「Nothing」と一致するもの

 アンノウン・モータル・オーケストラを初めてみたのは、2014年のアイスランド・エアウェイズ。たまたま入った小さな映画館で彼らはプレイしていた。100人ぐらいの人がいて、優しいアイスランドの人たちは小さいアジア人に場所をあけてくれ、「椅子に登るとよいよ」とアドバイスまでくれた。そこで見たのは、グレイのスウェットに黒のベースボール・キャップを被ったギター・ヴォーカルと、黒一色のベーシストと、ジンジャー・ベイカーのようなプレイをする、一番目立っていたドラマーの3ピースのサイケデリック・バンドだった。ヒップホップかハードコアにもなり得るリズム・セクションに、カジュアルだが、ファンキーなギター・ラインに圧倒され、すぐに次に行く予定が立ち去れなかった。無理してないのに、なぜか良い。イギリスのバンドだと思っていたが、ニュージーランド出身、ポートランドを拠点とするルーバン・ニルソンを中心とするバンドだった。その後彼らのアルバムを聴き漁っていると、いつの間にか曲をハミングし、歌詞も覚えてしまった。

 2015年、ルーバンと妻、そしてガールフレンドの関係をテーマにした新譜『マルチ・ラヴ』をリリースした後は、いたる所で名前を目にするようになった。有名なセントラル・パークのサマー・ステージでもプレイし、”So Good At Being In Trouble”, “Swim and Sleep”, “Ffunny Ffriend” などのシンガロング系のヒット曲から、新曲 “Can’t Keep Checking My Phone” などをミックスしたセットでは、広々としたセントラルパークというロケーションもあり、リラックスしたレイドバックな雰囲気で、誰もが思い思いに楽しんでいた。この、少し奇妙なバンドは、いつのまにか幅広い知名度を獲得していた。

 2018年4月、「自分たちが消費するもの、それがどのように影響するか」をテーマにした新譜『セックス・アンド・フード』をリリースした。それと同時に地下鉄のホームから道の看板まで、アルバムの広告で溢れかえり、イヤでも目につくようになった。数週間後にブルックリンの工業地域にある大会場、ブルックリン・スティールで2日間のショーを行った(ソールド・アウト)。ブルックリン・スティールは、2017年にLCDサウンドシステムが再結成&こけら落としをした新しい会場で、インディのトップクラス・バンドがプレイしている。

 ステージ・ライトは『マルチ・ラヴ』のカヴァーのようなピンク。楽器以外にレコード・プレイヤーと白いスピーカーが載った長テーブルがあり、白いふわふわのじゅうたんがひいてある。フルワイン・ボトル2本、ウィスキー、テキーラ・ボトルが一本ずつ、キーボード・スタンドの下に準備されていて、まるで誰かの部屋のようである。

 バンド・メンバーは、ルーベン、ベースプレイヤー。キーボード・プレイヤー、ドラマーの4人で、ドラマーはルーベンの兄。
 ベースボール・キャップ、Tシャツ、ショート・パンツにレギンスのルーベンは全体を通してリラックス・ムード。ガムを噛んでいて、大体歌の出だしをミスる(笑)のだが、その後のクレッシェンド感は流石。高い音も決して外さないし、R&B、ソウルっぽい強弱のある歌い方とメロウなギターの爪弾きにキューンとさせられる。ショルダーバックがけのギターの持ち方もチャーミングだし、「ブルックリン、まだ大丈夫?」と観客を気遣うことも忘れない。

 今回は新曲中心に4枚のアルバムから曲を選び、グルーヴィでエフェクトをかけたルーベンのヴォーカルが現実的で病んだテーマをディスコ・ボールのなかでダンスしているように軽やかに響かせていた。メロウになったり、ハードコアになったり、基本はR&Bグルーヴを様々な表情に変えていた。

 彼らの曲はインターネットの世のなかに生きていれば起こりえる日常生活を歌っている。いまの時代みんな狂っているし、だからそれをテーマに歌うUMOに共感するのだろう。オーディエンスは20~30代ゲイの男が中心で全部歌詞を覚えている! ぐらいの熱烈さだった。私たちが持つ現代病問題をサラリと気づかせるメロウな友たちがUMO。それを伝染させるのは簡単なことなのだろう。

4月に刊行された『現代プロレス入門』にて表紙を飾っていただいた葛西純選手をお招きし、5月28日、書泉グランデにて刊行記念サイン会がおこなわれます! 先着50名となっておりますので、ご予約はお早めに。

出演者
・葛西純選手(プロレスリングFREEDOMS)

イベント内容
・サイン会

開催場所 / 開催日時
書泉グランデ(神保町) 7F
2018年05月28日(月) 19時~

発券場所 / 発券日時
グランデ(神保町) B1F
2018年04月28日(土) 10:00~

【店頭受付】2018年4月28日(土) 10:00~
【電話受付】2018年4月29日(日) 13:00~
 TEL:03-3295-0017(直通)

※参加券1枚に付き、対象商品1点にサインをお入れ致します。
※サイン入れは対象商品のみとなります。予め、ご了承下さい。
※商品は当日、必ずお持ちください。

ご参加方法

4月28日(土) 10:00より書泉グランデBFにて『現代プロレス入門』をご予約・ご購入でご希望のお客様【先着50名様】にイベント参加券をお渡しいたします。

※商品1冊ご予約・ご購入につき参加券1枚の配付となります。
※状況により1回のご予約・ご購入数を制限させて頂く場合がございます。
※参加券1枚で大人1名様限り有効(お子様のご同伴は係にご相談ください)。
※電話受付は店頭受付開始日の翌日13:00から、残券がある場合に行います。
TEL:03-3295-0017(直通)

ご注意事項
*参加券配付は予定数に達し次第、受付を終了いたします。
*参加券は再発行ができませんので、紛失されませんようご注意ください。
*会場内は禁煙です。
*会場内外の録音・録画は禁止とさせていただきます。
*イベント当日、マスコミの取材カメラが入り、イベントの様子を撮影する場合がございます。
*やむを得ず、予告なしにイベント内容が変更となる場合がございます。
*営利目的による転売行為はおやめ下さい。転売が明らかな場合は、イベントへのご参加をお断りする場合がございます。
*イベント終了までにお支払いがございませんと商品はキャンセルとさせていただきます。
*イベント終了後2週間以上ご来店、ご連絡がない場合はキャンセル扱いとして、商品(特典)は処分させていただきます。
*イベントが長くなりますとイベントの途中で休憩を取らせていただく場合がございます。休憩時間中はお客様にはお待ちいただくことになります。皆様のご理解ご協力をお願いいたします。
*イベント終了時間は決まっておりません、ご参加のお客様が居られませんと終了となります。参加券をお持ちの場合でも遅れて来られますとご参加になれませんのでご注意ください。

(イベントに関するお問い合わせ)
★神保町・書泉グランデBF スポーツ&格闘技コーナー
TEL:03-3295-0017
営業時間 平日10:00~21:00 土日祝10:00~20:00

interview with Tim Liken (Uniting Of Opposites) - ele-king


Uniting Of Opposites
Ancient Lights

Tru Thoughts / ビート

JazzPsychedelicTraditional Indian Music

Amazon Tower HMV iTunes

 反対のものをユナイトすること。それは、たんに逆の性質のものを合体させるということではなく、逆のものをそもそも逆だと見なさない、ということなのだそうだ。ユングの著作から採られたユナイティング・オブ・オポジッツ(以下、UOO)というグループ名には、そのようなコンセプトが込められているのだという。
 UOOは、ベテランのシタール奏者クレム・アルフォードとベーシストのベン・ヘイズルトンのふたりが出会ったことがきっかけとなり、そこにこれまでティム・デラックス名義でハウスのヒット作を生み出してきたティム・リッケンが加わることで始まったプロジェクトである。その初となるアルバム『Ancient Lights』では、インドの伝統音楽と現代的なジャズ、生演奏のアンサンブルとエレクトロニックなサウンドなど、一見遠いところにあるもの同士の折衷がいくつも試みられている。その巧みなコラージュ・センスにはただただ脱帽するほかないけれど、2018年の現在もっとも注目すべきなのは、やはりそのジャズの側面だろう。
 本作にはクラリネット演奏のアイドリス・ラーマン(トム・スキナーととともにワイルドフラワーの一員でもある)や、アシュレイ・ヘンリー&ザ・リ:アンサンブルやサンズ・オブ・ケメットの新作にも参加したドラマーのエディ・ヒックが名を連ねており、まさにいま大きなうねりとなっている南ロンドンのジャズ・シーンとリンクする作品となっている。
 他方インド音楽といえば、旧宗主国たるUKではそれこそビートルズの時代からそれを取り入れる動きがあったわけだけれど、90年代以降のクラブ・ミュージックの文脈でもニティン・ソウニーやタルヴィン・シンといったUKエイジアンたちがエレクトロニックな音楽にその要素を取り入れてきた。つまりUOOは現在の南ロンドンのシーンとの接続を試みる一方で、これまでのUK音楽における多様性の系譜にも連なろうとしているのである。それを同時に成し遂げてしまうことにこそ、まさに「そもそも反対だと見なさない」という彼らのスタンスが表れているのではないだろうか。
 UKの混淆性そのものを体現するかのような『Ancient Lights』という素敵なアマルガムを生み落としたUOO、その中心人物のひとりであるティム・リッケンが新作について、そしてインド音楽や南ロンドンのシーンについて語る。


photo: Kid Genius Creative

逆という見方をしない、逆を持たないというのがコンセプト。真逆のものからわかる発見、事実、そういった感じかな。

ユナイティング・オブ・オポジッツにはシタール奏者やタブラ奏者など、多くの人が参加していますが、まずはバンドの結成に至った経緯を教えてください。

ティム・リッケン(Tim Liken、以下TL):友だちのベン・ヘイズルトンがメンバーを紹介してくれたんだ。ベンとは7~8年の仲でね。『The Radicle』のときに彼がベースで参加してくれて、そのときに他のミュージシャンを探すのも手伝ってくれたんだ。そのときに彼が一緒にプロジェクトをやりたいと提案してきて、まず最初にクレム・アルフォードに声をかけて、3人で音楽を作り始めた。でもプロデューサーという視点から見ると、僕はもっとミュージシャンが必要だと思って、ベンの紹介やロンドンのギグで知り合ったミュージシャンたちに参加してもらうことにしたんだ。エレクトロっぽいものは避けたかったし、ダンス・ミュージックを作りたかったわけでもない。より人間味のある音楽を作るには、それが必要だったんだ。

ユナイティング・オブ・オポジッツというグループ名にはどのような意味が込められているのでしょう? 「反対のもの」とは何と何ですか?

