクリーヴランドに住んでいます。

クリーヴランドは北東部なので西海岸とは全然違いますよね?

MM:大違いですね。かなり冬は寒いです。あとパンクの精神を持って、髭を生やしてに革ジャンを着たひとが多いと思います。ノイズ・ミュージックのシーンもあったりするんですよ。湖に面した地方都市で物価が安いのも特徴です。そして何より自分が生まれ育った場所なのでとても落ち着きます。あまりこういう街はアメリカにないので、この街の人間であることを誇りに思っているひとは多いですね。

出戸:長野も似たところがありますね。冬も寒いし、デカい湖もあるし(笑)。でもパンクとノイズのシーンはないですね(笑)。ヒッピーとかもいるんですけど、あんまり接触はしないです。

MM:西海岸に居た頃はポートランドやロサンゼルスによく行ってたくさんのヒッピーに会いましたけど、クリーヴランドにはそんなにいませんね。

そういえば最近マークさんには赤ちゃんができたんですよね?

MM:そうなんですよ。だからクリーヴランドに戻ったんですよね。この子です(携帯の写真を見せる)。

かわいいですね! いま何歳なんですか?

MM:いま生後6週間なんですよ。だから早く帰ってあげないといけませんね(笑)。

馬渕:昨日もその写真見せてもらったんですよ。でも生後6ヶ月だと思っていました。

MM:ブランニュー(超新しい)ですよ(笑)。面倒を見なきゃいけないので、ツアーの期間もいつもより短いんです。このツアーの間に奥さんから子供の動画が送られてきたんですが、離れてまだ5日しか経っていないのにすごく成長しているように感じました。

[[SplitPage]]

マーク:とても目立つ名前だなと思っていました(笑)。初めて名前を見たときには「一体どんなサウンドなんだろう?」と想像力をかき立てられたのを覚えています。「オウガ」(「鬼」の意味)という言葉からラウドな演奏をするバンドなのかなとか思っていました(笑)。

清水:よく「パンク・バンドなの?」とか言われるんですよね。

エメラルズは解散してしまいましたが、マークさんはまたバンドをやらないんですか?

MM:ご存知かもしれませんが、エメラルズは昔からの友だちと自然な流れで結成したバンドでした。だからバンドが終ってしまったのも自然なことだったのかもしれません。もうエメラルズとして演奏することはないと思うと残念な気持ちにもなることもありました。バンドでも活動はやはりソロとは全く違うものなので、再びバンドをはじめてみたい気持ちもあります。バンドが解散してからいろいろと試してはいるんですが、まだまだバンドの「ケミストリー」を探している途中ですね。ちなみに、オウガのみなさんはバンドをはじめる前から知り合いだったんですか?

清水:馬渕くんと出戸くんが高校の同級生で、勝浦くんと自分が大学の先輩・後輩って感じですね。

そこはエメラルズみたいだね。

MM:音楽をはじめる前の関係ってやっぱり大事なんですね。エメラルズが解散した理由のひとつには、メンバーと友だちのままでいたいっていうのがあったんです。バンドを組んでいると、どうしても関係がぎくしゃくしてしまうこともありますからね。いまはそれで良かったと思います。仲の良い友だちと音楽や音楽ビジネスについて話せるんですからね。オウガはもう10年以上バンドを続けてきたわけですが、バンドを存続させるためのアドバイスみたいなものはありますか?

出戸:うーん、なんだろうな。あんまり会いすぎないとかかな。

ハハハハ。

出戸:バンドでたくさん会っていますからね。

清水:そうかな(笑)? 割と一緒にいる方だと思うけどね。みんなで暮らしてはいないけどね(笑)。

MM:わかります。ツアーとかではいつも同じ場所にいることになりますから、一緒に住む必要はないし、「どっかいけよ!」って言いたくなるときもありますよね(笑)。

出戸:あとバンドってマンネリ化してくるとダメになる感じもするから、メンバー間で刺激を与え合うような関係を心がけていますね。

MM:なおかつインスピレーションやアイディアを共有できる関係ですよね。

出戸:マークさんはいまもひとりでレコーディングをしているんですか?

MM:そうですね。毎日自宅で録音していますよ。楽器も全部自分で演奏しますね。

出戸:バンドだと刺激し合えて自分が考えてもないことができるわけじゃないですか?  でもひとりでやっているとそこには限界があるというか、自分から出てきたものしかないですよね。

MM:たしかにそうですよね。ギター以外の楽器を弾いてもそこから生まれてくるメロディーやリズムが自分っぽいなと思うことがあります。でも他人と演奏すると想像もつかないような展開を見せることがあります。

その「制限」はあなたにとってネガティヴなものなのでしょうか?

