「Nothing」と一致するもの

Jameszoo - ele-king

 年末号の制作でへろへろになりながらCIRCUSへ足を運んだ。ジェイムスズー、たしかにアルバムは面白かったけれど、DJセットはどんな感じなんだろう? もしこれでぐだぐだの内容だったらどうしよう……そんな一抹の不安を抱えながらCIRCUSの重い扉を開けた。

 2曲目に『AKIRA』のサウンドトラックが流れてきて、いきなり虚を衝かれる。これは日本というエリアに対するサービスなのだろうか? いや、2016年は〈LuckyMe〉からBwanaが『AKIRA』の音源のリワーク集をリリースしたり、〈Milan〉が『AKIRA』のサウンドトラックのリイシューをほのめかしたりと、海外での『AKIRA』人気の高さを再認識させられることが多かったけれど、ジェイムスズーも単にその風潮に乗っかっただけなのかもしれない、などと思案していたら「あんたも忍者、わたしも忍者、目潰し投げてドロンドロン」という歌声が耳に飛び込んできた。フランク・チキンズである。わかった。これは彼なりの日本へのサービスなのだ。

 こちらが「この曲もうちょっと聴いていたいな」というタイミングでどんどん次の曲を放り込んでくるジェイムスズー。彼は曲と曲を無理にBPMで繋ごうとはしない。それなのにテンポの切り替えは巧みで、幅広いジャンルのトラックが違和感なく繋がれていく。声ネタの使い方や挟み方もおもしろい。セットの中心となっているのは一応ヒップホップやブレイクビーツなのだけれど、その流れのなかにエクスペリメンタルなものからシンプルにダンサブルな4つ打ちまで、とにかく様々なタイプのトラックがぶち込まれていく。場を盛り上げるための曲、クールダウンするための曲、曲と曲を繋ぐための曲、DJ自身のセンスを披露するための曲……

 予想外のタイミングでスティーヴ・ライヒ×パット・メセニーの“Electric Counterpoint”が流れてきたときに考えはじめた。これはかなりうまいDJなのではないか? 体力的に限界だったはずのわが身体が自然と揺れ動いていくのがわかる。序盤はフロアの後方で様子をうかがっていたオーディエンスも、徐々にそのセットの良さに気づきはじめ、もうたまらんとばかりに前の方へと踊り出てくる。

 終盤、エイフェックス・ツインの“Windowlicker”がかかった瞬間に、僕は「うおー」と叫んでいた。あまりに唐突な挿入でありながら、それまでの流れとまったく違和感のない選曲。どんどんジェイムスズーへの信頼が厚くなっていく。その後ハプニングで一瞬曲が途切れるが、そのわずかな沈黙の間すらも演出のように聞こえてしまうから不思議だ。彼はジョン・ケイジよろしく、オーディエンスのざわめきまでをもひとつの曲としてプレイしてみせたのだ、などと言ったら褒めすぎかもしれないが、しかし彼は現代音楽も大好きなようなので、そんな憶測も完全に間違いとは言いきれない。中断の後にはバトルズの“Atlas”が流れてきて、ふたたび僕は「うおー」と叫んでいた。

 この日CIRCUSに行かなかった人はかなり損していますよ。いやマジで。

RAINBOW DISCO CLUB 2017 - ele-king

 最高のロケーションで、最良のダンス・ミュージックを楽しめる「RAINBOW DISCO CLUB 2017」が今年も5月3日から5日にかけて開催される。すでにDJ NOBUとFRED Pなど出演者の第一弾発表があり、早割チケットが発売されたが、この度は出演者の第二弾が発表され、チケットも発売された。あらたに発表された出演者の寺田創一 × KUNIYUKI × SAUCE81によるライヴは楽しみでしかないし、シカゴのソウルDJ、サダー・バハーの名前もあります。
 このフェスティヴァルの素晴らしいところは、東京からも関西からも電車で行けるナイスなロケーションもさることながら、流行に左右されない、素晴らしい音楽が最高のアトモスフィアを創出するという信念にもとづいているところ。ザxxあたりを聴いてハウスがーと言ってるあなたはここに来なければならないでしょう。テントもありだし、民宿もあり。天気がいいこと前提で言いますが、最高の週末が待っています!(ちなみに子供大歓迎のフェス)

  • RAINBOW DISCO CLUB
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Rashad Becker - ele-king

 2016年はテーブルの年だった。レナード・コーエンは「テーブルから離れる(「Leaving The Table」)」と歌ってその直後に他界し、ソランジュは「テーブルに黒人の席はあるか(『A Seat At The Table』)と問いかけてガーディアン紙から「ボブ・ディラン賞」を授与された(坂本麻里子さんに聞いたところではクラフトワークのライヴでソランジュたちが踊りまくっていたところ、後方の席にいた白人たちからモノを投げつけられた経験がこのタイトルにつながったらしい)。そして、グライムでとくに耳を引いたのはスペイシャル(Spatial)の「レインボー・テーブル(Rainbow Table)」であった。ダブステップではすでに10年近くキャリアを積んでいる才能のようで、しかし、ここ3作を聴く限り、少しずつグライムに舵を切りはじめ、どちらともいえなくなる作風に移行していった様子がよくわかる(https://www.youtube.com/watch?v=dL_lhFlUNP8)。「レインボー・テーブル」というのも(リー・バノン同様)数学用語である。