TL:名前はカール・ユングの心理学から来ていて、彼が書いた本も持っているんだけど、それには西と東の考え方の違いが書いてある。そのなかに「そのふたつの合体(Uniting)」という章があって、それがすごくおもしろいんだ。逆という見方をしない、逆を持たないというのがコンセプト。真逆のものからわかる発見、事実、そういった感じかな。

本作では大きくインド音楽の要素がフィーチャーされていますが、インド音楽に注目するようになったきっかけはなんだったのですか? やはり前作『The Radicle』で“Shanti”を作った経験が大きかったのでしょうか?

TL:これまで、あまりインド音楽は聴いてこなかった。でも初めて聴いたとき、西洋の音楽とはもちろんぜんぜん違うし、すごく魅力的だと思ったんだ。だから、サウンドやテクスチャー、リズムもそうだし、前作『The Radicle』に入っている“Shanti”のときからインド音楽の影響は取り入れてきた。あと、クレムは昔インドに行ってシタールを演奏していたときがあるから、彼はインド音楽のマスターなんだ。今回はそのクレムが参加してくれているから、それを大きくフィーチャーしたんだよ。

通訳:あなた自身はシタールやインド音楽を勉強したんですか?

TL:いや、してないよ(笑)。クレムからちょっと習ったり、自己流でルールを破りながら触って見ているだけ(笑)。インド音楽では、あまりコーラスやハーモニーがなくてほとんどがソロだから、そこは自分たちでシステムを変えてコーラスやコードを加えたんだ。

ニティン・ソウニーやタルヴィン・シンなどのUKエイジアンの音楽からの影響はありますか?

TL:それは僕にはわからないな。彼らはやっぱりインド音楽や文化に強いコネクションを感じていると思うけど、僕たちは彼らに比べるとそこまでではないと思うから。

今回、ご自身でもタンプーラ(Tampura)を習得したそうですが、ギターなどの弦楽器との最大の違いはどこですか?

TL:あの楽器は、音符が3つしかないから演奏するのは簡単だったんだ。タンプーラはおもしろい楽器で、ベースみたいな感じで、シタールとか他の楽器のメロディに合うようになっている。シタールはすべての弦を合わせて21本くらい弦があるけど、タンプーラは4本しかない。タンプーラで演奏するのは、音楽のキイとなる音のみで、他の楽器のベースになっている。だから、西洋の他の楽器よりも音のスケールの幅が狭いんだ。あと、タンプーラは催眠っぽくもあるね。トランスみたいな感じ。すごく変わっていておもしろい楽器だよ。クレムとベンが弾き方を教えてくれたんだ。

通訳:自分で習っている楽器は何かありますか?

TL:ピアノだけ(笑)。ピアノは上手くなりたい。他の楽器も好きなんだけど、僕はハーモニーが好きで、コードをプレイするのが好きなんだ。そっちのほうが音がもっとディープだと思うんだよね。

他方で本作にはジャズの要素もあります。アイドリス・ラーマンはワイルドフラワーやイル・コンシダードで、エディ・ヒックはルビー・ラシュトンやアシュレイ・ヘンリー&ザ・リ:アンサンブルで、南ロンドンのジャズ・シーンの隆盛に一役買っていますが、このアルバムも南ロンドンのジャズ・シーンとリンクしているという意識はありますか?

TL:もちろん。僕はたくさんジャズやクラシック音楽、ビル・エヴァンスのような20世紀初めのジャズとクラシックが交わったような音楽をたくさん聴くんだ。リラックスできるし、自分の耳のトレーニングにもなる。演奏がよりやりやすくなるんだ。ビル・エヴァンスはとくにお気に入りのピアニストだね。彼の、ジャズなんだけどジャズじゃない感じのスタイルが好きだね。

南ロンドンのジャズ・アーティストでもっとも注目しているのは誰ですか?

TL:南ロンドンのジャズ・シーンはここ2、3年でグンと大きくなったと思う。でも、人種の坩堝であるロンドンで流行っているジャズだから、ふつうのジャズではない。そこにちょっとハウスが入っていたり、ガラージが入っていたり、60年代の伝統的なジャズではないんだ。フェラ・クティのヴァイブもあるし、ハウスのリズムやビートがアフリカン・ミュージックのポリリズムと繋がっていたりもするし、ほんとうにおもしろいフュージョンが繰り広げられているんだ。すごく良いシーンになってきていると思うよ。僕が注目しているのは、やっぱりドラマーのエディ・ヒック。あとはキイボードのジョー・アーモン・ジョーンズ。彼はニュー・アルバムをリリースしたばかりなんだけど、曲の構成がほんとうに素晴らしいんだ。あと、女性ではヌビア・ガルシア。彼女はサクソフォンを演奏している。シーンには良いミュージシャンたちがほんとうにたくさんいるんだ。

フローティング・ポインツもハウスとジャズを、そして打ち込みと生演奏を横断するアーティストですが、彼の音楽についてはどう思っていますか?

TL:僕は彼の大ファン。彼がやっていることはほんとうにクールだし、インスパイアされる。彼のようなミュージシャンを見ていると、DJは控えてもっとライヴで演奏をしてみたいという意欲が湧いてくる。クラシックのトレーニングを受けていなくても、彼みたいに素晴らしい音楽を作ることができ、あれだけのパフォーマンスができるアーティストもいるというのは、自信を与えてくれるんだ。パフォーマンスに対して、もっとポジティヴにさせてくれるのが彼の音楽だね。

大きな質問になりますが、あなたにとって「ジャズ」とはなんでしょう?

TL:これはちょっと難しい質問だな(笑)。言葉にするのは難しい。自分が聴いていて、感情を大きく引き出してくれる音楽ではある。ハートに深く届く音楽だけど、それをどう言葉で表現すればいいかはわからない。すごくコネクションを感じるけど、それを言葉で呼ぶことはできないよ(笑)。心で感じるものだし、なんとも言えない感情だから。


photo: Kid Genius Creative

マシンに操られて行き場をなくしてしまうミュージシャンがたくさんいるのも見てきた。

このアルバムを作るうえでもっとも苦労したことを教えてください。

TL:いちばん大変だったのはスタートポイント(笑)。僕はプロデューサーでもあるから、どうしてもヴィジョンが見えていないと作業ができないんだよね。ただジャムをしてレコーディングするってことに慣れていないんだ。でもギグで何度も演奏して経験を積んでいるベンにとっては、それがふつうなわけで、彼は逆にスタジオ・ミュージシャンではない。だから、最初にどうやってレコーディングを進めていくかを考えるのがたいへんだった。でも、自分でレコーディングしたものを保存していたハードドライヴをなくしてしまったから、データがぜんぶなくなってしまったんだ。それが逆によくて、ゼロからのスタートになったから、ぜんぶ忘れてもっとフォーカスを定めることができた。とりあえず始めてみることにして、その流れで直感に従いながら自然と進めていくことにしたんだ。

近年はハウスから離れバンド・サウンドを取り入れていますが、生演奏に重きを置くようになったのはなぜですか?

TL:『The Radicle』でもそうだったけど、他のミュージシャンたちとコラボするのってすごく楽しい。コンスタントにツアーをしているからもうDJもしていないし、ピアノを習い始めたことがいいリセットになったんだ。ピアノを習い始めてからはずっと生演奏がメインになっている。いまはそこからインスピレイションを受けるし、そっちのほうが音楽とコネクションを感じるんだ。ルーツ・マヌーヴァのショウでドラマーのエディ・ヒックと一緒にプレイしていたんだけど、あれも良い経験だった。すごくチャレンジだったけど、あのおかげで演奏に自信がついたね。

ピアノなど生の楽器の良さはどんなところにあると思いますか?

TL:テクノロジーは更新の連続で、それがいかに新しいかが問われるけれど、楽器の場合、毎年ピアノを買い換えるなんてことはない。ひとつのピアノを手に入れれば、それをいかに自分のものにして長く使うかに価値がある。ギターをコレクションする人ももちろんいるけど、楽器のほうが深い繋がりを感じることができるんだよね。テクノロジーは、ニュー・ヴァージョンばかりが注目されて、すべてがマーケティングなところがあるんだよ。生演奏のほうが、自分の音楽を更新するのではなく、深めていくことができるんだ。

生演奏でなければできないこととはなんでしょう?