MM:必ずしもそうであるとは限りません。バンドでしかできないことがあるということは、ひとりでしかできないことも同時にあるということですよね? バンドとソロって全く違うフォーマットのものです。エメラルズのメンバーたちはバンド以外のところで次の段階に進みたいと思っていました。いまの僕がやりたいのはソロの可能性をとことん追求することなんです。

出戸:ひとりでやっているとどこがOKなのかわからなくなりそうだけど、自分の作っている曲が完成したとどのように確信が持てるんですか?

MM:自分がやっていることを客観的に見るのってひとりではすごく難しいです。だからアドバイスをくれるひとが近くにいることってすごく重要ですよね。
 僕の場合はひとりで曲を作っていると、そこから次の曲のアイディアが生まれてきたりするんですが、それを繰り返している気がします。(アイフォンの作曲中リストを見せながら)いまも何十曲を同時並行で作っている状態なんですよね(笑)。うーん、曲を完成したと判断するのは難しいです。とにかくできることをやりつくすのみですね。

そこはオウガと反対だね。オウガの場合は終わりはどうやって決めるの?

出戸:レコーディングの期間がだいたいきまっているから、そのなかで出たアイディアを使うんですよ。

馬渕:時間があったらあったでいっぱい作り過ぎちゃうんですよ。

MM:ちゃんと締切を作ると目の前のことに集中できますもんね。締切がなかったらなかったで、ガンズの『チャイニーズ・デモクラシー』みたいに自由になりすぎてヒドい作品ができることだってありますからね(笑)(このアルバムは制作に約14年をかけている)。

清水:また来日する予定はあるんですか?

MM:戻って来たいです。山田さん(プロモーター氏)のような日本での父親もいますからね(笑)。考えてみればこれで4回目の来日になるんですね。日本はもうすっかり僕のお気に入りの場所です。

次はオウガが長野に呼んでください。

山田:初来日のときに野田さんがオウガを勧めてくださったんですよね。

誰もが思うことだろうけど、オウガとマークさんは絶対に合うと思っていたんですよ。

清水:今回の対バンにはそんなに長く時間がかかっていたんですか(笑)。

本当に実現するとは思わなかったよ。

出戸:本当に一緒にできてよかったです。

マークさんから最後に何かありますか?

MM:昨日は同じステージに立てたし、こうして対談もすることができてとても嬉しいです。貴重な体験ができてリフレッシュすることができました。ソンケイシテイマス。





マーク・マグワイア、最新作情報。

Mark McGuire
Noctilucence

Dead Oceans/インパートメント

Amazon

 そう、そういう言葉があるのだ、“オンライン・アンダーグラウンド”……の、オフライン祭が23日に開催される。フレッシュなメンツをメインに、Seihoや食品まつりa.k.a foodmanなど八面六臂の活躍をみせる先輩的プロデューサーたちが脇をかため、VJには§✝§の名も。連休明けにオチないために!

 テクノ専門学校、ドローン大学、スパイス部にレコ部――世に学府、部活はあまたあれど、『映像夜間中学』ほど、習熟度のいかんを問わず、あまねくひとびとに門戸の開かれた学舎はふたつとございません。特殊漫画家であるとともに学長である根本敬秘蔵の映像とディープなトピックでつづる語りの場はマンガ以上にマンガな不条理あふれるこの世の仕組みをあらわに。観るだけではなく、聞くだけともちがうこの至高のイヴェントが、15年め突入を記念し、ふだん根城にする渋谷〈UPLINK〉を飛び出し、この黄金週間、あなたの街にやって来る!
 五月病はおろか中2病にも効果覿面! 映像夜間中学、今晩より開校です!!

■学長の言葉
 “この世”の存在は根本(こんぽん)的に下らなくてフザケたものだ。そこを大大大前提とし、その認識から出発した上で人は真面目に生きるべきだろう。ようするにマジメな事を只、無自覚にマジメなままやってマヌケの魔力に足下掬われるのではなく、フザケた事を真面目にやり通す者たれという事。その辺の事を一見バカバカしく思える映像を見ながら体験して頂ければ幸、ってな『場』でありたや。

■DAY1:京都“メトロ大學”校
5月1日(金)18:30開場 / 19:00開演
会場:クラブメトロ|CLUB METRO
Tel. 075-752-4765 / https://www.metro.ne.jp/
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)

■DAY2:福岡校
5月2日(土)18:30開場 / 19:00開演
会場:アートスペース・テトラ|art space tetra
Tel. 092-262-6560 / https://www.as-tetra.info/
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)
※翌日の5月3日(日)にはDJ根本敬出演のライヴ・イヴェントあり。

