「Nothing」と一致するもの

UN.a - ele-king

 菊地成孔によって牽引された00年代初頭の日本のジャズは、90年代的なクラブジャズに対して、現場のジャズ・ミュージシャンからの反撃でもあった。著作や講義を通じて行われる和声とリズムの楽曲構造分析と、つぎつぎに発表されるDCPRGなどのアルバムの両方から、聴き手の耳を教育した氏の功績は大きい。

 また00年代初頭は、90年代末期のグリッチ・ムーヴメントを契機にして、日本でもエレクトロニカや電子音響が人気を博していた時代でもあった。ハードディスクの大容量化とラップトップ・コンピューターの高速化に伴い、これまでは不可能であった複雑なサウンドの生成が可能になった。
 00年代初頭の日本のジャズ受容と00年代初頭のエレクトロニカ・ムーヴメント。これらはいっけん無関係でありながら、00年代初頭の時代性を刻印するコインの表裏のようなものである。共通するのは90年代的なサンプリング感覚以降という感性と知性であろう。そして、現在は、00年代初頭の音楽的状況に大きな影響を受けている世代が活躍をしている時代だ。

 このUN.aは、そのようなジャズとエレクトロニカの00年代初頭的な成果を見事に統合させた類稀なユニットである。
 ピアノとエレクトロニクスを担当する中村浩之(電子音楽家としても知られている)と、サックスとエレクトロニクスを担当する宇津木紘(ミキシングエンジニアでもある)によるUN.aのファースト・アルバムには、ジャズと電子音とクラシカルな要素が極めて自然に共存している。それは作曲と演奏によるものであり、コラージュ/サンプリング的な拮抗でも対立でもない点が重要だ。
 本作で展開される多様な音楽の交錯は、単なる混在でもないし、単なる越境でもない。クラシックからアルゼンチン・タンゴ、アンビエントからビート・ミュージック、さらにはインディ音楽からブラジルまで、こぼれ落ちそうなほど豊穣な音楽性がきちんと整理・精査され、楽曲として無理なくコンポジションされているのだ。このエレガント、かつスムーズな作曲・編曲の能力の高さこそUN.aの魅力といえる。

“インターセクティング”、“アマチュア”、“アルボス”と続く冒頭3曲においては、ボーカル・メロディとコードとリズムとサウンドが絶妙な均衡の中で美しく溶け合っていく。ピアノは音楽の中で美しい響きを描き、サックスはジャズの不意にイディオムを導入し、ベースのフレーズはジャズの慎ましく主張するだろう。そうして描かれるアルバム全体のヴィジョンは、季節のような円環する時間ではないか。春から夏、そして秋から冬へ。円環する時の中で、華やぎ、そして枯れていくものたちへの慈しみ。
 その叙情がもっとも濃密に込められている曲が“イン・メニィ・ウェイズ”といえよう。秋の訪れのようなメロディと、トラックの絶妙な浮遊感は何度でも聴きたくなる中毒性がある。ピアノのフレーズに導かれて始まる“8 1/2”は、どこかアルゼンチン・タンゴのような雰囲気の楽曲であり、刹那と永遠が交錯する美しさに満ちている。濃厚な空気を自在に泳ぐようなピアノとヴァイリンの見事な交錯が、とにかく素晴らしい。そして絶妙に介入する電子音!
 そう、ジャズも、クラシックも、エレクトロニクスも、ひとつの音楽として生成し、消えていく。手法に溺れず音楽へと昇華させている。私はその点に何より感動した。

 ジャズとエレクトロニカの交錯には15年かかった。ジャズ的な和声と演奏の情報量と、エレクトロニカ的なサウンドの情報量の両立が難しいはず。なかなか成功例のなかった領域だが、彼らはこのファースト・アルバムで見事に成果を出した(私見だが、UN.aは東京ザヴィヌルバッハの系譜を拡張する貴重なユニットではないかと思う)。
 00年代初頭の決定的な変化を引き継ぐ、極めて2015年的なポップ/ミュージックのカタチがここにある。

会心のサードとともに来日 - ele-king

 インタヴューでも明らかなように、ダークスターは本当にアルバム一枚ごとの前進がすごい! 本人たちは比較を嫌うかもしれないが、今作で強いコンセプト性を手にし、ジャンル性よりはそのコンセプトやテーマに沿って自由に、大胆に、新たな表現フォームを獲得していくさまは、OPNやコ・ラなど〈ソフトウェア〉の周辺とも大いに共鳴している。ライヴもさらに思考と実験が積み重ねられたものになっているにちがいない。来日公演はいよいよ来週末!

■DARKSTAR [Live Set]
(ダークスター)

【GUESTS】
Quarta 330 [Live Set], Daisuke Tanabe [Live Set],
A Taut Line [DJ Set], Inner Science [DJ Set],
dublab.jp [Lounge Music]

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Warp Records契約のエレクトロニックデュオ、ダークスターの2年ぶりの来日オールナイト公演!!
国内外で注目を浴びている、気鋭の全GUEST ACT一挙発表!!
9/30リリース予定の新作3rdアルバム『Foam Island』をひっさげ、10/11(日)WWW 渋谷で行われるオールナイトクラブイベントのヘッドアクトとして出演することが決まっているダークスター。
彼らの公演を彩るゲストアクトにQuarta 330、Daisuke Tanabe、A Taut Line 、Inner Science ら、国外からも注目を浴びている気鋭アーティストの出演が決定!!
なおラウンジホストは日頃から刺激的な音楽配信を行っているウェブ・ラジオ・コレクティヴ、dublab.jpが担当!!
祝日を翌日に控えた一夜かぎりのスペシャルイベントをお見逃しなく!

SMASH: https://www.smash-jpn.com/live/?id=2381

*****

ARTIST PROFILE
初期のグライムやダブステップといったエレクトロニック・サウンドを融合した画期的な12インチ作品、当時のポスト・ダブステップ・ムーブメントの中でも異彩を放ち、コード9主宰レーベル〈Hyperdub〉からリリースされたデビュー・アルバム『North』が、いきなり各国の年間ベストに選出されるなど、衝撃とともにシーンに登場したダークスター。2013年には〈Warp〉へと移籍し、2nd アルバム『News from Nowhere』をリリース。ポスト・ダブステップやシンセ・ポップといったテン年代のキーワードとプログレ、アンビエント、テクノ、ヒップホップ、グライムといったUK音楽史の普遍的なコンテンツを融合させ、現行のUKアンダーグラウンド・シーンが生んだ一つの傑作として高い評価を受ける彼らが、待望の最新3rdアルバム『Foam Island』を引っさげ、SonarSound TokyoとFUJI ROCK '13出演以来の来日公演を行うことが緊急決定! 美しく煌めくエレクトロニック・ポップ・サウンドを是非この機会に体感して欲しい。

OFFICIAL: https://www.darkstar.ws
LABEL: https://beatink.com/Labels/Warp-Records/Darkstar/BRC-483/

SHOW DETAIL
東 京 10/11(日)渋谷 WWW
前売¥4,000(スタンディング・税込・1 ドリンク別)
OPEN/START 24:00-
※20 歳未満の方の入場不可。年齢確認のため、顔写真付きの公的身分証明書をご持参ください。
☎03-3444-6751(SMASH)

TICKET
9/19(土)10:00- 下記にて一般発売開始!
e プラス、ぴあ(P:276-370)、ローソン(L:75750)、岩盤、iFLYER

CREDIT
協力:BEATINK www.beatink.com
総合問合せ:SMASH 03-3444-6751
https://smash-jpn.com https://smash-mobile.com


具体の映像 - ele-king

 やぶからぼうに恐縮ですが読者のみなさん、さいきん「ミュジーク・コンクレート」なることばを目にする機会が多くないですか。ピエール・シェフェールのはじめたこの音楽は端折っていえば、伝統的かつ抽象的な音楽にたいし録音した「具体音」の加工と再構成で音楽をつくる、もとは現代音楽のサブジャンルなのだけれど、録音技術と機材が劇的に亢進し一般化したのを境にひとの口の端にのぼるのもめっきり少なくなったのが、体感ではOPNあたりからだろうか、チラホラ見かけるようになったのはおそらくミュジーク・コンクレートが現在のなめらかな音楽にたいして異化のニュアンスをひそませるからだろう。などとここは考察を進める場ではないが、とまれミュジーク・コンクレートが2010年代の音楽の基調の響きの一部であるのはたしかだ。

 牧野貴はジム・オルークからローレンス・イングリッシュ、タラ・ジェイン・オニール、コリーン、大友良英、山本精一、渡邊琢磨、イ・オッキョンらミュージシャンとの共同制作でも知られる映像作家だが、彼の新作『cinéma concret』はその名のとおり、誕生から半世紀以上を経たミュジーク・コンクレートへの21世紀の映像作家からのアンサーなのだという。フィルムとビデオによる具体映像(といういい方があるかはわからないが)を重層的に構成し、映画を観る行為を光の体験までひきあげる牧野貴の作品はもとからミュジーク・コンクレートに親和的ともいえる――というか、シオンあたりを引くまでもなく、光と音の現前である映画にとってその位置関係を措定するにあたり、ミュジーク・コンクレート的場面はあまたあるわけで、映画的な音楽あるいは音楽的な映画といった安易な比喩は厳に慎まなければならないが、牧野貴という点でそれらは交錯するにちがいなく、『cinéma concret』ほか、近年の代表作8作品をまとめて上映する今回の西日本ツアーはそれに目にするかっこうの機会になるだろう。でもなんで西日本だけなの。西日本がうらやましくてならない。

“EXP/2015”
牧野貴作品集『Cerulean Spectacles』リリースツアー


© 神山靖弘

■10月3日(土)岡山カフェモヤウ

15:00[フロクラム cinéma concret](上映作品:『The Low Storm』、『Generator』、『cinéma concret』)
17:00[フロクラム Phantom Nebula](上映作品:『Phantom Nebula』)
19:00[フロクラム cinéma concret](上映作品:『The Low Storm』、『Generator』、『cinéma concret』)
21:00 音楽の時間(DJ:牧野貴)

料金:予約・当日共に
1回券1,500円+1drink500円、2回券2,500円+1drink500円
(※音楽の時間は各回の入場券てご参加いたたけます)
cafe moyeu https://www.cafe-moyau.com

■10月4日(日)大阪シネ・ヌーヴォ

20:40 『The Low Storm』『still in cosmos』『Ghost of OT301』『2012 3D』
上映後、牧野貴&DOOM !によるトークあり

