「Nothing」と一致するもの

Mr. Mitch - ele-king

 かつて〈Big Dada〉が編んだコンピ『Grime 2.0』にトラックが収録され、その後〈Planet Mu〉からアルバムをリリースしたMr.ミッチ。やはりマイク・パラディナスの嗅覚は鋭いというべきか……いや、もはやそんな枕詞を添える必要はないのかもしれない。MC主体のグライム・シーンに対し「インスト」というオルタナティヴを呈示したパーティ/レーベル〈BoxedLDN〉をスラックらとともに主宰するこの才能がついに初来日を果たす。今回まわるのは、東京(7月22日)と大阪(7月29日)の2箇所。Double Clapperz(東京)や行松陽介(大阪)など、サポートの面々も強力なラインナップとなっている。いやこれ、行きたいっす……鬼のように溜まっている仕事をほっぽり出して、行きたいっす。


東京・大阪にMr. Mitchが初来日
-Boxedから羽ばたくインスト・グライムの才能-

ロンドンのアーティスト、Mr. Mitchが初来日を果たす。
彼自身はグライム、R&Bといったジャンル・リズムに囚われすぎず、ゲーム・ミュージックを彷彿とさせるメランコリックな音を実験的に拡張してきた。Yamanekoとのコラボ・ユニット、Yaroze Dream Suiteでは珠玉のシンセ・ミュージックをリリースしてきた。

そして、5月にはアルバム『Devout』をリリース。
アルバムのメロディはポップで忘れられないものが多く、いわゆる「クラブ・サウンド」を意識しすぎない世界観も独特である。

Album『Devout』試聴 - https://smarturl.it/devout

-Boxed -
ロンドンのインスト・グライムを代表するレーベル/パーティ〈Boxed〉(ボックスド)から羽ばたいたMr. Mitch。
Boxedは、それまでMCが主体だったグライム・シーンにおいて、Wileyをはじめとするグライム・クラシックの音楽性に注目し、それを拡張する新世代のアーティストとともにインスト・グライムを打ち出した。
いまや、ロンドンで不定期で開催されるパーティ〈Boxed〉は、400人以上を集めるパーティとなっている。

Rinse FMの〈Boxed〉でのレジデント番組

そんなMr. Mitchが初来日!

7/22 (土) - Mr. Mitch Asia Tour in Tokyo @ CIRCUS TOKYO
7/29 (土)- merde feat. Mr. Mitch @ COMPUFUNK RECORDS

初来日パーティはCIRCUS TOKYO、COMPUFUNK RECORDSの2ヶ所で開催。
東京はDouble ClapperzとVOIDからSkyfish、Gyto、Azel、Tumがサポート。
大阪は行松陽介、satinko、YOUNGANIMALらが共演、
Mr. Mitchと各地の色濃いアーティストが繰り広げる。

Laurel Halo - ele-king

 ファースト・アルバム『クアランティン』(2012年)は、モダン・アート作家の会田誠による『切腹女子高生』を用いたジャケットで、またボーカロイドの初音ミクを用いたプロジェクトにも参加するなど、日本文化にも何かと縁があるローレル・ヘイロー(インタビューでも細野晴臣や佐藤博から、池田亮司などの話題や影響が語られるなど、かなり日本の音楽にも詳しいようだ)。『クアランティン』はサウンドの面白さもさることながら、彼女の独特の歌が異彩を放っていた。うまいとかヘタという次元を超えた彼女の歌は、通常のポピュラー・ソングの形式とも切り離されたところがあり(そもそも彼女はクラシック音楽をやっていて、そうしたトレーニングの中から独特の唱法を身につけたところもあるようだ)、それがテクノともIDMともつかない形容不能なサウンドと結び付き、ほかに見当たらない独特の個性を生み出していた。

 しかし、それ以降のセカンド・アルバム『チャンス・トゥ・レイン』(2013年)、2枚組EP『イン・サイチュ』(2015年)では、インダストリアルでエクスペリメンタルなダブ・テクノ的インスト作品にフォーカスし、彼女の声は消えてしまった。そもそも『クアランティン』以前のシングルやEPは、むしろこうしたインストものが多く、彼女のライヴを作品化したようなものでもあった。『クアランティン』はトラックやビート以上に、彼女の声を前面にフィーチャーしたという点で、ほかの作品に比べ異色なものだったとも言えるわけだが、新作『ダスト』では再びその声の力を借りている。ただし、今回は必ずしも彼女自身の声ではなく、ゲスト参加したクライン、ラファウンダ、マイケル・サルたちの声のときもあり、歌詞の内容や曲自体のムードによって、それぞれ使い分けているようだ。『クアランティン』での歌は、それ自体の存在感によっていたところもあるわけだが、今回はほかの楽器やサウンドと同様に、イメージを伝える手段や道具という役割が強くなっている。初音ミクとの「コラボ」などを通じ、人間の肉声と非肉声、それぞれの特徴や特色を再認識し、それをより効果的に用いる研究の成果であると言えるかもしれない。

