「Nothing」と一致するもの

Amir Bresler - ele-king

 近年盛り上がりを見せているイスラエル・ジャズ・シーン。LAの〈Stones Throw〉からはアピフェラ『Overstand』(21)が出ているし、〈Tru Thoughts〉からはセフィ・ジスリング『Expanse』(20)があった。それらユヴァル・ハヴキン=リジョイサーやニタイ・ハーシュコヴィツまわり、あるいはアヴィシャイ・コーエンといった当地の重要な音楽家たちを支えてきたドラマーがアミール・ブレスラーだ。このたび、そんな彼の初のソロ・アルバムがリリースされることになった。プロデューサーはリジョイサー、ジスリングもトランペットで参加している。躍動感あふれるドラムやパーカッションはもちろん、スペイシーな感覚にも注目の『House of Arches』は、5月11日に発売。

Amir Bresler
House of Arches

アヴィシャイ・コーエンやオメル・クレイン、ニタイ・ハーシュコヴィツら、イスラエル・ジャズの重要ミュージシャン達を支え、バターリング・トリオ、Raw Tapes とも繋がりの深い注目のジャズ・ドラマー Amir Bresler(アミール・ブレスラー)が、待望のソロ・アルバムを完成させた。朋友リジョイサー、ギラッド・アブロら、シーンのキーマンたちが参加!! ボーナストラックを加えて、日本限定盤ハイレゾMQA対応仕様のCDでリリース!!

主な参加ミュージシャン: keyboardist / producer: Rejoicer (Buttering Trio), singer: Yemen Blues frontman Ravid Kahalani, bassist: Gilad Abro, pianist: Nomok and trumpeter: Sefi Zisling

イスラエルで僕が惹かれてきた音楽に常に関わっていたのが、アミール・ブレスラーだ。この真にクリエイティヴなドラマーのエッセンスが、本作には惜しみなく込められている。ルーツであるジャズと長年取り組んできたアフロビートを軸に、ポリリズミックな音楽の持つ多様性と深さを伝える。ライヴ感を大切にしたリジョイサーのプロデュース・ワークも素晴らしい。(原 雅明 rings プロデューサー)

アーティスト:Amir Bresler (アミール・ブレスラー)
タイトル:House of Arches (ハウス・オブ・アーチ)
発売日:2022/5/11    
価格:2,400円+税 
レーベル:rings / Rawtapes
品番:RINC86
フォーマット:CD(MQA-CD/ボーナストラック収録)

* MQA-CDとは?
通常のCDプレーヤーで再生できるCDでありながら、MQAフォーマット対応機器で再生することにより、元となっているマスター・クオリティの音源により近い音をお楽しみいただけるCDです。

Tracklist:
​1. Mole's Pirouette
2. Landing and Parking (feat. Rejoicer)
3. The Dance Of The Messors
4. House of Arches
5. Despite All (feat. Liquid Saloon)
6. Bir Tawil (feat. Ravid Kahalani)
+ボーナストラック追加予定

Official HP:https://www.ringstokyo.com/amirbresler

Charles Burnett - ele-king

 数年前、『ノーザン・ソウル』を日本で初めて上映させてくれた自主上映グループ〈After School Cinema Club〉が3月19日、20日の2日間にわたって、アメリカの独立系映画監督チャールズ・バーネットの2作品、 『キラー・オブ・シープ』と『マイ・ブラザーズ・ウェディング』を渋谷のユーロライブにて開催上映する。どちらも日本では初上映になる。

 ミシシッピで生まれ、ロサンゼルス・ワッツ地区で育ったチャールズ・バーネットは、1960年代後半から70年代にかけてのブラックパワーの時代にUCLAで映画制作を学んでいる。そして在学中に「L.A. Rebellion」と呼ばれるインディペンデント映画監督グループの一員として、ハリウッド映画とは異なる新しい「黒人映画」 を模索した。
 約半世紀にわたるキャリアを通し一貫してアメリカ黒人の経験を描き続けてきたバーネットの作品は、人種や階級に対する鋭い観察眼をもって描かれたネオリアリズム作品として再評価され、2017年にはアカデミー名誉賞を受賞している。