■DAY3:広島校
5月4日(月祝)
会場:音楽喫茶 ヲルガン座
Tel. 082-295-1553 / https://www.organ-za.com/
【夜の部】19:00開場 / 19:30開演
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)
【昼の部】14:30開場 / 15:00開演
※夜の部にご参加の方のみお申し込み頂ける“根本敬入門編” です

■DAY4:大阪校
5月5日(火祝)20:00開場 / 20:20開演
会場:シネ・ヌーヴォ|Ciné Nouveau
Tel. 06-6582-1416 / https://www.cinenouveau.com/
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)

■DAY5:名古屋校
5月6日(水祝)18:30開場 / 19:00開演
会場:パルル|parlwr
Tel. 052-262-3629(当日のみ対応)/ https://www.parlwr.net/
料金:¥2,500(+1ドリンク¥500別途)

詳細は以下よりご確認ください
https://www.uplink.co.jp/news/2015/36798


Young Guv - ele-king

 ファックト・アップにもギタリストとして参加するヤング・ガヴァナーことベン・クックの、初のソロ・アルバムがリリースされた。ファックト・アップと記すとファックト・アップ・ファンが聴くものとどこか限定されてしまいそうだけれども、本作は一見彼らの対角線上にあるような、アリエル・ピンクやマック・デマルコ、あるいは〈スランバーランド〉や〈キャプチャード・トラックス〉のギター・ポップ、もしくはガールズなどのファンこそ──近年のUSインディ、ことに2000年代末に2000年代末のやり方で(=ガレージーでサイケデリックでシューゲイジンでニューウェイヴィなやり方で……と書くといっこも新しい要素がないみたいだけど)ギター・ロックのリアリティを更新してきたアーティストたちが気になるリスナーこそ聴くべき作品だ。ファックト・アップはもちろん素晴らしいバンドだけれど、ダミアン・アブラハムのインパクトとベン・クックのこのソロ作の音楽性とのあいだにはひとまず関係はない。両者がハードコアを概念的にも方法的にも共有していることはたしかだが、まあ、まずは聴いてみれば瞭然とすること。『ライプ・フォー・ラヴ』のジャケと音だけに触れてみれば、それはあたかもフレッシュな新人……もしくはすこし注意深く聴けば、年齢のいった新人の作品として深い印象を残すだろう。若い人間では得られない時間と経験の堆積が味わいとして滲み出つつ、しかし、その音はとてもみずみずしい。たとえばダックテイルズにおいてエクスペリメンタリズムであったはずの深いリヴァーブや粗いプロダクションは、ここでは微量の疲労感や「やれやれ」感として鳴っているようでもあり、それはひりっと切ない。

 “クラッシング・センセーション”などは〈キャプチャード・トラックス〉以降のガレージ・ナンバーとして、ニューウェイヴィな打ち込み音楽との折衷がありつつもオーセンティックな味わい。アルバム全体のムードを統べるのはそうした曲調だが、“クローリング・バック・トゥ・ユー”など、ティーンエイジ・ファンクラブかという堂々たるギター・ポップ、“リヴィン・ザ・ドリーム”のラヴからハーマンズ・ハーミッツまで彷彿させるソフト・サイケがはさまり耳の食欲を刺激する。さらにポップスとして奥行を加えているのが、表題曲の“ライプ・フォー・ラヴ” や“ロング・クラウド(Wrong Crowd)”など、プリンスからホール&オーツ、またスタイル・カウンシルなどを思わせ、ソウルを介してニューウェイヴやネオアコをつらぬくようなトラック。とくに終曲の“ロング・クラウド”は7分強とアルバム内ではダントツに長尺で、GWの浮かれた空気からスムーズにチルアウトするにはもってこいだ。若い痛みや苦みが経年によって心地よく摩耗したようなこれら楽曲のフィーリングが、前掲のアリエル・ピンクかマック・デマルコか、はたガールズかダックテイルズかといった現在形のモードと混在しているところがとてもいい。

 かといって「普段聴きにちょうどいい」というような機能性が目指されているわけでもないことは“アクエリアン”ラストの意味不明なノイズなどにもあきらかだ。人への、ライフへの、音楽への「愛が熟した」タイミングに実った、きっとそんな作品なのだろうと思う。

PortaL (Soundgram / PLLEX) - ele-king

最近良かったなぁと思った曲を並べました。

HEADZ 20th Anniversary Party - ele-king

 ここ最近も、空間現代やgoat、あるいはMoe and ghostsなど、むちゃくちゃ刺激的でユニークな作品をリリースしている、佐々木敦主宰のHEADZが今年で20周年を迎えます。GWの真っ直中5/2と5/3の2DAYS、レーベルは渋谷で20周年を記念にしてのイベントを開催します。
 これだけのメンツが揃うことは滅多にないでしょう。ぜひ、日本の音楽シーンのカッティングな局面を体験してください!