TL:その瞬間を捉えること。生演奏がおこなわれている瞬間がすべてで、それが経験になる。リスナーもその瞬間に入り込むことができるし、リスナーもそれを体感できるのは生演奏だと思うね。

逆にエレクトロニクスでないとできないことはなんだと思いますか?

TL:エレクトロニクスでも人間味を出すことはできるとは思う。マスターすれば、マシンに操られるのではなく、マシンを操って、人間の力を超えた何かを作り出すことができるとは思うね。それは大きな挑戦でもある。でも、DJの世界にいたこともあって、マシンに操られて行き場をなくしてしまうミュージシャンがたくさんいるのも見てきた。テクノロジーを使うのであれば、それを使いこなし操れるほどの知識とスキル、経験が必要だと思うね。

これまでティム・デラックス名義でやってきたことと今作の試みとのあいだで連続しているものはありますか?

TL:それはもちろんある。まったく違うものではなく、音楽キャリアの旅だからね。プロダクションの面で、僕が好きな音楽が反映されているということに変わりはないし、リヴァースディレイ、スピンはDJのバックグランドから来ていると思うし、ティム・デラックスで聴けるキイボードやタンバリンは、僕のミュージシャンの一面から来ていると思う。プロジェクトやレコードにはすべて共通点があるし、今回もエレクトロのリミックスを考えているんだ。

今後またハウスをやる可能性は?

TL:いまのところは考えていない(笑)。さっきも言ったように、いまは生演奏で得られるものに魅力と昂奮を感じているから。ピアノを始めてから、それをもっと感じるようになった。またハウスを作ることもあるかもしれないけれど、それがいつになるかは僕にもわからないね(笑)。

 ele-king booksからプロレスの本!? そう思われている方も多いでしょうが、現在のプロレスの盛り上がりを見逃すことはできなかったのです。

 古くは力道山、馬場&猪木、初代タイガーマスク、UWFにはじまる格闘技路線と大仁田厚以降のインディー団体乱立、新日本の三銃士と全日本の四天王――時代時代でさまざまな話題をふりまいては盛り上がってきた日本のプロレスですが、90年代後半の格闘技ブームに押され、今世紀に入ってからはやや沈滞ムードが続いていました。

 しかしながらここ数年、新日本を中心とした華やかで楽しいプロレス、そしてデスマッチをはじめ工夫を凝らして特色を出した数々のインディー団体など、プロレス界は再度活況を呈してきています。特に今回のブームの特徴は女性ファンが増えたことで、イケメンレスラーの華麗なファイトにうっとりするに留まらず、蛍光灯で殴り合い血まみれになるような過激な試合を展開している会場に黄色い声援が飛び交う様にはなかなか驚かされるものがあります。

 ライブ・エンターテインメントとしての文句なしの楽しさ。そして多くの試合会場では大きな物販スペースが設けられ、選手自ら売り子をしたりサインに応じたりする姿は昨今のアイドルのサービス精神にも通じるものがあります。こりゃたしかに人気出るわ。

 今や書店にも大きなプロレスコーナーが設けられ、ベストセラーとなる本も数多く出ていますが、不思議なことにビギナー向けの入門書というのが見当たりません。「なんか盛り上がってるらしいけど、どこで見れるの?」「友達が最近ハマってるらしいんで興味あるけど、どこから見たらいいのかわからない」といったこれからのファンたちのために、簡単に今のプロレスを楽しむためのガイドとなるような本があるといいんじゃないのかな、ていうか自分がそんな本を読みたいぞ。

 ――そんなモチベーションから本当に作ってしまったという次第。自分の好きなプロレスを探す第一歩を踏み出すための一冊になっているはずです。

現代プロレス入門 注目の選手から初めての観戦まで
大坪ケムタ(著)

目次

はじめに
巻頭インタビュー1 飯伏幸太
巻頭インタビュー2 葛西純
団体紹介
ローカル団体
アメリカン・プロレス(WWE)
アマチュア(学生・社会人プロレス)
今、注目の選手を一挙紹介! レスラー名鑑
タイプ別レスラー紹介
レジェンドレスラー
チーム・ユニットで構図が見えてくる
Column プロレスとアパレル レスラーとSNS
Column レスラーになるには
Column プロレス好きの有名人
観戦の手引き
観戦のおともに~便利グッズあれこれ
プロレス会場の数々
グッズショップから飲食店まで――お店ガイド
Column リング外のイベント
奇想天外! 変わり種興行
在宅観戦
Column レスラーと音楽
プロレスの歴史
プロレスのルール
Column アイドルファンとプロレスファン
技がわかればプロレスがわかる! プロレス技ガイド
プロレスが10倍おもしろくなるブックガイド
熱いドラマから奇想天外なドキュメンタリーまで プロレス映画ガイド
FAQ
あとがき

ザ・スクエア 思いやりの聖域 - ele-king

 格差に対する危機感はヨーロッパ映画に深く浸透し、そのことが更新を促している。昨年のカンヌ映画祭のパルムドールを受賞した本作『ザ・スクエア 思いやりの聖域』が表象するのはまず、その最新の成果といったところだろう。監督のリューベン・オストルンドは1974年生まれだが、 ヨルゴス・ランティモス辺りとともに下手したらミヒャエル・ハネケを過去へと追いやりかねない存在である。ここでのポイントは、格差の問題を (ケン・ローチやアキ・カウリスマキのように) 移民や難民、貧しき者たちの立場に身を置いて誠実に描くということでなく、むしろ中産階級やブルジョワの側に入りこんで風刺するということにある。
 オストルンド監督の前作『フレンチアルプスで起きたこと』(14)では、スキーリゾートにやって来た比較的裕福なスウェーデン人一家の父親が雪崩事故をきっかけに妻や子どもからの信頼を失う様が描かれていたが、海難事故などの緊急事態では「おんな子どもが先」とならない現実を証明したレポートから着想を得たものだそうだ。つまり、沈みゆく船はヨーロッパであり、「おんな子ども」は貧民である。雪崩から逃げようとした父親に悪気があるわけではない。危機に直面し、本能的に生き延びようとしただけだ。が、道義的に「正しくない」とされ、そのことで責められ、また自分自身が苦しむこととなる。

 『ザ・スクエア』ではそうした主題をさらにコンセプチュアルに押し進めている。舞台となるのは現代アート界。スウェーデンの現代美術館のキュレーターであるクリスティアンは新しい展示である〈ザ・スクエア〉を準備している。それは地面に正方形を描いただけの作品で、このような説明が付け加えられたものである――「〈ザ・スクエア〉は“信頼と思いやりの聖域”です/この中では誰もが平等の権利と義務を持っています/この中にいる人が困っていたら それが誰であれ あなたはその人の手助けをしなくてはなりません」。要は、クリスティアンは一流のキュレーターとしてアートを通して現代における道義を世に問おうとしているのだ。そこまでを背景として、物語は彼が財布とスマートフォンを盗まれるところから動き始める。GPS機能を使って犯人の在りかを突き止めるが、そこはおもに低所得者が暮らす集合住宅だった。部下にそそのかされたこともあり、全戸に脅迫めいたビラを配って盗品を取り戻したクリスティアンだったが……というところから彼の立場は危ういものとなっていく。しかも〈ザ・スクエア〉のキャンペーンはネットで炎上。これは現代の「正しさ」が皮肉な結果を生むことの典型的な例だが(正義を訴えれば訴えるほど炎上商法に加担してしまう)、クリスティアンが自分のことでいっぱいいっぱいなせいで「道義」のことが目に入っていなかったときに起きてしまったことだ。
 たとえばアンドレイ・ズビャギンツェフの『ラブレス』(17)やミヒャエル・ハネケの『ハッピーエンド』(17)がそうだが、近年のヨーロッパ映画の一部の作品では経済的にある程度以上の水準を保つには他者の犠牲に無関心になるしかない、という側面が強調されている。だが『ザ・スクエア』のクリスティアンはべつに無関心、なわけではない。キュレーターという立場からできれば何か世に示したいとすら思っている。が、それは現実の世界では――〈ザ・スクエア〉の外では実現できないのである。そこでは自分の立場や財産を守ることが最優先されるからだ。

 そもそも〈ザ・スクエア〉はそもそもオストルンド監督が実際に携わったプロジェクトである。そして、それ自体がエリート主義めいた小賢しさを孕んだ試みであるとじゅうぶん自覚している。要は自己批判なのだ。その上で、現代アート界の欺瞞や追いつめられていくクリスティアンの姿をドライな演出で滑稽に映し出していく。そう、クリスティアンに悪気はない。盗まれた物を取り返そうとしただけ。だけど、そこから導かれる行為には「信頼と思いやり」も「平等の権利と義務」も「手助け」もない……。彼もまた、資本主義リアリズムに囚われて身動きが取れなくなっている。
 映画は当然クリスティアンを批判的に描いているのだが、しかしながら、ハネケがブルジョワを冷血の権化として登場されていることに対し、オストルンドはどうにか彼の人間味のようなものを浮かび上がらせようとする。彼は間違いを何度も犯しながら、それでも真に人道的であるということはどういうことなのかを辛うじて学んでいく……もったいぶったアートのなかでなく、現実のものとして。これはその不格好な過程を見守る映画なのだ。〈ザ・スクエア〉の外にこそある思いやりを、そして、わたしたち全員の課題として持ち帰らせようとする。ギリギリのところで相互扶助の可能性に懸けているように見えるのである……というのは、僕の願望が含まれているだろうか?

