「Nothing」と一致するもの

NGLY - ele-king

 河村祐介にL.I.E.S.を任せたのが間違いだった。今年の始めにエレキング・ブックスから発刊された『クラブ/インディ レーベル・ガイドブック』で河村祐介はなかなかいい仕事をしている。どのレーベルを取り上げるかという段階から参考になる意見をたくさん聞かせてくれたので、多くはそのまま丸投げしてしまったし、風邪を引いたとウソをついて会社を休んで残りの原稿も一気に書いてくれる……つもりが本当に風邪を引いた時はアホかと思ったけれど、WorkshopやPrologueなど作品のチョイスは総じて素晴らしかった。Further Recordsなどは実態がよくわかっていなくて僕も勉強になった。そうか、そんなレーベル・コンセプトがあったのか。断片的にしか分かっていなかった。いや、さすがである。河村祐介に頼んで本当によかった。まったくもって「ありよりのあり」だった。
 だがしかし。L.I.E.S.で2ページも取ったというのにNGLYはピック・アップされていなかった。送られてきた原稿を見て「え!」と思ったが、もはや差し替える時間はない。サブ・レーベルのRussian Torrent Versionsにはいくらなんでも入っているだろうと思ったのに、こっちにもリスティングされていなかった。ガン無視である。NGLYを入れないとは……。それはこのような業界で働く者としてどうなんだろうか。「Speechless Tape」がどれだけの注目を集めたと思っているのか。もはや形骸と化したインダストリアル・ミュージックをディスコ化し、ファッションとして再生させた野心作ではなかったか。三浦瑠璃に絶望している人のためのエレクトロ入門ではなかったか。それにしてもRussian Torrent Versionsとはフザけたレーベル名だよな~。

 そして、ついにアルゼンチンからシドニー・ライリーによるファースト・アルバムである。このところコロンビアのサノ(Sano)、ロシアのフィリップ・ゴルバチョフ、あるいはファクトリー・フロアやゴールデン・ティーチャーといったイギリス勢にも脈々と流れているボディ・ミュージック・リヴァイヴァルの総仕上げである。パウウェルがポスト・パンクをユーモアとエレクトロで刷新すれば、NGLYはニュー・ビートをファンクショナリティと最近のアシッド・エレクトロでアップデートさせたといえばいいだろうか。そう、アシッド・ボディ・ミュージックとでもいうか、ガビ・デルガドーがDAFからデルコムに移り変わる時期に遣り残した官能性をマックスまで引き出し、SMちっくに攻め立てるのである。何かというとクラシックの素養が漏れ出すアルゼンチンの音楽シーンからこんなに退廃的なヴィジョンが噴出してくるとは。ディジタル・クンビアでさえもう少し健康的だったではないか……(ニコラス・ウィンディング・レフンは『ネオン・ディーモン』のサウンドトラックをNGLYに担当させるべきだった)。

 オープニングからスロッビン・グリッスルのディスコ・ヴァージョンに聞こえてしまう。威圧的だけれど重くないビートが次から次へと繰り出され、ドレイクやビヨンセといったメジャー・チャートに慣れきった耳を嘲笑う。単なるドラッグ・ミュージックでしかないというのに、もう、ぜんぜん逆らえません。とくにハットの連打が圧巻。空間処理もハンパない。逃避するならこれぐらいやってくれよという感じ。バカだなー、オレ、いつまで経っても。

 異次元緩和やらアベノミクスにTTP推進とあくまでも豊かさの綱渡りに固執する日本に対し、経済的なデフォルト状態であることを楽しんでいるかのようなアルゼンチン。かつて経済学者のポール・サミュエルソンは、世界は豊かな国と貧しい国、そして日本とアルゼンチンに分類できると語ったことがある。映画を観ていると悪趣味極まりないし、女性に対する抑圧はヒドいのかなとも思うんだけど、アストル・ピアソラ、セバスチャン・エスコフィエ、ファナ・モリーナ、カブサッキ、アレハンドロ・フラノフ、ソーダ・ステレオ、ボーイング、アナ・ヘルダー、ディック・エル・ディマシアド、チャンチャ・ヴィア・スィルクイト……と、音楽は、ほんとに豊かな国なんだよなー。そしてNGLY がこのリストに加わったと。

戸川純ちゃん祭り - ele-king

 おかげさまで『戸川純全歌詞解説集』が大好評の戸川純(リスペクトを親しみを込めて、純ちゃん)ですが、まだまだ続きますよ。
 まずは12月14日、Vampilliaとの共作(セルフカヴァー・アルバム)戸川純 with Vampillia『わたしが鳴こうホトトギス』がVirgin Babylon Recordsよりリリース! 名曲たちが、Vampilliaの演奏でみごとに甦ります。アルバムには、12年振りの新曲となる「わたしが鳴こうホトトギス」も収録。しかもゲストとして同レーベル主宰者のworld's end girlfriendも参加。

戸川純 with Vampillia 「赤い戦車」

 また、急遽、戸川純の秘蔵写真を多数収録した戸川純ミニ写真集も刊行します。 これは、『わたしが鳴こうホトトギス』のTOWER RECORDS特典とレーベル特典として購入者に配布されるもの。これ欲しい!

 そして、12月21日にはソニーから 1982~87年にかけてリリースされた戸川純関連アルバム6タイトル(原盤:アルファミュージック)が最新リマスターで再発。(すべての盤には三田格のライナーノーツが入る!)。ちなみにゲルニカの『ゲルニカ/改造への躍動』(名盤です)は、アルファ発売音源を全て収録した特別拡大版になります。また、全曲ハイレゾ配信音源も同時発売予定。詳しくはこちらも→www.110107.com/jun_togawa35

 そしてまた、来年には戸川純35周年記念LIVEが1/13@東京LIQUIDROOM、1/20@大阪クラブクアトロで開催決定!


 年末〜年始の純ちゃん祭り、乗り遅れないように!

interview with SHOBALERDER ONE - ele-king

 緊急事態発生。君は、スクエアプッシャー率いる4ピース・バンド、ショバリーダー・ワンを覚えているだろうか。2010年にアルバム『d'Demonstrator』をリリースした、身元不明の連中によるあの奇怪な音楽(エレクトロ・ファンク・フュージョン・ロック・ポップ)を……。
 たったいましがた、つまり12月1日の深夜のことだが、バンドからele-king編集部に謎めいた公式インタヴューが届けられた。じつに興味深い内容であり、またじつに貴重な取材だという。以下にその全訳を掲載しよう。もちろんスクエアプッシャーもメンバーのひとりとして参加している。
 と、その前に、同時に届けられた最新トレイラーをご覧いただこう。まさに別惑星のジャズ・フュージョン・ロック・エレクトロニカ。なかなかの演奏だ! そして身体が温まったところで、彼らのインタヴューを楽しんでくれたまえ。



思考を目に見える言語で表現し、それを他の人びとにも判読可能にするというのが、俺たちの手法だ。自分たちの顔を覆い隠すことによって、より遥かに重要なことを明らかにするのが目的なんだよ。

今日はオフィスまでお越しいただき、また私共のインタヴューにお時間を割いていただいてありがとうございます。来年リリースされる新作、とても楽しみにしています。まずはその件から伺いましょうか。新作はどのようなものになりますか?

Strobe Nazard:戦略の変更!

Squarepusher:スクエアプッシャーの曲から選りすぐったものなんだけど、このバンドで演奏するために手を加えて作り直したんだ。

そうでしたね。ということは、規準を設けて作品を選んだと? 今回のセットでどれを取り上げるかは、もう決めているんでしょうか?