 「テーブルの上に持ってくる(Bring to the Table)」という言い回しは英語では「明らかにする」という意味にもなる。ラシャド・ベッカーは何年か前に「シンセサイザーによって合成された音はその音を作り出した人の個性を暴き出す」とか「潜在力に満ちている」というようなことを語っていたことがあり、さらにはそのような力が持っているフィクションの優位について強調していたことがある。そして、彼自身がここへ来て完成させた『存在すると信じられている種族のための伝統的音楽Vol. II(Traditional Music of Notional Species Vol. II )』は彼自身の言葉をそのまま裏付けるような音楽になっていた。前作よりもフィクション性は高まり、簡単にいえば童話でも読んでいるような別世界感覚に富んでいるのである。

 「Notional Species」というのは、まるで人類ではないかのような含みを持つ表現で、それがまた異様な音楽性に投影されているともいえるけれど、彼が過去に語っていたことから察するに、それはどうやらアジアやアフリカ、さらには南米の音楽家のことを指していると考えられる。要するにワールド・ミュージックのことで、それにどれだけフィクション性を喚起できるか、それが前作から続く彼のテーマだったのだろう。そして、『Vol. II』におけるフィクション性の増大は完璧なまでにワールド・ミュージックの痕跡をテーブルの下に隠し切った。ワールド・ミュージックの影響をわかりやすく表に出すことが「トレンド」だとしたら、ラシャド・ベッカーはそれとは正反対のことをやっているのである。これは恐るべき知性である

 こうした試みは、しかし、ドイツでは初めてではない。共に故人となってしまったメビウス&プランクによる『ラスタクラウト・パスタ』(79)がすでに金字塔として存在している。クラウトロックにレゲエを取り入れ(だから「ラスタクラウト」)、カリブ・ミュージックのムードは微塵も感じさせずにドイツとジャマイカのサイケデリアだけを共振させた音楽をコニー・プランクとディーター・メビウスは40年近くも前に作りあげている。ラシャド・ベッカーは『ラスタクラウト・パスタ』を過去の遺物として葬り去らなければならない。そうでなければ何かをクリエイトしたとは言えない。いまのところはまだ、それに近いことはやったかもしれないとと思うばかりである。そして、ラシャド・ベッカーは今日もテーブルに機材を並べ、ライヴ・パフォーマンスを続けている。

 それにしてもピート・スワンソンにジェイムズ・プロトキンと、マスタリング・エンジニアから知名度を挙げていく才能が多いのはなにかの偶然?

Arto Lindsay - ele-king

 ノーウェイヴの実験性とブラジル音楽の官能性を繋ぐことができる唯一無二のアーティスト、アート・リンゼイ。彼が卓越した音楽家であることはすでに知られているが、しかしその本質がどこにあるのかを見極めるのは非常に難しい。たとえば彼はいまはなき昔の『ele-king』でドラムンベースの偉大さについて語ったり、アウトキャストやウータン・クランに熱中していることを告白したりする一方で、暴力温泉芸者やメルツバウ、ボアダムスを褒め称えてもいる。「僕の見方だと、ノイズもポップなんだ。一般的にはそうは考えられてないけど。同じものを違った面から捉えたものなんだ」。そう言って彼は自身の作品でノイズとボサノヴァを両立させてみせるのである。
 『別冊ele-king』第5号は、そんなアート・リンゼイの全景を俯瞰する。
 あるときはノーウェイヴの尖鋭として、あるときはギターの弾けないギタリストとして、あるときはフェイク・ジャズのパフォーマーとして、あるときはアヴァン・ポップの職人として、あるときはブラジル音楽のプロデューサーとして、これまでじつに多様な音楽を世に送り出してきたアート・リンゼイ。その幼少期から現在までを、そしてDNAから最新ソロ・アルバム『ケアフル・マダム』までをあますところなく語り、みずからその多面性を振り返った最新ロング・インタヴューも興味深いのだけれど、それ以上にカエターノ・ヴェローゾとの対談がすさまじい。レヴィ=ストロースからゴダールまで、人種差別から脱構築まで、とてもミュージシャン同士の会話とは思えないほど人文学的な単語が飛び交っており、そのさまはまるで学者同士の対談のようだ。もちろん音楽の話題も多岐にわたっていて、ジェイムス・ブレイクからディアンジェロまでもが次々と俎上に載せられていく。
 いったいアート・リンゼイとは何者なのか? ノーウェイヴ世代最高のこの知性の本質を、ぜひあなた自身の目で確認してみてほしい。

別冊ele-king 第5号 アート・リンゼイ――実験と官能の使徒
contents


【LONG INTERVIEW】

●アート・リンゼイ、新作『ケアフル・マダム』とヒストリーを語る
Part 1:ニューヨーク前史から90 年代へ(松村正人/高橋龍)
Part 2:ソロ活動期(中原仁)
Part 3:付言と断片もしくは解題(松村正人/高橋龍)

【CROSS REVIEW】
●『ケアフル・マダム』クロスレヴュー(高見一樹、吉本秀純、松林弘樹)