料金:1,500円(シネ・ヌーヴォ会員1,000円)
シネ・ヌーヴォ https://www.cinenouveau.com/

■10月5日(月)京都ジャポニカ

20:00 『Inter View』(音楽:Tara Jane O'Neil & Brian Mumford)
DJ : DOOM ! collective

料金:1,000円+1drink500円
JAPONICA https://www.japonica-cafe.com

■10月6日(火)京都同志社大学・寒梅館

19:00 『cinéma concret』
アフタートーク:牧野貴×川崎弘二(電子音楽研究)「ミュジーク・コンクレート / シネマ・コンクレート」

料金(当日のみ):1,000円均一(※同志社大学学生、教職員無料 同志社内諸学校含む)
同志社大学 寒梅館クローバーホール https://d-live.info/


interview with tofubeats - ele-king


tofubeats
POSITIVE

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  早いもので、トーフビーツ、通算3枚目のアルバム。「水星」のリリースが2011年だから、かれこれ4年ものあいだ彼はこの国の音楽シーンの重要なプロデューサー(ないしはビートメイカー)のひとりとして、時代の寵児として、この時代を反映する者のひとりとして、広く注目され、作品を発表し、こうして我々を楽しませている。
 『lost decade』が2013年。前作『First Album』が2014年。そして今作。つまり毎年1枚のアルバム・リリース。これは、メジャー・レーベルの若手邦楽ミュージシャンの標準ペースであり、海外においても大衆音楽の基本ペースだ。もちろん、ある時代までの。

 トーフビーツとは、古今の欧米のアンダーグラウンド・クラブ・ミュージックを嗜好しながら、ポップ・フィールドに通用する音楽を作りたいと人一倍強く思っている青年である。彼はビートメイカーだが、がちがちのストリートウェアでめかし込んだレコード会社のスタッフと比べるとほどよく地味な外見で、しばし我々を混乱させる。いったい誰が「クール」な主役なのか……。そして、ひと昔前なら音楽家たるもの口が裂けても言わなかった「ビジネス」について堂々と喋る。価値観が変わったことを大人に教えているのは、むしろ彼のほうなのだ。

 ジャンクもクラシックも、使い捨ても名盤も、40年前の音楽も最新の音楽も、すべての価値が均等なスーパーフラッター・ワールドから来ているトーフビーツだとしても、だからといって彼はそうやすやすと素人芸に拍手しない。話題性では『First Album』かもしれないが、岸田繁、KREVA、小室哲哉、中納良恵……といった超豪華ゲストを迎えての新作『POSITIVE』、ひとつひとつの曲の完成度は高く、よりたくさん聴かれるのはこちらだろう。トーフビーツらしい叙情性、そして遊び心がうまい具合に調合されている。
 そもそも彼にとって重要なのは音楽的起源ではなく、たくさん聴かれること。多くの人が楽しめること。つまり、これが売れるかどうか。さてどうなることやら……そういう意味でも、注目の新作なのだ。

■tofubeats / トーフビーツ
1990年生まれ。神戸で活動するトラックメイカー/DJ。〈Maltine Records〉などのインターネット・レーベルの盛り上がりや、その周辺に浮上してきたシーンをはやくから象徴し、インディでありながら「水星 feat.オノマトペ大臣」というスマッシュ・ヒットを生んだ。本トラックを収録したアルバム『lost decade』を自主制作にて発売。同年秋には森高千里をゲスト・ヴォーカルに迎えた「Don’t Stop The Music」でメジャー・デビュー。2014年10月2日(トーフの日)に、豪華ゲストを招いたメジャー1stフル・アルバム『First Album』を発売。2015年1月にリミックス・アルバム『First Album Remixes』を配信リリース。つづくエイプリルフールにメジャー3rd EP「STAKEHOLDER」をリリース。9月にメジャー・セカンド・フル『POSITIVE』を発表した。

2年前に作った曲を今回のアルバムに入れちゃうと、Jポップの時間感覚では違和感が出るんじゃないかと思いました。

野田(●)、橋元(■)

今回、過去のすべてのMVも収録されていたりする(初回盤のみ)ことをふくめ、ひとつの区切りの中で作られていると思います。「メジャーでやりたいこと」というのがあったと思いますし、実際に過去にそう語ってもらってもいるわけですが、今回はそれに対する結果、あるいは手ごたえといったところをおうかがいしたいなと思ってます。

野田:早すぎるよ、ペースが(笑)。

TB:3年に1枚、というペースで食べていけるならいいんですけど、そんな契約どこでもしてもらえないですよ(笑)。物を言えるようになるまでには時間がかかりますね。

野田:その意味では本当にJポップらしいリリースの仕方なんだろうけどね。

TB:あるいは、1枚だけで抜けていっちゃう……あえて1枚だけの契約をするアーティストも多いのかもなっていう印象もありますね。

いろいろ制約のある中で、その1枚というものを精一杯考えておられると思うんですが、前作は「収録ヴォリュームがお得」というこだわりもありましたよね。

TB:そうですね。今回は、CDを買う人がさらに絞られていっているので、プレミア戦略とまではいきませんが、もうちょっとモノとして置いておきたくなるようにしたいなと。デザイナーからは10インチ・サイズのジャケにしたいっていう要望があったんですけど、そういうリアリティのない形は避けたくて、なるべく普通に流通しているCDのケースのサイズの中で工夫したいなと思いましたね。

野田:そういうふうにモノに回帰していくっていうのは、音楽の売り方としては原点回帰的なものだと思うんだけど、tofubeatsとか〈マルチネ〉って、そういうものを壊してきたという前科があるわけで──全部タダで聴けるという。そのへんは自己矛盾というか、アンビバレンスがあるの?

TB:でも、データにはデータのよさがあって、アナログにはアナログのよさがあるっていうのは昔から言ってることなんですけどね。僕は中学のころからレコードを買っているので、そこはtomadとはちがうところです。フリーで聴くのはフリーで聴く用の音楽で、たとえばフォークみたいなものはフリーでは落とさない(笑)。そういう基準がいちおう僕の中にはありますね。この『POSITIVE』でも、データ版はほぼ半額くらいに値段を下げていて、データを聴くような人に向けて送っているものなんですよ。CD版はCDを聴くような人に向けて送っているし、後々アナログを出すとなればそれも同じ。デジタルもパッケージだと言うならば、それ相応の角度をつけるというか。だからあんまり矛盾はしていないと思うんですよね。(料金が)フリーっぽいジャンル……ってなんとなくあるじゃないですか。Jポップをちゃんとつくろうというのは、そうじゃない、CDっぽいジャンルだと思っているからかもしれないですね。

なるほど。ブックオフの100円CDコーナーなんかが原体験的なものとしてあったりとか。きっとそうしたイメージの集積の中にご自身のJポップ像があるんだと思うんですが、たしかにtofubeatsのCDは「CD」をやっていらっしゃるかもしれない。

TB:それに、タダという話についてはちょうど昨日タクシーの運ちゃんとその話をしてたんですけど、儲かる商売とは投機性の高いものであると。株、先物、家──倍になったりゼロになったりするものが儲かる商売なんですよ。で、音楽はかつてとても投機性の高い商売だった。つまりそれは、ゼロになる可能性も持っている商売だったんです。逆に言えば、また価値が上がっていくこともあるかもしれない。それが最近の僕の見方です。いまが買いなんちゃうか、と。

野田:ははは! そんな株券みたいなものなのかなあ。でも〈マルチネ〉って、延々と同じやり方を繰り返してきた音楽産業に対しての、ひとつのカウンターでもあったじゃない? だから、ついtofubeatsにはこの間の音楽産業の激変についてだったりを訊いてみたくなっちゃうんだよね。今年だとアップル・ミュージックなんかも大きいトピックだけど、消費の選択肢が増えるだけじゃなくて、それを提供するためのメディアも増えていくでしょう?

TB:タイトル単位でお金を払うっていう感覚はもう捨てられたなと思いますね。音楽的な内容の上でも、来年あたりからそれに対応してどうなっていくんだろうって思います。今年も今年でぜんぜんちがって、来年はさらにちがってくると思うので……。年に一回くらい定点観測していかないと変な感じになっちゃうんじゃないですかね。その意味では、2年前に作った曲を今回のアルバムに入れちゃうと、Jポップの時間感覚では違和感が出るんじゃないかと思いました。

今年に入ってから、歌謡曲からJポップになったというようなレベルでのタームの変更が、なんとなく来そうだなって思ってるんです。

Jポップの市場に、ポップ・カルチャーのど真ん中の流れを作るエネルギーがまだあると思います?

TB:Jポップ市場にあんまり期待はしていないですけどね。すごい夢があるって感じではないんです。やり方としては、毎回、市場にお伺いを立てるみたいな感じなんで──「Jポップどうですか? 僕のヤツいけますかね?」って(笑)。

野田:ははは(笑)。そういうさじ加減はその都度考えているんだろうけど、今回はそういう意味でいうとJポップをすごく意識しているよね。

TB:そうですね。あといろいろ仕事をさせていただいたので、前回よりは技術的にJポップを狙って打てるようになっていますね。前回も気持としては同じくらい狙っているんですけど、今回ほど曲単体で飛ばせなかったというか。

ご自身の中の憧れもあるとは思うんですけど、TofubeatsがJポップというものを立ち上げるときに、ある意味で亡霊ともいえる過去の大物を引っぱってくるじゃないですか──やっぱり、Jポップという共同幻想が以前ほど明確に想像できなくなっているから。

TB:それをどんどん生産していくっていうのがあるんですよ。ファースト・アルバムに関しては、「憧れているひとに全員会う」という目標みたいなのがあって、森高(千里)さんがいけたから、藤井(隆)さんとかボニー(・ピンク)さんにいこうとか、メジャー・デビューする前に本当にファンだったひとを呼ぶ、というのがテーマだったんです。
今回の『ポジティヴ』に関しては、さじ加減が変わってきたというか。呼びたいひとたちは前回みんな呼べちゃった。となると今回はロマンとかじゃなくて、「呼んだらおもろいんちゃうか?」サイドというか。もちろん呼びたいひとという意味ではいっしょなんですけど、もうちょっと自分としては一歩引いたところからお声掛けをしています。

ゲストの方は年齢的にも少し下がっていますね。

TB:下げたかったんですよ。年長のひとを呼んでしまうというのは意図的なものじゃなくて、単純に趣味の問題で──〈マルチネ〉にはいるんですけど、同世代で波長の合うJポップのミュージシャンがあんまりいないから、呼べないというのがありました。それで、ベテランの方が話がわかってもらえるから、そういうひとたちを呼ぶことになってしまった。そういうひとたちといっしょにやって、こっちも勉強しておきたいというのもあります。
そもそも若手で市場でやっているひとってほとんどいないんですよ、ミュージシャンとしては。EXILEとかE-girlsとかって、またちがうスタイルじゃないですか? AKBはアイドルですよね。だからそこでジャンルがちがうんですよ。僕みたいなミュージシャンがあんまりいない。BONNIE PINKや椎名林檎みたいなひとが若手にいないんですよね。不思議な話で、椎名林檎さんだって若手のときがあったのに。