Squarepusher:『Hard Normal Daddy』や他の初期作には、4〜5人組のバンドがすごくタイトにやってるときの状況からインスピレーションを得たものがある。だからそれを試してみるのも楽しいんじゃないかと思ったんだよ。

あなたは以前インタヴューで、モダン・カルチャーにおけるノスタルジアやレトロ現象が嫌いだと発言していましたが、これはある意味ノスタルジックなのではないでしょうか?

Squarepusher:昔のアイディアを未来に向けてプレイしているいくつかの断片。いまのフューチャリズム・ボーブには、それくらいが精一杯だね。

えーと、すみません、“ボーブ”(borb)って仰いました? それは何ですか?

Arg Nution:俺たちが別の惑星でプレイするときは、より新しい、しかるべき機材でプレイするんだよ。こんな金属製とか木製のガラクタじゃなくてな。

Squarepusher:おい、木製は別にいいだろ。樹木から作った楽器で間に合わせることのどこがいけないんだ? まあ、歌は自分たちで歌わなきゃならないけど、大体において、現状を成り立たせてきたのはそいつなんだからさ。

ステージ衣装も凄いですよね、皆さんの外見の進化、すごく気に入っています。

Arg Nution:「外見の進化、すごく気に入っています」だってさ。

Company Laser:これは俺たちが家で着ている普段着だよ。ブランド戦略を実践してるわけじゃない。

家でそれを着たまま、料理したりとかテレビを見たりとか、大変じゃありません?

Strobe Nazard:ウチは、こんなクソみたいなイギリス生活とは違うんだよ。

Company Laser:おいおいStrobe、イギリスってのは国であって、生活じゃないぜ。

Strobe Nazard:ほらな、“生”が好きな人間が大勢いるわけだ(笑)

Arg Nution:だが、ここにはあらゆる死が入り込んでいる。俺はかつて生きていた。だがいまは、死んだ樹木で作った楽器を弾かなくてはならないのさ。

なるほど、では、LEDライトを点灯させて画像を表示するマスクで顔を覆ったりというアイディアは?

Squarepusher:思考を目に見える言語で表現し、それを他の人びとにも判読可能にするというのが、俺たちの手法だ。自分たちの顔を覆い隠すことによって、より遥かに重要なことを明らかにするのが目的なんだよ。

Strobe Nazard:目は闘っているぜ。

Squarepusher:ステージ上にいる者と観客がアイコンタクトを取るのは危険だったんだ。ステージ/シーリング・システムの迫真性によって、そこに両者が通じ合える階段が設けられるとしたら、それは危険な前提に繋がる可能性がある。つまり、紛い物や錯覚としての連帯感だ。実際のところボーブ観客席は、残酷なヒエラルキーの悲しい法則が示されている区域なわけだから。

なるほど、分かりました……だとしますと、あなたたちはどうして集まったんですか? 2010年には『D'Demonstrator』というアルバムを発表していますが、これは何だったんでしょうか?

Company Laser:スクエアプッシャーが俺たちを誘ってくれたんだ。俺たちは何千年も前からの知り合いなんだよ。あのときはどんどん悪い方向に進んでいった憶えがある。彼はまるで自分が本当はボーブじゃないとでも言わんばかりで、それを見せつけようとしていた。俺たちは興奮から醒めたんだけど、実に危険だったね。結局、すごく怖くなってしまってさ。レコーディング・セッションが終わった直後、俺たちは辞めたんだ。でも、彼をひとり残していくのは心苦しかったよ。それでエレクトラックが彼を送り返してきた時、俺たちも彼に同伴したんだ。

あなたが送ったんですか? エレクトラックとは何ですか?

Company Laser:“エレクトリック・トラック”のことだよ。どうかそいつを良心と呼んでくれ。

どこから戻ってきたんです?

Strobe Nazard:英国内のとある惑星からだよ(笑)

それは私たちがいまいる場所ですよね。分かりました。それはさておき、『D'Demonstrator』の収録曲を演奏することについてはいかがですか? 彼の曲の中でも“Plug Me In”はいまいちばん人気があると思いますが。

Squarepusher:人気というのは根拠の類語、しかもおかしな類語なだね。この曲はいまのヘッドセットにふさわしくない。俺たちは、というか俺は、ボーブに及ぼす危険性のせいで元の場所に戻されたんだよ。

エレクトラックによって送り返されたんですよね?

Squarepusher:その通り。

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君が混乱していたのは分かるよ。ショバリーダー・ワンは友好的で寛大な団体なんだ。俺たちは俺たちなりの謙虚なやり方で役に立ちたいんだよ。

危険性というのは、どういう意味でしょうか? またそういった危険と闘う場合、あなたは手を貸すことになっているんですか?

Squarepusher:自分の作品の目的については語らないよう促されているんだ。例のボーブという前提の下で、20年以上ずっとやってきたわけでさ。見せかけを整えるため、俺は絶えず嘘をついてきた、成功のチャンスをもらえるならね。だが、状況は変わった。そして試してみる必要性に直面した諸問題の深刻さもね。

Company Laser:思考能力の制限を企んでいるものが、地球上にはたくさんあるのさ。

それを見下した態度だと感じる人も大勢いるはずです。例外的に良い協議会もあるわけですし……

Arg Nution:実際に聞いたことはないだろ。専門知識を嫌う傾向は顕著にあるんだ。人はエキスパートが好きじゃないのさ。

Strobe Nazard:俺たちはエキスパートなんだよ! プロフェッショナルなんだ!

Squarepusher:ボックスは一般的に、自分たちが直面している悲惨な問題解決に取り組もうとして衰退している。現在のものを過去のレプリカに置き換えるという幻想に逃げ込みながらね。

Strobe Nazard:ボーブが眠たいってさ!

Company Laser:Strobe、お前は黙っとけよ。人をイラつかせるだけならさ。

たしかに私は心配していました。この件についてすごく混乱していたもので。

Company Laser:君が混乱していたのは分かるよ。ショバリーダー・ワンは友好的で寛大な団体なんだ。俺たちは俺たちなりの謙虚なやり方で役に立ちたいんだよ。

Arg Nution:謙虚かつデタラメにね。この連中はもっと謙虚な人びとの役に立たないと駄目だ。

えーと……12月にアメリカを、3月にはヨーロッパの各都市をツアーして回る予定だそうですね。この公演では何か特に計画はありますか? このツアーのギグに関して、ファンの皆さんにお知らせしておきたいことは?

Company Laser:俺たちはスクエアプッシャーの曲を演る。そして自分を貶めることになるにしてもひたすら謙虚でいる。俺たちはヒーローとはみなされていない。俺たちはアンチ・ヒーローだが、反アンチ・ヒーローでもあるんだ。

Squarepusher:今回のライヴはきっと、この上なくエキサイティングなものになるよ。俺たちがその意識に働き掛ける人たちにとってはね。

でもどうすれば音楽は人の意識に異なる作用を及ぼすことができるんでしょうか? たしかに、聴き手は音楽の価値を理解したり、それを気に入ったり、それに触発されたりなどする。でも、人の心の働き方に変化を及ぼしたりしませんよね?

Arg Nution:だからこそ、途方もない混乱状態にいる間抜け野郎は破滅するんだよ。

Strobe Nazard:心をバラバラに働かせられるようにしないと駄目だね。でなきゃ、人生を愛せないだろ。人は死ぬものなんだから。

なるほど。こういう問題は精神科医に任せた方がよさそうですね。

Arg Nution:おバカなアホは笑わせてやらないとな。

Company Laser:分かったから、落ち着けって。対抗心とか怒りとかあるんだろうが、でも取り敢えずいまは、サインするまでわずかな時間しかないんだ。建設的に話そうぜ。

分かりました。それでは名前について伺いましょう。本当に面白い名前ですよね。例えばStrobe Nazard。あなたが考えたんですか?