【INTERVIEW】
●メルヴィン・ギブス「音の干渉主義者の名参謀」
●イクエ・モリ「いつでも、自分にすごく近い音楽をやってきた」
●菊地成孔「ジョイフルなのにエレガント」
●今福龍太「ブラジルから広がるアメリカの地平」
●オノ セイゲン「誰も聴いたことのない音楽をつくるとなったとき
 最初にコラボしたのがアートだった」
●三宅純「彼の魅力は自己矛盾を抱え込みそれを隠さないところです」

【COMMENT】
●大友良英:アート・リンゼイのギターを語る
●ドローイング、コラージュ、テキスト:やくしまるえつこ

【DIALOGUE】
●中原昌也×湯浅学「ノーウェイヴ放談」

【CRITIQUE, COLUMN, ESSAY】
●畠中実「初期アート・リンゼイにおける特異性」
●吉田ヨウヘイ「フェイクジャズは、その後本当のジャズになった」
●佐々木敦「歌えるか歌えないのか、弾けないのか弾かないのか、
 そんなことはどっちでもいいじゃないか」
●吉田雅史「イニシャルAL の裂け目たち」
●恩田晃「都市の変調」
●ケペル木村「アートをアートたらしめるもの」
●江利川侑介「ブラジルの混淆」
●ケペル木村「ディスクガイド アート・リンゼイから聞こえるブラジル音楽」
●松山晋也「表層の官能」

【SPECIAL】
●アート・リンゼイ「トロピカリスタたち」
●特別対談:
 アート・リンゼイ×カエターノ・ヴェローゾ(松村正人/宮ヶ迫ナンシー理沙)

【DISCOGRAPHY】
●アート・リンゼイ セレクテッド・ディスク・ガイド


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別冊ele-king 第5号
アート・リンゼイ――実験と官能の使徒
松村正人(編)
2017/1/7 Release
本体 1,850円+税
ISBN:978-4-907276-73-7
https://www.amazon.co.jp/dp/4907276737

DAVID BOWIE is - ele-king

 1年前の1月10日に亡くなったデヴィッド・ボウイ。その活動を振り返る大回顧展「DAVID BOWIE is」が天王洲の寺田倉庫G1ビルにて、1月8日より開催されている。
 この展覧会は生前ボウイがリリースした作品群を時系列に追いながら、その背景やインスピレイション・ソースまでを含め一挙に展示する試みで、300点を超えるその展示物からはボウイのチャレンジ精神や試行錯誤がじわじわと浮かび上がってくる。会場ではヘッドフォンが貸し出され、その場その場で音楽や喋りが聞こえてくる。
 ボウイは正真正銘のスターだった。それはすなわち、彼を眺める者の数だけ「デヴィッド・ボウイ」という像が生み出されていったことを意味する。彼は中身になんぞには興味を持たず、ただ表面のみに拘った……とも言われたほどだった。この展覧会は、その星の数ほどあるボウイというイメージを、その都度その都度あらためて生起させるものでもある。
 最高のディレッタントであったボウイの、引用元も展示されている。たとえば、1967年であれば、まだテスト盤だったヴェルヴェット・アンダーグラウンドのファースト、ウォホールの映画『チェルシーガール』のポスター、J.G.バラードのディストピア小説群……、ほかにも自筆の詞や譜面、衣装、ベルリン時代に彼が描いた三島由紀夫の肖像画や自画像、イーノから譲り受けたというEMSなどなど、じつに多角的にボウイを描いている。
 ぜひあなたも会場を訪れて、あなた自身のボウイ像を確認してみてほしい。記念グッズ販売コーナーもあります!

スーパースター、デヴィッド・ボウイのすべてを、
貴重な作品や衣装、音楽と映像で、完全マスター。
世界が熱狂した奇跡の展覧会を見逃すな。



2013年に英国の芸術とデザインの殿堂、 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館で開催されて以来、世界9都市を巡回。 約150万人を動員した 『DAVID BOWIE is』 が、アジア唯一の開催地となる日本に上陸する。 この壮大なスケールの回顧展には、 デヴィッド・ボウイのキャリアを網羅する300点以上の貴重なアイテムが集められ、誰でもなりたい人間になれるのだと教えてくれた不世出のアイコンが、人々をインスパイアし続ける理由を解明。 マスコミの絶賛を浴び、 ファンを熱狂させ、 各地で大ヒットを博した最高のロックンロール・ショウがもうすぐ始まる!

DAVID BOWIE is

【開催期間】
2017年1月8日(日)~4月9日(日)
休館日: 毎週月曜日(但し1/9、3/20、3/27、4/3は開館)

【開館時間】
10:00~20:00
毎週金曜日は21:00まで。入場はいずれも閉館1時間前まで。
※入場時間枠等に関する詳細はこちら(https://davidbowieis.jp/tickets/#tickets-sch)をご覧ください。

【会場】
寺田倉庫G1 ビル(天王洲)
住所: 東京都品川区東品川二丁目6番10号

【料金】
一般: 2,400 円(2,200 円)
中高生: 1,200 円(1,000 円)
( )内は前売り、小学生以下は無料。
詳細はこちら(https://davidbowieis.jp/tickets/)をご覧ください。