 BLMによってブラック・カルチャーや人種問題に感心が高まっている現在、まさに待望の上映と言えるだろうが、そうした註釈が不要なほど、感動的な人間ドラマでもある。この機会をお見逃しなく。

■This is Charles Burnett
チャールズ・バーネット セレクション vol.1

2022年3月19日(土)・20日(日)
【会場】 ユーロライブ(渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F)
【タイムテーブル】

3/19(土)
13:30 開場
14:00『キラー・オブ・シープ』
15:45『マイ・ブラザーズ・ウェディング』

3/20(日)
13:30 開場
14:00『マイ・ブラザーズ・ウェディング』
15:45『キラー・オブ・シープ』
*両日とも各作品入替制
【チケット(1作品)】
学生 1,500円 / 一般 1,800円 / *応援料金2,200円
*After School Cinema Clubでは、今後もバーネット作品を広く紹介していきたいと考えています。
これからの展開のために、賛同してくださる皆さまに「応援料金」(一般鑑賞料+応援料400円)を設けました。

*チケットはPass Marketにて2発売
passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02ykegz3k1721.html

【公式サイト】 afterschoolcinemaclub.com/charlesburnett/
【予告編】 https://youtu.be/ScixblKknAE

『キラー・オブ・シープ』 ★日本初上映
1977年/アメリカ/81分/スタンダード/B&W/モノラル/原題:Killer of Sheep
【監督・脚本・製作・編集・撮影】チャールズ・バーネット
【出演】ヘンリー・ゲイル・サンダース、ケイシー・ムーア、チャールズ・ブレイシー、アンジェラ・バーネット
メランコリーとユーモア、絶望と希望ー スクリーンに映し出されることのなかった都市部のゲットーに住むアフリカ系アメリカ人の生活を、 鋭い洞察力をもって描いた「アメリカ・ネオリアリズムの傑作」

[ストーリー]
ワッツ暴動(1965)の爪痕が残る、1970年代初頭のロサンゼルス・ワッツ地区。妻と二人の子供を養うスタンは羊の屠殺場で働いているが、日々の労働と貧困により肉体的にも精神的にも疲れ果てている。夜も眠れず自分の殻に閉じ込もるスタンとの関係を、妻は思い悩む。貧しさに気づかないまま無邪気に遊ぶ子供たちも、いつかは大人になることを学ばなければならないー。

[プロダクションノート]
UCLA映画学部の大学院生だったバーネットの卒業制作にして初長編作。「私が知っている人たちについての映画を作りたかっ た」と語るバーネットが、わずかな予算で、大学から借りてきた機材を使い、身近な人々を中心とした素人のキャストを集めて 自身の地元ワッツで撮影。都市に暮らすブルーカラーの黒人たちの日常生活は、ハリウッド映画ではほとんど描かれることがな く、題材そのものが画期的であった。主観を排したドキュメンタリー風のスタイルは、ロベルト・ロッセリーニ監督『戦火のか なた』や、ヴィットリオ・デ・シーカ監督『自転車泥棒』などのイタリア・ネオリアリズム映画を引き合いに、批評家から高く 評価された。アフリカ系アメリカ人の音楽の歴史を表現するため、劇中ではポール・ロブソン、ダイナ・ワシントン、アース・ ウインド&ファイアーなど、様々なジャンル、時代の音楽が使用されている。音楽著作権の問題で長い間劇場公開されなかった が、2007年にスティーブン・ソダーバーグ監督の協力を得たマイルストーン・フィルム社が音楽著作権問題を解決したことによ り、初上映から30年を経て、本国アメリカでようやく劇場公開が実現した。