Company Laser:俺たちは名前の持つ力を妨害したいんだよ。ボーブだとかパワー・バリアだとか、世の中が名前を分析しようとする力をね。普通、機械を作れば、名前について検討し、定期的にそれを見直したりするものだが、この名前を見て、そこから連想されるものが刷り込まれてしまったら、そこであらゆる思考が停止し、ボーブの悲哀に呑み込まれてしまう。

でもあなたたちには、ショバリーダー・ワンというバンド名がありますよね。そこにはたしかに、人間関係や名前やポジティブな組織を構築するための意味がある。そうすれば人びとは、映画を観る時のように、何を期待すべきか想像がつくわけです。

Arg Nution:その期待は破滅に終わるわけさ。

Company Laser:彼のリスナーたちには、期待を捨てるようにって働き掛けようとしてきたんだ。期待は、心理的な解放状態を促進するからね。改名についての国際的原則の教えだ。俺たちは修正を提案して、その後で変えるつもりだよ。

Strobe Nazard:俺たちの宇宙船の側面には、でかい文字で『ショバリーダー・ワン』って書いてあるんだ!

宇宙船を所有していると、あなたたちは本気で主張しているんですか?

Arg Nution:「宇宙船を所有していると、あなたたちは本気で主張しているんですか?」だってさ(笑)。

Squarepusher:この議論にスペース・シャトルは関係ない。

いえ、そうではなく。それで宇宙を旅することができると?

Squarepusher:なあ、追究する価値のある問題は別にあるんだよ。それはテクノロジーへのこだわりに突き動かされてていて、道徳的な理由が完全に欠落していることもよくあるんだ、どんな手法が使われてきたかってことに関して言えばね。

Company Laser:テクノロジーの放棄を論じたかったのかい?

Squarepusher:ああ、俺は火器を全て置くよ。あれは象徴的な提案だった。人びとと音楽テクノロジー、そして人びとと信仰心の特徴との相互作用の不思議さを訴えていたんだ。

それについて詳しく教えてもらえますか?

Squarepusher:このミッションがスクエアプッシャーを危機に晒したと考える理由のひとつは、俺の意に反し、俺が神秘主義的な芸術音楽家として扱われているからだ。こういう展開は不愉快だが、別のやり方を推し進める機会を俺に与えてくれた。だが、そうだな、上位者に教えを授けた神秘主義者もいれば、司祭もいるし、現代のテクノロジーは伝統の継承者にふさわしいという正統信仰もある。だが守護者はその時間と金のすべてを、宗教的権威の眼鏡に適う機材の購入に当てなくてはならないんだよ。

とはいえ、テクノロジー・レヴューのユーザーも言っていましたが、テクノロジー音楽は礼拝所に成り得ると?

Squarepusher:いろいろあるが、そのひとつだと言っていいね。

Strobe Nazard:それもまた、人の脳を死に至らしめる方法のひとつだよ! 音楽テクノロジーは、死ぬべき脳を作り出すのさ(笑) !

Company Laser:だからBluetoothの定期的な切断について非難を浴びせようぜ。俺たちはこのサービスに異説を唱える異教徒だからね。

ですが、テクノロジーを用いて作られた音楽についてはいかがでしょうか? 人びとが無意味な信者達の特性を部分的に操作しているとしても、それはやはり素晴らしい音楽を生み出すのでしょうか?

Arg Nution:それでもやっぱり、時には素晴らしい音楽を生み出すこともあるね(笑) 。

Squarepusher:醜悪な建造物を地震が破壊するからといって、地震を良しとするようなものだ。

Strobe Nazard:音楽を破壊するんだよ! 音楽を破壊(笑)!


※来春にはショバリーダー・ワンのアルバムのリリースが予定されており、ワールドツアーの日程も発表されている。

ツアー日程

09/12/16 SI Ljubljana @ KINO ŠIŠKA (TICKETS)
10/12/16 AT Vienna @ Porgy & Bess (TICKETS)
14/12/16 US New York @ Le Poisson Rouge (TICKETS)
16/12/16 US Los Angeles @ Echoplex (TICKETS)
17/12/16 US San Francisco @ The Independent (TICKETS)
22/03/17 UK Ramsgate @ Ramsgate Music Hall (TICKETS)
23/03/17 UK London @ Village Underground (TICKETS)
24/03/17 UK Brighton @ Concorde 2 (TICKETS)
25/03/17 FR Paris @ New Morning (TICKETS TBC)
26/03/17 DE Cologne @ Club Bahnhof Ehrenfeld (TICKETS)
27/03/17 DE Munich @ Strom (TICKETS)
29/03/17 CZ Prague @ MeetFactory (TICKETS)
30/03/17 DE Berlin @ Berghain (TICKETS)
01/04/17 UK Gateshead International Jazz Festival (TICKETS TBC)
09/04/17 BE Brussels, BRDCST @ Ancienne Belgique (TICKETS TBC)

vol. 89:アメリカ大統領選挙後 - ele-king

 その日、11月8日はアップステイトの田舎にいて、インターネットからもニュースからも離れていた。数々のスキャンダルなニュース、過去3回の討論会、数々のメディアはヒラリー氏を支持を表明し(メディアが支持者を明らかにするのは珍しい)、問題はないように思えたし、物申す雰囲気のあるこの選挙の経過を目の当たりにするのは無駄なように思えた。次の日NYに戻ると、雨が降り、ビルには国旗が掲げられ、厳粛な雰囲気が漂っていた。そこで今回の大統領選挙の結果を知った。バンドメイトに電話すると、「昨日の夜は悪夢だった」と。夜の11時ぐらいからまさかのトランプ氏が優勢し、ハラハラ、ムカムカし、なかには気分が悪くなって、倒れる人も出て来た。結果は、夜中の3時ぐらいまで決まらず、みんなゾンビのようになり、泣き出す人もいれば、叫び出す人もいた。最悪の状態だったと。
 NYではほとんどがヒラリー氏支持者なので、この結果にはびっくりした。が、アメリカは広い。大多数は、アメリカを元の素晴らしいアメリカにしたい保守派、そして複雑な選挙制度が今回の結果を招いたのだろう。

 次の日から、NYでは、トランプ氏を抗議するマーチが毎日のように行われた。「love trumps hate(愛は憎しみに勝る)」、「not our president(私たちの大統領ではない)」、「pussy grabs back(プッシー鷲掴みを返せ)」などの様々なプラカードを掲げ、ユニオン・スクエアからトランプ・タワーまで行進する。トランプ・タワーは厳重なセキュリティが施され、私も前を通っただけで、持ち物検査をくまなく受けた。今週の月曜11月28日には、dear_Ivankaというトランプ氏の娘イヴァンカに対してのデモ行進があった。ダウンタウンのアーティスト・グループHalt Action Groupが仕切り「あなたのお父さんに物申す」と様々なプラカードを持った500人がろうそくのライトを掲げ、イヴァンカ嬢が住むパック・ビルディングから、トランプ・ソーホー・ホテルまで行進した。アーティストは、ジョー・ブラッドリー、シンシア・ローリー、スペンサー・スウィーニーなどを含み、ジョナサン・ホロウィッツとアリソン・ジンジャラスが中心になって行われた。