そうですよね。それが育てられていないということなのか、それともJポップというものの文化的な寿命があって、頂点を過ぎてしまって支えようがない、というようなことなのか。あるいは、もうみんな終わりを知っているから、新しい何か別のものを仮構しているところなのか。

TB:今年に入ってから、歌謡曲からJポップになったというようなレベルでのタームの変更が、なんとなく来そうだなって思ってるんです。

おお。

TB:そうなったみたいな。Jポップが登場してきて、小室さんが作っていたときみたいな感じで、荒れ果てた大地から謎のジャンルが出てきた……ってことになってこないかな、と思っていて。いまはアイドルとEDMで、ほとんど音楽的には焼け野原に近いというか。まぁ、焼け野原というのは言いすぎかもしれないですけど。

野田:だいたい小室哲哉自体が、たとえばいま再評価されているシティ・ポップの流れなんかとはぜんぜんちがうというか、反対側のひとだからね。

TB:そうそう。あのひとはヨーロッパですからね。これは大きな声では言えないけど、小室さんみたいなひとを「オモロイやん!」っていう理由で呼ぶのは、2015年じゃないとできないというか。そういう意味で前回とはちがうというか。以前はマジメに考えてこんな感じだったんですよ。

野田:ナイーヴなアルバムだったもんね。

TB:そういう部分が取れてきて、「小室さんを呼んで、岡田さんの声が聞こえてきたらウケるよね」みたいな感じで作ったんです。実際に小室さんもこれを聴いて爆笑するっていう。だから、そういうことができたので、すごくよかったですよ。それにこんなのを送ってくださる時点で、小室さんもJポップを作る気がぜんぜんないじゃないですか? だからシーンへの音楽的な期待が小さくはないんですけど、けっして大きいわけではないために、かえって自由になれるところもあるなっていうのは、今年のいいところでもあります。

野田:じゃあ、ある意味では遊んでいるアルバムとも言える?

TB:そうです。けっこうふざけていますね。「ふざけていいんだな、こんくらいまでは」というのがわかってきたというか。

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今回は「自分の」じゃなくて、「OLの」歌っていうのが作れるようになったんですよ。客観的なものにできたというか。


tofubeats
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そのさじ加減とともに、技術的にも遊べる力量がついたということなんでしょうね。

TB:それに関してはまだまだで、まったくないとだけ言わせてください(笑)。そもそも曲ができなさすぎて、〈ワーナー〉の会議室で「ポジティヴになりなさい」って言われて、タイトルが『POSITIVE』になったので。

野田:え、何があったの?

TB:最初に玉城ティナさんとの曲があって、それが1ヶ月くらいできなかったんですよ。それで神戸から呼び出されまして。釜飯を食いながら「トーフくんはもっとポジティヴになりなよ」って言われて。「そんなの無理っすよ」ってデザイナーのひとに言ったら、「でも“ポジティヴ”って、字面がいいじゃん。エネルゲンみたいでかっこいいよね」って感じになって、「じゃあ『POSITIVE』でいきますか」と。そしたら曲ができだしたんですよ。

そのニュアンスですと「やけ」みたいにも聞こえますけども(笑)。

TB:いや、根も葉もなくていいんだな、みたいな。逆にJポップだし、と。

野田:率直に聴いた感じを言うと、最後のEGO-WRAPPIN'のやつとか本当に泣きの入ったJポップというかさ。「絵に書いたようなJポップをやりやがって、このヤロー」と思ったんだよ。いまの話を聞くと、それはある程度は確信犯としてやってるの?

TB:前回のアルバムとかは、自分のなかの女の子っぽさとかOL的なものを増幅させて曲を書こうとかって感じだったんです。でも今回は「自分の」じゃなくて、「OLの」歌っていうのが作れるようになったんですよ。客観的なものにできたというか。前の作品がナイーヴになる理由もそこにあったんですけど、自分ではなくてそれぞれキャラに合わせてやればいいやって思えて。

野田:それはホントにプロデューサーだよね。

TB:しかもインスト曲を抜くことによって、そこに徹することができるようになったというか。その代わりに最後のテクノみたいなやつ(“I Believe In You”)が、いちばん思い入れがある感じなんです。

ある意味での勝負曲ですね。

TB:そうですね。この曲がいちばん聴いてほしいっていう。

野田:そうなんだ(笑)。

TB:すべてはここに持ってくるためにあるっていう感じなんで(笑)。

とはいえ、この曲もバランスが取れた曲だと思ったんですけどね。

TB:いちおう〈マルチネ〉10周年用で、派手にしたいというのはあったんですよ。

ひとつ前のシングル(『STAKEHOLDER』2015.4)って、つながりとしてはあの曲のの流れにあるのかもしれないですね。

TB:結局、『POSITIVE』を出す前提で『STAKEHOLDER』も出しているんですよ。ジャケも、この布陣でこのアルバムをやるっていうのは決まっていて、「ここではいくらふざけても大丈夫です!」っていう許可を〈ワーナー〉から取って作ったのが、この『STAKEHOLDER』だったんです。

内容的にも、今作のラストの曲とある意味で似ているというか、わりと自由にされてますよね。

TB:ファースト・アルバムだけでやらなきゃいけないと思っていたことを、切り分けて『STAKEHOLDER』でやりきっちゃって、『POSITIVE』はプロデューサーに徹する──そこの采配がうまくいったおかげでもあるというか。
たとえば最近のネットで聴けるいちばん尖った曲の傾向みたいなものが、この『STAKEHOLDER』にはなんとなくあるなというのが、わかりやすく見えると思うんです。アルバムのほうにももちろんそれがあるんだと思うんですが、すごく切り刻まれてJポップの形の裏に滲むくらいの程度になっていて。
というか、その尖った分量を減らすことも意識してさえいるんですよね。ヴォーカル・チョップみたいな手法とかは、もはやちょっと不良かもと思って減らしたところもあります。スカイラー・スペンサーの曲とかも、過剰なエディットを排除する作業をしたり。

まさにいまその名前を出したかったんですけども、スカイラー・スペンサーってセイント・ペプシでしょ? 普通に歌っとるやんか、みたいな驚きもあって。

ポップスというのは内と外の認識というか、それをどう定義するかだと。

野田:Jポップと言ってしまうと語弊があるしね。tofubeatsは、いわゆるポップ・アートみたいなありかたをすごく出していると思うんだよね。ポップ・アルバムを作ろうとしているのはひしひしと伝わってくるんだけど、トーフにとってポップ・ミュージックは、さっきの現状認識に照らすと「焼け野原に近い」わけなんでしょう? 要するにろくな音楽がないっていうか。

TB:まぁ、なくはないですけどね。

野田:そういう中でいいポップ・ミュージックを作りたいということだと思うんだけど、それは何なの?

TB:一昨日、Seihoさんとしゃべっていて、「『POSITIVE』についてひとことだけ言いたいことがある。これを聴くと、tofubeatsくんのどこまでが外でどこまでが内かわかる」と言われたんですよ。だからポップスというのは内と外の認識というか、それをどう定義するかだと。
今回、小室さんと作りながら話していたんですけど、小室さんが何百万枚と売れていた時期でも、小室さんが言うには「絶対に売れない曲」が最初にできるんですって。僕の『STAKEHOLDER』みたいな、自分の好きなことだけをやった曲ができるそうなんですよ。でも、そこから1000人分、2000人分とアレンジで積んでいくんです。ここをこうしたら1万人増えるっていうメソッドがあるんですよ。ここまでやるとラジオ・レベル、ここからはテレビ・レベル……ただ、自分の好きなものからは離れていくっていう。まさに内からどんどんと外へ広げていく作業をアレンジでやるんですよ。それをやるのがJポップだっていう話で、それがみんなに喜んでもらうということだと。俺はそこまでは達観できないですけど、自分のなかにある感覚としては、「内」と「外」というのはたしかにあるんです。

野田:その小室さんが使っていた、内側から第一段階、第二段階と離れていく手法は、いまでも通用すると思った?

TB:俺は思わないです。それはもちろん時代的なものもあるので。ただ、それと同じことがやれるひとに、中田ヤスタカさんがいるって思います。本当かどうかわからないから真に受けないでほしいんですが、「時代の一歩先じゃお客さんにわからないから、半歩先じゃないとダメだ」って言われていたそうなんですよ。それはそのとおりで、俺はそれをわかっていてやらないのが品のよさだとは思うんですけど、そこで「半歩」を選べるひとはプロデューサーとして優秀だと思う。
そのあたり、僕はジレンマがあるんで──養う家族とかがいるわけでもないんで、僕はそこで折れる必要がないんです。でもそこで半歩を意識するのがポップスなんじゃないかな、と。まったく意識しないとアーティストっぽくなっていくんですけどね。僕が神戸とか東京とか言うのも、内と外を定義するからなんです。それが僕自身のポップス観に近いって感じですかね。それでSeihoさんに、「トーフくんがどこからどこまでが仲間だと思っているかがわかる」って言われたんですよ。

野田:なるほど。しかし「1000人、2000人」って、すごい発想だなー。フィル・スペクターとか誰でもいいんだけど、そんなふうには作っていなかったと思うんですよね。

TB:それはまさにJポップという感じが出ているんだと思います。でもグラミー全盛のときもそうだったんじゃないかって感じがするんですよね。メロディ・メイカーが別にいるっていうのも、まさにそれを表しているように見えるし。
あと、小室さんからその話をうかがってから、2000年くらいに放送された小室さんの『情熱大陸』(TBS)を見なおしたんですよ。そしたら小室さんが「あ、1000人減った」って言うくだりがあったんですよ(笑)。15年前に言ってるから本当だって思ったんですよね。でも小室さんはその中でも「ピアノ・アルバムをやりたい」って言って、無理してそういう作品を作っちゃう部分もある。やり方っていっぱいあると思うんですよ。内と外があるとして、毎回外を打つ人もいれば、内のものと外のものを作ってバランスを取る人もいるじゃないですか。おもしろいと思いますね。

「いま1000人積めたな」っていうのは、音楽が本当にたくさんの人と文化を動かしていた時代のダイナミズムであって、いまその発想を支えるものがあるかというと──

TB:動いて2、3人くらいなんですよ(笑)。

ははっ、ご謙遜! あるいは、CDというフォームじゃなければむしろ昔よりもたくさんのひとたちが音楽を楽しんでいるかもしれない、といういまは、「1000人積みます」っていう商業ベースの考え方が、逆に特別にかっこよかったりワンダーだったりもすると思うんですね。そのあたりのスタンスは、tofubeatsはどうやって取っているんですか?