 ところで、〈ザ・スクエア〉の四角とは何のことなのだろう。たぶんにスマートフォンの画面ではないし、よもや国境で区分けされた国家のことでもない。それはきっと、映画のスクリーンのことである……と言ったらそれこそ願望が入っているだろうが、しかし、本作――それが、アート映画というエリートの嗜みだとしても――を通してオストルンドが格差社会においてそれでも追求すべき「信頼と思いやり」を真剣に考えたことは間違いない。

予告編

David Byrne - ele-king

木津毅

1)
かれらがいま深く感じているのは、自分たちは祖国を失いつつある、という思いです。抽象化され一般化された「国民」という考えを政府が振りまき、その結果、ほんとうの祖国が自分たちから奪われている、という思いです。自分たちは、弱者と称される人たちの「身代わりの犠牲者」になっているという意識です。しかも、その弱者たちは「大学出のリベラルなエリートたち」によって甘やかされているという思い込みがあり、それは、かれらのなかに根強く広まっています。そのことが非常にしばしば悲惨な結果をもたらすことになっているわけです。
──ノーム・チョムスキー著 寺島隆吉・美紀子訳『アメリカンドリームの終わり あるいは、富と権力を集中させる10の原理』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)から、「原理10 民衆を孤立させ、周辺化させる」より

 ノーム・チョムスキーは現代アメリカ社会について平易に語った新著のなかで、 2016年以降を……ありていに言えばトランプ現象以降を踏まえつつ、格差が生み出した分断をそのように説明している。ここで言う「かれら」はおもにトランプに投票したような低収入の白人労働者のことだ。多くのひとが2016年にぶつかり、いまも向き合っている問題である。「リベラル」とされているものが権力者によってイメージ操作され、それ自体が周縁化を招いているとすれば、いま、「リベラル」は何を言えばいいのか。
 ひとまず自分がここで言いたいのは、現在「アメリカン」の冠ほど反語的な響きを有するものはない、ということだ。チョムスキーの同著の原題は『レクイエム・フォー・アメリカン・ドリーム』である。LCDサウンドシステムの昨年のアルバム『アメリカン・ドリーム』がそうであったように、わたしたちが「リベラル」と思っている場所から届けられた『アメリカン・ユートピア』は、「make AMERICA great again」の標語が代表する価値観を反語的に風刺するものだと見なせるだろう。

2)
 ブライアン・イーノ「これは、いま、アメリカ人たちが「トランプ当選」という事実に対して感じているのとまったく同じフィーリングなんだろうね。というわけで、我々リベラル派は――リベラルじゃなければ左派でもいいし、中道寄りの左派でも、とにかくまあ、その呼び方はなんでもいいんだけれども、そうした我々全員が、「いま、自分たちはどこにいるのか?」ということをしっかり見つめはじめる必要があるんじゃないか、私はそう思っている。」
──ele-king vol.19、2016年年間ベスト・アルバム号掲載のインタヴューより

3)
 『アメリカン・ユートピア』のジャケットを飾る不穏なアートワークはアウトサイダー・アートの画家とされるパーヴィス・ヤングが手がけたものだ。ヤングはマイアミ出身のアフリカン・アメリカンとして70年代の壁画アート・ムーヴメントから影響を受け、アメリカにおける大恐慌時代、消費主義、植民やネイティヴ・アメリカンの窮状などをモチーフにした作品を多く手がけたそうだ。アメリカという巨大な国家(「アメリカン・ユートピア」!)がどこから来たのか、どのような犠牲とともに成り立ってきたかを独特のおどろおどろしい色彩感覚によって執拗に描き続けた作家だと位置づけられている。

4)
 マイク・ミルズの映画『20センチュリー・ウーマン』は冒頭で“心配無用のガヴァメント”が流されることからもわかるように、トーキング・ヘッズが非常にアイコニックに引かれている作品である。舞台は1979年の西海岸。明らかにミルズの少年時代の姿が投影された主人公の少年ジェイミーは、同居人でアーティスト志望の年上の女性からラディカル・フェミニズムとパンク・ミュージックを教えられる。なかでもジェイミーのお気に入りはトーキング・ヘッズだ。彼はそのことで近所の不良から「アート・ファグ(アート気取りのカマ野郎)」と罵られるのだが、むしろその蔑称を肯定的に受け入れていく。ミルズは自分の感性を育てたのは70年代の個性的な女性たちであり、フェミニズムであり、アーティなパンク・ミュージックだと宣言し、あらためて感謝と敬愛を捧げている。「アート・ファグ」であることのプライドをそのとき知ったのだと。
 だが、タイトルに「20世紀の」と示されているように、そこには回顧的な意味合いが多く含まれている。70年代末のニューウェイヴは多くの少年少女を自由にした、たしかに。だが、それはいまアメリカにおいてどのようなものとして受け継がれているのだろうか。ラディカル・フェミニズムが21世紀において参照され日々更新されているのに対し、では、トーキング・ヘッズは、デヴィッド・バーンは、あるいは「アート・ファグ」はいまも通用するのだろうか?

 14年ぶりのソロ作である『アメリカン・ユートピア』は、わたしたちが一般的に抱いているデヴィッド・バーン的なイメージを大きく裏切るものではない。当たり前にマルチ・カルチュラルで、多彩なパーカッションで鳴らされる多様なリズムがあり、素っ頓狂なファンクのグルーヴがあり、ソウルフルだがどこか間の抜けた歌があり、それにやっぱり家のことを繰り返し歌っている。ほとんどの曲でブライアン・イーノが関わっていることもあり、イーノ時代のトーキング・ヘッズを彷彿とさせる部分も多々ある。聴いているとその変わらなさに何だか安心してしまうのは、バーン独特のクセのようなものがわたしたちリスナーにも共有されるイディオムとしてすっかり定着しているということだと思う。
 14年ぶり、と言ってもバーンは数々のコラボレーションをその間に行っており、なかでもセイント・ヴィンセントやダーティ・プロジェクターズとの共作は、サウンド面でもイメージ面でも、そうした「バーン的なるもの」を大いに頼りにするものであった。21世紀のアーティなインディ・ロック勢にとってバーンはつねに精神的支柱のようなところがあったのだろうし、そうした縦の繋がりが00年代の東海岸における知的なアート・ロックの盛り上がりを大いに担っていた。しかしながら、東海岸の「進歩的な」価値観が存在意義そのものから揺らいでいる2016年以降において、インディ・ロックの優等生たちは訴求力を失っているようにも見える。まさに「大学出のリベラルなエリートたち」の音楽として……。

 バーンとイーノは「アメリカン」を冠した作品を世に放つにあたって、徹底してその問題に向き合ったに違いない。『アメリカン・ユートピア』は、そして、バーンの20世紀からの功績を引き継ぎつつ、2010年代の音をふんだんに忍びこませるアルバムとなった。まずは何と言ってもOPNの起用だ。ダニエル・ロパティンは2曲で作曲にクレジットされているほか、別のいくつかの曲でも様々な楽器の演奏、それに「テクスチャー」で参加している。たとえば作曲に関わった“ディス・イズ・ザット”では、『R・プラス・セヴン』に収録されていてもおかしくないような乾いたビート音と美麗なメロディのやり取りが聴けるし、また、“ドッグズ・マインド”や ヒア”で聴けるリヴァービーな打音や繊細なアンビエント的音響にはかなりの部分で貢献しているだろう。あるいはジャム・シティ、あるいはサンファ、あるいはエアヘッド、あるいはトーマス・バートレット、少し意外なところではジャック・ペニャーテ……バーンよりもずっと若いミュージシャンたちが入れ替わり立ち替わり登場し、ポップ・アートの大御所のサウンドに新しい息を吹きかけている。バーンはそのセルフ・イメージやサウンド・シグネチャーを担保しつつ、どうにかそれを今様の響きを持つものとして鳴らそうとする。
 いっぽうで更新できていないこともある。本作に女性がひとりも起用されていないことが問題視され、バーン自身がそのことを謝罪したのだ。それこそPCが優先されて無理矢理に多様性が演出されるのもどうかと思うが、これだけ多くのゲスト・ミュージシャンが参加したアルバムに女性がいないというのはさすがに(しかもデヴィッド・バーンの作品としては)不自然だ。彼自身の無自覚な古めかしさがポロっと出てしまったのかもしれない。ただ、バーンは真っ向から反省を綴ったコメントを出した。結果として、新しくなろうとする彼の姿は作品の完成後にも証明されることとなったとも言える。

 肝心の「アメリカ」については、はっきりとした政治的モチーフとして表出してはいない。“アイ・ダンス・ライク・ディス”に登場するクレジット・カードに象徴される商業主義、“ガソリン・アンド・ダーティー・シーツ”において繋げられる石油と戦争のイメージ、“Bullet”の銃弾……そこここに現代アメリカが内側に抱える病の描写はあるが、それらはスローガンではなく、ちょうどパーヴィス・ヤングの絵画のように抽象化された風刺画のような形をとる。室内楽とシンセ・ポップを合体させたような本作中もっともチャレンジングなトラック“ドゥーイング・ザ・ライト・シング”は多義的な「正しさ」にこんがらがっているという点でじつに今日的な姿であるし、“エヴリバディーズ・カミング・トゥ・マイ・ハウス”が移民のことを指しているとすれば、「皆が俺の家にやってくる/誰も帰っていくことはない」というのはあまりにも示唆的なフレーズだ。その、どこか不気味さを湛えつつドライヴする情熱的なファンク・ジャムは、実際、アルバムのハイライトである──「皆が俺の家にやってくる/ひとりぼっちになることはない」。
バーンが『アメリカン・ユートピア』で取り組んでいるのは、現在というものに積極的に混乱するということであり、20世紀の「アート・ファグ」の精神を保ちながらも、だからこそ、それをアップデートしようと苦戦することである。迎合してはいない。が、自分自身を時代と照らし合わせて精査しようとしている。「リベラル」なアート・ロックが説得力を失っているとしても、ここでのバーンの姿勢はとても誠実だ──もちろん、ユーモラスでもある。