【主催】
DAVID BOWIE is 日本展実行委員会

【企画】
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館

【オフィシャル・サイト】
https://davidbowieis.jp/

Flying Lotus × Anderson .Paak - ele-king

 LAシーンの要人フライング・ロータスと、いまノりにノっているアンダーソン・パーク──これは面白そうな組み合わせだ。
 1月10日、あるひとりのファンが「世界はアンダーソン・パークとフライング・ロータスのトラックを必要としている」というツイートを投下。するとなんとフライロー本人がそのツイートを引用し、「あるよ。もうすぐ!」とレスポンスを返したのである。しかもそのツイートを今度はアンダーソン・パーク本人が引用し、「まだ準備できてないけどね!」とツイート。やりとりはそこで終わり、それ以上の情報は明らかにされていないが、もうすでにフライローとアンダーソン・パークはコラボレイションをおこなっており、近い将来それが何らかの形で発表されると見ていいだろう。続報を待つべし。

RPR Soundsystem - ele-king

 覚えているだろうか? 数年前、名門ミックスCDシリーズ『Fabric』がルーマニアン・アンダーグラウンド・シーンにジャックされたことを。『Fabric 72』では Rhadoo が、『Fabric 68』では Petre Inspirescu が、『Fabric 78』では Raresh が立て続けに起用されていたけれど、この3人はリカルド・ヴィラロボスとならんで世界中の様々なフェスでヘッドライナーを務めるルーマニアの重鎮たちである。
 東欧というのはある意味でもっともピュアな形で音楽が実践されているエリアで(先日お伝えした Khidja もその一例)、そのシーンは文字通りアンダーグラウンドなものだ。ルーマニアのシーンを代表するかれら3人は [a:rpia:r] というレーベルの運営者でもあるが、その3人によるユニットが RPR Soundsystem である。滅多におこなわれないこのユニットでの公演だが、来春4月1日、かれらが恵比寿に降り立つことが決定した。じつはかれらの来日公演は2年前にも実現しているのだけれど、今回はオフィシャルVJの Dreamrec も加わった「完全体」としてのパフォーマンスとなる。
 また、その直前の3月31日には DOMMUNE にて特別番組が放送されることも決定している。お見逃しなく!

RPR SOUNDSYSTEM with Dreamrec VJ @LIQUIDROOM

あの奇跡の夜は序章だった。世界のミニマル・アンダーグラウンド・シーンのトップコンテンツ、RPR SOUNDSYSTEM (Rhadoo, Petre Inspirescu, Raresh / [a:rpia:r] ) が、今回オフィシャルVJのDREAMRECを伴った完全体での究極公演を実現! 来春LIQUIDROOMにて開催決定!!

近年の世界のアンダーグラウンド・ミュージックを席巻するルーマニアン・シーンのボス、Rhadoo, Petre Inspirescu, Raresh。2015年4月4日に実現したその彼ら3人によるRPR SOUNDSYSTEMのLIQUIDROOM公演は、わが国のクラブ・シーンの歴史に偉大な足跡を残してくれた。お客さんの熱気、場内の雰囲気、彼らのパフォーマンスの内容、どれを取っても最高という言葉では言い尽くせぬ、それまで経験した事のないほどの夢のような素晴らしい一夜であり、その熱狂は日本のシーンに語り継がれる歴史の1ページとしていまも記憶に新しい。

あの興奮から丸2年。彼らがあの同じ場所に帰ってくる。
さらに今回は彼ら [a:rpia:r] のオフィシャルVJであるDreamrecの来日も決定し、彼らがついに完全体となる瞬間が訪れる。2016年2月にここLIQUIDROOMでおこなわれた『Beat In Me feat. Rhadoo with Dreamrec VJ』で見せた彼のヴィジュアル・パフォーマンスは、日本のシーンにおいてかつておよそ目にした事のない斬新なイメージでの露出で、そこに集ったクラバーたち全員に強烈なインパクトを与え、2015のRPR3人による公演にひけを取らぬ最高のパーティであったとの評価を各方面から獲得する事となった。

現在の世界のクラブ・ミュージック・シーンにおける紛れもないトップ・コンテンツであるRPR SOUNDSYSTEMに、このDreamrec VJのヴィジュアルを加えた今回のこのキャスティング。アンダーグラウンド・ミュージック・シーンにおいてこれ以上の表現はない、最上級の音と映像の究極の形を今回初めて日本のファンに見せる貴重な機会となる。

戸川純 with Vampillia - ele-king

 『20th Jun Togawa』が出た頃だから、もう16年も前のことになる。2人目を妊娠中の妻が緊急入院したため1才ちょっとの長男の乳母車を押してインタヴューに行かねばならぬ事態に何度か見舞われた。そのうちの1回が戸川純だった。息子が突然泣き出すためにインタヴューは何度も中断したのだが、戸川はまったく動じることなく、終始穏やかな表情のまま取材は終了した。時に意地悪な質問に対する受け答えもまことに冷静で思慮深い。不思議ちゃんとかメンヘラとか呼ばれてきたパブリック・イメージからはほど遠いそのまっとうすぎる姿を前に、僕はいささか忸怩たる思いを抱きつつ、戸川純という人の本質とポップ・スターとしての難儀さに気づかされたのだった。
 今、改めて思う。戸川純は、常にまっすぐで、ひたむきで、時にサーヴィス(思いやり)過剰な表現者である、と。難解で古めかしい言葉遣いやネジが外れた感じの身振り、面妖な衣装などは彼女をキュートな劇物として際立たせ、80年代日本サブカルチャー・シーン(もしくはパルコ/YMO環境)の変種イコンへと祭り上げたわけだが、しかしけっして、彼女は奇をてらっていたわけではない。ひたすらに自身の心情に忠実に寄り添い、噴き上げる情熱(情念ではなく)のまま愚直に表現していたにすぎない。そして、そこに常につきまとう不器用さとサーヴィス精神が結果としてエクストリームな情景を描き出し、リスナーの間に膨大な量の誤解や曲解や妄想が生まれていったのだと思う。もっとも、この誤解や曲解や妄想が戸川自身に戸惑いや落胆だけでなく喜びや新たな闘志を与えていたのも事実だとは思うが。