TB:だからそこで「力を抜いてみよう」というのでできたのがこれというか。エゴをマックスでやらないとどうなるんだろう、みたいな感じですかね。それに世の中がもっと世知辛くなっていったときに、みんなはどんどんアーティスティックになっていくと思うんですよ。あと、何も定義がないから、自分のやりたい音楽をやるしかないんですよね。だから対社会的なものを作るっていうのは……どうなんですかね。それも時代によりけりだと思うんですけど、いまの時代としては、来年はマジメなやつを作っても大丈夫なんじゃないかという気もしているんです。だから、こういうのを作れる間に作っておこうというのもあったかもしれないですね。

来年はマジメなやつを作っても大丈夫なんじゃないかという気もしているんです。

ああ、なるほど。それは「2015年じゃないとできない」というさっきの発言ともつながりますね。「今年」のニュアンスをもうちょっと聞きたいです。

TB:今年は『Maltine Book(SWITCH特別編集号)』とかが出ていますけど、どこか荒野っぽいというか。tomad社長みたいな人は、そこに今度は砂が盛り上がって枯山水ができ上がるとか、Seihoさんとか岡田さんみたいに、開拓時代だから好きなことができると言っているひともいる。僕は流行のなかでそこにどうやってタッチしていこうか試行錯誤しているので、ブームみたいなものがなくなるとかえって距離が取れなくなってしまうっていうか……、そういう定義がどんどんなくなっていくんで、最後はどういう音楽をやっていくか、いま自分自身に問いかけられつつあるんです。だから内と外がなくなったときにどうやろう? という不安がありますね。

それは突き詰まった答えをいつか聴いてみたいですね。ではtofubeatsから見た理想的なポップ像というと、どんなものになりますか?

TB:「気概がある」っていう言い方になっちゃうんですけど……。ある人が言っていたんですが、すごく有名なバンドでも、後進にたいしてエデュケーショナルな感じがない音楽が多いでしょう? その向こう側はあんまり見えないっていう。たとえばNonaReevesとか、聴いてみるとその向こうにある音楽がわかるじゃないですか? 当人がそうなりたいと思って動いたんだなって。そういうのであってほしいとは思うんです。この音楽を聴くことによって、何か作用が起きてほしいというか。それは音楽的な作用です。それを聴いてダンスをはじめるとかでもいいんですが、僕が理想だと思うJポップは、音楽を聴いて、音楽の作用が起きるのがいい。もっと音楽を聴こうと思わせてくれるというか、そういうものが優秀だという定義がなんとなくある。ただ、サザンを聴いてそう思うひともいるでしょうから、人によりけりなんですけどね。でも、僕が好きなのは「なんやこれ、もうちょっと調べてみよ」となる音楽というか。

僕が理想だと思うJポップは、音楽を聴いて、音楽の作用が起きるのがいい。もっと音楽を聴こうと思わせてくれるというか。

野田:参照性が高い音楽?

TB:同列の音楽に行ってもいいんですよ。たとえばアクフェン(Akufen)を聴いて、「カットアップってなんだろう?」と思って、アクフェンとぜんぜんちがうやつを聴くというか。そうさせてくれる音楽が好きなんです。

野田:それをポップ・ミュージックのより大衆側でやるってこと?

TB:そうです。だからおもしろいアイドルの音楽を聴くのと、アイドルの曲を聴こうとなるのはまた別の原理じゃないですか? もっと音楽的な広がりを与えてくれるものというか。そういうものがJポップのチャートに入ってほしい、という願いがありますね。
今日はJ-WAVEでさっきまでイヴェントがあって、フットワークが流れててめちゃびっくりしたんですよ。ラジオでEDM以外のクラブ・ミュージックがかかることってほぼ無いんですね。先週、車に乗ってたら大阪のFMからスウィンドル(Swindle)が流れてきてびっくりして。

野田:それは本当にたまたまだね(笑)。

TB:協賛番組でその局制作じゃない番組だったんですけど、そういう「おお!」というのがほしくて、びっくりしたいというか。「ああ、またEDMね」とかじゃなくて、いろんな音楽が入った多様性みたいな感じがあるといいなと思うんですけどね。

野田:じゃあ自分でもそれを目指すわけだね。

TB:本当にひとりでやるしかないというか。

でも、〈マルチネ〉さん周辺のなかでもtofubeatsはとくにドラマチックでロマンチックなミュージシャンなのかもしれないとは思いますけどね。程度の差はあれ。

TB:いや、もう本当にドラマ信仰がはなはだしいって問題視されているんですよ(笑)。岡田さんとかにリアリズムに欠け過ぎているとよく言われるんですね。

野田:どういうこと?

TB:深夜ドラマが好きすぎて、なんでもドラマっぽくしちゃうというか、ストーリーをつけちゃうというか。だからインタヴュー受けがいいとかはあるかもしれないんですけど(笑)。なんでも勝手に自分でストーリーにしちゃうっていうのは、半分病気だって言われる。〈マルチネ〉のひとたちは点で物を見れるので……。インターネットと相性がいいのはそれですね。僕がインターネットをやっているけど、レコードを買ったりとかしたいのは、ストーリーがなきゃっていう性質のせいかもしれないです。

それはアルバムの考え方にも影響するかもしれないですね。

TB:なんというか、曲もタイトル単体では評価できないんです。さっきも言ったんですけど、「つながりがないと」とか言っているのはそれに近い気がしますね。

ある意味では商売っていうドライさで音楽を見れないひとなのかもしれない、とか。

TB:だから必死っぽい感じがするのかもしれないですね。

たとえばくるりの岸田さんが歌われているやつとか、EGO-WRAPPIN'の中納さんとの最後の曲だったりとかは、tofubeatsが本当は持っているドラマチックな部分が、彼らの声を通して表に出てこられる。「ドラマチック」というのをダサいと思っているかはわからないですけど、自分で押し込めている部分もあるのかなという感じはするんですね。でもそのあたりの曲は、唯一それが自然に感じられる。

野田:俺は今回のアルバムを聴いて、tofubeatsってこんなに情のひとなのかと思った。

TB:情のひとですよ(笑)。それだけは言わせてください(笑)。

野田:こんなにエモーショナルでペーソスがあるのかと思ったね。

そういういうことを上手く歌うひと、あるいはそういうひとを選んだんだなと思いました。

TB:そうなんですよ。他人経由にして歌うからいいんですよ。あと、歌ってもらわないと自分で聴けないじゃないですか? それがいいんですよ。僕は自分のアルバムは自分で聴きたくて作っているので、自分で聴くためにはひとの声が入っていないといけない。

野田:けっこう泣きのひとなんだよね。

TB:いや、もうめちゃくちゃそういうタイプですよ。

それだとKREVAさんのやつ(“Too Many Girls feat.KREVA”)がおもしろいじゃないですか。半分KREVAさん、半分ご自身みたいな。

TB:あれは『lost decade』でPUNPEEさんとやったのといっしょです。トリがあってオチがあるっていうか。そういうものへの遺伝子レベルでの羨ましがりというか。あと、イケメンが好きなんですよね。自分にないものがあるので。

ひとに歌ってもらっている部分が半分、自分で歌っているのが半分ってなっているじゃないですか?

TB:そうですね。

その意味で、出てくるものが他の曲とはちょっとちがうような気がしたんですけどね(笑)。

TB:これは半分コミック・ソングみたいな感じなんですけどね。

「このひとはこれを守っているんだな」ってわかるミュージシャンが好き。

テクニカルな部分というよりも、むしろ曲の表現とか意味みたいな部分を何重にも外側から考えているひとなんだなと思いますね。でも、その「外側感」は自分にとって不自由であったりはしないんですか? あるいは、「もっと無邪気にやれたらいいな」とかって思わないんですか?

TB:無邪気にやりすぎちゃうと品がない感じになっちゃうから。

野田:そこは何か、tofubeatsの中にあるんだね。

TB:そこに関してはボーダーがあるんですよ。いちおう全曲その意識の中に収まっているというのがあるんですよね。

野田:tofubeatsが気にしている品性の部分はわかる気がするね。一歩タガが外れると、それこそEDMのひどいヤツじゃないけども──

TB:曲とか歌詞についても、自分の中でボーダーがあるんですよ。ハーバート(Herbert)なんて、「自分はこれは絶対やらない」みたいなことがサイトにずっと載っているけど、俺もああいうのがあるんです。ああいうのになりたいというのはすごく思ってて。よくわからないけど、「このひとはこれを守っているんだな」ってわかるミュージシャンが好き。俺はボニーさんとか岸田さんにそれを感じるんですよ。小室さんもそうですね。めっちゃ器用なのに、やることを限定するじゃないですか。手癖とかが出ないようにするっていうのは、なかなか難しいような気がするんですよね。

倫理みたいなもの。そういうものをより気にしなきゃいけないというか、最近の若いひとはそういうところにわりと厳しいということは感じるんです。そういう感覚とか、芸術であれ何であれ自分のことをテキパキ説明して、キャリアを切りひらいていけるっていうようなところでも、tofubeatsはひとつのお手本になっているのかもしれないですよ。

TB:どうなんですかね。僕より若いひとは政治とかがもっと好きでしょう。僕らよりもうちょっと下くらいの世代との断絶は感じるんですよ。だからSEALDsとかが“彗星”とか“No.1”とかをかけて演説しているっていうのを聴くと「へぇー」と思うっていうか。

野田:そういう曲がかかってもおかしくはないかもしれないね。

TB:あと、僕のルールのなかには政治を語らないっていうのがあるので。絶対に公の立場では。そういうのが何個かあるんですよね。

今年の感触全体として空を掴んだ感じがありますよ。

野田:tofubeatsをかけるシールズはおもしろいとは思うけどね。それとは別の話なんだけど、今年が焼け野原っていうと俺も似たような感覚があって、2015年ってあんまりおもしろい音楽が多くなかったでしょう?