 本作を引っさげてコーチェラに出演したバーンのステージを配信で観たが、それがじつにイカしていた。10数人のメンバーが舞台に上がるが(ちゃんと女性のメンバーもいた)、マイクスタンドなど固定の機材はいっさい置かずに、6人ほどの打楽器も含め全員が首から楽器を下げてウロウロしながら演奏する。途中で挿しこまれる妙な寸劇と、合っているのかいないのかよくわからないダンス。デヴィッド・バーン的としか言いようがなかった。ゆるくてシュールな笑い、エキセントリックなのにどこまでもポップな人懐っこさ、キッチュなアート性、アフロやカリビアンを取り入れているのにギクシャクとしたリズム。雑多な人間がそれぞれワチャワチャと統制の取れていない動きをしながら、オリジナルなグルーヴとアンサンブルを生み出そうと共存している。まったく反語ではない「アメリカン・ユートピア」が、そこにはあったような気がした。

木津毅

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柴崎祐二

 デヴィッド・バーンは、長い活動を通して、知的アメリカン・オルタナティヴの拠り所で有り続けた。
初期ニューヨーク・パンク・シーンにあってトーキング・ヘッズはテレヴィジョンと並び唯一無二の個性を湛えたバンドとして活動し、ロックンロールへ回帰類型化していくパック・ロックへのカリカチュアとも言えるような脱構築的ロックコンボとして名を上げ、アフリカン・リズムを導入やブライアン・イーノとのコラボレーションなどを経て、その存在感を確固たるものにしてきた。
 その後もバーンはバンドの活動と並行して映画や舞台へも活動の場を広げながら、様々に先進的な作品を世に問い続けてきた。その表現活動は常に精緻な知的バランスに担保されたもので、時に理屈先行型のヘッド・ミュージック的(懐かしいワードだ)であると批判をされることもあったが、オルタナティヴの始祖のひとりとして、音楽界に限らず広く深いリスペクトを集め、いまや齢60代半ばにしてその評価は不動のものとなった感がある。

 今作『アメリカン・ユートピア』は、ファットボーイ・スリム、セイント・ヴィンセントらとのコラボレーション作を挟んで、ソロ・アルバムとしては『グロウン・バックワーズ』以来14年ぶりの作品となる。
 一聴してまず感じるのは、久々のソロ作と銘打つに足る盤石のデヴィッド・バーン・マナーの復活であろう。盟友イーノとの共作曲をはじめ、ロディ・マクドナルド (The xx、King Krule、Samphaなど)、ジャム・シティ、ジャック・ペニャーテ、トーマス・バートレットといった多彩なミュージシャンの参加に加えて、もっとも注目すべきはバーンと数曲を共作しているダニエル・ロパティン (Oneohtrix Point Never)の貢献だ。これまでもジャンル越境的なコラボレーションを重ねてきたバーンの活動ゆえ、この共演はまさに起こるべきして起こったものとも言えるだろう。ダニエルは一部曲で「テクスチャー」とクレジットされている通り、彼が本作に持ち込んだ質感は、これまでも絶えることなくバーンが志向してきた先端的でライブリーな音楽との交接という点において非常に大きな役割を演じていると言えるだろう。
 しかし、ここで注目したいのは、そうした気鋭のミュージシャンと組んで、いかに新味をまぶした音色で彩っていても、結局はやはり「デヴィッド・バーン」という大きな屋号に吸収されていく、そのようなダイナミズムなのだ。

 おそらくそれは先述の通り、バーン自身の知的バランス感に負うところが大きいだろう。様々な音楽要素を貪欲に取り込みながらも、その音楽要素自体が本来的に内蔵する土俗的・肉体的ダイナミズムに対して、ある種の透徹した視点を欠かさない。ラテン〜アフリカン・リズムを導入し、そのダイナミズムを深く理解しクリエイターとして血肉化しつつもなお、究明対象たる音楽自体に全身を預けるといったことはしない。常に、ひとりのアーティスト、いやプロデューサーとして、音楽的風景を睥睨し、設計図を理解し、システムを統括しているのだ。
 このような創作姿勢が文化収奪的と批判するのは易しいが(現にそのように非難を受けることもあった)、ここに聴かれる音楽からは、所謂「作家的エゴ」のようなものが聴こえてこないのだ。これは、彼が旧来的な意味でのロック・バンド観や、作家主義的アーティスト像を常にカリカチュアの対象として扱ってきたことを考えれば理解は容易い。それゆえにいかに様々な音楽要素を「援用」しようとも、当のセルフィッシュな主体がそもそも存在していないのだ。これは例えばかつて椹木野衣がハウス・ミュージックについて述べたシミュレーショニズムとしての音楽観に親和的なものだろう。

 さて、そういった視点であらためて本作を鑑賞してみよう。冒頭に置かれた“アイ・ダンス・ライク・ディス”は、クワイエットなピアノとボーカルに導かれたあと、攻撃的なビートが突如として現れ、リスナーの虚を突く。また続く“ガソリン・アンド・ダーティ・シーツ”や“エブリバディ・イズ・ア・ミラクル”では得意のラテン的狂騒とポップネスが理想的に融合し、フレッシュなトラックの音像とあいまって、この作品がソロ名義作として並々ならぬ自信を伴ったものであることを伺わせる。また、リードトラックとしてミュージック・ビデオも公開されている“エブリバディズ・カミング・トゥ・マイ・ハウス”はイーノとの共作曲で、キャッチーなトラックにバーンのハイトーン・ヴォーカルが乗り、まるで80年代初頭の綺羅星がごときトーキング・ヘッズ楽曲を思わせる楽曲だ。
 しかし、アルバム全体を通して、そのように数多くの音楽要素の繚乱(物理的な音素数も相当に多い)に彩られながらも、これまでのバーン作品と同様、情念の表徴としてのパッショネイトな表現は周到に排除され、そのことによって逆説的に「主体の透明」な作家としてのデヴィッド・バーン像が前景化することになる。あくまで我々は、デヴィッド・バーンの体臭ではなく、デヴィッド・バーンの知性を味わうことになる。

 また、今作のリリックで彼は、知的シニカリストとしての手腕を相変わらず縱橫に発揮しているが、現実状況それ自体がシニックをブルドーザーのようになぎ倒そうとしていくいま、ひとりのポエットとして苦い逡巡を滲ませることに思いの外素直だ。
 苛立ち、不安、欲望が様々な形で現れているこの世界(それこそを彼は「アメリカン・ユートピア」と表現しているようだ)と、それに囚われる私達自信を、時に感傷的とさえ言えるほどの筆致をもって描き出す。「あなた」「わたし」という審級を超えて(“ドッグス・マインド”では私たちが犬の視点に引き据えられ、“バレット”では、拳銃から発射される弾丸の視点を取る)語られる物語もしくはその断片は、極めて悲観的な世界観であるようでいながら、どこかに慈しみが潜んでいる。
 その点で、リリックにおいては、知性で組み上げられた精緻な建築に若干ながらエモーショナルで不確定な要素を持ち込んだと言っても良いのかもしれないが、このような時代だからこそ、社会と、そこで生きる自らも含めた人間のネガティブな面にジリジリと迫ることが出来るというのもまた、また知的な態度であると言えるだろし、同時に、人間の感情という不確定性を自らのアートの中に内在化することで作品自体が外的世界へ扉を開くことになる、ということも彼は知っているのかもしれない。
 デヴィッド・バーンという人は徹頭徹尾、本来的な意味で「アーティスト」だ。その鋭敏な知性はいま、これまでに増してより鮮明に我々の目に映りつつある。

Oneohtrix Point Never - ele-king

 先日ニュー・アルバム『Age Of』のリリースがアナウンスされたOPNだが、ついにその詳細が発表されることとなった。同時に新曲“Black Snow”もフルで公開されている。

 公開されたクレジットを確認してまず驚くのは、多くのゲストが参加している点だ。これはOPN名義のオリジナル・アルバムとしては初めてのことである。ダニエル・ロパティンはこれまでもじつにさまざまなアーティストとコラボを繰り返してきたけれど、どうやら『Age Of』にはその経験が直接的に反映されているようだ。

〔新作には〕僕がここ数年、他のアーティストたちのために働いて経験したことに対する直感的で忠実な反応が詰まっているんだ。『Garden of Delete』の後に注目されるようになって、“グロテスク・ポップ”を作った後に、実際にポップ・ミュージックを作るようにもなった。音楽的な労働、つまり、音楽を収獲するということ、つまりは、誰かの音楽的なゴールのために働くということについて考えるようになった。また僕自身についてや、僕の作曲家として、またプロデューサーとしてのアイデンティティについてもね。 (オフィシャル・インタヴューより)

 そのような経験はロパティンにシュルレアリスムを想起させるものだったらしい。オフィシャル・インタヴューにおいて彼は「自分が欲しい音と、他人が欲しいと思うような音との両方を混ぜ合わせたシュールレアリスム的な音の組み合わせは、まるで誰かに切り裂かれたクレイジーな彫刻のようなものになった」と語っている。そのように「労働」と「シュルレアリスム」というふたつの観点を発見した彼は、新作『Age Of』に関して次のように宣言している。