 歌詞や言葉、メッセージを伝えたいというシンプルな理由から、『ダスト』には多くの歌モノが含まれることになったそうだが、同時に副産物として、音楽そのものへのムードや色付けがなされていることも大きい。つまり、歌声が限りなく器楽化されたアルバムでもある。ブラジルの作家のアロルド・デ・カンポスの著書から引用された“サン・トゥ・ソーラー”は、比較的『クアランティン』の頃に近い作風。クラインとのヴォーカルのコンビネーションは、かつてのハーバート作品におけるダニ・シシリアーノの歌を思わせる。クラインとラファウンダが参加する“ジェリー”も同系の作品だが、ここでは同時にマクシミリアン・ダンバーのカウベルや、イーライ・ケスラーのパーカッションも存在感を放つ。特にケスラーのドラムやパーカッションはアルバム全体を通して重要な役割を果たしており、非常にミステリアスな“コイノス”あたりでも顕著だが、『ダスト』にトライバルでプリミティヴな要素を持ち込んでいる。ラファウンダの参加とともに、『ダスト』がワールド・ミュージックからの影響を感じさせるゆえんである。

 一方、“アーシュクリーチャー(ドイツ語でゴマスリという意味らしい)”でのサックス、“ナイト・オーネ・リシコ”でのヴィブラフォンと、随所にフリー・ジャズのイディオムが顔を覗かせるのも『ダスト』の特徴だ。マイケル・サルの詩の朗読のような歌、ダイアモンド・テリファーの虚空を切り裂くようなテナー・サックス、クレイグ・クローズの亡霊のようなエレピによる“フーズ・ウォン?”などは、まるでサン・ラーの世界を彷彿とさせる。“ブー・バイ”でのコズミックなフリー・インプロヴィゼイションも、サン・ラーそのものと言える。そうして聴いてみると、ジュリア・ホルターがチェロを弾く“ドゥ・ユー・エヴァー・ハップン”や“ライク・アン・L”におけるローレルのヴォーカルも、サン・ラー作品におけるジューン・タイソンの歌のように感じられる(ローレル自身がそれを意識したのかはわからないが)。ラファウンダの歌、クローズのキーボード、ケスラーのドラム、ヘイローのヴィブラフォンなどによる“シズィジー(惑星直列)”は、曲名そのものがサン・ラー的でもあり、ジャズを取り入れたハーバートの名作『ボディリー・ファンクションズ』を想起させる作品だ。

 ローレル・ヘイローにとって、『ダスト』は実験性とポップ性を両立させるものであるそうだ。われわれスナーにとっては、それをもっともわかりやすい形で示すのが“ムーントーク”だろう。風変わりな日本語で歌われるこの曲は、アヴァンギャルド、シンセ・ポップ、ニューウェイヴ・ディスコ、アフロ・ポップなどが混然一体となったもので、聴きようによっていろいろなものが見えてくるだろう(私自身はトム・トム・クラブからアーサー・ラッセルあたりを想起した)。ポップ性と前衛性を両立させる女性アーティストと言うと、ローリー・アンダーソンからビョークなどが思い浮かぶのだが、ローレル・ヘイローもそれを体現できるひとりに違いない。