 セルフ・カヴァ集であるこのニュー・アルバムから一貫して伝わってくるのは、まっすぐでひたむきで不器用で情熱的な戸川純という人の“生への執念”である。オープニング曲として“赤い戦車”が選ばれていることが、それを如実に物語っていよう。ヤプーズの3作目『ダイヤルYを回せ』(91年)のラストに収められていたこれこそは、戸川の人生のところどころで首をもたげてきた“死への誘惑”に抗わんとする生への獰猛な意志が、曲名から歌詞、サウンドに至るまで最もダイレクトに表出した名曲である。元々が重厚な音作りだったが、ここでは更にツイン・ドラムとストリングスを活かした Vampillia の爆発的演奏を従えて戸川は覚悟の強さのほどを改めて宣言している。最初にこのオープニング曲を聴いた瞬間、
本作に込められた戸川の思いが一直線に届き、握りしめた手に汗がにじんできた。
 以下、“好き好き大好き”や“バーバラ・セクサロイド”、ホラーすれすれの極端なラヴ・ソング“肉屋のように”などこれまた自身の生存本能の獰猛さを噛みしめるように歌い上げる一方、DNAレヴェルで戸川の体内に埋め込まれたキーワード“諦念”に向き合った“蛹化の女”“諦念プシガンガ”など初期人気曲が並ぶ。あと“12階の一番奥”なんて意外な曲もあったり。選曲に関しては戸川と Vampillia のどちらがイニシアティヴをとったのかは知らないが、結果的に彼女の新たなベスト盤と言ってもいい内容になっている。全10曲中、雅な和風メロディに乗ったアルバム・タイトル曲だけは、本作のために新たに書き下ろされた新曲だが、これまた「何年経つても鳴ひてゐやふ」というフレーズなどからは彼女の“生への執念”がストレートに伝わってこよう。

 80~90年代に比べて歌唱力が衰えているのはまぎれもない事実、である。怪我に伴う数年間のブランクもあったりして、かつては3オクターヴ半を誇った声域はかなり狭くなっているし、何よりも歌声そのものには艶がない。セルフ・カヴァであるだけに、その衰えぶりは一見残酷だ。が、その衰えを誰よりもわかっているのは間違いなく戸川自身のはず。彼女はしかし、ここで音源の修正などはおこなわず、生のままで晒した。衰えたのなら衰えたままの姿にきちんと対峙し、齢を重ねた今の自分にしか表現できないものがあるということを確認したかったのだと思う。
 たとえば“好き好き大好き”。ここにあるのは、ドラマティックな7つの声色が無邪気さと不気味さと華麗さを暴力的に錯綜させたオリジナル版とは違う、音程をふらつかせながら必死で絞り出された歌声である。20代の戸川が出刃包丁をかざしながら放った「愛してるって言わなきゃ殺す」という決め台詞は、“もののあはれ”をわきまえた複雑な表情へと変わっているのだ。“バーバラ・セクサロイド”の妖しい女もダニエラ・ビアンキやハル・ベリーではなく、靴先に毒針を仕込んだロッテ・レーニャに変貌しているが、増えた皺の数を戸川はけっして恥じたりはしない。20代では描けなかった新しい情景や物語が、ここには確かにあるのだ。そして、このような表現も、Vampillia が戸川純という歌手の本質と魅力を慎重かつ的確に見極め、楽曲ごとに起伏に富むアレンジと演奏でバックアップしたからこそ可能だったのだと思う。えてしてバースト感だけが注目されがちのVampillia にとっても、今回のコラボレイションからは得るものが多かったはずだ。

 歌手デビューから35年。諦念という名の重荷を背負いながら、他者の道とけっして交差することのない一本道を歩き続けてきた戸川純。鳴くのはホトトギスではなく自分なのだという彼女の覚悟を、「生きる!」という声を、今しっかりと受け取った。

Brian Eno - ele-king

小林拓音

ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつむすびて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人と栖(すみか)と、またかくのごとし。鴨長明『方丈記』浅見和彦校訂