僕はこのアルバムを「ブルーカラー・シュルレアリズム(労働階級のシュルレアリズム)」と呼ぼうと思ってる。 (オフィシャル・インタヴューより)

 じっさいに招かれているゲストたちも興味深い。クレジットにはローレル・ヘイローラシャド・ベッカーの作品への参加で知られるパーカッショニストのイーライ・ケスラーや、昨年『Hopelessness』でハドソン・モホークとともにOPNにもプロダクションを担当させていたアノーニなどに加え、なんとジェイムス・ブレイクの名までもが記載されている。
 なかでも4曲で参加しているアノーニの存在は、このアルバムの成り立ちそのものに関わっているようだ。環境問題をめぐる会話でアノーニを怒らせてしまったロパティンは、それをきっかけに環境について考えるようになり、それこそが本作の始まりとなったのだという。

僕らは欲張りで地球から多くを取り過ぎることになる。自分たちのことしか考えないからね。アノーニの気持ちを傷つけてしまったことからはじまって、もうそうしたくないと思った。そしてなぜ自分が無感覚だったのかということについても考えた。もう少し気遣えるようになりたいし、コンピュータードリームの一端になりたくないんだ。このアルバムはちょっとした警告ようなものなんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 そして、もっとも驚きを与えるだろうゲストのジェイムス・ブレイクについてロパティンは、「彼とは気が合うんだ。付き合いは長くはないよ。お互いに存在は知っていたけどほとんど話したこともなかった」と振り返っている。OPNは一昨年、ハドソン・モホークとジェイムス・ブレイクとの論争を仲裁しているが、その前年あたりから交流が始まったのだろうか。ともあれ、ブレイクは3曲でプレイヤーとしてキイボードを担当するとともに、アルバム全体のミックスを手がけてもいる。ロパティンは、今回のアルバムのミキサーにはエンジニアではなく自身でも音楽を演奏する人がふさわしいと考え、ブレイク本人に依頼することになったのだそうだ。

彼〔ジェイムス・ブレイク〕は、自分が作ったジェイ・Zの曲をSpotifyで聞いた時、これは正しいミックスじゃないと言ってSpotifyから曲を落とさせて、彼が思った通りの、より良いものと入れ替えさせたって話があるんだ。とてもクールだよね。それに強い。インスパイアされたよ。それで彼にアプローチしてみたんだ。そしたら「いつスタートする?」ってすぐ返事が来て、とてもいいエネルギーを感じた。 (オフィシャル・インタヴューより)

 他方、ブレイクのキイボーディストとしての腕前についてロパティンは、「デレク・ベイリーのような即興演奏者やフリージャズピアニストのようだ」と語っている。「音楽とは何かということに気づかせてくれる。つまり音楽とはアイディアではなく、人から出てくる直感のようなものなんだ」。
 クレジットを眺めていてさらに驚くのは、本作にはなんとロパティン本人の歌までもがフィーチャーされているということだ。「ただ歌が好きなんだ。歌が声を必要とする」と彼は言う。「何を言っているかわかりづらくても、何かしらの意味を発しているというだけで奇跡的だと思うんだ」。前作『Garden Of Delete』では音声合成ソフトのChipspeechが導入されていたが、本作ではオートチューンが用いられている。

僕とアノーニの声を使ってオートチューンやエフェクトをかけてる。声が別のものになるってのがいいんだ。モンスターとか生物が好きだからね。SFとかへの愛情の現れでもあるね。声がリッチで興味深くなる。音の鳴り方自体が物事を説明できてしまうほどパワフルになる。その一方で何も伝わらなかったとしてもオブジェになるというようなパワーもある。声の持つ色々な側面が好きなんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 サウンド面で言えば、チェンバロのサンプリングが使用されているのも新作の大きな特徴のひとつだろう。先月部分的に公開された新曲にはルネサンス音楽~バロック音楽の要素が表れ出ていたが、それもチェンバロの響きから誘導されたものと思われる。

チェンバロは面白い楽器だ。音楽的なマシーンってのがいい。僕にとってチェンバロは、色々な開発が進んでいた時代に、物事を発展させて世の中を変えようとしていた中で生まれたもので、工業的な強みを持った、バイオリンのような弦楽器の複雑なバージョンだ。開発された当時は、例えばシンセサイザーの音を最初に聴いた時のような衝撃があっただろうね。 (オフィシャル・インタヴューより)

 コンセプト面もおもしろい。本作にはふたりの哲学者が影響を与えている。ひとりはミハイル・バフチン。彼がラブレーの『ガルガンチュワとパンタグリュエル』について論じた文章(おそらく『フランソワ・ラブレーの作品と中世・ルネッサンスの民衆文化』)を読んだことが、このアルバムを作るきっかけのひとつとなったらしい。

彼〔バフチン〕が本の中で言っていてとても好きな部分があって、それは「歴史は嘘だ」というようなことなんだ。つまり我々が認識している歴史は、混沌とした複雑な世界を注意深く整えて残したもので、真実は街の市場で起こっているということ。人々が笑いあったり、悪いジョークを言っていたりする中にね。それを読んだ時に、すぐにこのアルバムのことが思い浮かんで、その昔の16世紀の時代に同じことを思っていた友達がいたということに気づいて嬉しかったんだ。 (オフィシャル・インタヴューより)

 もうひとりはニック・ランドだ。今回公開された新曲“Black Snow”のリリックは、ランドの主宰する研究機関Cybernetic Culture Research Unit(CCRU)が2015年に出版した本(おそらく『Ccru: Writings 1997-2003』)からインスパイアされているのだという(ランドについては、コード9のインタヴューを参照)。

 ……とまあ、このように、今回のOPNの新作は、さまざまな面でじつに興味深い作品に仕上がっているようである。リリースは5月25日。カンヌ映画祭でのサウンドトラック賞の受賞や坂本龍一のリミックス・アルバムへの参加を経て、ダニエル・ロパティンは次にどこへ向かおうとしているのか? 混沌とした現代を象徴することになりそうなこの新作を、しっかりと迎える準備を整えておこう。

最新にして圧倒的傑作『AGE OF』から
自ら監督した新曲“BLACK SNOW”のミュージック・ビデオを解禁!
ジェイムス・ブレイク、アノーニらのアルバム参加も明らかに!

アルバム発表と同時に待望の来日公演も発表され、謎めいたトレーラー映像も話題となっているワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(以下OPN)が、最新アルバム『Age Of』から、初のフル公開曲となる新曲“Black Snow”を解禁! ミュージック・ビデオはOPNことダニエル・ロパティン自らが監督を務めている。さらにジェイムス・ブレイク、アノーニらのアルバム参加も明らかとなった。

ONEOHTRIX POINT NEVER - BLACK SNOW
https://opn.lnk.to/BlackSnow-video

本楽曲の歌詞は、イギリス出身の哲学者・著述家であるニック・ランド、そして彼が設立に携わり、90年代に活動した「サイバネティック文化研究ユニット(Cybernetic Culture Research Unit)」にインスパイアされており、我々人間が、いかに混乱に向かうことを運命づけられているかということを突きつける。奇異さとポップネスを絶妙なバランスで同居させ、内臓を貫くようなハーモニーがもたらす心地良さも、異端なミニマリズムが生む緊張感も、すべてが美しいメロディーの海原へと溶け込んでいく。

また今回の発表に合わせて、アルバムの全クレジットが公開され、OPN名義の作品としては初めて、他のアーティストがゲスト参加していることが明かされた。ジェイムス・ブレイクがアルバム全体のミックスを担当している他、3曲でキーボードを演奏、さらにアノーニがヴォーカルで参加している(*OPNはアノーニの最新アルバム『Hopelessness』でハドソン・モホークと共にプロデューサーを務めている)。他にも、ローレル・ヘイローやラシャド・ベッカー、日野浩志郎らとのコラボレーションでも知られる気鋭パーカッショニスト、イーライ・ケスラー、ケレラやブラッド・オレンジ、ファーザー・ジョン・ミスティ作品への参加でも知られるシンガーにしてチェリストのケルシー・ルー、ノイズ・アーティストのプルリエントらが参加。ミックスを依頼したジェイムス・ブレイクについて、ダニエル・ロパティンは次のように語っている。

ジェイムスとうまく仕事ができたのは、ミキシングに必要なのは技術的なことじゃなくて、良いアレンジだという点で同意していたことにあると思う。正しいサウンドが並び合っていればミックスも簡単だ。でも間違った音が並んでクレイジーな場合は、技術に頼らざるを得なくなってくる。スタジオでの判断基準はすべてどうアレンジするべきか、だった。音楽的な視点でのミックス作業で、それこそ僕が必要としているものだった。とても彼が助けてくれたことに満足してるよ。ジェイムスはノッてくるとキーボードも演奏してた。

大型会場パークアベニュー・アーモリー(Park Avenue Armory)で二日間開催予定だったニューヨーク公演が即完したことを受け、ニューヨークでの追加公演、ロンドン公演、そしてデンマーク(ハートランド・フェスティバル)、スペイン(プリマヴェーラ・サウンド)でのフェスティバル出演を経て、9月に一夜限りの東京公演(Shibuya O-EAST)の開催も決定! 売り切れ必至のチケットは、各プレイガイドにて現在絶賛発売中。