K15 - ele-king

 欧米でのヴァイナル・ブームって、気まぐれな流行かと思っていたらそうでもないらしい。往年の名盤の重量級再発盤、人気アーティストの記念物的なヴァイナル化……もそうだが、ここ数年クラブの現場でヴァイナルをプレイするDJが、アメリカでもヨーロッパでも増えたとURのマーク・フラッシュは紙エレキングの取材のために答えてくれた。そーか、そうなのか。そのためプレス工場への注文がいっきに増えて、URのようなインディペンデント・レーベルのプレスは半年待たされるような事態になってしまったと。こんな状況に対してジャック・ホワイトが地元デトロイトに(デトロイトのインディ・レーベル限定の)新しいプレス工場を建てたといういい話もある。
 ぼくは今年に入ってからAppleからSpotifyに乗り換えたのだが、どうもこの手のストリーミング・サーヴィスは、作品それ自体に金を払っている感覚がないせいか、気に入った曲があっても半年後に繰り返し聴いているということがない。月額制なるシステムに違和感のある人間としては、精神的にも清々としない。便利であることは間違いないし、BGMとして聴く分にはいいのだろうけれど、音楽鑑賞を趣味の第一とする人間にはいまだ物足りないのが正直なところだ。
 もちろん自分が古い人間であることは重々わかっている。が、しかしこの古さはいま現在、新しさ/若さでもある。……なんつって、なんどか書いてきたように、ぼくは今日のインディ・レーベルは、19世紀のアーツ&クラフト運動的なるものだと考えているのだけれど、サウスイースト・ロンドンのペッカムを拠点に盛り上がっているジャズ/ブロークンビーツ/ハウスのシーンからは、魅力的な盤を作ればいまでも人は買ってくれるという信念のようなものを感じる。〈Rhythm Section International〉や〈22s〉(ないしは〈Eglo〉)がシーンの中心となるレーベルで、実際にここらから出ている作品のほとんどがクオリティが高く、まあなんというか、“良きUKらしさ”を継承しているのである。たとえは古いがローリング・ストーンズがそのデビュー曲にチャック・ベリーの当時あまり知られていない曲を選んだような、USブラック・ミュージックに対する研究心、そして模倣ではなく折衷することの面白さ──こうした伝統が確実にある。このシーンはまた90年代初頭のアシッド・ジャズとも似ている。要するに、まずは最初にUSのヒップホップありきなのだ。
 シーンの最重要人物のひとり、ヘンリー・ウー(今年に入って〈Eglo〉から出したEPも最高だった)がカニエ・ウェストを聴いて育ったように、K15も最初はヒップホップ(主にスラム・ヴィレッジやマッドリブ、ピート・ロック)から入り、UKガラージ/ドラムンベースからも入っている。それがやがてグレン・アンダーグラウンドやMAW、そして4ヒーローを知ることになり、あるいはスティーヴ・ライヒにまでその聴覚範囲を拡張している。部屋のレコード棚がひっくり返ったかのような、この雑然としたままの感覚が彼らの音源にはミックスされているわけだが、それはジャズ/フュージョンの響きを持って、(ヒップホップではなく)ディープ・ハウスと呼ばれるスタイルに落とし込まれている。ちなみにこのシーンは、ハウスのファンキーさを引き継ぎながら、直接的ではないがUSのロバート・グラスパーやサンダーキャットとも呼応している。そしてまた、少し前にnewsでも書いたように、東京の〈Soudofspeed〉や札幌のKuniyukiともリンクしている。素晴らしいことに、アンダーグラウンド・クラブ・ミュージックはいまでも風通しが良く、見晴らしがいい。

 長々と書いてそれなりの労力を使ってしまったので、以下、手短にまとめよう
 K15、名前はキーロン・イフィル。別名義はCulross Close(※バンド形態)。ヘンリー・ウーのWU15でも知られる彼の、K15名義の最新12インチ(2枚組)が本作で、リリース元はデトロイトのカイル・ホールのレーベル。K15は2014年にも同レーベルから2枚組を出している。クリスタル・ウォーターズの“ジプシー・ウーマン”をがっつりサンプリングした曲として日本でも話題になったが、この3年のあいだ、シーンはますます音楽的な艶めかしさを増している。
 ディーゴやカイディ・テイタムらが絡んでいることからもわかるように、90年代末の〈2000 Black〉周辺のブロークンビーツを彷彿させるのはたしかだが、この新世代たちには当然ダブステップ以降のビートのセンスが入っている。「Speed of Life」にもリズムの実験があるわけだが、少しでも低域を上げたら音が歪むくらいの低音、じつに硬めのキック音、アフロ・パーカッション、ジャズの香気とハウスのファンクネスは、決して後ろを振り返っていないようにぼくには感じられる。
 そして最後にもういっかい記しておくが、ネットで育った世代が、(全体からみればまだまだ少数だろうけれど)「家で聴くときはレコードだ」となっていることは面白い。だいたい音楽鑑賞の時間までスマホやPCと切り離されないなんて……そもそも健康に良くないし、ま、あと2~3年もすれば現在欧米で起きているヴァイナル・ブームが、遅れて日本にも押し寄せてくると思いますよ。

上野俊哉 - ele-king

 ルフェーヴルにとって「日常生活(everyday life)」とは批判の対象であると同時に、批判と抵抗の拠点でもあった。それは、あくまでも資本主義的な生活様式の反復であるかぎりで、単なる「日々の生活(daily life)」とは区別されている。しかし凡庸、惰性、退屈、反復としての日常生活のなかには、特定の強度と緊張や、活性化につながる瞬間=契機がありうることもまた事実である。批判と変革のカギは日常生活の外部からやってくるのではない。言い換えれば、批判と抵抗の場としての外部を日常生活それ自体の内部に瞬間的/一時的に含みこむことができる。 (本書より)