 毎日のようにトランプ氏に関するニュースが流れ、自分の考えをSNS掲げ、話題が絶えない。実際、ヒラリー氏は一般投票ではトランプ氏を上回っているし、12月19日には大統領選挙人による投票が待っている。これは各州の代表の選挙人による投票で、ヒラリー氏が選ばれる可能性もある。
 ここまでくると何が起こってもおかしくない。実際、トランプ氏が当選した翌日から、憎しみから起きる犯罪(ヘイト・クライム)が急増したとか。例えばクイーンズで、10代の白人の男の子がバスに乗るときに黒人の女性に向かって「後ろに座って」と言ったり、ブルックリンのビースティ・ボーイズのアダム・ヤウク公園に鉤十字と「行けトランプ!」という落書きがされたり。NYですよ、皆さん。近代化した社会が、50年前に逆戻りですか? アメリカの本当の姿を見た気がしてゾッとした。

 だけど動向を見守りながら、私たちは、仕事をし、感謝祭のディナーをし、ワイワイ言いながら、その後を過ごしている。ショーにも行くし、映画にも行くし、曲も作るし、絵も描く。最近では、宇宙をテーマにしたバーJupiter discoがオープンし、ミュージック・テープスのジュニターのショーを見て、沖縄音楽を演奏し、現実逃避ではないが、これを楽しめるのなら悪くない、と感謝さえした。新しい物、事が次々生まれるブルックリンでは、間違った方向には行かないと信じている。苦しい逆境から、良い曲や物が生まれる予感もするし、頭の良いニューヨーカー達は、いろいろ試しながら、進んで行くのだろう。

11/30/2016
Yoko Sawai

なりたがりやのくも - ele-king

38年前に刊行された絵本「なりたがりやのくも」は、現代詩人の白石かずこと、
画家・イラストレーターの湯村輝彦が組んだ幻の絵本。
空を漂う主人公の雲が、カタチを変えて変身していきます。
肩の力が抜けるようなゆるい線と彩色で、流れゆく雲の表情を見事に表現しています。
現在、市場にまったく出てこない貴重な絵本を完全復刻します。

Radian - ele-king

 7年ぶりのラディアンの新作『オン・ダーク・サイレント・オフ』は、 トラピストのギタリスト、マーティン・ジーヴェルトが加入したことでエレクトリック・ギターが全面化し、このバンドのサウンドに内包されていた「ロック」と「ポストロック」の問題が、より全面化したように思える。では「ロック」とは何か。簡略化していえば、「ロック」とはリフとビートとノイズであり、それらが電気によって増幅された/される大衆音楽である。ロックにはそもそも非楽音と楽音が内包されていたのだ。

 対して「ポストロック」とは、「録音と編集」の問題が全面化する音楽といえよう(となれば録音作品/商品としてのロック・ミュージックは最初からポストロックたることを「運命づけられていた」)。ポストロックとはロックの継続性と可能性と拡張の問題なのだ。つまり、カート・コバーンの死によって「終わった」とされた「ロック」の荒野に留まることを選び、その場所で、そこに内包されていた可能性を追求していった音楽。そこでの鍵は「演奏」から「聴くこと=編集」への変化である。いまや、ポストロックとは「エモい」インストロック程度に認識されている言葉だが、むしろロック以降の環境の問題なのだ。その環境とは20世紀的な何か(複製、消費、リサイクル)でもある。

 その「ポストロック」においてラディアンは、トータスらに続く世代のバンドだ。ポリヴェクセル、トラピストのメンバーであるドラムのマーティン・ブランドルマイヤー、インノードとしても活動し、ソロ作(2008年リリースの傑作『フィルム』!)もリリースしているシンセ、ギターのステファン・ネメス、さらにエンジニアであるベースのジョン・ノーマンら、いわばオーストラリアはウィーンの音楽家/インプロヴァイザー/エンジニアらがオリジナル・メンバー。彼らは98年に最初のEP「ラディアン」をリリースする。つづく00年に〈メゴ〉からファースト・アルバム『TG11』を発表。そして、トータスのジョン・マッケンタイアをエンジニアに迎え、02年に〈スリル・ジョッキー〉からセカンド・アルバム『Rec.エクスターン』を、04年にサード・アルバム『ジャクスタポジション』をリリースした。これらEPとアルバムの衝撃は凄まじいものであった。ここ日本でも『Rec.エクスターン』と『ジャクスタポジション』の時期は、佐々木敦氏が主宰する〈ヘッズ〉から刊行されていた雑誌『FADER』で特集が組まれ、〈ヘッズ〉から『ジャクスタポジション』やトラピスト『ボールルーム』の国内盤もリリースされたこともあり、「ウィーン音響派」は熱心なリスナーを獲得した。大友良英氏も当時、ラディアンを高く評価していたと記憶する。じじつ、ラディアンのアルバムは、まるで無菌室で生成されたアブストラクト・ロックとでも形容したいほどの実験性と冷徹なクールネスがサウンドの隅々まで横溢しており、トータス、ガスター・デル・ソル以降、最大のポストロック/音響派といっても過言ではない刺激と斬新さと完成度を兼ね備えていたのだ。ガスター・デル・ソルやトータスが見出したロックの荒野(廃墟ではない)から始まる音楽である。

 換言すれば、ブランドルマイヤーをはじめとするメンバーらのインプロヴァイザーとしてのキャリアを「ロック」というフォームのなかに生成変化するようなスリリングさがあったのだ(その意味で、若いジャズ・ミュージシャンを起用したデヴィッド・ボウイの『ブラックスター』と比較してみるのもいい)。じっさいブランドルマイヤーのドラムは叩く、擦るなど、さまざまな方法で音を出し、まるでドラムセットをグリッチ・ノイズの発生装置としてしまう。そのブランドルマイヤーのドラムに、冷徹なネメスのシンセサイザーは非常にマッチしていた。くわえてノーマンのマシニックなベースもアンサンブルの骨組みを支えていた。完璧なトリオであった。しかし、09年にリリースされた『キマイリク』以降、アルバムのリリースは途絶えてしまう。また、ネメスがこのアルバムを最後に脱退したという。この時期は、ある意味、バンドにとってネクストを模索する時期だったのではないか。そして、5年後の14年、ハウ・ゲルブとのコラボレーション・アルバム『ラディアン・ヴァーサス・ハウ・ゲルブ』を突如、発表。その「成果」をふまえ、さらに2年後の2016年、ついに7年ぶりのオリジナル・アルバム・リリースとなったわけである。では、この月日で、ラディアンの何が変わり、変わらなかったのか。

 最初に書いたように本作ではトラピストのマーティン・ジーヴェルトが新ギタリストとして参加している(彼は本作のマスタリングも手がけている)。ジーヴェルトはブランドルマイヤーらとトラピストとして活動していることを考えると、この新ラディアンは、ラディアンとトラピストの融合のようにも思えるし(とはいえ彼らは皆、友人のはずだから、もっとカジュアルな加入だった可能性も高い)、ジーヴェルトのギターは当然ながらトラピストを思わせもする。では、トラピストとラディアンの差異はどこにあるのか。簡単にいえば、トラピストは即興演奏メインだが、ラディアンは演奏からポスト・プロダクションの間にある変化の比重が大きい点である。そして、本作のポスト・プロダクションの緻密さや大胆さは、まさにラディアン的としかいいようのないものであり、あのクールな無菌室実験ロックが本作でも展開されている。2曲め“オン・ダーク・サイレント・オフ”などに随所な傾向だが、いくつもの演奏ブロック(リフ/持続)を繋げていくような構成が実に見事である。ここではブランドルマイヤーやジーヴェルト、ノーマンらの個性的な演奏は、そのコアを存分に抽出したうえで、細部を切り刻まれ、組み替えられ、加工され、極めて斬新な音響空間を生み出している。ロックの遺伝子を拡張するかのように。