[主な受賞歴など]
▪1981年ベルリン国際映画祭 国際批評家連盟賞
▪1982年サンダンス映画祭 審査員大賞
▪1990年アメリカ議会図書館 「国立フィルム登録簿」登録
▪2002年全米映画批評家協会「史上最も重要な映画100本」選出
▪2007年ニューヨーク映画批評家協会賞 特別賞

『マイ・ブラザーズ・ウェディング』 ★日本初上映

2007年/アメリカ/82分/スタンダード/カラー/原題:My Brother’s Wedding
【監督・脚本】チャールズ・バーネット
【製作】チャールズ・バーネット、ゲイ・シャノン・バーネット
【編集】トーマス・M・ペニック
【編集総責任】チャールズ・バーネット
【編集(2007年)】チャールズ・バーネット、エド・サンティアゴ
【出演】エヴァレット・サイラス、ジェシー・ホルムス、ゲイ・シャノン・バーネット、ロナルド・E・ベル
*1983年制作のロングヴァージョンを2007年に再編集した「ディレクターズ・カット版」を上映

滑稽かつ哀切な、時代を超越した青春譚 「黒人のゲットーでの生活を描いたこれほどの作品を、私は未だかつて観たことがない」
ージョナサン・ローゼンバウム

[ストーリー]
30歳のピアースは、両親が営むクリーニング店で将来の見通しが立たないまま働いている。少年時代の仲間は刑務所にい るか、もしくは既に死んでしまった。弁護士として成功した兄は高慢な中産階級の女性との結婚準備に忙しく、敬虔なク リスチャンの母親は兄の結婚に浮き足立っている。そんな中、ピアースの親友ソルジャーが刑務所から出所する。大人になりきれないピアースは、家族への義務感と親友への忠誠心との間で引き裂かれる...。

[プロダクションノート]
『キラー・オブ・シープ』同様、ワッツに住む黒人労働者階級の生活を活写した悲喜劇。家族と悪友との間で揺れる主人公を 通して、黒人コミュニティ内における階級の複雑さを描く。バーネットの意に反して未完成のラフカット版が映画祭に出品され てしまい、そこで酷評されたためほとんど配給されずに終わるという不幸な運命を辿った。2007年にアメリカで『キラー・オ ブ・シープ』と再上映された際に、バーネットと編集者が115分から82分に再編集した「ディレクターズ・カット版」が実現。 あるべき姿で日の目を見ることとなった。

caroline - ele-king

 自分で言うのもなんだが、ぼくはreviewを書くのがけっこう速い。もちろん前提として何度か聴いている場合だが、だいたい2〜3時間もあれば2000字ぐらいは書ける。まあ、その分タイプミスも多いのだが、4時間以上かけることはまずない。
 たぶん、ぼくが原稿を書くうえでもっとも時間をかけているのは書き出しだ。DJで言えば1曲目。それが決まればゴールも見える。そう、そんなわけで、キャロラインのreviewを書こうと昨日取りかかったのだが、これがいっこうに書けないでいる。書き出しがうまくはまらないのだ。この素晴らしい音楽を伝えるのに、果たしてどこからはじめたらいいのか、いくつか書いてみたのだけれど、どうもしっくりこない。
 ぼくはキャロラインのアナログ盤を買った。ジャケットの写真に強く惹かれたし、見開きの写真も見たいとも思った。そして、針を下ろしてクレジットをしげしげと眺めながら聴きたいと思ったというのは確実にある。が、もっとも大きな理由を言えば、自分にとってこれが今年の重要な1枚になる気がしたからだ。
 
 キャロラインの堂々たるデビュー・アルバムは、とらえどころがない。フォーキーだが抽象的で、CANのような即興性もあるが、よりメロウだし、ゴッドスピード・ユー!ブラック・エンペラーのアコースティック・ヴァージョンという喩えもできるかもしれないが、いやいや、ぜんぜん正確ではない。1曲目の“Dark Blue”には、少しそんな感覚がある。憂いを帯びた静かな反復がゆっくりと上昇する感覚——、陳腐な表現になってしまうが、キャロラインはその旋回する曇った音響において、わずかながらも、しかし確実に青空を見せる。とびきり透き通った広い空を。キャロラインには〝図書館の屋上でスカイダイビング(Skydiving onto the library roof)〟という、身動きできないほど聴き入ってしまう曲がある。
 