 『トレインスポッティング』の新しいヤツまだ観ていないんだけど、あの最初の話、まだ映画化される前のこと、90年代半ばの話ですね──、当時ele-king編集部に在籍していた英語力に優れた渡辺健吾は、原書を取り寄せ、その読破にトライしたのであった。アーヴィン・ウェルシュはすでに英ポップ・メディアで騒がれていたし、誌面では、スコティッシュ訛りの見出し(ex: toe ya/Ah'll beなどなど)が踊りはじめた時代だった。『トレインスポッティング』に関しては、当時のスコットランドの悲惨な現実を切り取ったなど定番の論評がいくつもあるが、ひとつ重要なことを忘れてもらっては困る。この本が証明したもうひとつの真実とは、サラ・チャンピオンも書いているように、クラブに夢中になっているようなバカは本など読まないだろうという、それまでの定説/偏見を覆したことだった。あの本はクラブ世代が読みまわし、ベストセラーにした。ゆえにアンダーワールドは(クラブ・カルチャーとは一見なんも関係のないように思える)映画の主題歌を担当しなければならなかった。

 ダンス・カルチャーは、昔はよくこう言われてきた。no lyrics, no messages, no faces, no poltics.....ゆえにロックよりも劣ると。そして『トレインスポッティング』以降、こうも言われるようになった。パンクでさえ取り締まりの対象にならなかったがレイヴ・カルチャーは法的に禁じられるほどのものとなった──と。
 そして“歌詞のない”、“フェイスレスで(スター不在の匿名的で)”“明確な政治的スタンスも持たない”ダンス・カルチャーに関する研究書は、ジャズやロックに劣らぬほど(いや、単体アーティストのファン・ブックを除けば、ヘタしたらそれ以上の研究の書が)刊行されている。まったく頭を使わないと思われた文化が、より知性を刺激する出版物を数多く出しているということは、じつに興味深い。
 レイヴ・カルチャーの歴史に関してはマシュー・コリンによる『Altered State』(1997)が名著として有名だが、サイモン・レイノルズの『Energy Flash』(1998)もよく知られるところで、まあ、後者には小難しい理屈を並べやがってという罵りもあるにはある。しなしながら、レイノルズよりもさらに小難しい理屈の徒=思想系であるKode 9が切り拓いたシーンのことを思えば、意地悪い雑言も小さく見えるだろう。日本ではいっときの流行のごとく誰も言わなくなったカルチュラル・スタディーズだが、ことUKに関して言えば、ポール・ギルロイ影響下のコドゥ・エシュンが『more brilliant than the sun』(1998)を出し、そして2000年代で言えば、カルチュラル・スタディーズ/フランス現代思想の流れを汲む故マーク・フィッシャーがダブステップ世代の哲学を繰り広げている(ベリアルを思想的に解釈したのはこの人である)。ちなみにゼロ年代のUKの大学生にかなりの影響を与えたフィッシャーは、『WIRE』誌の看板ライターとしても活躍し、その後音楽評論でも参照されることになる『Capitalist Realism』を2009年に発表している。上野俊哉の『アーバン・トライバル・スタディーズ』は、レイヴ・カルチャーをこうした思想系/文化研究/社会学のコンテクストにおいて読み解いた、日本では唯一の書物である(とくに日本のトランス・シーンに関しては詳述されている)。

 2005年に出版された同書が、今年の春に増補版として刊行されたのは、著者=上野センセ~がどこまで意識していたのかは不明であるが、タイミングとしては悪くない。2008年のゾンビー『Where Were U In '92?』が象徴的であったように(あるいはele-kingに上がったばかりのダブ・スクワッドのインタヴュー記事を読んでいただければわかるように)、あの時代のあの形態、ダンス・カルチャーから生まれたレイヴと呼ばれる文化運動形態(本書では“パーティ”と記されている)がいま見直されているのは事実だ。90年代を知らない若い世代のなかで、実際に新しいレイヴ・カルチャーが起きているのが現在なのである。(現代思想系を巻き込んでうねりをあげているこのあたりのUKでの展開は、7月14日刊行予定の紙エレキングの20号に掲載される高橋勇人の原稿を参照されたし)
 レイヴ・カルチャーというのは、90年代初頭にたとえばそれがストーンヘンジ・フェスティヴァルのような、60年代型対抗文化の流れと結びついたときに、紋切り型のポップの社会学をもって語られもしたが(ワタクシもそれをやってしまったことがあった)……、しかしこのいかがわしい文化は、そんなナイーヴな面構えをしていない。内面には無垢さばかりでなく、猥雑さも複雑に反射している。匿名的で、草の根的な大衆運動性をもってすれば、さらにまたどこかで爆発しかねないほどのポテンシャルはある。レイヴ経験者にはわかるだろう、何よりもそこにあるのは、圧倒的ないま/現在なのである。「批判と抵抗の場としての外部を」「日常生活それ自体の内部に」「含みこむことができる」、瞬間だ。そこにほのめかされる可能性──