 あまりにタイトル数が多いので数え方が難しいが、本人単独名義としては19作目ということになるのだろうか。このたびリリースされたブライアン・イーノの最新作『Reflection』は、『Discreet Music』(1975年)から開始された試みの最新の成果であり、『Thursday Afternoon』(1985年)や『Neroli』(1993年)、そして『Lux』(2012年)の系譜に連なる作品である。それはすなわちアンビエントであり、「Thinking Music」であり、「ジェネラティヴ(自動生成的)」な音楽である。昨年の『The Ship』でそれまでのスタイルとは異なる方向性を模索し、果敢に自身のディスコグラフィに抗ってみせたイーノだが、そのような実験的なチャレンジを経て彼はいま、素朴に「原点」をリフレクト=回顧したくなったのだろうか。『Reflection』は多くのリスナーが彼に求めているだろう王道の、じつにイーノらしい長尺アンビエント作品に仕上がっている。
 とはいえかつてスクラッチ・オーケストラやロキシー・ミュージックに参加していた彼の「原点」がどこにあるのかというのは難しい問題で、本人もライナーノーツにおいて1965年にアート・スクールで制作した作品のことを回想しているが、本作に『Reflection(反射=反映=回顧=熟考)』というタイトルが冠せられているのは、そのようにこの作品がイーノ自らに過去を振り返らせ、自身と対話する機会を与えるものだからである、とひとまずは考えることができる。つまり本作のテーマはさしあたりパーソナルなものであり、その点においても、タイタニック号の沈没と第一次世界大戦という出来事を現代の世界情勢へと接続しようと試みた前作『The Ship』とは対照的な作品となっている。
 本作ではイーノらしいベルのような電子音が優しいメロディを紡ぎ出し、それがときおり挿入される低音や風のような電子音とあいまって穏やかな空間を創出している。音の質感は“The Ship”の冒頭部分に似ているが、『The Ship』のような音声の実験やノイジーな展開が繰り広げられることはない。CD盤『Reflection』には全1曲54分のトラックが収められており、その形式は『Thursday Afternoon』や『Neroli』と同じだが、さすがに当時とはテクノロジーの水準が異なっており、テクスチュアは今日的な感触を与える。アナログ盤『Reflection』は四つのパートに分かれており、その形式は『Lux』に似ているが、本作に『Lux』のような明るさはない。このように『Reflection』はイーノ節全開の王道アンビエント作品ではあるものの、かつての彼の諸作の二番煎じというわけではないのである。

 この作品が興味深いのは、それがiOS/Apple TV対応のアプリとしてもリリースされているところだ。イーノはこれまでも『Bloom』や『Trope』といったアプリをピーター・チルヴァースとともに開発しているが、本人名義のスタジオ・アルバムと連動した形でアプリを発表するのは今回が初めてである。なるほど、たしかにどれほど一回性を追求して作品を制作しようとも、それがCDやヴァイナルという形で公開される限り、音はデータとして固定されてしまい、彼の求めるジェネラティヴな音楽が真の姿を現すことはない。その問題を解決するために彼は今回、作品それ自体をアプリ化することに踏み切ったのだろう。
 イーノは本作を制作するにあたり、素材の選択、規則の設定、試聴という三つのプロセスを経由したことを明らかにしている。まずは音の素材やモードを選定し、次にそれらが自動的に結合しさまざまなヴァリエイションが生成されていくアルゴリズムを組んで、その後それを実際にプレイし聴き込んでいく。そしてその試聴の体験を第一・第二の段階までフィードバックさせ、改めて素材やアルゴリズムに調整を加える。気の遠くなるような作業だが、アプリ版『Reflection』にはその成果がリフレクト=反映されており、1日の時間帯や1年の時期に応じて異なるムードが生成されるよう綿密にルールが設計されている。
 ということは、CD盤『Reflection』は、無数に生成される本来の『Reflection』から任意のパターンを切り取った、ある種のサンプルのようなものなのだろうか? どうやらことはそれほど単純ではなく、イーノ本人はアルバムとアプリがもたらす聴取体験は別物だと考えているようだ。つまり同じ『Reflection』という名のもとに、既存のアルバム概念を踏襲したフィジカル盤と、無限に音を生成していくソフトウェアのふたつが共存しているということになる。では、なぜそれらに同じタイトルが冠せられているのか? 本作の核心は、このふたつのヴァージョンの並存にこそある。

 アプリ版『Reflection』では、起動するたびに異なる音の組み合わせが発生し、二度と同じ展開が訪れることはない。他方CD盤『Reflection』では、プレイするたびに何度も同じ展開が訪れる。しかし、では「同じ」とは一体どういうことだろう?
 ミュージック・ラヴァーなら一度は経験したことがあるはずだ、同じであるはずの音源が同じようには聴こえない、聴こえてくれないという事態を。あなたはある曲を再生し、享受し、感動してもう一度再生ボタンを押す。けれど、ついたったいま体験したばかりの感動がまったく同じように生起することはない。不安に駆られたあなたはもう一度再生ボタンを押すが、そのときに訪れるのは一度目に再生したときとも二度目に再生したときとも異なる感動である。あなたは不思議に思い、改めて翌日また同じ曲を再生してみる。同じ部屋、同じ再生装置、同じ音源であるはずなのに、やはり昨日と同じようには聴こえてくれない――
 当たり前の話ではあるが、聴き手は生きている。それはつまり、リスナーは決して時間の外部へと逃れることなどできないということだ。いまのあなたは10分前のあなたとは違う。そのことに自覚的であろうがなかろうが、あなたは10分という時間が過ぎ去った後の世界を生きている。その10分の間に、あなたの感情や気分や体調は変化している。だから今日のあなたは昨日のあなたではないし、明日のあなたも今日のあなたではない。