TB:「これが流行っているな」っていうのもないなって。

野田:たとえばエレクトロニック・ミュージックのシーンを見たときに、とくに新しいものが出ているわけじゃないんだよね。それ以前のほうが動きがたくさんあって。そういう意味でいうと、現行の音楽のおもしろいところとリンクしようとしても、できるところがない。そんな中で音楽を作ろうとなると、「内と外」っていうさっきの言葉が正しいかどうかわからないけど、何かいままでとちがう作り方が求められるというかね。

TB:いまも、周りが言うほど俺は「できた」って感じがしてないんですよ。今年の感触全体として空を掴んだ感じがありますよ。悪いのができたとは思っていないんですけど、これが何かを起こすぞみたいな感じは、今年はしなくって。

それはわからないよ。

TB:起きたら起きたでうれしいですけどね。

でも、「今年」ってもののツマミを上げたり下げたりしてくれる唯一の存在なのかもしれないじゃないですか? 他のひとができないぶん、さらに昔とはその塩梅もちがうってことがわかっているぶん。

野田:まぁ、でも今年は出すのが難しい年だったと思うわけよ。

TB:それはそうですね。

野田:ヴェイパー・ウェーヴでもジュークでもなんでもいいんだけどさ。

だって3月以降『ele-king』は出てないんですよ。書籍の刊行が多くっていろいろ大変だったんですけど、でも何か大きな動きがあったら出てるはずなんで。出たのは別冊の「ポストロック」と「ジム・オルーク」(笑)。

TB:はははは(笑)。やばいなー。

野田:大変な時期だよ。

TB:「荒野になるとハウスが流行る」みたいなtomad社長の意見も正しかったし、俺たちもDJをはじめた頃の音楽を聴くっていう(笑)。

野田:それはシティ・ポップが流行るのと同じだよね。バック・トゥ・ベーシックな感じ。

TB:ディスコのリエディットとかもレコードとかですごく買ってて。「DJはじめたときといっしょじゃん!」ってなるみたいな。しかも作っている曲にはそのフィードバックがないから、余計そういう感じがするというか。単純にやることがなくなったから、自分の出処を確認しているだけなんですよ。

そんななかでギター・バンドはのびのびとやっているんですかね?

TB:バンドも形見が狭いでしょう。

野田:バンドだって真新しいことをやっているわけじゃないじゃん。

真新しいことがないから、シティ・ポップが参照されたり。

TB:あと荒野過ぎてちょっと出てくると拾われちゃうから、余計やりにくくなっていると思いますよ。

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サブスクが今年にできて、ひとつだけありがたかったのが、「プレイリスト」という感覚でアルバムがいちおう戻ってきたというか。


tofubeats
POSITIVE

ワーナーミュージック・ジャパン

J-PopDiscoRap

●初回限定盤
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でも、なんだかインターネットが自由の空間を開き過ぎてしまって、産業とかユース・カルチャーとしては苦境でも、音楽そのものにとっては案外いい時期なんじゃないかと感じたこともありましたけどね。

TB:ていうか、インターネットが前提になったから、〈マルチネ・レコード〉は新しくもなんともなくなって瓦解したというか。10周年のタイミングで社長も本を出して、いちど解き放ったというか、適度なところで区切りをつけたというのもあるとは思いますけどね。

アルバムというフォーマットにすることにどういう意味があるのかがより問われるようになったという感じもします。それぞれがそれぞれのタイムラインで、単品で音楽を聴いているわけなんで……。そういうタイムライン乱立状況の中でアルバムを考えるときに、Jポップという亡霊がもう一回召喚されてくるんだと思うんですけど、そういう意味では今回のアルバム、すごくアルバムですよね。

TB:それで言えば、サブスクが今年にできて、ひとつだけありがたかったのが、「プレイリスト」という感覚でアルバムがいちおう戻ってきたというか。単曲配信の場合は1曲配信なので、アルバムを聴くっていうモチベーションを、料金的なところでは与えにくかったんですよね。しかもYoutubeから単曲のリンクに飛んでってなると、どうしてもそうなる。それがこのサブスクを経て、価格的な面では障壁がなくなったから、アルバムにいきやすくなった。──たとえば僕がアップル・ミュージックで何を聴いているかというと、ブライアン・イーノとか〈メゴ〉。僕、中学生のころから好きで。でもいま、それをアルバムで聴くっていう、有線みたいな使い方になっているんですよね。そういう意味で、逆にいまの状況だとアルバムを聴くと思ったんですよ。しかもアップル・ミュージックって、知っているアーティストしか検索できないじゃないですか? 紹介してくれるものも知っているアーティストに関連しているものなんで、いきなりヘビメタの知らないアルバムを紹介されて「いいな」と思うことはないんですよ。だから知っているアーティストを検索して聴くという系統だった聴き方も生まれる。

古い聴き方とある意味では同じ。

TB:しかもより拘束力なしに聴かせる。だって、いまだったら一回CDをPCに取り込んで聴かせるってなっちゃうんで、そういう意味ではアップル・ミュージックは曲を順番に聴かせる力があると思うんです。それでプレイリストとなると、CDマックスに入れるのは長いなってなって、今作はトータル56分とかになっているわけです。

アルバムの話はおもしろいですね。なるほど、そこも考えられていると。

TB:インスト曲とかも作ったんですけど結局入れなくて、レーベルにも「入れるかもしれないから待っててくれ」って言っていたんですけど、やっぱり長いから全部は入れなかったんですよね。ヴォーカル曲が続くのもそれが理由で。

それはポジティヴな理由としておもしろいかもしれないですよね。

野田:ここまで考えなければいけないんだね(笑)。

逆にそこまで考えるプロデューサーに、今度はさらなる「アーティスト性」が加わるようになってきたというか。まぁ、そのアーティスト性は不幸なのかもしれないですけども。

TB:不幸とかさんざん言われましたけど、今年に入ってそれが当たり前なんだなって感じですね。インターネットと同じで前提みたいな。

だからこの「ポジティヴ」ってニュアンスにも、無理やり裏返して明るくしようみたいなものが無いですよね。

TB:今回は「ポジティヴ(笑)」とかじゃなくて、本当にポジティヴ。

今回は「ポジティヴ(笑)」とかじゃなくて、本当にポジティヴ。

野田:ところで、どうしてトーフビーツはこのイラストレーターが好きなの?

TB:今回のポジティヴっていうテーマは全体的におもしろくて、そのことばが最初にあると、携わるみんながちょっとずつ「外」を意識して、みんながみんなっぽくないんですよ。このイラストの山根慶丈さんにしても、デザイナーの岩屋民穂さんに関しても、みんなちょっと自分よりも「ちょっと前」に出てるんです。だから、このチアガールもちょっとがんばったものなんです。僕が本当に好きな絵もジャケットになっているのとはちがう。展覧会とかで出している、もうちょっとヴィヴィッドな色使いの絵だったりするんですけど、すべてはそこへの導入として存在しているので……。
でも、アートワークに関しては一任しているところがあるので、絶対に自分の好きな絵を描いてもらおうというのはないです。この人の絵は……なんで好きなんですかね。絵が好きなのもあるんですけど、同い年で、“水星”のときからやってくれていることも、もうひとつの大事なことというか。女版tofubeatsと言われたコミュ力のなさ(笑)。いまはぜんぜん明るいんですけどね。だからいまでもそういうひとたちといっしょにやるというのを、モチヴェーションとして持っておきたいというか。

ポジティヴっていうキーワードは、デザイナーさんとの会話の中から出てきたんでしたっけ?

TB:そうですね、絵を描く前からポジティヴって言葉はあったので、前進しているスポーツだけ描いてくださいと。

スポーツっていう指示はあったんですね。

TB:それはアート・ディレクターの方からあって、僕は何も言ってませんでした。僕はこの子が昔描いていたカヌーの絵がすごく好きだったので、僕からは「アングルを変えてヨットの絵を書いてください」と言っただけでした。どこで使ってもいいんで、ひとつ水ものを下さいと。僕がお願いしたのはそれだけです。

ポジティヴの表出をスポーツでというのはストレートですね。

TB:そうなんですよ。だから皮肉屋が集まっているのに、みんなマジメにやるっていう。あとPVもひねくれたやつの代名詞みたいなスケブリさんが監督だったんですけど、それがあんなヴィヴィッドな色使いの映像を撮るなんて……っていう感慨も。そういうものの積み重ねで、作っているほうは全員おもしろかったんですよ。らしくないものができたねって意味で。

野田:あんまりトーフビーツが汗をかいて走るなんてイメージはないもんね。

TB:いちおうバレー・ボールをやってるんですけどね。

これはハイスクールな感じですよね。

TB:そうですね(笑)。スポ―ツもいちおう白人がやるやつをやっているんですけど。

野田:嫌味なほど見せつけてるよね(笑)。何か意図なのかなと思って。

TB:そういうもんだと思いますよ。「俺たち文化系が思うポジティヴってこんなもんだろ?」みたいな。「マジョリティはこんなのが好きだろ?」みたいな(笑)。願望なのかもしれないですけどね。

だったとしても、やみくもに「頑張ろうぜ!」と言われるのとはちがったメッセージを受け取りますけどね。あと、いちおうトーフさん的にもひとつの区切りになるリリースのタイトルとして『POSITIVE』なわけなので、ここはどうしても何か意味を見たくなるところでもあります。


僕の場合は舞台っぽいのが好きっていうのがあるんで。(中略)「劇っぽい曲」「劇っぽいアルバム」という意味ではなくて、システムとして、みんなが立ちまわっているのがいいみたいな。

TB:本当は一点だけディレクションしたところがあって、もともとはこの女の子の足が太かったんで、そこだけ細くしてもらったんですよ。本当に注文をつけたのはそれだけですね。チアをやっているひとは実際は足が太いんですよ。だけどそこを細くしてほしかっただけです。

野田:それを考えると、本当にロマンチストだよね。

フィクション性が高いというか。

TB:トラック・メイカーたちと、よく、「曲を作るときにどういうイメージで作るか」っていう話になるんですよ。seihoさんは静物が好きなんですよね。彫刻とか。最近だったら生花をやったりとか。僕の場合は舞台っぽいのが好きっていうのがあるんで。さっき言ったロマンチストじゃないですけけど、舞台の上に上げてパッケージするみたいな。そうやってアルバムができるのが理想ですかね。「劇っぽい曲」「劇っぽいアルバム」という意味ではなくて、システムとして、みんなが立ちまわっているのがいいみたいな。

ポジティヴなイメージを打ち出すことへの、否定的な気分っていうのも世間にはあるじゃないですか。でもトーフが言えば「ポジティヴって言っていいんだ」って、世間の空気に色を差すことができる。ただ、「未来には期待したいし」の「したいし」っていう微妙なところに躊躇みたいなものもあるのかなとは感じるんですが。

TB:まぁ、期待してないんですけどね。空気を引っ張れるかどうかは売り上げ次第ですが(笑)。どうなるんだろうなって感じです。

それこそSEALDsが“水星”を使ったのがリアルタイムじゃないのと同じように、何がどう影響してくるかわからないじゃないですか。

TB:わからないですね。アップル・ミュージックの動画に出たりとか。

野田:tofubeatsのアドバンテージって、どんなアウトプットにも対応できているところかなと思うんだよね。〈マルチネ〉って背景があるのに、すごく現代的なセンスもあるわけだからさ。だからそこはすごく強みだと思うんですよ。ブルートゥースで飛ばして聴いているやつにも、昔ながらの聴き方をしているやつにも対応しようとしているわけだから。