 著者=上野センセ~は、『Altered State』を書いたマシュー・コリン同様に、このシーンへのあきれかえるほどの愛情があり、また、いまだに当事者であり続けている。年齢を考えると恐れ入る話だが、この増補版の長い序文には、匿名的なパーティ・ピープルのひとりであり、ダイナミックなダンサーであり、そして哲学好きの研究者である著者の経験/感覚/思考/感情が、ときにベンヤミンやアドルノ、粉川哲夫に立ち返りながら、ときにユーモアを込めて記述されている。ここ10年ほどの日本の政治運動についての著者の考察についても、ここぞとばかりに言葉を費やしている。もうひとつ。80年代のB級ニューエイジが高値で再発されている今日のニューエイジ・ブームには基本的に否定の立場であるぼくだが、上野センセ~のレイヴにおけるニューエイジ的なるものの再・再解釈には、シーンの細部も見渡せる立場の当事者ならではの大らかさ/注意深さがあり、かのクレオール主義者、今福龍太と共通する感性を見いだすこともできるかもしれない。が、しかしそうそう体よくまとめることができないのは、著者がいまもこのラディカルなレイヴ運動体の確実ないち部であるからだ。サッカーの試合中、選手は走りながら思考を働かせている。
 なんにせよ、本書においてもっとも重要なのは、たったいまもそれが起き続けているという感覚だ。物事をなにかと類型することで自己の論を振りかざすのが人の陥りがちなところだが、むしろ類型化しようにもできないもののなかにこそ契機を見いだすこと、それがこの20年著者が実践していること/ダンスし、思考に思考を重ねていることだと言えよう。本書はその成果であり、日本ではたった1冊の、過去の物語ではなく文字通りの意味で“アクチュアル”な、レイヴ(パーティ)文化研究の書なのである。

cyclo. - ele-king

 2001年に〈ラスターノートン〉からリリースされた、池田亮司とカールステン・ニコライによるユニット cyclo. のファースト・アルバム『. (ドット)』。ソフトウェアの計算ミスなどの「エラー」をテーマとした同作は、パルス音を駆使したグリッチ~ミニマルの名作だが、長らく廃盤となっていたため探し回っていた方も多いだろう。そんな同作が7月30日、装いも新たにリイシューされる。未聴の方はこの機会にぜひ。

世界のエレクトロニック・ミュージック~現代アート・シーンをリードする2人の天才アーティスト、池田亮司とカールステン・ニコライによるユニット cyclo. の原点となる 1st アルバムがパッケージも新たに奇跡のリイシュー! ソフトウェアの“エラー”から生まれた純粋なデジタル・サウンドのリズミカルなビートが構築していく小宇宙。

品番: PDIP-6564
発売日: 2017/07/30 (日)
タイトル: . (ドット)
アーティスト: cyclo. (サイクロ)
本体価格: 2,300円+税
フォーマット: 国内盤CD
JANコード: 4532813535647
レーベル: p*dis / Inpartmaint Inc.

※再発盤/紙ジャケット仕様
※ライナーノーツ付
解説: 國崎晋 (サウンド&レコーディング・マガジン編集人)

[トラックリスト]
01. C0
02. C1
03. C2
04. C3
05. C4
06. C5
07. C6
08. C7
09. C8
10. C9

https://www.inpartmaint.com/site/20358/

ATOLS - ele-king

 最近日本の音楽の話題はコーネリアスで持ちきりだけれど、先日リリースされたばかりの『Mellow Waves』を買ったあなたは、このATOLSのこともチェックしておかなければならない。いやもちろん、知っている人はずっと知っていたと思うが、彼は90年代のIDMに影響を受けたプロデューサー兼ヒューマンビートボクサーで、かつて『サンレコ』誌にて実施されたコーネリアスのリミックス・コンテストでは優秀賞を授かっており、すでに多くのアルバムをリリースしている。
 そんな彼がここ数ヶ月、立て続けに興味深いリリースを続けている。まずは3月に発表された“常世”を聴いてほしい。