 ふたつの『Reflection』がリフレクトしているのは、音の送り手であるイーノと音の受け手であるあなたというふたりの存在だ。絶えず変化し続け、二度と「同じ」状態を発生させることのないアプリ版『Reflection』は、ブライアン・イーノというアーティストが長年追求してきたジェネラティヴな試みを、現時点でもっとも適切にリフレクト=反映する作品である。それと連動しながら、しかしそれとは異なりつねに「同じ」状態を発生させるCD盤『Reflection』は、あなたというリスナーが刻一刻と変化し続けている事実をリフレクト=反射する。CDに刻印されたデータがどれほど「同じ」であろうとも、聴取はつねに一回的である。それは、あなたというリスナーもまた「同じ」主体でありながらつねに変化し続けているからだ。遷移的なアプリ版と不変的なフィジカル盤とをセットでリリースすることによってイーノは、まさにそのような聴取の一回性を、ひいてはあなたという存在の一回性を告げ知らせようとしているのである。『Reflection』は、音楽がはかないということの、そしてそれを聴くあなた自身もまたはかないということのリフレクションなのである。
 イーノは本作を制作する上で、「流れる川のほとりに座っている時」を念頭に置いている。曰く、「そこにあるのは同じ川だが、流れる水は常に変わり続けている」。日本のリスナーはすでにこの着想になじみがあるはずだ。「ゆく河のながれは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつむすびて、久しくとどまりたるためしなし」。このあまりに有名な書き出しによって導かれるのは、震災や火災、遷都や飢饉などのルポルタージュであった。かつて鴨長明は過酷な現実を目の当たりにし、情勢の不安定さを「はかなさ」として抽出してみせたのである。そのことを思い返すとき、イーノが悲惨な世界に向き合った『The Ship』というヘヴィな作品の後に、穏やかで二重にはかないこの『Reflection』を世に問うたことの意味が見えてくるだろう。それは、彼による新年のメッセージを読んだ者ならもう気づいていることである。
 まずは落ち着こう、と。そしてリフレクト=熟考することからはじめよう、と。いや、世界にたったひとりのかけがえのないあなたはもう、すでにリフレクト=熟考しはじめているはずだ、と。

小林拓音

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野田努

私は演奏することよりプランを作ることのほうが好きだったため、いったん機械を作動したら、ほとんどあるいはまったく私の側からの介在なしに音楽を作り出しうるような状態やシステムに興味が惹かれていた。1975年『ディスクリート・ミュージック』イーノ自身によるライナー

私は聴くことができて、そして無視することもできる曲を作ろうとしていた。1975年 前掲同

 

バイヤールはこの曲のあるところでは記譜されているテンポの約半分で演奏している。そして私は彼の判断の素晴らしい賢明さに敬意を表して、もっと遅いテンポでやった。1975年 前掲同

ある環境におけるバックグラウンドとして特別に考案された音楽のコンセプトは、1950年代、Muzak社によって提唱された。1978年『ミュージック・フォー・エアポーツ』イーノ自身によるライナー

 あらたまって書くのも野暮な話だが、ブライアン・イーノの先見の明の非凡さに疑いの余地はない。彼がアンビエント理論を打ち立ててから40年後の未来には、Muzak社のバックグラウンド・ミュージックのテンポを遅らせた反復=ヴェイパーウェイヴまで含まれることになる。それはしかしデジタル的退廃で、「思考のための空間」を導くものかどうかは怪しいところである。
 『リフレクションズ』は、感触で言えばここ最近の彼のアンビエント・ミュージックそのもので、コンセプトも、40年前に彼がジャケットの裏面にしたためたそれから逸れるものではない。つまり、「いったん機械を作動したら、ほとんどあるいはまったく私の側からの介在なしに音楽を作り出しうる」ことの最新型だ。ことにアプリでは,その都度その都度自動生成される曲が流れる。そのアンビエンスはバッテリーがもつ限り、終わりがない。このようにイーノは忌々しいスマホ時代に対応しているわけだが、ぼくのまわりにはスマホを所有しないイーノ・ファンもいる。