公演日:2018年9月12日(WED)
会場:O-EAST

OPEN 19:00 / START 19:30
前売 ¥6,000(税込/別途1ドリンク代) ※未就学児童入場不可

一般発売日:4月21日(SAT)
チケット取扱い:
イープラス [https://eplus.jp]
チケットぴあ 0570-02-9999 [https://t.pia.jp/]
ローソンチケット (Lコード:72937) 0570-084-003 [https://l-tike.com/opn/]
BEATINK [www.beatink.com]

企画・制作:BEATINK 03-5768-1277 [www.beatink.com]

https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9577

OPN最新アルバム『Age Of』は、日本先行で5月25日(金)リリース! 気鋭デザイナー、デヴィッド・ラドニックがデザインを手がけたアートワークには、アメリカ現代美術シーンで最も影響力があるヴィジョナリー・アーティストと称されるジム・ショーの作品がフィーチャーされている。国内盤には、ボーナストラックとして、ボイジャー探査機の打ち上げ40年を記念して制作された映像作品「This is A Message From Earth」に提供した“Trance 1”のフル・ヴァージョンが初CD化音源として追加収録され、解説書と歌詞対訳を封入。SF小説家の樋口恭介が歌詞の翻訳監修を手がけている。またスペシャル・フォーマットとして数量限定のオリジナルTシャツ付セットの販売も決定。

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Age Of

release date:
2018/05/25 FRI ON SALE

国内盤CD BRC-570 定価:¥2,200+税

国内盤CD+Tシャツ BRC-570T
定価:¥5,500+税

【ご予約はこちら】
beatink:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=9576

amazon:
国内盤CD https://amzn.asia/6pMQsTW
国内盤CD+Tシャツ
S: https://amzn.asia/0DFUVLD
M: https://amzn.asia/4egJ96i
L: https://amzn.asia/g0YdP88
XL: https://amzn.asia/i0QP1Gc

tower records:
国内盤CD https://tower.jp/item/4714438

iTunes : https://apple.co/2vWSkbh
Apple Music :https://apple.co/2KgvnCD

【Tracklisting】
01 Age Of
02 Babylon
03 Manifold
04 The Station
05 Toys 2
06 Black Snow
07 myriad.industries
08 Warning
09 We'll Take It
10 Same
11 RayCats
12 Still Stuff That Doesn't Happen
13 Last Known Image of a Song
14 Trance 1 (Bonus Track for Japan)


ALBUM CREDITS

Written, performed and produced by Oneohtrix Point Never
Additional production by James Blake

Mixed by James Blake
Assisted by Gabriel Schuman, Joshua Smith and Evan Sutton

Mix on Raycats and Still Stuff That Doesn’t Happen by Gabriel Schuman

Additional production and mix on Toys 2 by Evan Sutton

Engineered by Gabriel Schuman and Evan Sutton
Assisted by Brandon Peralta

Mastered by Greg Calbi at Sterling Sound

Oneohtrix Point Never - Lead voice on Babylon, The Station, Black Snow, Still Stuff That Doesn’t Happen
Prurient - Voice on Babylon, Warning and Same
Kelsey Lu - Keyboards on Manifold and Last Known Image Of A Song
Anohni - Voice on Black Snow, We’ll Take It, Same and Still Stuff That Doesn’t Happen
Eli Keszler - Drums on Black Snow, Warning, Raycats and Still Stuff That Doesn’t Happen
James Blake - Keyboards on We’ll Take It, Still Stuff That Doesn’t Happen and Same
Shaun Trujillo - Words on Black Snow, The Station and Still Stuff That Doesn’t Happen

Black Snow lyrics inspired by The Cybernetic Culture Research Unit, published by Time Spiral Press (2015)
Age Of contains a sample of Blow The Wind by Jocelyn Pook
myriad.industries contains a sample of Echospace by Gil Trythall
Manifold contains a spoken word sample from Overture (Aararat the Border Crossing) by Tayfun Erdem and a keyboard sample from Reharmonization by Julian Bradley

Album art and design by David Rudnick & Oneohtrix Point Never

Cover image
Jim Shaw
The Great Whatsit, 2017
acrylic on muslin
53 x 48 inches (134.6 x 121.9 cm)
Courtesy of the artist and Metro Pictures, New York

label: Warp Records / Beat Records
artist: Oneohtrix Point Never
title: Black Snow

iTunes : https://apple.co/2vWSkbh
Apple Music : https://apple.co/2KgvnCD
Spotify : https://spoti.fi/2HZc1kL

Kali Uchis - ele-king

 忘れられないのは彼女の太い眉毛と長いつけまつ毛だけじゃない。「彼女は愛なんて要らない。欲しいのは僕(私)の100ドル」──スティーヴ・レイシー(not フリー・ジャズ奏者/R&Bバンドのジ・インターネットのメンバーで、シドのソロの共作者)が一緒に歌っているこの曲“Just A Stranger”のフックは、いちど聴いただけで覚えるぐらいキャッチーだ。決してハッピーな曲ではないがちょっとのりのりの気持ちになれるという、今日のダンス・サウンドを咀嚼したネオソウル・ポップの佳作だと言えよう。カリ・ウチスのデビュー・アルバム『アイソレーション(孤絶)』には、そんな洗練されたポップスが何曲も、そしてまた何曲もある。まあGW前だし、初夏だし、気持ちを上げる意味でも、最近聴いたポップ・アルバムのなかで断トツでお気に入りの1枚を紹介しよう。
 
 コロンビア系アメリカ人の彼女の名前は、すでに多くのポップス・ファンには知られている。なにせ彼女の参加作品/共演者のリストには、メジャー・レイザー、ミゲル、タイラー、ザ・クリエイター、ゴリラズ……などとある。18歳のときに発表したミックステープ(そのゆめかわいい曲たち)がその前年まで車のなかで暮らしていたという彼女の存在を音楽界に知らしめたのだった。
 コロンビアのラナ・デル・レイなどという風評もあるが、そこまで深刻に悲しいようには見えない。USのエイミー・ワインハウスという形容もあるようだが、そこまでレトロ・スタイルではない。が、たしかにワインハウスと似ていると思う曲はある。“Flight 22”と“Feel Like A Fool”、この2曲はレトロスペクティヴなソウルだが、まあ許そう、ほんとうに良い曲なのだから。

 とにかく、いろんなタイプの曲がある。オープナーの“Body Language”はなんとボサノヴァ調の曲で、かなり良い感じでドリーミーに展開する。スペイン語で歌われ、レゲトン調のアクセントを持つ“Nuestro Planeta”もじつに洗練されている。ブーツィー・コリンズとタイラーが参加した“After The Storm”は、サンダーキャットの領域をかすりながらも柔らかいファンクのクッションの上を沈んでいく。近年のR&Bにありがちな際だったことをやっているわけではない。基本に忠実でありながら今風にまとめられている。
 レゲエのダンスホール・スタイルをゆっくりと再生しながら彼女のセクシーな歌がまわり続ける“Tyrant”も印象的な曲だ。まあ、歌詞はそれなりにエロスと政治が絡められているようだが……(この暴力的な世界で耳に入るのは静寂……あなたは暴君? いまやすべてが暴動なのにあなたは静寂……) 
 アルバムのなかでもっとも意表を突いているのは、ほとんどクラウトロック(クラフトワークorノイ!)の"In My Dreams"。いや、これはなかなか……歌詞もまたユニークというかドラッギーというか……(私は夢の少女、夢のなかではお金の心配もない、ママもコークに手を出さない……幸せ、幸せ、誰も存在しない)。

 カリ・ウチスは夢の少女なのだろう。あの眉毛とつけまつ毛とピンクの印象にはなんかこう、ファンタジーすら感じる。とはいえ、彼女の『アイソレーション』という言葉には、ひょっとして、いや、たぶんぼくの妄想だが、ジョイ・ディヴィジョンの“アイソレーション”からの引用だったりして……などと思ってしまったりもする。ま、なんにせよ、考えてみればGW中に『アイソレーション(孤立)』なんて、ある意味皮肉が効き過ぎているよなぁ。ちなみにプロデューサーはTV・オン・ザ・レディオのデヴィッド・シーテックで、演奏しているのはバッドバッドノットグッド。

August Greene - ele-king

 今年の頭にロバート・グラスパーがふたつの新プロジェクトを開始しているというニュースが入ってきた。ひとつは「R+R=NOW」というもので、クリスチャン・スコット、デリック・ホッジ、ジャスティン・タイソン、テイラー・マクファーリンによるバンド。こちらは今年の『東京JAZZ』での来日も予定されている。
 そしてもうひとつはオーガスト・グリーンというもので、コモンとカリーム・リギンズとによるユニット。グラスパーはコモンと旧知の仲で、いままでもいろいろと共演しており、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの『ブラック・レディオ2』(2013年)にもコモンは参加していた。カリーム・リギンズは1990年代よりコモンの数々の作品の共同プロデューサーを務め、またJ・ディラやエリカ・バドゥなどの作品に関わる一方でジャズ・ドラマーとしても活動するなど、グラスパー同様にジャズとヒップホップ/R&Bを繋ぐような存在である。
 この3者が集まったオーガスト・グリーンは、そもそも2016年10月3日(※オバマ政権時代)にホワイトハウスで行われたセッションが発端となる。当時「サウス・バイ・サウス・ローン」というアート・イベントが米大統領官邸で開催され、その一環で〈NPRミュージック〉によるライヴ配信シリーズの「タイニー・ディスク」の特別篇が図書室で行われ、そこにコモンが出演した。バックで演奏したのはグラスパー、リギンズほか、キーヨン・ハロルド、デリック・ホッジ、エレネ・ピンダーヒューズで、ビラルもゲスト出演していた。コモンが『ブラック・アメリカ・アゲイン』(2016年)をリリースする11月4日の1ヶ月ほど前のことで、このアルバムから数曲が披露された。『ブラック・アメリカ・アゲイン』にもグラスパーとリギンズはプロデューサーとして参加しており、リリースから4日後の11月8日は米大統領選の投票日だった。『ブラック・アメリカ・アゲイン』は「ブラック・ライヴズ・マター」に触発されたアルバムで、ドナルド・トランプへの対抗姿勢が示されたものだったが、結局コモンたちの願いとは裏腹にトランプ政権が誕生することになる。