 よく知られているように、日本はとうの昔に高齢化社会を迎え、その後高齢社会も通り越して、いまや超高齢社会となっているわけだけれど、ではそんな社会における音楽やサブカルチャーっていったい何なのだろうか? そんな疑問を投げかけているのがこの“常世”である。「Tokyo」と「Tokoyo」がかかっているのもおもしろい。
 その後、5月初頭に壮大なエレクトロニック・チューン“Future Weapon”をリリースしたATOLSは、続けざまに新たなシングル曲“リアリティーのダンス”を発表している。

 ダンスホールである。この曲は昨年のリアーナやドレイクの文脈へと接続することができるし、さらにエクスペリメンタルな要素が加わればイキノックスまで橋を架けることも可能だろう。“常世”にせよ“リアリティーのダンス”にせよ、ATOLSはたしかに「いま」を見つめている。今後の彼の動向から目が離せない。

Félicia Atkinson - ele-king

 フランスの電子音楽家フェリシア・アトキンソンの新作が〈シェルター・プレス〉からリリースされた。活動初期には〈ホーム・ノーマル〉や〈スペック〉などからアンビエントな作品をリリースしていた彼女だが、2015年に同〈シェルター・プレス〉から発表した『ア・レディメイド・セレモニー』あたりから作風がよりエクスペリメンタルな音響作品へと変化。2016年に〈ルーツ・フェスタ〉の主宰としても知られるアンビエント/サウンド・アーティスト、ジェフリー・キャントゥ=レデスマとのコラボレーション作品『コム・アン・スル・ナルシス』をリリースしたことで、「2010年代的エクスペリメンタル・ミュージック・アーティスト」としての存在感が再浮上してきた(その意味で、フェリシア・アトキンソンの創作活動には2015年前後を境に大きな変化と断絶を聴き取ることは可能のはず)。

 本作『ハンド・イン・ハンド』は、フェリシア・アトキンソンの新たな代表作としてカウントすべき傑作である。少なくとも今年前半にリリースされたエクスペリメンタル・ミュージック/電子音楽の中でも格別の出来栄えを示している。昨年あたりからやや飽和気味ともいえるこの種の音楽にあって個性と洗練が絶妙なバランスで同居している稀なアルバムに仕上がっているのだ。

 ロバート・アシュリーやジョアン・ラ・バーバラなど電子音楽史にその名を残す巨匠たちからインスパイアを受けたとされる本作は、電子音楽/ミュジーク・コンクレートの系譜にあるともいえるが(じっさい、GRMのフェスで演奏されるという)、同時に〈ポッシュ・アイソレーション〉からリリースされるノイズ作品のような衝動と色気が同居するような現代性も強く刻印している。この境界や流域の越境性において、2017年現在のエクスペリメンタル・ミュージック/ノイズ・サウンドとして格別な存在を刻み込んでいるアルバムとなっている。

 楽曲の構造も独特だ。即興と構築の「あいだ」を融解させ、連続と非連続の「はざま」に乾いた電子音や環境音の交錯/構造/結晶体が生成し、消えていき、そしてまた生成する。そこには明確な構造の意志と構造を超えたところに表出する感覚的なモノへの感性がある(彼女自身の「声」が、アルバム全編に渡って、モノローグのように、ポエトリー・リーディングのように挿入/レイヤーされていることも重要だ)。

 アルバムには全10曲(ヴァイナルは2枚組)が収録され、フェリシア・アトキンソンは、コンポジション/ミックスのみならずアートワークまでも手掛けている。
 電子音、環境音、声。そしてアートワーク。それらが「意味」を超えて、質感の官能を露わにしていくことで生まれる新世代の実験性と先進性。そう、本作に蠢く音響は、2017年的な新しいエクスペリメンタル・ミュージックの姿を見事に象徴しているように思えてならないのだ。先端的エクスペリメンタル・ミュージック/電子音楽/実験音楽における最良の作品が、いま、ここに生まれた。2017年前半における最良のエクスペリメンタル・ミュージックである。