HEADZ 20th Anniversary Party
“HEADZ 2015-1995=20!!!”

日時:2015年5月2日(土)、5月3日(日)
会場:渋谷TSUTAYA O-nest

開場:16:30 / 開演:17:00
料金:2,500円+1 D(当日のみ)


UNKNOWNMIX DAY(5月2日)

伊東篤宏(Optrum)
豊田道倫
core of bells
空間現代 × Moe and ghosts
goat
ju sei
MARK
コルネリ
suzukiiiiiiiiii × youpy


WEATHER DAY(5月3日)

三浦康嗣 & 蓮沼執太
木下美紗都と象さんズ
detune.
Jimanica
minamo(杉本佳一 + 安永哲郎)
ASUNA
よだまりえ
毛玉
SUBMARINE


問い合わせ:HEADZ(TEL. 03-3770-5721 / https://www.faderbyheadz.com

80年代後半より、映画、音楽、芸術、近年では文芸、演劇とジャンルを横断し、精力的な活動を続ける批評家の佐々木敦が主宰するHEADZが今年で発足20周年を迎えます。

カッティング・エッジな音楽雑誌『FADER』、ジャンルレスな濃縮雑誌『エクス・ポ』他の編集・発行、トータス、ジム・オルーク、オヴァル、カールステン・ニコライ他の海外ミュージシャンの招聘(来日公演の企画・主催)、UNKNOWNMIXやWEATHERといった音楽レーベル業務、飴屋法水の演劇公演の企画・制作等(ままごと『わが星』のDVD他、演劇やダンス・パフォーマンスの作品を発表するplayレーベルもスタート)、HEADZはこの20年、多岐な活動を続けて来ています。

このアニヴァーサリー・イヤーを記念したイベントをゴールデンウイークに行います。
5月2日(土)は佐々木がHEADZ発足以前よりスタートさせていたレーベル、UNKNOWNMIX所縁の音楽家が、5月3日(日)は2000年よりスタートし、こちらも15年以上の歴史となったWEATHERレーベル所縁の音楽家が出演致します。

「空間現代 × Moe and ghosts 」や「三浦康嗣(□□□) & 蓮沼執太」のような、この日限りの貴重なコラボレーションも含む、HEADZが紹介して来たさまざまな刺激的な音楽をぐっと凝縮して体感出来る、この二日間の公演に是非お越し下さい。

MUST COME !!


Adrian Sherwood - ele-king

 時計は19時30分頃を指していた。ダビーでインダストリアルなビートをBGMに、たくさんのひとが地上階からフロアへと伸びる階段にたむろしている。この日最初に目にした光景だ。当日券がソールド・アウトになってしまったのは、自分が会場に着いてからものの5分後の出来事だったらしい。エイドリアン・シャーウッドと関係を築いてきたリスナーたちはこんなにも多いのである。

 おそらく、その各々に独自のシャーウッドへのアクセス経路があったにちがいない。ミキシングのスペシャリストである彼が関わってきた作品はあまりにも多く、その影響はあまりにも大きい。ダブ好きが通る道でもあれば、インディ史にクレジットされた人物でもある。階段に居座る様々な世代のレイヤーがそれを体現しているのだろうか、と考えているうちににせんねんもんだいのライヴがはじまっていた。

 バンドの演奏をシャーウッドが生でミックスするというセットだったのだが、ステージ上にシャーウッド本人の姿はなく彼はフロアの後方で黙々と作業を行っていた。両者が向かい合う立ち位置で真剣勝負さながらの空気のなか、あたかもピッチャーとバッターの関係のようにドラムが放つ変化球的スネアを強烈なディレイで客席に打ち返し、ギターの放つマシンガンのような金属音をリヴァーブで加工していく。エンジニアとしてシャーウッドが演奏に展開をつける演出家的な立ち位置にまわることもあれば、彼自らが音を操り前に出ていき第四のメンバーのように立ち振舞う局面も。ライヴ前の短い日程で行われたレコーディング・セッションにおいてシャーウッドはバンドの音を深く理解したようだ。先月シャックルトンとの共演も経験したにせんねんもんだいは一体どのような作品を彼とスタジオで作り上げたのだろう。