 アルバム・ラスト2曲“コーズ・アンド・サウンズ”や“ラスティ・マシーンズ、ダスティ・カーペッツ”は、前半から中盤の緊張感を霧の中に溶かすような楽曲だが、最終曲“ラスティ・マシーンズ、ダスティ・カーペッツ”のサイレンスの挿入には驚いた。無音にも関わらず、本作の再構築的な音楽を聴いてきた耳には、その静寂が、とても清冽に聴こえた。それは音楽の演奏、分解、再構築であり、作曲自体のリ・コンポジションから生まれたサイレンスのようにも思える。肉体と機械。楽音とノイズ。演奏と録音。時間と記憶。その交錯。つまりは現実の解体と再構築。そう、真のポストロックとは「現実=演奏以降」の音楽なのである。本作には、ラディアンが自らの肉体性に向かい合いながらも、それをさらにしなやかに解体していくようなスリリングな音響的な実験が全編に渡って実践されている。ここではエモーションですら、分解され再構築されるだろう。いわば「ポスト演奏」としてのラディアンが、ここに復活したのだ。

Yussef Kamaal - ele-king

 ユセフ・カマールというイスラム系の名前に、アルバム・ジャケットもアラビア文字を使ったものなので、ジャズ・ファンの中にはブラック・ムスリム系のスピリチュアル・ジャズを連想する人も多いだろう。恐らくそうしたイメージは間違っていないし、このユニットは意図的にそうした方向性を打ち出している。ただし、ユセフ・カマールは1960年代後半から1970年代前半のアメリカのスピリチュアル・ジャズではなく、現在のイギリスの若手ジャズ・ユニットである。だから、カマシ・ワシントンのようなロサンゼルス~米国西海岸スピリチュアル・ジャズの伝統を引き継ぐ存在ではなく、クラブ・サウンドとしてのジャズが根付くUKらしいユニットである。彼らが提示するスピリチュアルなフィーリングやブラックネスも、やはりクラブ・ミュージックとしてのフィルターを介したものであり、純粋な意味でのスピリチュアル・ジャズやフリー・ジャズとは少々異なる。むしろフュージョンやジャズ・ファンクの部類に属するもので、アフリカ色の強かった初期ハービー・ハンコックやアース・ウィンド&ファイアから、1970年代中盤のゲイリー・バーツやカルロス・ガーネット、そしてロニー・リストン・スミスやロイ・エアーズなどに繋がるものだ。

 ユセフ・カマールはユセフ・デイズとカマール・ウィリアムスによるユニットで、ユセフはアーマッド、カリームら兄弟とともにユナイテッド・ヴァイブレーションズというバンドで活動している。ドラマーの彼はほかにもルビー・ラシュトンというユニットにも参加しているが、そのどれもがブラックネスやアフリカニズムに富むジャズ・サウンドを作り出している。一方、カマールは本名がヘンリー・ウーという中国系プロデューサー/鍵盤奏者。ルビー・ラシュトンのリーダーであるテンダーロニアスの主宰する〈22a〉ファミリーのひとりで、Wu15(ウー15)というユニットで〈エグロ〉からEPを出し、そのサブ・レーベルの〈ホー・テップ〉からも作品リリースがある。それらの作品はジャズ・ファンク~フュージョンとディープ・ハウスやビートダウンの融合によるエレクトロニック・サウンドで、セオ・パリッシュからフローティング・ポインツに繋がるような作風だった。彼らはボイラー・ルームでのワンナイト・セッションで意気投合し、本格的なユニットとして活動を開始した。アルバム制作に関しては、アデルのバック・バンド・メンバーでもあるベーシストのトム・ドライスラーをサポートに招き、トリオ態勢で楽曲制作・演奏をおこなっている(楽曲によってトランペットなどのホーンも交えている)。

 『ブラック・フォーカス』というタイトルが示すとおり、アルバム全体は1970年代のアフロ・アメリカン・ミュージシャンが志向したトーンの影響を受けている。特にハービー・ハンコックやロニー・リストン・スミスなどの方向性に近く、土着的でポリリズミックなアフロ・ジャズというより、スペイシーでミスティックな質感のもの。表題曲でのユセフのドラムはアフリカ的なモチーフに富むが、カマールのフェンダー・ローズは極めてクールなもの。彼の鍵盤がアルバム全体にコズミックなフィーリングをもたらしている。“ストリングス・オブ・ライト”は、かつてディーゴやIGカルチャーらがやっていたウェスト・ロンドンのブロークンビーツ・サウンドに近い。ユセフのドラムは不定形ながらソリッドでグルーヴに富むビートを作り出し、その上で浮遊するカマールのシンセがトリップへと誘う。“リメンバランス”は〈CTI〉時代のボブ・ジェームス作品あたりに近い質感で、彼がプロデュースしたアイドリス・ムハマッドの“ピース・オブ・マインド”を想起させる導入部だ。都会的でモダンな方向性を打ち出すことにより、黒人のコズミックなフィーリングやブラックネスを体現したのが1970年代のジャズ・ファンクやエレクトリック・ジャズだったが、それと同じベクトルを持つ曲である。“ヨー・シャヴェズ”は柔らかな浮遊感に包まれ、カマールの持つアンビエントな側面がよく表われている。この曲から“アイラ”、“O.G.”へと繋がる展開は、フローティング・ポインツの傑作『エレーニア』にも匹敵するだろう。

 そして、カマールのダンス・ミュージック・プロデューサーとしての才能は“ロウライダー”に見てとることができる。1970年代後半のロイ・エアーズやジェームズ・メイソン、そのメイソンや川崎燎も参加したタリカ・ブルーを想起させるブギー・フュージョン的なリズムを持ち、それと同時に前述のウェスト・ロンドン・サウンドやその当時2000年前後のクラブ・ジャズの流れを汲むものと言えよう。“ジョイント17”はクールなジャズ・ファンクを基調としつつ、ユセフのドラム、カマールのキーボードがインプロヴィゼイション感覚に富むプレイを繰り広げ、最後はボイラー・ルームでのギグにポエトリー・リーディングを交えたような展開で締め括る。アルバム全体のコンセプトやイメージ構築、流れや展開の持っていき方、各楽曲のモチーフの集め方など、ジャズ・ミュージシャンではなくクラブ・サウンドのプロデューサー的な編集感覚で作られたアルバムであり、そうしたエクレクティックな作業はUKクラブ・シーンならではのものだ。

Essential Disc Guide to "Good Winter" - ele-king

 2016年に注目を集めた音楽の特徴のひとつが折衷性だったすれば、ボン・イヴェールの新作、『22、ア・ミリオン』はまさにその象徴だ。いまだ世間的には山小屋の弾き語りフォークのイメージが残っているようだが、そのアルバムでは、何よりも音がそれに反証する。ヒップホップ、ジャズ、エレクトロニカ、ドローン、アンビエント……などが次々と現れ、ぶつかり合い、フォークとゴスペルのもとで融和しようとしている。なぜジャスティン・ヴァーノンはそのようなサウンドに辿りついたのか? それは彼が優れたシンガーソングライターだっただけでなく、プレイヤーでありプロデューサーでもあったことが関係している。
 ヴァーノンによるヴォーカルやギターでの他ミュージシャンの作品へのゲスト参加、プロデュース・ワークを振り返れば、その人脈、音楽性がじつに多岐に渡ることが見えてくる。それは閉じていく世界に対する音楽のせめてもの理想主義である……と結論づけるのはいささか大げさかもしれないが、実際、彼のキャリアは超メインストリームからアンダーグラウンドまでをごく自然に行き来し、膨大なジャンルをやすやすと横断する、他に類を見ない非常にユニークなものである。ここでは自身の作品、ゲストやプロデュースで参加した作品のなかから重要作をピックアップし、彼の「良い冬」がどのように生み出されていったかを振り返りたい。