 2017年に始動したというロンドンのミステリアスなこのバンドは、やがて8人編成となり、今日言われているどんな「インディ」たちとも違っている。ここで彼らの音楽性を分析したところで、彼らの音楽を説明したことにはならないだろう。ギター、ドラム、ベース、ヴァイオリン、クラリネット、チェロ、ピアノ……フリーキーでありながらそれぞれの楽器の音は有機的に共鳴し合い、曲はひとつの生き物のように呼吸している。
 制作に5年かかったというが、それもわかる。彼らの音楽は自由で、カテゴライズされることを拒んでいる。“Messen #7”や“Zilch”といった曲ではデレク・ベイリーめいた実験派のギターが鳴っているし、“Desperately”におけるチェロの独奏に乗ったヴォーカルは古い合唱歌のようだ。それでも、アルバムには一貫したものがあり、強いて突出した感情を言えば、「希望」と「悲しみ」だろう。

 おはよう‏
 また季節が巡ってきた
 おはよう‏
 また季節が巡ってきた

 この曲“Good morning(red)”におけるシンプルな言葉の繰り返しの背後で、男の叫び声もまた繰り返される。

 俺は幸せになれるのか?
 この世界で

 そもそも同曲は、バンドのメンバー数人がジェレミー・コービンの選挙活動を支援している最中に、未来への楽観を込めて作られたという話だが、アルバムには平穏さもあれば、そして敗北感もある。「とにかく、私は正しかった‏/私が愛するすべて」——、フォーク調のその曲“IWR”を聴けば、キャロラインがこの世界にうんざりし、疲れていることがよくわかるだろう。この曲の歌詞も、短いフレーズがほとんど繰り返されるだけだ。「とにかく、私は正しかった‏/私が愛するすべて」——、こうしたシンプルさを機軸にしながら、静謐にはじまるバンドの演奏は即興的で、じょじょにピークへと上昇し、とらえどころのない楽曲の輪郭を露わにする。
  キャロラインの音楽をもっとも的確に表現しているのは、レコード・ジャケットだ。海辺の、手前に見える土のうえで不自然なカタチで傾いている建物、そして空——。これは、歯止めのきかない恐怖の時代にリリースされた美しく広大な音楽である。

 風が戻ってきた
 あなたの家まで車を運転している
 私は本当にそのつもりなのだろうか?
 私はこれまでそれを本当に思っていたのだろうか?
 世界の語源は森
“Natural Death”

 先週末、おもにヨーロッパにおける音楽関係者の連帯をお伝えしたが、去る3月5日土曜、新宿駅南口にて反戦集会《No War 0305 Presented by 全感覚祭》が開催された。目的は、ウクライナ侵略によって「危機的な状況に置かれているあらゆる人たちへのサポートと寄付を募る」こと。およそ1万人が集まったという。
 呼びかけたのはGEZANの主宰するレーベル〈十三月〉で、趣旨に賛同した七尾旅人、大友良英、折坂悠太、カネコアヤノ、原田郁子(clammbon)、踊ってばかりの国といったアーティストたちがパフォーマンスを披露、種々のスピーチもおこなわれた。
 2011年の震災や原発の爆発、2015年安保などを経て日本でも有事の際に街頭に出かけること、声を上げることが普通になってきている。毎日暗いニュースが報じられるなか、そのこと自体は未来を感じさせてくれる前向きなトピックと言えよう。呼びかけたGEZAN、出演者やスタッフたち、そしてそこに集まった1万人に拍手を。ますます混迷をきわめるウクライナ情勢だが、きっと私たちにも何かできることがあるはずだ。
 各種寄付先は下記を参照ください。