 バンドとの「セッション」を終えて、ふたたびシャーウッドがステージに戻ってくると「マルチ・トラック最新セット」と銘打たれたこの日最後のステージが始まった。手元にある膨大な数のノブとSEパッドを叩きながら、ガラージよりのダブステップからダブへジャングルへとセットは展開していく。
 
「最新セット」を耳にしていたはずなのだが、シャーウッドの魅力は過去に焦点を当て続けることのなのだろうかという考えが頭をよぎった。数ある彼のリリースのなかで自分が初めてリアルタイムで手に取ったものは2006年の『ビカミング・ア・クリシェ』(〈 Real World Records〉)なのだが、ダブステップが全盛期を迎えていたUKから届いたそのアルバムのなかで一番輝いているのはジャングルだ。その曲“ピース・オブ・ジ・アース”はコンゴ・ナッティのリズムにリトル・ロイのヴォーカルという文句のつけどころのない曲なのだが、随所にちりばめられている鼓膜が干上がるようなダブ・エフェクトなしではそこに科学反応は生じえない。表現しつくされたかに見えたジャンルを自身のミキシングを通すことによって、シーンの先端でも戦える武器に変換してしまう手腕がシャーウッドにはある。

 この日のセットで彼はピンチとの共作“ディファレント・アイズ”や“プリシンクト・オブ・サウンド”もプレイした。今年リリースされた『レイト・ナイト・エンドレス』に収録されたナンバーなのだが、ゼロ年代中期の古典的なダブステップのスタイルを踏襲したものでいわゆる「新しさ」はない。けれども計算し尽くされた緻密なリズムと音響エフェクトを通過した音を聴いていると、曲が未来から語りかけてくるようにも聴こえてくる。常にブラン・ニューであることを強要するのではなく、シーンにあり続けるものを真に理解することの重要性を説く音楽がそこにはあった。

 肝心なベースについて語るのを忘れていたようだ。ステージ下に設置されたサブ・ウーファーはとてつもない鳴りをしていた。会場の外に出たとき、これでもかというほど空気は澄み渡っていたほどだ。

V.A.
Sherwood At The Controls Volume 1: 1979-1984On-U Sound / Beat Records

Tower HMV Amazon

Sherwood & Pinch
Late Night EndlessOn-U Sound / Tectonic / Beat Records

Tower HMV Amazon

  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510 511 512 513 514 515 516 517 518 519 520 521 522 523 524 525 526 527 528 529 530 531 532 533 534 535 536 537 538 539 540 541 542 543 544 545 546 547 548 549 550 551 552 553 554 555 556 557 558 559 560 561 562 563 564 565 566 567 568 569 570 571 572 573 574 575 576 577 578 579 580 581 582 583 584 585 586 587 588 589 590 591 592 593 594 595 596 597 598 599 600 601 602 603 604 605 606 607 608 609 610 611 612 613 614 615 616 617 618 619 620 621 622 623 624 625 626 627 628 629 630 631 632 633 634 635 636 637 638 639 640 641 642 643 644 645 646 647 648 649 650 651 652 653 654 655 656 657 658 659 660 661 662 663 664 665 666 667 668 669 670 671 672 673 674 675 676 677 678 679 680 681 682 683 684 685 686 687 688 689 690 691 692 693 694 695 696 697 698 699 700 701 702 703 704 705 706 707 708 709 710 711 712 713 714 715 716 717 718 719 720 721 722 723 724 725 726 727 728 729 730 731 732 733 734 735 736 737 738 739 740 741 742 743 744 745 746 747 748 749 750 751 752 753 754 755 756 757 758 759 760 761 762 763 764 765 766 767 768 769 770 771 772 773 774 775 776 777 778 779 780 781 782 783 784 785 786 787 788 789 790 791 792 793 794 795 796 797 798 799 800 801 802 803 804 805 806 807 808 809 810 811 812 813 814 815 816 817 818 819 820 821 822 823 824 825 826 827 828 829 830 831 832 833 834 835 836 837 838 839 840 841 842 843 844 845 846 847 848 849 850 851 852 853 854 855 856 857 858 859 860 861 862 863 864 865 866 867 868 869 870 871 872 873 874 875 876 877 878 879 880 881 882 883 884 885 886 887 888 889 890 891 892 893 894 895 896 897 898 899 900 901 902 903 904 905 906 907 908 909 910 911 912 913 914 915 916 917 918 919 920 921 922 923 924 925 926 927 928 929 930 931 932 933 934 935 936 937 938 939 940 941 942 943 944 945 946 947 948 949 950 951 952 953 954 955 956 957 958 959 960 961 962 963 964 965 966 967 968 969 970 971 972