Counelius - ele-king

 日本のポップ・ミュージックに静かなる高みをもたらした『Mellow Waves』、ついにリリースされましたね。新宿のタワーレコードでは、『Mellow Waves』がJ-POPのコーナー、ロックのコーナー、クラブのコーナー、そして現代音楽のコーナーにも置かれてましたが、J-POPにして実験/アンビエントという両立を果たした作品であることはたしかでしょう。そのコーネリアスが来週11日/12日と2日にわたって恵比寿のリキッドルームで発売記念ライヴをやります(DJは瀧見憲司)。そこで12日ですが、またしても、しつこいようですが、編集部野田が開演までの時間、リキッド内のKATA(Mellow Waves展開催中)でトークをやることなりました。今回のお相手は北沢夏音と松村正人です。18時過ぎを目処にゆるくはじめます。「北沢さんとなら2時間は軽く喋れるだろう」ということですが、そんなに長くはやりません。『コーネリアスのすべて』制作のこぼれ話、ツイッター厳禁でそこでしか話せない秘話をお話しする予定らしいので、開演までの時間つぶしにどうぞ〜〜。(なお、11日のライヴ開演前は、またしても、ばるぼら氏(『アイデア』編集)がトークします。こちらのお相手はデザイナーの北山雅和さんです)

中林忠良×CORNELIUS Mellow Waves展
2017/7/8(土)〜13(木) 
13:00-19:00
入場無料
KATA[LIQUIDROOM 2F]
東京都渋谷区東3-16-6
https://kata-gallery.net/

トークショー (両日ともに 18時~ 予定。)
7月11日(火)  
「Cornelius × Idea
Mellow Waves –コーネリアスの音楽とデザイン- 」 発刊記念
ばるぼら(アイデア編集)× 北山雅和(デザイナー)

7月12日(水)
「ALL ABOUT CORNELIUS コーネリアスのすべて」 発刊記念。
北沢夏音 (音楽ライター)×松村正人(編集人)×野田務(ele-king 編集長)

Akuphone - ele-king

 ワールド系のぶりぶりのハイブリッド・ミュージックをリリースする超注目のパリの〈アクフォン〉(2015年にスタート、台湾の歌手から江利チエミも発表。パリのサブライム・フリーケンシーですねぇ……)から、2枚の強力盤が出ました。
 まずはコゥ・シン・ムーン(Ko Shin Moon)のアルバム『Ko Shin Moon』。これは、ここ数年のハイブリッドなワールド系エレクトロニック・ミュージックを追っている方にはバッチリです。たとえば、〈Keysound〉からのDusk + Blackdown、あるいは〈Soundway〉からのDébruit & Alsarah……そしてもちろんオマール・スレイマンとか、ワールド系と言えばアフロや中南米(あるいはインドとか)が真っ先に浮かぶと思いますが、しかしそうじゃない、中近東の旋律に目をつけているエレクトロニック・ミュージックの最新強力盤です。
 もう1枚は、ジャケからして何か圧倒的なものを感じるのですが、チベット密教のミステリアスなマントラを実況録音盤です。キンク・ゴングによる『チベタン・ブディズム・トリップ』。ブライアン・ジョーンズの『ジャジューカ』を彷彿させる、未知の体験です。
 完璧に別宇宙に飛びたい方は、ぜひ、チェックしてみてください。


KO SHIN MOON
Ko Shin Moon

Akuphone/カレンテート


KINK GONG
KINK GONG: Tibetan Buddhism Trip

Akuphone/カレンテート


Chicano Batman - ele-king

 チカーノという言葉をきいて、何を想像するだろう。ある人は、ギャング、ある人はローライダーやズートスーツ、ある人は、スパングリッシュを想像し、その音楽は、ウエストサイド・ヒップホップか、サンタナのようなラテンロック、またはレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのようなラディカルなものを想像するかもしれない。そして、チカーノたちは、メキシコ系米国移民で、米国籍を持っているが、彼らの親たちは、何十年も米国に暮らし、その発展を支えながらも、突然、強制送還される場合がある、ということを知っている人もいるだろう。米国の人気テレビシリーズ、『アグリー・ベティ』の主人公ベティは、チカーナ(チカーノの女性形)であり、父親は不法移民である。
 そんな、「チカーノ」に、アメコミから生まれた、スーパー・ヒーロー、バットマンを掛け合わせた名前を持つ、最高なバンドがいる。それが、ロサンゼルスの、中南米系移民居住区で結成された、チカーノ・バットマンだ。メンバー4人が、エレガントなお揃いのスーツに蝶ネクタイでキメて、ビンテージのオルガンやギターを奏でる姿は、60年代後半からタイムスリップしてきたかのようだ。バンド・メンバーには、チカーノもいるが、コロンビアとメキシコのハーフ、エルサルバドルとメキシコのハーフ、コロンビアからの移民といった感じで、メンバー全員がチカーノというわけではない 。だが、彼らの、2010年に発表されたデビュー・アルバム『CHICANO BATMAN』のジャケットには、チカーノ活動家、セサル・チャベスが率いた、全国農場労働者協会のシンボルである鷲のマークに、バットマンの頭を掛け合わせたイラストが象徴的に記されている。