TB:そもそも聴くひとの年齢層を広げることが、メジャーに属することのメリットですからね。

野田:tofubeatsの最近の活動ですごく驚いたのが、KOHHの『YELLOW T△PE 3』に入ったことなんだよね。

TB:あれはびっくりしました。チェックされてるんだ、って。僕にとってすごく自信になりました。あの曲(“Drum Machine(Freestyl)”)は〈マルチネ〉が「社員旅行」とかいって沖縄に旅行に行ったことに腹を立てて作った曲なんですよ。

野田:あの曲もすごくよかったと思うよ。だってANARCHYとか般若とかさ、ゴリゴリなヒップホップのひとたちのなかにtofubeatsがいるのがすごいんだよね。

TB:まだ会ったことはないんですよね。ただ、あれがパロディだったことを理解してもらっていた感じがあって──「面白半分でやってんな、こいつ」みたいな(笑)。あれがウケたことが自分自身とてもおもしろかったし、すごい身体感覚だなと思いました。

野田:俺は、tofubeatsはKOHHに参加したりすることで自分のバランスを取っているのかなと思ったんだけど、自分から参加したわけじゃないんだね。

TB:勝手に選んでくれた、という。あの曲を作ったこと自体は自分なりのバランスかもしれませんけど、KOHHがやってくれたことによって、自分のなかで成仏した部分があったというか。そういうのを褒めてもらう機会も減っているわけで、やれる機会も少ないんですよね。あとは大っぴらにできなくなっているような曲もあるんで、別名義とかであっても、ああやってもらえると個人的には成仏感が出るというか。ああいうことがあるのでどっちも充実させたいと思います。

野田:だから、tofubeatsはただ単にこのアルバムみたいなことをやっているわけじゃないんだね。もちろんこの作品は今年のアウトプットにおける、ひとつのピースだけど。

アップル・ミュージックの看板の画像に、インスタグラムで初めてパラ・ワンが「いいね!」してくれたんですよ。

TB:われわれは『POSITIVE』を出しただけではなく、更新もしようとしているわけです。そうなると1年で2枚リリースなんですよ。だからあと2年間は……(笑)。それこそ電気グルーヴ状態に突入していくと。3枚までいくとあの感じになってくるわけですから。だから、急にハードテクノとか作るかもしれないですよ(笑)。

野田:電気の『J-POP』(2008)を越えるナンセンスなアルバムを作ってほしいけどね。

TB:あれを作ったのは40歳くらいになってからでしょう(笑)? 『J-POP』までいくと、いちど休止してからのやつじゃないですか。あそこまで行きたいですけどね。ただ、僕ひとりっていうところが、電気グルーヴ的な高さへ届かせるにはなかなか……。

野田:たしかにそうだよね。

TB:リリー・フランキーと同じメガネ、ピエール瀧と同じシャツを着ても、『凶悪』にはなれないように(笑)。趣味どんかぶりやん、みたいなことに気づいてびっくりしましたけどね。

(一同笑)

やり尽くしてないこともありますよね。

TB:まだまだ行けるんです。あと、これは最近言われるんですけど、27歳説というのを先輩から聞いたんです。小室さんとかも27歳でやっとオリコンのベスト100に入ったっていう。テイ・トウワさんも25歳デビューで、27歳でDeee-Liteの“グルーヴ・イズ・イン・ザ・ハート”ですから、27歳までは続けるといいよっていろんなひとに言われるんですよ。それに27歳のときにインディでやっているかメジャーでやっているかだったら、メジャーの方がレアかなと思って。いまの計算でいくときっと27のころもメジャーにいられそうだし、縁起をかつぐ意味でも(笑)、そこまでやってみようかなとは思います。一人でやっていると見えないことも多いですし。僕はただでさえ先輩の言うことを素直に受け止める人間ではないんですけど、でもそれがテイさんと小室さんなら話がちがう。こういうのはメジャーに来たおかげですよね。
あと、余談ですけど、アップル・ミュージックの看板の画像に、インスタグラムで初めてパラ・ワンが「いいね!」してくれたんですよ。ほんと、あの記事ありがとうございました(「Tofubeats × Para One──これから最高と呼ばれる音楽」ele-king vol.13収録、2014年にウェブにて再掲載)。ちょうどこれからメジャーに行くってタイミングで、「じゃあ、がんばってね」ってことで終わったじゃないですか。なんか、そっちのオチもひとつついたというか。めっちゃうれしかったですね!

Vampillia feat Jun Togawa - ele-king

 近年ますますめざましい活躍をしているVampillia(ヴァンピリア)が、戸川純フィーチャリングの曲“Lilac”のMVを公開。ちなみに同曲収録のアルバム『The Divine Move 』(2014年)も、2016年初頭にアメリカでのリリースが決定。

 MVは、Vampilliaのツジコノリコとの“Endless Summer 2014”、BiSとの“Mirror Mirror bombs BiS”に引き続き、 ONIONSKINが担当。LPは再レコーディングされ、再ミックス仕様のスペシャル盤になるそうだ。
 ご予約はこちらまで : info@vampillia.com

 また、10月16日梅田クアトロで開催される“いいにおいのするイベントの10周年”で、Vampillia×戸川純がライヴを行う。

 こちらは現在チケット予約受付中。

 ■いいにおいのするイベントの10周年
 10/16(fri) @梅田CLUB QUATTRO
 OPEN 18:00 START 18:30
 CHARGE:ADV \3500 DOOR. \4000(+1drink)
 ※前売りは10周年記念CD付きプライス
 Vampillia /
 Vampillia×戸川純 /
 world’s end girlfriend & POLTERGEIST ensemble /
 MASONNA /
 O.A. : VMO

プレイガイド発売中:Pコード【276-825】 Lコード【59041】 e+

メール予約:info@iinioi.com へ、件名「10/16予約」本文に「カタカナ氏名」 と「枚数」
詳細:https://iinioi.com/10s-event


※本記事は、昨日(2015年10月1日)情報解禁時刻前に誤って掲載されてしまいました。
ご関係のみなさまと読者さまに心よりお詫び申し上げます。

Various - ele-king

 中国はたしかに脅威である。安倍晋三が何をしにブラジルやコロンビアなど何カ国も中南米を飛び回っていたかは不明だけれど(自分では「懸命に働いてきた」とコメントしていた)、同時期に習近平はリオ・デ・ジャネイロから太平洋側のペルーまで南米横断鉄道の建設を軌道に乗せてきた。これが完成すればアメリカの影響下にあるパナマ運河は一気に力を失うだろうし、ラテン・アメリカ内のダイナミズムも急激に変化していくに違いない。大西洋を挟んでスペインと結びついていたアルゼンチンの映画や音楽も、もしかしたら中国資本との連携を強めていくかもしれないし、映画産業がハリウッド以前の状態に戻ってしまうことも予想しやすい。すでにして現在のハリウッドはヒスパニック系を抜きにしては語れない形勢になってきたわけだし。

 米議会でキャロル・キングに心を撃たれたとアピールしていた安倍晋三は、そして、当然のことながらベネズエラのタンボールやキューバのクバトン、そして、ハイチのラバダユ(Raboday)といった最新のダンス・ミュージックを南米から持ち帰ってくれるわけでもない。文化的にも役立たず極まりない。岸信介は1959年に初めて中南米を訪問した日本の首相だったので、祖父のマネをしたかったというだけだったのだろうか。ちなみに岸信介は戦後、獄中で『レ・ミゼラブル』を翻訳している。どうせやるなら、監獄に入って、アリソン・キャッスル『Saturday Night Live: The Book』でも訳してもらいたいものである(僕が読みたいので)。

 〈ストラット〉傘下に設立された〈タイガーズ・ミルク〉はこれまでペルーのヴィンテージ音源を発掘してきた。それが、ここへ来て、いきなりトロピカル・ベースとも称されるペルー産のディジタル・クンビアを1枚にコンパイル。コロンビアが起源とされるクンビアは、近年、アルゼンチンに飛び火してディジタル・クンビアとしても知られるようになり、さらにこれがペルーにも浸透して、まったく表情を変えていたことがよくわかる。エッジを立てながらもそれこそチル・アウトといいたくなるほど全体に穏やかで、アルゼンチンよりはコロンビアからの巻き返しだったメリディアン・ブラザースに通じる部分も多い。ブラジルのファベーラやヴェネズエラのチャンガ・トゥキが激しくなる一方だったことを思えば、太平洋側はチリのヴィラロボスやルチアーノといい、概して平穏なム-ドを好むのかなーと、知りもしないのにいい加減なことを考えてしまう(つまり、ジャケット・デザインはかなり間違っている)。

 全16曲中、トリビリン・サウンド(Tribilin Sound)が4曲を占めているので、この人が中心人物なのだろうか。アルヴァロ・エルネストの名義でディープ・ハウスやミニマルのリリースを重ねてきた人なので、ともすればここへ来てルーツを意識したということになるのかもしれない。聞かせ方は心得ているし、洗練された作風にはなるほど連続性が強く感じられる(トリビリンというのはディズニー・キャラ、グーフィーのことらしい(?))。ペルーの俗語で並外れたものや不快なものを意味するアニマル・チュキ(Animal Chuki)はディジタル・クンビアをプッシュしてきたZZKともすでに繋がりがあり、ここでは重層的なシンセサイザーでオープニングを飾っている。リミックスをカウントすると、デルタトロンも3曲で存在感を示し、ティト・プエンテをソローで再生しているようなカクルーナやMGMTがクンビアに手を出したようなケチュアボーイなどモダンとルーツはかなり入れ乱れている。

*****

 南米に生息するさまざまな鳥をテーマにしたコンピレイションも少し前につくられている。細かく書き写してもしょうがないけれど、11種類の鳥をテーマにチャンチャ・ヴィア・シルクウィートやトレモール、あるいはシロサンプルズといった、この手ではすでに人気のプロデューサーたちと、あまり聞いたことがないマタンツァやバリオ・リンドといったエレクトロニック系からのエントリーがこれもまた穏やかなチル・アウト・ミュージックをさまざまに展開している(オープニングは『アンビエント・ディフィニティヴ』でも大きく取り上げたコロンビアのルラクルーザ)。曲調もディジタル・クンビアや鳥の声を使い倒したミュージック・コンクレート歌謡、あるいはラテン・ハウスにフォークトロニカと、地味に豊富。正直いって全曲、素晴らしい仕上がり。南米のプロデューサーが全体にいま、非常に高い創作モードのなかにいることが実感できる。