選・文:木津 毅


DeYarmond Edison / Silent Signs (DeYarmond Edison, 2005)


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ボン・イヴェールのはじまりを説明するときに必ず触れられる「ダメになった前身バンド」がこのデヤーモンド・エディソンである。本作は比較的いまも手に入りやすいその代表作だ。歌心溢れる素朴なフォーク・ロックで、すでにアンビエントの音響への興味も随所に覗かせてはいるが、まだ善良で大らかなアメリカン・ロックの枠を超えているとは言い難い。ヴァーノンのキャリアを考えたとき、このデヤーモンド・エディソンとボン・イヴェールとの共通点よりもむしろ違いが重要なのではと思われる。すなわち、黒人のフィメール・シンガーからの影響としてのファルセット・ヴォイス、ブラック・ミュージックへの接近だ。元メンバーは現在、メガファウンやフィールド・レポートとして活動しており、デヤーモンド・エディソンとしてもライヴやコンピレーションで再結成もしている。

Bon Iver / For Emma, Forever Ago (Jagjaguwar, 2007/2008)


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オープニング「フルーム」の歌いだしの、よく伸びるファルセット。パーソナルだが、匿名性と抽象性の高い歌詞。アコースティック・ギターの弦の最後の震えも記録するような、アンビエントを意識した録音。繊細だが芯の通った歌……。アルバムの背景にあった冬の孤独の物語があまりにもキャッチーだったのはたしかだが、ヴァーノンはここでたしかにそれを音と歌にする才能を開花させた。この時点ですでに多重コーラスで意識されているのは明らかにゴスペルであり、ボン・イヴェールというコンセプトがヴァーノンのブラック・ミュージック解釈ではないかと考えられる。自主制作のリリースの翌年に流通盤がリリース。森の奥で無名の青年が歌った愛の歌は、やがて〈ジャグジャグウォー〉にとってもっとも売れたアルバムとなった。

Bon Iver / Blood Bank EP (Jagjaguwar, 2009)


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『フォー・エマ~』のアウトテイク的なポジションの4曲入りEP。アルバムよりはややリラックスした内容になっているが、特筆すべきは表題曲と“ウッズ”だろう。“ブラッド・バンク”は珍しくかなり明確なストーリーラインがあるラヴ・ソングで、これがアルバムから外されたというのは逆に言えば、それはボン・イヴェールの本流とは少し異なるということだ。そして、オートチューンで加工した声をループで繰り返し重ねた異色のア・カペラ・ゴスペル・ナンバー“ウッズ”。それはジェイムス・ブレイクよりも早く、しかも爆発的にエモーショナルだった。そしてこの1曲こそが、のちのヴァーノンのキャリアを大きく動かしていくことになる。

Volcano Choir / Unmap (Jagjaguwar, 2009)


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ポストロック・バンドのペレを前身とするインストゥルメンタル・バンド、コレクションズ・オブ・コロニーズ・オブ・ビーズとヴァーノンが合流。すでにドローン・プロジェクトを始動していたジョン・ミューラーがいたこともあり、ゴスペルとフォークとポストロックとドローンが混淆する不思議な感触の演奏と音響が聴ける。はじめはレコーディング・プロジェクトの予定だったが、のちに日本でライヴが実現。そのエモーショナルなバンド・アンサンブルの経験から、ボン・イヴェールののちの方向性が決まっていく。また、音響的な感覚としてはヴァーノンが2000年前後のポストロックやエレクトロニカの強い影響下にあることもよくわかる。

Kanye West / My Beautiful Dark Twisted Fantasy (Def Jam, 2010)


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世界中からクールな才能を見つけて貪欲に取り込んでしまうカニエ・ウェストが、それでもボン・イヴェールに目をつけるとは誰も想像できなかったのではないか。はじめは例の“ウッズ”のサンプリング程度を想定していたかもしれないが、折衷的なゴスペルという要素でわかり合ったのか、ゲスト・ヴォーカルだけでなく音楽的な部分でもヴァーノンはここで関わっている。のちにヴァーノンがエレクトロニック・ミュージックに接近していくのは本作や次作『イーザス』の影響だとよく言われるが、自分はどちらかと言えば「俺が必要なのはプッシーと宗教だけだ」とライヴで歌わされた経験のほうがカニエとのコラボでは大きかったのではないかと邪推している。

Gayngs / Relayted (Jagjaguwar, 2010)


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まあ正直、カニエといるときよりもこっちのほうが生き生きしているというか……とにかくリラックスしている。ライアン・オルセンをリーダーとし、メガファウン、ソリッド・ゴールド、ドゥームトゥリーのメンバー、そしてハー・マー・スーパースターらが集まったスーパーグループ……なのだが、地元の仲間連中がふざけて激甘ソフトロックをやってみたら、というようなユニークなアルバムだ。BPMを10ccの“アイム・ノット・イン・ラヴ”と同じ69に全編固定するなど芸が細かく、その上でひたすら甘ったるくラウンジーな時間が過ぎていく。なかでもゴドレイ&クリームのカヴァー“クライ”がキラー。ヴァーノンのファルセット・ヴォイスもギターもボン・イヴェールのときとは聞こえ方がまるで違い、このプロジェクトはぜひまたやってほしいところ。

The National / High Violet (4AD, 2010)


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この当時、インディ・ロック・シーンの顔役であったザ・ナショナルのアルバムに、スフィアン・スティーンヴンスとともにヴァーノンが参加した意義は大きい。やはりザ・ナショナルが監修した2000年代のインディ・ロックの隆盛を記録したコンピレーション『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』(2009)と並んで、ここでボン・イヴェールが現在のインディ・ロック・シーンの柱のひとつであることがはっきりと示されたのだ。ザ・ナショナルがアメリカで絶大な人気を誇るのはその文学性の高さによるが、ヴァーノンはそうしたアメリカの知的なインディ・ロック・バンドの系譜をたしかにここで引き継ぎつつ、ヒップホップ・シーンやエレクトロニック・ミュージックともアクセスできるというかなり独自のポジションをすでに獲得していた。

Bon Iver / Bon Iver, Bon Iver (Jagjaguwar, 2011)


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ある意味で、ボン・イヴェールというプロジェクトが覚醒した瞬間である。フォークとゴスペルという基本は押さえつつもフル・バンドによるアレンジメントは複雑さとスケールを増し、より描く感情の幅を広げている。それはジャスティン・ヴァーノンひとりの感傷や孤独が分かち合われることで、音楽的なコミュニティが築かれているということだ。そこで歌は切なさを伴いながらも、勇壮なドラムによく表れているようにタフで力強いものとして鳴らされているのである。だから本作はセルフ・タイトルなのだろう……これこそが「ボン・イヴェールだ」と。ヴァーノンはここで音楽的な欲求に誠実に向き合っただけだが、本作でグラミー賞という名声を得ることによってかえって孤独を深めていくのは皮肉な話だ。結果、ここからボン・イヴェールの次作まで5年のブランクが開く。