 彼らのデビュー・アルバム発表時、筆者は、彼らにインタヴューする機会を得て、 「どんな音楽から影響を受けたのか」という、ありきたりな質問をしたのだが、そこで、ベーシストのエドゥアルドから「古い洗面台の蛇口から落ちる水滴、日暮れのコオロギの歌、バス車内で泣き叫ぶ子どもの声、おばさんがメキシコ料理を作るときの包丁の響き…….そんな生活を取り巻く音のすべてが、僕らの音楽の源になっている」と応えられた時、それが彼らにとっての「チカーノ」=コミュニティであると知った。
 彼らの音には、サイケデリック、ロック、ガレージ、オールディーズ、ボサノヴァ、独裁政権下のブラジルで、60年代後半に起こった音楽ムーヴメントのトロピカリア、そして、メキシコの田舎のホームパーティで流れる演歌ランチェーラや、コロンビア発祥のクンビアが、懐かしくも新鮮に溶けあっている。だが、それは、けっして旧き良き時代の擬態を目指していないし、ラテンアメリカ系移民だけに支持されているわけでもない。だからこそ、いま米国のメディアや、音楽業界がこぞって、彼らの存在に注目している。最近では、サタデーナイト・ライヴや、ザ・シンプソンズの脚本を手がけた、有名司会者、コメディアンのコナン・オブライエンのトーク番組、『コナン』にもゲスト出演したばかりだ。

 2017年3月に発表された彼らのサード・アルバム『FREEDOM IS FREE 』は、伝説的ソウル・シンガーのシャロン・ジョーンズのバンド、ザ・ダップキングスのメンバーであった、レオン・マイケルズがプロデュースを手がけた。サイケデリックな南米色が濃厚だったセカンドである前作『CYCLES OF EXISTENTIAL RHYME』(2014)よりも、英語曲が多くなり、カーティス・メイフィールドばりのソウル、ファンクで、華麗に彩られている。そこに、チカーノ・バットマンならではといえる、ラテンの哀感あふれる旋律や軽快なリズムの絡み、ほっこりと艶やかなヴォーカルが健在し、フェラ・クティのような、うねるアフロビートを武器に、体制社会を鋭く批判する曲なども織り交ぜている。

 Freedom is Free(自由は我らのもの)というアルバム・タイトルにもなっている曲では、 自由には代償が引き換えとされがちな昨今 、そして、自由の名をもとに大地を蝕んでいる、新自由主義とグローバリゼーションが地球を包囲しつつあるなか、「騙されるな、おまえを信じて、おまえのままで生きろ」、という根源的な言葉を、私たちに投げかける。

 去る6月21日、チカーノ・バットマンの初メキシコ・ツアーの最終日、メキシコシティの国立劇場小ホールで、彼らのコンサートを見ることができた。2013年の来日時には、筆者はすでにメキシコシティに住んでいたので、コンサートを見逃して、悔しい思いをしたのだが、ようやく夢がかなったのだ。チカーノ・バットマンにとっても、メキシコでのコンサートは、夢の実現であった。離れ離れになって、けっして米国へと渡ることができない彼らの家族たちも、遠くからメキシコシティまでやってきて、コンサートを堪能したからだ。その空気は、会場の雰囲気を明らかにボーダレスにしていたし、温かく包み込まれるような気持ちにさせてくれた。
 しかし、彼らの尖った演奏には目を見張った。メインでヴォーカルを担うバルドは、ギター、オルガン、パーカッションを巧みに持ち替えて演奏し、ガブリエルのドラムや、エドゥアルドのベースは的確かつ、生き物のように変化し、カルロスのリードギターは、アドリヴに走りながらも、冷静にバンドサウンドの肝を握っていて、全体がシンクロするタイミングが絶妙だ。郷愁、メランコリア、感情を揺さぶられるけれど、後ろ向きではない、未来へ向かっている音の渦に、あの場にいた観客たちは、酔いしれた。トランプが、国境に壁を作ろうが、人びとの魂までは、コントロールできない。私たちの自由は、私たちのものなんだ。

 そうはいえども、コンサートは終わり、自由を得るために労働する日常が戻ってきた。いまは、あの美しいコンサートの残り香を確認するかのように、チカーノ・バットマンの音楽を聴くのが、至高の息抜きとなっている。 その時に頭の周りを浮遊する音は、心地よい夢を見させてくれる。そして、人生もまた、夢の果てしない連続だということに気がつくのだった。


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