 じつは、この2種類の編集盤はどちらにもデング・デング・デング(Dengue Dengue Dengue)が曲を提供していたので僕は興味を持ったのでした。3年前にリリースされたデビュー・アルバムが今年になってアナログ化されたペルーの「トロピカル・ストーム・オブ・エレクトロニック・サイケデリア」に関しては、長くなってきたのでまた機会があれば。

第六回:「身に纏う音楽」 - ele-king

 最近はまっている携帯型スピーカーがある。LuxSoundというスピーカーで、充電式ワイヤレスで、左右分離しているスピーカー(https://nuzeestyle.jp/products/detail.php?product_id=4)。音質が特別良いわけではない(そこまで悪くもなく、価格相応)し、結構不具合もあって開発段階であることは否めない。だけど、旅先や野外で、音楽を聞いて過ごしたい人には、このスピーカーはオススメできると思う。

 ワイヤレスなので、屋外でも屋内でもLとRのスピーカーを、その空間に合わせて、自分の好きな場所に、好きな距離で好きな音量で配置ができる。そして、何より僕が面白いと思っているのは、このスピーカーが洋服のポケットに収まる。ということだ。

 胸ポケにi-podを入れて音楽を再生すると、両サイドのポケットからはずっと音楽が流れ、やろうと思えば1日中、そこから流れる音楽に包み込まれて過ごすことができる。

 もちろん、このスピーカーは他人を不快にする可能性がある。その危険性はどんな場所でも、音が発生する場である限り、全ての時間に孕まれている。けれど逆に言えば、このスピーカーで流すことのできる、他者を妨害しない音楽あるいは音を「アンビエント・ミュージック」と呼ぶのではないかと思うのだ。だから僕は、「アンビエント・ミュージシャン」が「ステージに立つ」ということには、どうも抵抗がある(ちなみに僕や友人がライヴで演奏している音楽はアンビエント・ミュージックではないし、僕自身が作ってきた音楽も、アンビエント・ミュージックと名乗るには、まだまだ随分遠いところにあると思っている)。本来、僕が考えるアンビエント・ミュージシャンは、存在として無であるべきだと思う。少なくとも僕自身が日常生活のなかで身に纏う音楽は、無のような存在であってほしい。何もない静かな無のなかにさす、ほんのり浮かぶ、ほのかな灯りであってほしい。

 例えば、あるコミュニティーのなかで、そこに住む人の多くがこのスピカーを身につけて、その日に自分の世界を包む音を選べるようになったとしたら。それは服とかマフラーとか靴とかに、音の発生する機械が着いているのかもしれない。するとある人とある人がすれ違ったり、あるいは話し合ったりしているときに、その2人の音楽が絶妙なバランスで混ざったり、混ざらなかったりする。3人とか4人とか集まったときに、それぞれの音楽や音が、うまく調和したりしたら、それは分かり合える親友と、語らい合っているときのような特別な喜びを覚えるだろう。

 もちろん、問題はそこで流れる音楽が、「録音物」という過去の時間軸である。という問題はある。本来であれば、それがそのときにその人から生まれた音楽であるとしたら、それは録音物よりも、どんなに素晴らしい音楽がそこに発生しうることになるだろうか。と想像するだけでも楽しい。

 でも、考えてみれば、音楽でなくても、自分自身のそういった何かしらの周波数のようなものは、音楽以外の情報として、つねに発信されている。ファッションにしても、言葉にしても、表情や「所作」ひとつひとつにしても。そういう周波数が、合うときもあれば合わないときもある。それは音楽のセッションをしているときと、同じことなんじゃないかと思う。どんなに仲が良い友だちでも、長い生涯を考えてみれば、その周波数が合う時期も、合わない時期もある。それは悲しむべきことではないし、またいつか、来世かもしれないけど、それはそれでいいじゃないか。と思える。

 それにしてもすごい時代になったもんだ。

 僕は、人類の歴史、こと身体の歴史というのは、生物学的なある方向性を持って動いていると思っている。そういうなかで音楽が生まれて、それが「録音された」ということは、音楽史にとって、とてつもない出来事だと思う。とくに「アンビエント・ミュージック」について考えるときは、ひとしお大事だ。

 アンビエント・ミュージックというのは、環境として在れる音楽で、他者を妨害することなく空間を変えることのできる音楽。だと僕は思っている。そういった音楽が現代に、ある程度の生物学的な方向性を持っているものだとしよう。そうするといま、アンビエント・ミュージックというものが、都会のなかから生まれて来たということの意味があるのではないか。というのを前々々回までに書いた。

 そう考えると、「アンビエント・ミュージック」というのは、「演奏者がそこにいない」ということが、非常に重要な要素になる音楽だと思う。だから、「録音する」というテクノロジーが生まれなければ、「アンビエント・ミュージック」という概念も音楽も生まれなかった。僕はサティが家具の音楽の構想を実現できなかった理由には、そこに演奏者がいたからである。という理由が一番大きいんじゃないかと思っている。

 それがね、今度はポケットから音楽を1日中流すことすら可能にしたテクノロジーっていうのも、それはすごいことだなぁ。と思うのです。これから、そういうテクノロジーの発達とともに人間と音楽の存在し合い方も変わってくるだろうし、変わるのが当たり前なのです。


Dâm-Funk - ele-king

 2000年代後半から現在まで続く80sサウンド・リヴァイヴァルの最大の貢献者であるデイム・ファンクことデイモン・ギャリック・リディック。80sサウンドにもいろいろあるが、彼の場合はモダン・ファンクやシンセ・ブギーで、自身の出生地であるUSカリフォルニア産のサウンド(LAの〈ソーラー・レコード〉などがその典型)がベースとなっている。2009年に〈ストーンズ・スロー〉から『トゥイーチゾーン(Toeachizown)』を発表し、一躍その名を轟かせた彼だが、それ以来となるニュー・アルバム『インヴァイト・ザ・ライト』が発表された。じつに6年ぶりの新作だが、その間もデイム・ファンクにとっては憧れのヒーロー格にあたるスティーヴ・アーリントン(元スレイヴ)とのコラボ・アルバム『ハイアー』(2013年)を発表し、スヌープ・ドッグの変名であるスヌープジラと組んだ7デイズ・オブ・ファンク、コンピューター・ジェイ、Jワンと組んだマスター・ブラズターでの活動や、ほかにもシングルやEP、リミックス、ミックステープ類や過去の作品集などをいろいろと出していたので、制作作業から遠ざかっていたどころか、かなり精力的に動いていた。

 こうした作品でも一貫してモダン・ファンクや、それに隣接するGファンク系ヒップホップを聴かせてきたのだが、とくに近年はダフト・パンクやファレルによってディスコ・リヴァイヴァルに火が点き、今年に入ってからもメイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンによるタキシードがモロにシンセ・ブギー路線のアルバムを出したりと、改めてデイム・ファンクの功績を再検証する機会が増えてきたように思う。そうしたタイミングもあって、発売前から大きな話題を呼んでいたアルバムだ。〈ソーラー・レコード〉のレオン・シルヴァーズ3世(ファミリー・グループのシルヴァーズのメンバー)がプロデュースした『トゥイーチゾーン』は、ほぼ一人での宅録に近い内容だったが、『インヴァイト・ザ・ライト』はとにかくたくさんのゲスト参加があり、予算も内容も格段にスケール・アップしている。それはすなわち、この6年でデイム・ファンクの評価がいかに高まったかを物語る。そのゲストをあげると、レオン・シルヴァーズ3世と4世の親子、オハイオ・プレイヤーズのジュニー・モリソン、ジョディ・ワトリー(彼女も〈ソーラー〉を代表するグループのシャラマー出身)、そしてスヌープ・ドッグ、コンピューター・ジェイ、ナイト・ジュエルなど過去にコラボをしてきた面々、さらにQティップ、アリエル・ピンク、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフレアと多士済々だ。西海岸勢が占める中で東海岸を代表するMCであるQティップとのコラボ、異種顔合わせの最たる例であるアリエル・ピンクやフレアとのコラボなど、実に興味深いセッションが行われている。

 アルバムの楽曲を見ると、フューチャリスティックな“フローティング・オン・エア”、レフトフィールドなエレクトロ“ザ・ハント&マーダー・オブ・ルシファー”のようにさらに進化した姿を見せてくれる曲がありつつも、基本は『トゥイーチゾーン』や『ハイアー』のラインを受け継ぎ、シンセ・ベースによる重低音が貫くモダン・ファンクは相変わらずだ。というか、彼にはこれしかないし、またリスナーもそれ以外のものを望んではいない。古いとか新しいとか、時流や流行などいっさい関係ないし、ゲストに誰が来ようが日和ることもない。ここまで自身の道を貫けるのは潔いし、だからこそ説得力のある音だ。そうした中、ファンキーなサウンドももちろん素晴らしいが、彼の真骨頂は“サムホェア、サムハウ”で聴けるようなメロウなシンセ・ブギーにあると思う。これこそ西海岸の音だし、80sの匂いも残しつつ、いまの時代にもしっかりとフィットする普遍性を備えている。本作はアップにしろスローにしろ、そうしたメロウ・サイドがより洗練された印象で、“O.B.E.”には初期のラリー・ハードが持っていた美的センスと同種のものを感じさせる。そして、そのタイトルどおりスキャットを交えた“スキャッティン”は最高のAORではないだろうか。


TREKKIE TRAX - ele-king

 東京を拠点に活動する新進気鋭のDJチーム、トレッキー・トラックスが、イギリスのラジオ局リンスFMに出演する。
 リンスFMは海賊放送に端を発する、イギリスのアンダーグラウンド・シーンにおけるシンボルのひとつだ。現在も、ベンUFOやワンマンといった人気DJのたちがレギュラー番組を受け持っており、ハウスからグライムやジャングルに至る、様々なジャンルの最新ミックスが毎日披露されている。
 今回トレッキー・トラックスが出演するのは、スコットランドの音楽都市、グラスゴーを拠点に活動するレ―ベル〈ラッキーミー〉がリンスFM内に持つ番組だ。同レーベルからはグラスゴー出身のハドソン・モホークやラスティもリリースをしており、UKの北部から大きな影響を与えてきた。
 放送時間は明日10月1日のイギリス時間の23:00(日本では2日の朝7時から)。番組はリンスFMのホームページから視聴が可能で、後日ポッドキャストもアップされる予定。