 『ディスクリート・ミュージック』をはじめとする初期の名作には、牧歌的と言ってもいいほどの楽天性があった。イーノは自らが影響を受けたゴスペル音楽のことを“楽天主義のメッセージ”と形容しているが、自分の体験から言っても教会でゴスペルを聴くということには、とにかくなんだかよくわからないけど良いことあるよという、信仰心のない人間をも前向きにさせる力がある。そこまで際だったものではないにせよ、1978年の定義に基づけばアンビエントとは「平穏を導くもの」で、実際初期の作品にはロマンティックなムードもある。そうしたある種の情緒は、もうここ数年のイーノ作品にはない。曲はより物質的で、物理的だ。
 『リフレクションズ』のジャケが、どうにも気になる。黒のなかをブライアン・イーノ本人の幽霊のように暗い表情が浮かんでいる。紙エレキングvol.19の表紙を見て欲しい。ガラス板にreflections(反射)しているのは、iPhoneを構えているイーノだが、それがまた何とも茫洋と頼りなく見えるのだ。
 BBCによれば、2016年の流行語のひとつに「ポスト・トゥールス(ポスト真実)」があるという。いや、まったく……、時代はいまP.K.ディックというわけだが、要するに、人にとって重要なのはもはや真実ではない。“自分にとって都合が良い”真実なのだと。トランプの醜さという真実よりも、雇用を増やしてくれるという真実を信じるように。細分化されたメディア環境がポスト・トゥールス社会を可能にしている(スマホの話じゃないが、いまは音楽の享受/再生のやり方も細分化し過ぎている)。
 本当に何がなんだかわからなくなっているというのもある。テレビを点けると討論番組をやっている。誰かがリベラルの敗北をしゃべり出す。リベラルは口当たりのいい理想ばかりを並べて経済をないがしろにしてきたからこんなことになったんだと唾を飛ばす勢いで言う。これもまた2016年の風景のひとつだが、2017年はその延長にある。
 近年のイーノは、まるで、あたかも、若き日に多大な影響を受けたコーネリアス・カーデューの政治活動を追っているかのようだ。1981年に事故死したUK現代音楽の巨匠は、シュトックハウゼンに学び、やがてジョン・ケージと出会い、演奏し、晩年は活動家として、マルクス主義者として生きた。そしていまブライアン・イーノは自ら矢面に立って、真摯な態度で政治的意見を述べる。政治コメンテーターも右往左往するポスト・トゥルースの時代、アーティストが政治に言及するのは昔とは違った意味でのリスクがある。知性派として知られるイーノだが、彼は間違いなく情熱家でもあり、つい先日も、ブレグジットで思い知った自らの無知を打ち明けながら、ポリティカル・メッセージを新たに公表したばかりだ。
 アンビエント・コンセプトにおける「無視することも可能」という説明は、真であり、注意深く聴かなければわからないという逆説でもある。『ディスクリート・ミュージック』はぼくをいまでも心地よくさせてくれるが、『リフレクションズ』は上げも下げもせず、むしろ醒めさせ、リスナーを冷静さに導こうとするかのようだ。激烈だった2016年が終わり、2017年がはじまった。紙エレ年末号の特集に沿って言えば、いまぼくたちにできること──しっかりと注意深く聴くこと。

ひとつは作曲、もうひとつが演奏、そして3つめは聴くこと。 ジョン・ケージ(1955年「実験音楽」)

野田努

NINJAS - ele-king

 1月6日にリリースされたNINJASのデビュー・アルバム『JAP』だが、これは面白い! シニカルで捻りの効いたドライな──つまりオネストで直球な涙ぐましさとは真逆の作品になっている。ダンサブルで痛快な、これぞナンセンスの塊。


NINJAS - SOCCER


NINJAS - JAP
Pヴァイン

SynthpopNew Wave

Amazon

 車に乗りながら聴くと最高なんですよ、これが。さてこのNINJAS、以前からライヴ活動を精力的にやっているようで、すでに熱狂的なファンもいるらしい。バンドのスローガンは〈あなたの嫌いなものが好き〉。ニューウェイヴのささくれ立った感性って、もうとっくの昔に死滅したものと思っている方も少なくないと思いますが、こんな風に受け継がれるものなんですね。

 なお、1/21(土)に半蔵門ANAGRAで行われるリリース・パーティにはHair Stylistics、DOOOMBOYS、KURUUCREWが出演。
 DJにはMr.マジックバジャールa.k.a.カレー屋まーくん、K.E.I.(VOVIVAV)、NINJAS『JAP』を手掛けたAKAKI NAMPEIの展示も行われる。
 1/27(金)には、青山蜂で定期的に開催されているUNDER 30 の実力あるアーティストが集まるPARTY「NEW CHAMPUR」と、NINJAS主催の「NINJAHOUSE」このふたつのPARTYが、NINJAS 2nd ALBUM”JAP”リリースパーティSPと称し共同開催。
 ジャンルも世代も超え、CAT BOYS、MAMMOTH、OMSB×Hi'spec、KMC×STUTS、ENERGISH GOLF、原島”ど真ん中”宙芳…他多数のアーティストが出演。こんなに豪華な顔ぶれが集まるのはこの夜だけ!

【イベント情報】

〈NINJA HOUSE - NINJAS「JAP」release party!!!〉
2017/ 1/21(土) @半蔵門ANAGRA
OPEN: 18:00 / CLOSE: 23:00
\2000+1D

[LIVE]
NINJAS
Hair Stylistics
DOOOMBOYS
KURUUCREW

[DJ]
Mr.マジックバジャールa.k.a.カレー屋まーくん
K.E.I.(VOVIVAV)

[EXHIBITION]
AKAKI NAMPEI

INFO:
https://www.anagra-tokyo.com/


〈NINJA HOUSE × NEW CHAMPUR - NINJAS「JAP」release party SP!!!〉
2017/ 1/27(金) @青山蜂
OPEN: 21:00 / CLOSE: 5:00
\2000

[3F]
LIVE:
NINJAS
CAT BOYS
MAMMOTH
OMSB×Hi'spec
KMC×STUTS
ENERGISH GOLF
YELLOW UHURU × yolabmi

DJ:
NIRO
EMARLE

[2F]
Ackky(journal)
ULTRA INAZUMATIC DJs
Mr.マジックバジャール a.k.a. カレー屋まーくん
原島”ど真ん中”宙芳
hitori
kzy

[4F]
hisamichi
矢車
GAKI
DISKONION
Yasterize & HOTATE & HOSEPOSSE2017
fatP

[VJ]
PETA
HAMARO

[FOOD]
ネグラ

[SHOP]
Xion Tokyo
DELTA CREATION STUDIO

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