James Blake / Enough Thunder EP (Universal, 2012)


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“フォール・クリーク・ボーイズ・クワイア”で参加、これは納得のコラボレーション。というか、シンガーソングライター/プロデューサーとしてヴァーノンともっとも感覚が近いのがジェイムス・ブレイクではないかと僕は考えている。アウトプットが個に向かうか公に向かうかでその姿勢は異なるものの、自らのゴスペルが「本物」にならないことをよく分かっていて、声を加工したり他のジャンルと組み合わせることによってオリジナルなものにしようとしている、と言えばいいだろうか。じじつ、ヴァーノンの情熱的な歌声がどこかゴーストリーなコーラスのなかで繰り返されるこの曲は、両者の特色がちょうど中間地点で見事に融合していると言える。

Blind Boys Of Alabama / I'll Find A Way (Sony Masterworks, 2013)


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1930年代のアラバマの盲学校で結成されたゴスペル・グループの新作を、インディ・ロックの現在を代表するミュージシャンがプロデュースしたら……。ヴァーノンにとって、キャリアのなかでも悲願叶った1枚なのではないだろうか。たしかな歴史がある、いわば「本物」のゴスペルをエレクトロニカやアンビエントの感性を通過した自分のフィールドに取り込みつつ、モダナイズすること。それは彼にとって大いなる挑戦であり、喜びであったにちがいない。チューン・ヤーズやマイ・ブライテスト・ダイアモンドなどインディ・ロック界隈のゲストも参加、ヴァーノンのプロデュースによってここでも理想主義的な音楽コミュニティが作られている。

Colin Stetson / New History Warfare Vol. 3: To See More Light (Constellation, 2013)


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ボン・イヴェールにも参加しているサックス奏者、コリン・ステットソンのソロ作。ドゥーム・ジャズともミニマル・ドローンとも言われるコリン・ステットソンのサックスの咆哮は肉感的でおどろおどろしく、あっけらかんと狂気じみている。ヴァーノンは3曲で参加しているが、その声が聞こえてくるだけでこのアヴァンギャルド・ジャズがホーリーな感触になるのはおもしろい。ヴァーノンにとってはボン・イヴェールのもっともアンダーグラウンドな回路と言え、新作には明らかにその人脈の活躍の跡が見える。隠れたキーパーソンである。ところで、ホーリーな感触と書いたが、カオティックな“ブルート”ではヴァーノンの珍しいデス声(?)が聴ける。

Francis and The Lights / Farewell, Starlite! (KTTF, 2016)


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ニューヨーク拠点のシンガー/プロデューサーによるR&B/シンセ・ポップ/ヒップホップ・プロジェクト、ヴァーノンはプロデュースやゲスト・ヴォーカルで数曲参加している。フランシス自身が開発したというヴォーカル・エフェクトであるプリズマイザーを駆使した、ユーモラスでチャーミングなR&Bといった感じだ。カニエ……はともかくカシミア・キャットなども参加しているこのアルバムはいまのヒップホップ、ビート・ミュージックのある部分をプレゼントする1枚だと言えるだろう。フランシスはチャンス・ザ・ラッパーのアルバムにも参加しているが、結果、ヴァーノンがその辺りまで繋がっているのは2016年のポップ・ミュージック・シーンのひとつのトピックだった。

Bon Iver - ele-king

 ボン・イヴェールとは共同体を巡るコンセプトである。あるいは、そのコミュニティが何によって構成されうるか……その問いかけである。ボン・イヴェールとはまた、その名の通り「良い冬」のことであり、すなわち、匿名性と抽象性のことだ。

 いや、もちろん、ボン・イヴェールとはつねにそのマスターマインドであるジャスティン・ヴァーノンの内面への探求とその思慮深い吐露であり、はじまりはどこまでもパーソナルな……「ひとり」のものだ。人生に行きづまり山にこもりながら綴った歌が世界に発見されたという、ある意味では典型的な物語を負っていたデビュー作と、世界的なビッグ・ネームとなってからの本作は、その観点ではまったく同じだと言える。かつての無名の青年は予想外の成功とありあまる称賛に疲れ果て、再び内省へと向かった……これもまた、典型的な話だ。ただし、その感情の発露において、『22、ア・ミリオン』は彼のキャリアでもっともスピリチュアルに振りきれている。曲名には意味ありげだが謎めいた(もちろん、本人にとっては深い意味がある)数字と文字が並び、陰と陽を中心に置いたアートワークはダークなサイケデリック・アートのようだ。そして音は……かつてのファルセット・ヴォイスが美しいアンビエント・フォークのイメージをズタズタにするように、エレクトロニック・ビートとノイズ、ときに流麗に響きときに狂おしく鳴るサックス・アンサンブル、断片化されたサンプリング、オートチューンドされた声……が吹き荒れている。グッド・メロディの素朴なフォークを期待したリスナーは、乱心を疑い頭2曲で引き返してしまうだろう(先行して発表された2曲であり、つまり、新作はまったく別物だとまず提示したかったにちがいない)。
 しかしながら、それらはヴァーノンひとりから生まれたものでなく、確実にこのレコードに参加した大勢の人間によって奏でられたものである。クレジットを見れば、相変わらず気心の知れた彼の周辺の音楽仲間ばかりが集められている。サウンドの多様さとサンプリングの多用も加わり、アルバムは「ひとり」の地点から遥か遠くまで辿り着いている。

 海外の評を観るとサウンドでもテーマでももっとも「difficult」で「experimental」なアルバムだとされており、第一印象ではたしかにそうなのだが、しかしよく聴けばじつはきわめてロジカルな発展であることがわかる。たとえばスフィアン・スティーヴンスであれば、同様に内面への旅を追求した結果分裂気味にエクスペリメンタルになっていた『ジ・エイジ・オブ・アッズ』を連想するが、あそこまで壊れていない。『22、ア・ミリオン』では曲の骨格自体はこれまでのソングライティングを大きく外れることはなく、あくまでそのアレンジメントにおいての冒険が繰り広げられている。またその点についても、リズムや音響の感覚においては2000年前後のポストロックやエレクトロニカに源流があること、かねてから取り組んできた声を加工し音とする試み、ヒップホップの実験性への強い関心、ドローン/アンビエントへの理解、ビッグバンド・ジャズの経験と素養を顧みると納得がいく。カニエ・ウェストやジェイムス・ブレイクとのコラボレーションの影響は誰もが指摘しているが、いっぽうで同時にジョン・ミューラーのドローンやコリン・ステットソンのドゥーム・ジャズまでをヴァーノンは渡り歩いており、曲によってその語彙を理知的に使い分けているのだ。そして、前身バンドであるデヤーモンド・エディソンとボン・イヴェールの最大の違いであったファルセット・ヴォイスが黒人のフィメール・シンガーからの影響を受けているように、相変わらずホーリーなコーラスによって全編を貫くフィーリングはゴスペルだ。そして歌は……そう、ボン・イヴェールの音楽において揺るぎなく中心に据わるその歌は、声が加工されてもブツ切りにされても、まったくもって力強く生々しく、エモーショナルに響いている。
 ゴスペル・シンガーであるマヘリア・ジャクソンのサンプリングが浮遊する“22 (OVER S∞∞N)”、ヒップホップの影響が強いだろう烈しいビートがのたうち回る“10 d E A T h b R E a s T ⚄ ⚄”、ピアノ・バラッドとポストロックとアブストラクト・ヒップホップが無理やり合体させられたような“33 "GOD"”の印象が強いため、A面にあたる前半はとくに新基軸を強調しているように思える。が、たとえば3曲め、エフェクトがかけられた声だけのア・カペラ・ソング“715 - CR∑∑KS“は過去の名曲“ウッズ”と“ウィスコンシン”を合わせた発展形だし、5曲めの“29 #Strafford APTS”でようやく柔らかなフォークの時間が広がっていけば、それはメロディアスでジャジーな“666 ʇ”へと引き継がれ、透徹したアンビエントがフリーキーな管に浸食されてゆく“21 M◊◊N WATER”、前2作どころかデヤーモンド・エディソン時代をも彷彿させる大らかなジャズ・ロック・ナンバー“8 (circle)”へと続いていく。そしてシンプルで真摯な歌と弦を管が彩る“____45_____”、スウィートなゴスペルの終曲“00000 Million”へ至る頃には、ボン・イヴェールを愛聴してきたリスナーはこれもまた紛れもなくボン・イヴェールの作品であると確信するだろう。姿が変わったことで、かえってその内側で変わらないものが深く根を這っていることがわかる。かつてのようなアコギを弾き語る典型的なフォーク・シンガーはもうここにはいない、が、そこには変わらず温かく情熱的で誠実な歌ばかりがあり、そしてそれはヴァーノンが現在集結させることが可能なたくさんの人間と多様な音楽的語彙によって実現されている、それだけのことなのだ。