Rinse FM
https://rinse.fm/

LuckyMe
https://thisisluckyme.com/

TREKKIE TRAX
TREKKIE TRAXは2012年に日本の若手DJが中心となり発足したインターネッ・トレーベル/クリエイター集団である。これまでのテンプレートに囚われない様々な音楽を世界に向けて発信することを指針とし、全国各地で活動しているトラックメーカーとともに楽曲リリースを行っている。主要メンバーは東京を中心にDJ活動を行っており、ageHa、WOMB、UNIT、asiaなどの日本を代表するクラブで日夜プレイをしている。TREKKIE TRAX CREWとしてはTOYOTA ROCK FESTIVAL 2013を皮切りに日本各地へ遠征を開始。FEED ME、Alizzz、Bobby Tank、Obey City、Elijah&Skilliamとの共演やHYPER DUBの10周年スペシャル・レーベル・ショウケースへの出演も果たす。2014年2月には代官山UNITで盟友 LEF!!! CREW!!!、Hyper Juice とサウンドクラッシュを行う。会場のみならず、後にyoutube上にupされた動画から多くの日本のユースを熱狂の渦へ巻き込んだ。TREKKIE TRAXは2014年末までフリーダウンロードの形式でのリリースが主であったが、2015年より世界最大級の音楽プラットフォームであるiTunes Store・Beatportでの音楽配信、さらにレコードやCDのフィジカルでのニュー・リリース・ラインを開始。さらにリリースと同時に全国ツアー、海外でのアクトを敢行するなど多くの人々に日本の音楽を届けるため、活動の幅を大きく広げている。また国内だけでなく、フィンランドの名門レーベルTOP BILLINとのコラボレーション企画第一弾のコンピレーション「Trekkie Trax Japan Vol.1」が2014年4月にリリース。さらに楽曲はSkrillex主宰レーベルOWSLAの運営するブログ"Nest HQ"、世界最大のEDMポータルサイトである"EDM.com"や"Do Androids Dance"、大手ネットマガジン"Pichfork"や"Thump"で取り上げられ、「Rinse.FM」「BBC Radio 1Xtra」などのラジオ局もプレイされるなど、DJ、楽曲共に国内外で高い評価を得ている。活動はラジオ・パーソナリティまで幅をのばし、m-floのTaku Takahashiが局長を務める日本最大のクラブ・ミュージック・インターネット・ラジオ「Block.fm」にてクルーのSeimei & Taimei、andrewによる「Rewind!!!」が2013年12月よりスタートした。その活躍は今後の日本のユースシーンを牽引するいまもっとも注目すべきレーベル、DJ集団と言える。
https://www.trekkie-trax.com/

MALA & COKI -Digital Mystikz - ele-king

東京においてドラムンベース、ダブステップ、グライムで活躍する先鋭的なアーティストを紹介し続けてきたパーティ、DBSが今年で19周年を迎える。今回、モントルー・ジャズ・フェスティヴァルの一貫として行われるイベントに、そのアニヴァーサリーにふさわしいディジタル・ミスティックズことマーラ&コーキが出演する。
ふたりがロンドンで開催しているパーティであるdmzも、今年で10周年を迎えた。チケットと毎年恒例のTシャツもソールド・アウトになってしまうほど、その人気は健在だ。先日マーラの〈ディープ・メディ〉からリリースされたカーン、コモド、ガンツらによる作品を聴けばわかるとおり、ダブステップはいまだにその音を更新し続けている。ディジタル・ミスティックズのふたりのステージでは、毎度未発表のダブ・プレートがプレイされるので、シーンの現在と未来を今回も堪能できることは間違いない。
日本からは、マーラの盟友であり、孤高の重低音をクリエイトし続ける〈バック・トゥ・チル〉のゴス・トラッド。先日、所属レーベル〈グルーズ〉からレコードをリリースしたばかりのヘルクトラム。さらにアフリカ、マリの伝統楽器コラ奏者のママドゥ・ドゥーンビアらが出演する。
 

Montreux Jazz Festival Japan 2015
DBS 19th Anniversary
MALA & COKI -Digital Mystikz

10.11 (SUN) @ UNIT
open/start 23:30
adv.3,300yen / door 3,800yen

出演
UNIT:
MALA & COKI -Digital Mystikz
wuth.
GOTH-TRAD
MAMADOU DOUMBIA(Live)
HELKTRAM

Saloon:
DJ INZA
SIVARIDER
DJ DON
TETSUJI TANAKA
SHINTARO

info. 03.5459.8630 UNIT
Ticket outlets:NOW ON SALE
PIA (0570-02-9999/P-code: 274-844)、 LAWSON (L-code: 73842)
e+ (UNIT携帯サイトから購入できます)
clubberia/https://www.clubberia.com/store/
渋谷/disk union CLUB MUSIC SHOP (3476-2627)、TECHNIQUE(5458-4143)、GANBAN(3477-5701)
代官山/UNIT (5459-8630)
原宿/GLOCAL RECORDS(090-3807-2073)
下北沢/DISC SHOP ZERO (5432-6129)、JET SET TOKYO (5452-2262)、disk union CLUB MUSIC SHOP(5738-2971)
新宿/disk union CLUB MUSIC SHOP (5919-2422)、Dub Store Record Mart (3364-5251)
吉祥寺/Jar-Beat Record (0422-42-4877)、disk union (0422-20-8062)
町田/disk union (042-720-7240)
千葉/disk union (043-224-6372)

UNIT
Za HOUSE BLD. 1-34-17 EBISU-NISHI, SHIBUYA-KU, TOKYO
tel.03-5459-8630
www.unit-tokyo.com

出演者情報
MALA & COKI(DIGITAL MYSTIKZ)
ダブステップのパイオニア、DIGITAL MYSTIKZはサウス・ロンドン出身のMALAとCOKIの2人組。ジャングル/ドラム&ベース、ダブ/ルーツ・レゲエ、UKガラージ等の影響下に育った彼らは、独自の重低音ビーツを生み出すべく制作を始め、アンダーグラウンドから胎動したダブステップ・シーンの中核となる。
'03年にBig Apple Recordsから"Pathways EP"をリリース、'04年には盟友のLOEFAHを交え自分達のレーベル、DMZを旗揚げ、本格的なリリースを展開していく。そして名門Rephlexのコンピレーション『GRIME 2』にフィーチャーされ、脚光を浴びる。また'05年からDMZのクラブナイトを開催、ブリクストン、リーズでのレギュラーで着実に支持者を増やし、ヨーロッパ各国やアメリカにも波及する。
'06年にはSoul Jazzからの2枚のシングル・リリースでダブステップとDIGITAL MYSTIKZ の知名度を一気に高め、DMZの作品もロングセラーを続ける。また同年にMALAは個人レーベル、Deep Medi Musikを設立、以来自作の他にもGOTH-TRAD、KROMESTAR、SKREAM、SILKIE、CALIBRE、PINCHらの作品を続々と送り出し、シーンの最前線に立つ。一方のCOKIは'07年にBENGAと共作した"Night"をTempaから発表、キャッチーな同曲は'08年に爆発的ヒットとなり、ダブステップの一般的普及に大きく貢献する。
そして'10年にはDIGITAL MYSTIKZ 名義によるMALAの1st.アルバム『RETURN II SPACE』がアナログ3枚組でリリース、壮大なスケールでMALAのスピリチュアルな音宇宙を明示する。そしてCOKIも同年末、やはりDIGITAL MYSTIKZ 名義でアルバム『URBAN ETHICS』を発表(P-VINEより日本盤発売)、血肉となるレゲエへの愛情と野性味溢れる独自のサウンドを披露する。その後もDMZから"Don't Get It Twistes"、Tempaから"Boomba"等、コンスタントに良質なリリースを重ねつつ、11年から謎のホワイト・レーベルのAWDで著名アーティストのリワークを発表、そして12年、遂に自己のレーベル、Don't Get It Twistedを立ち上げ、"Bob's Pillow/Spooky"を発表。
MALAはGILLESの発案で'11年、彼と一緒にキューバを訪れる。そしてMALAは現地の音楽家とセッションを重ね、持ち帰った膨大なサンプル音源を再構築し、'12年9月、GILLESのBrownswoodからアルバム『MALA IN CUBA』を発表(Beatinkから日本盤発売)、キューバのルーツ・ミュージックとMALAのエクスペリメンタルなサウンドが融合し、ワールド・ミュージック/エレクトロニック・ミュージックを革新する。
"Come meditate on bass weight!"

GOTH-TRAD (deep-medi,BTC)
ミキシングを自在に操り、様々なアプローチで ダンスミュージックを生み出すサウンド・オ リジネイター。03年に1st.アルバム『GOTH-TRAD』を発表。国内、ヨーロッパを中心に海外ツアーを始める。05年には 2nd.アルバム『THE INVERTED PERSPECTIVE』をリリース。また同年"Mad Rave"と称した新たなダンスミュージックへのアプローチを打ち出し、3rd.アルバム『MAD RAVER'S DANCE FLOOR』を発表。06年には自身のパーティー「Back To Chill」を開始する。『MAD RAVER'S~』収録曲"Back To Chill"が本場ロンドンの DUBSTEP シーンで話題となり、07年にUKのレーベル、SKUD BEATから『Back To Chill EP』、MALAが主宰するDEEP MEDi MUSIKから"Cut End/Flags"をリリース。12年2月、DEEP MEDiから待望のニューアルバム『NEW EPOCH』を発表、斬新かつルーツに根差した音楽性に世界が驚愕し、精力的なツアーで各地を席巻している。
https://www.gothtrad.com/
https://www.facebook.com/gothtrad

Mamadou Doumbia
マリ共和国クリコロ生まれ。11才よりギターを始め、高校時代より既にレコーディングをするなど学生ミュージシャンとしてキャりアをつむ。緻密で鋭い切れのギターワークが持ち味。音楽大国マリのビックバンド、バマサマ、レイル、両バンドのメンバーとして早くから活躍する。1982年、マリの国営バンドレール・バンドのリード・ギタリストとして抜擢されると、同バンドのリード・シンガーサリフ・ケイタと意気投合。1984年にサリフ・ケイタがパリに拠点を移すと、その2年後の1986年に渡仏。サリフ・ケイタを始め、さまざまなミュージシャンのバックバンドを精力的に務める。1990年にサリフ・ケイタのバックバンドの一員として初来日。ワールドミュージックブームと日本の音楽情報の流通形態に感銘を受け、翌1991年から日本に拠点に移す。1993年にマンディンカを結成。翌1994年からアフリカの民族楽器コラを独学で習得し、それをバンドサウンドのひとつとして取り入れている。1997年1月にバンド名をMAMADOU DOUMBIA with MANDINKAと改め、セカンドアルバム「YAFA」をリリースし、イギリスBBCの年間ベストアルバムに選ばれる。コラを片手に講演活動するなど、多方面で精力的に活動している。


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