 そうした観点から、『オーガスト・グリーン』は『ブラック・アメリカ・アゲイン』のその後を描いたアルバムとなる。「もし、俺が黒人のケネディだったら」と歌う“ブラック・ケネディ”に示されるように、黒人たちのアメリカの夢を再びというメッセージがここでも繰り返される。コモンによると、ケネディ一族はアメリカの富や権力、影響力の象徴であり、それを黒人の流儀でやったのが“ブラック・ケネディ”となる。
 そして、グラスパーはこの曲に黒人たちの不屈の強さを込めている。ブランディがゲスト参加した“オプティミスティック”は、ゴスペル・グループのサウンド・オブ・ブラックネスのカヴァー。原曲がリリースされた1991年はR&Bやハウス・シーンも巻き込んでのヒットとなったのだが、今回のカヴァーに際しては映像作家のB+を監督に迎え、キング牧師記念日にミシシッピ州のジャクソンでPVが撮影された。コモン、グラスパー、リギンズ、ブランディらに加え、ミシシッピの人権活動家らが登場する内容となっている。
 なお、“レッツ・ゴー”と“プラクティス”に参加しているサモラ・ピンダーヒューズはラッパー兼ピアニストで、前述のホワイトハウスのセッションに参加していたフルート奏者エレネ・ピンダーヒューズの兄にあたる。“レッツ・ゴー”や“フライ・アウェイ”はフォーキーで枯れた味わいが印象的で、“アヤ”はグラスパーらしいジャズ感覚が表われた曲。演奏にはギターやフルートなども加わっていて、クレジットはないがエレネ・ピンダーヒューズがフルートを吹いていたりするのではないだろうか。“ノー・アポロジーズ”はブロークンビーツ的なジャズ・ファンクで、コモンのラップはラスト・ポエッツ風。この曲に顕著だが、リギンズのズレてよじれたドラミング・ビートがアルバムの聴きどころのひとつでもある。

 本作はオーガスタス・グリーンの自主制作となり、いまのところCDなどの発売はなく、配信もアマゾン・ミュージックのみと限定的な形でのリリースとなっている。どのような理由でこうした形態となったのかはわからないが、政治的な問題なども絡んで大手のレコード会社などからはリリースできなかったのだろうか。ただ、リリースにあたって前述のPVや「タイニー・ディスク」でのライヴ披露などプロモーションが行われ、そうした話題性とともに作品そのものは非常に内容が濃い。2018年のブラック・ミュージックの重要作として記されるべき作品である。

Gonno & Masumura - ele-king

 私が森は生きているのA&Rディレクターの任にあった2014年、ele-king野田編集長から「テクノDJのGonnoくんに森は生きているの曲をリミックスさせてみたいんだ」という相談を受けたとき、正直言ってどのようなものが創り出されるのか、なかなか想像するのが難しかった。対象曲としてピックアップされた“ロンド”は、レコーディングでもあえてクリック(生演奏をスタジオ録音するにあたり、曲中のテンポを一定に保つためのメトロノーム音)を使用しなかったため自然とリズムにも揺らぎが生じており、そこに反復的に電子音をレイヤーし、かつリミックスを施すことは非常に根気のいる作業のはずだった。
 しかし果たして出来上がってきたリミックス・ヴァージョンは、電子音をひとつひとつ揺動するリズムに合わせ精緻に配置しつつ、全体では原曲の持つサンバ・ホッキ的リズム構成を活かしながら、バレアリックな音色と空間処理を施し大胆に再構築するという、高度な処理がなされたものであった。(いまとなってはなかなか入手の難しい状況かもしれないが、是非機会があればそのリミックス版の収録された12inch「ロンド EP feat. Gonno」を聴いてみて下さい)

 本作『In Circles』でGonnoと森は生きているのドラマーであった増村和彦は、かつて“ロンド”のリミックスで試されたクリックの使用有無による物理的的な揺らぎという問題系を超え、すべてマシンと人間の共同作業が前提となる綿密な音楽的コミュニケーションを通して、縦軸的な揺れを駆逐する代わりに、ミュージシャン相互の交感神経的次元に存在する本質的「揺らぎ」(肉体的リズム感覚の相克といっても良いかもれない)を、全体の揺動として心地よく提示することとなった。
 メビウス、プランク、ノイマイヤーによる『ゼロ・セット』や、フォー・テットとスティーブ・リードのコラボレーションなど、音楽史上実験を繰り返されてきた電子音とドラムス生演奏の融合は、それらの音素が、マシンと人間という違った次元のリズム・ヴィジョンを有していることを異化作用的に逆利用して、そこに存在する差異のダイナミズムを提示しようとしたものであった。
 しかしこの『In Circles』では、そういった系譜を十分に踏まえつつも、Gonnoによるメロディックなテクノ/ハウスの語法と、アフロ・ビートへの多大なるリスペクトに溢れたプレイヤビリティ漲るMasumuraのプレイが、相互のリズム感覚の差異を提示しようとするのを超えて(また、ときに埋めようとするのを超えて)、より本質的な次元で「1」たる統一態となることが目指されている。「電子音vs空気を震わす打音」を対立項として提示しつつも、聴覚上(触覚上といったほうが近いか)は、書き始めと書き終わりの定かでないサイケデリックな図像のように、渾然一体に音楽が揺動(スウィング)する感覚を喚起する。相互に内在するリズム・ヴィジョンは溶け合い、大きな総体として音楽が立ち上がってくるとともに、差異そのものも溶け出し、大きなグルーヴとなって内側から音楽自体を揺らしていくのだ。
 
 M1“Circuit”は、5拍子という奇数拍子の反復になっているのにもかかわらず、一般にポスト・ロックなどで志向されがちなトリッキーな演出効果は射程に入っていない。激烈なドラム・プレイと妖面なトラックが空間を埋め尽くすが、それらはあくまでシームレスなグルーヴを持続し、まろやかな酩酊を運び込む。中途からフィーチャーされる岡田拓郎とトム・ホークによるギターも、ギターという楽器自体から発散される物理的でソリッドな成分は極限まで抑制され、あくまで図像に溶け込ませるように、鮮やかな色を含ませた筆として運ばれていく。
 アルバム・タイトル曲である続くM2“In Circles“も同じく奇数拍子(7拍子)であるが、Gonnoによる音素自体にうねりを練り込んだような絡みつく電子音と、ステディでいながら細かな人的ニュアンスに飛んだ技巧を繰り出すMasumuraのプレイにより、デジタルとアナログのグラデーションが立ち上がる。それはまるで、コンピュータ・グラフィックス登場以前にキャンバスへ描かれた、アルバースやステラなどの黄金期抽象絵画を彷彿とさせもする。
 さらにM3~4と続く流れでは、ダブ・ミックスを纏ったドラムスが空間を太い筆致で埋めたあと、快活なリズムとともに転がり初める。Gonnnoによる流麗な音素がキャンパス全体に水色の飛沫をたらし込み、清涼なファンクネスを伴うダンス・ミュージックとしての機能も見せつける。
 ミニマルなフレーズとパッショネイトなドラムがジリジリとお互いを組み伏せるM5“Wirbel Bewegung”は、テクノ・ミュージックが持つ反復性に、そも肉体的感覚が不可欠であることを改めて提示する。不穏な環境音をドキュメントしたかのようなM6に続き現れるM7“Mahorama”で、Masumuraはドラム・セットでなく各種パーカッションを操る。その打音がもつトライバルな臭気を空間に行き渡らせるように、初期電子音楽を思わせる長閑としたトラックが漂い、淡い暖色によるアンビエントが描かれる。それに続くM8“Cool Cotton”は、初期電子音楽につづいて芽生えた草創期テクノ・ミュージックに対してのオマージュも感じるポップネスに溢れ、電子音楽発展史を仮想的になぞってみせることで、音楽愛溢れたチャームも聞かせる。
 そして、アルバム・クローザーとなる“Ineffable”では、アルバム中もっとも穏やかに、ドラムスは電子音を、電子音はドラムスを賛美し、お互いの高らかな習合が「歌われて」いく。天上的バレアリックとも呼びたいこの美しいアンビエント世界も、6/8の拍子に全体を優しく揺動されている。

 テクノ/ハウスDJとして、ここ日本を超え出て海外で高い評価を得、自身のフィールドの外側へと果敢に歩み出る活動を続けてきたGonno。その短い活動期間の間、音楽主義を貫徹しながらシーンを超え出た未踏の地で白兵戦を繰り広げてたバンド、森は生きていると、そのドラマー増村和彦。
 ふたりの音楽世界が、その強度を保ちながらよりジャンル横断的な視野を獲得し、邂逅し溶け合うことで、この上も無く豊かな果実として結実した。
 ふたりのインタープレイは、一組の合奏となり、立ち現れた音楽は、音楽それ自身に加えて、もちろんあなた方も揺動する。ひたすらに心地よく、揺らしてくれる。

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