***

 ダーリン、愛するな、闘え
 愛せ、闘うな    (“10 d E A T h b R E a s T ⚄ ⚄”)

 ただあの晩、ぼくはきみが必要じゃなかった
 これからももう必要じゃない
 成り行きを受け入れるつもりだった
 光のなかを前に進めたなら
 そうだね、服をたたんだほうがいいね    (“33 "GOD"”)

 ぼくはまだ立っている
 まだ立っている、祈りの言葉を必要としながら   (“666 ʇ”)

 たくさんありすぎて拾えない
 許すことがどういうことかよくわからない
 ぼくらはその混乱に火をつけた
 ぼくは港の裏を出ていける     (“8 (circle)”)

 散文的なのにときおり叙情性が抗いがたく漏れてくる言葉からわかるのは、『22、ア・ミリオン』の主題は信仰であるということだ。
 思い出してみよう。そのはじまりからボン・イヴェールの「良い冬」とは、そのまま孤独のことであった。世界から隔絶された場所で、それでも人間との関わりを求めてしまうひとりが名前を失うことで聴き手の内側の震えに共振することだった。本作においてはこれまでよりも言葉の抽象度と複雑さはさらに上がっているが、しかし歌を通して感情を吐き出している男はたしかに深く傷つき、混乱し、苦悩している。そして何らかの信仰を求めながら、それを見つけることができない。神を信じていないというヴァーノンのブラック・ミュージック、とりわけ黒人霊歌に対する強い関心と羨望はおそらくここに理由がある。スピリチュアルな領域で信じるものを持てない人間が、それでも心の深いところで何かを信じたいと願ってしまう歌――それこそがボン・イヴェールだ。だから彼は自分の名前を名乗らない。ただ、誰の心にもある「冬」として、それをゆっくりと温めるための歌を大勢で演奏するのである。その神聖な響きは、そのじつとても切実な願いだ。
 たとえばビヨンセ、ブラッド・オレンジ、そしてフランク・オーシャン――今年のブラック・ポップ・ミュージックを代表するいくつかのアルバムでは、大勢の人間が参加することによって緊急的な共同体が生み出されているように思える。なぜならば、彼らはいまたしかに団結せねばならない現実と社会に直面しているからだ。ヴァーノンのようなよく教育された白人の青年はそのような事態に追いこまれているとは言えないかもしれないが、しかし、いまボン・イヴェールという共同体もたしかに愛と相互理解を希求し、実践しようとしている。その音楽にははっきりと理想主義がある。彼は自分と同じように孤独な人間がたくさんいて、そしてその痛みゆえにひとつの場所に集まるということを「信じている」のだろう。そこではたくさんのものが衝突し合いながら、そして感情によって融和しようとしている。中心に立つ男の声は、切なさを纏いながらその芯を失うことはない。そして男はアルバムの終わりに、自らを痛めつけるものをも「受け入れる」と告げる。
 だから、『22、ア・ミリオン』もこれまでと同じように「difficult」な作品などではない。かつて雪が解けるのを静かに待ち続けたように――ボン・イヴェールとは、冷えた想いをその熱で溶かそうとする、誠実で勇敢な願いについての歌である。

 新宿ロフト40周年を記念したイベントのひとつとして、11月29日から12月2日までの4日間にわたって「DRIVE to 2100」が開催される。これは1979年夏に行われた伝説的イベントDRIVE to 80sにちなむもので、当時盛り上がりをみせていたパンク・ニューウェーブ系のバンドが総出演したDRIVE to 80sは、ロフトの観客動員記録を作るなど大きな話題を呼び、その後のライブハウス・イベントの原型となった。
 その後、新宿ロフトが現在の場所に移転した1999年にはDRIVE to 2000、その10年後には30日間にわたるロングラン・イベントDRIVE to 2010が行われている。新宿ロフトが40周年を迎えた今年、このDRIVE toシリーズの歴史を踏まえ、さらに前に向かって突き進もうと、特別編としてこのDRIVE to 2100が企画された。
 この4日間には、DRIVE to 80sにも出演した恒松正敏、Phew、NON BAND、ロフトの歴史にその名を刻む遠藤ミチロウ、20数年ぶりに復活をとげたカトラトゥラーナ、現在の音楽シーンを牽引する七尾旅人、あふりらんぽ等、多彩なアーチストが出演。またサブステージでは気鋭のグラフィックアーチスト河村康輔プロデュースのライブ・ペインティングや、元BiSのテンテンコの企画するイベント内イベント「DRIVE to TENTENKO」も行われるなど、文化の発信源としてのライブハウスの楽しさが満載されたイベントとなっている。 地引雄一

出演者は下記。開演は連日18:30から(11/30のみ19:00)。

★11/29
あふりらんぽ
THE END(遠藤ミチロウ)
タテタカコ
ミーワムーラ

【BAR STAGE】
《ライブコラージュ・ペイント》HAMADARAKA
《LIVE》MARUOSA
《DJ》DJ 37A
《作品展示》河村康輔


★11/30七尾旅人presents 百人組手番外篇
『Amazónes』
七尾旅人
kan sano
山本達久
加藤雄一郎
ハラサオリ
MCシラフ
やけのはら
国府達矢
★フロア〈オンラインステージ光〉では演奏中にAmazonから次々に届く未知の楽器、日用雑貨などを取り入れながら生え抜きのプレイヤー達による鬼気迫るセッション。そのサウンドに反応し、アマゾネスに扮したダンサー、ハラサオリがパフォーム。
★バー〈オフラインステージ巌〉では伝説のシンガーソングライター国府達矢による初ワンマンライブ、3時間!


★12/1
カトラトゥラーナ
くじら
ムーンママ(PIKA+坂本弘道)
佐藤幸雄とわたしたち
初音階段

【BAR STAGE】DRIVE TO TENTENKO
テンテンコ
黄倉未来
ju sei
コルネリ
フロリダ
PIKA


★12/2
恒松正敏グループ(ゲスト:鶴川仁美)
NON BAND
TACO(山崎春美/佐藤薫/末井昭/後飯塚僚)
Phew

【BAR STAGE】J-TOWN STYLE 2100
コンクリーツ
バチバチソニック
タマテック
N13
他ゲスト多数

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