GEZAN主宰レーベル・十三月の呼びかけによる街宣『No War 0305』、新宿駅南口におよそ1万人が集結。反戦を訴える。

3月5日(土)、プーチン大統領が起こしたウクライナ侵略によって傷つき、危機的な状況に置かれているあらゆる人たちへのサポートと寄付を募るため、GEZAN主宰レーベル・十三月の呼びかけに賛同したアーティストらによるライブとスピーチによる反戦街宣『No War 0305 Presented by 全感覚祭』が新宿駅南口にて繰り広げられた。

午後12時30分、「暴力には暴力で対抗する以外の可能性をみんなで考えたい」という篠田ミル(yahyel)の開会宣言からはじまり、トップバッターのカネコアヤノへ。その後もライブとトークが交互に進行され、ラストのGEZANライブ、そして津田大介、折坂悠太、マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)による締めのクロストークまで、午後6時過ぎまで続いた街宣におよそ1万人が集結。その様子は十三月とポリタスTVのYouTubeにてそれぞれ生配信され、常時およそ4000人が視聴。「No War」という1点を軸に連帯を示した。

さまざまなアートワークが有機的にコラージュされ、花が生けられた象徴的な仮設ステージは多くのボランティアスタッフの力を借りて当日の早朝から組み上げられた。
また、当日までに募集され、会場で掲げられたプラカードのデザインは下記インスタグラムにて公開されている。
https://www.instagram.com/no_war_0305/

主催の十三月はウクライナ人道支援に繋がる8つの団体を紹介したQRコード付きのチラシにて直接の寄付を呼びかけ、さらに当日街頭で募ったドネーションにも約300万円が集まり、これらを全てウクライナ人道支援にあてることを発表。
また同時に、ステージ設営や印刷費、交通費など、今回の街宣にかかった必要最低限の運営経費を募っている。

▼『No War 0305』運営への寄付宛先
銀行名:PayPay銀行(0033)
銀行支店名:ビジネス営業部(005)
口座:普通:4026231
口座名義:ド)ジュウサンガツ

▼『No War 0305』概要
#NOWAR0305
「No War 0305」と題して、新宿南口にて戦争反対とウクライナ侵略によって傷ついた人たちのサポートを呼びかけます。

―――
2022年3月5日(土) 12:30-til sunset
会場 : 新宿駅南口

ステートメント
https://gezan.net/2022/03/post-2820/

Presented by 全感覚祭
―――

【内容】
No War. 戦争反対。
プーチン大統領が起こしたウクライナ侵略によって傷つき、危機的な状況に置かれているあらゆる人たちへのサポートと寄付を呼びかけます。この状況に対していまだ言葉にならない漠然とした思いを持っている全ての人たちと共に、この場を持ちたいと思います。

【アピール】
Hanna Frolova(モデル・東京在住ウクライナ人)
折坂悠太
アンナ(会社員/東京在住ロシア人)
七尾旅人
永井玲衣(哲学研究者)
坂口恭平
辻愛沙子(株式会社arca CEO)
大友良英
切腹ピストルズ
カネコアヤノ
中村涼香(KNOW NUKES TOKYO共同代表)
原田郁子(clammbon)
篠田ミル
津田大介(ジャーナリスト / メディア・アクティビスト)
踊ってばかりの国
井上榛香(ライター)
テニスコーツ
坂本龍一(メッセージ代読)
GEZAN

【会場・アートワーク提供】
北山雅和
Akira the Hustler
竹川宣彰
大澤悠大
佐藤重雄
今井俊介
チョン・ユギョン
大塚隆史
パク・サンヒョン
谷澤紗和子
BuBu de la Madeleine
げいまきまき
森隆司
川名潤
石黒恵太
COLD VVAR
薮内美佐子
山/完全版
今井健太郎
平野太一
青木陵子+伊藤存
竹﨑和征
碓井ゆい
島崎ろでぃー
Loneliness Books
阿部海太 / 阿部航太
工藤夏海
長谷川唯
キム・ミョンファ
semimarow
杨健
奈良美智

【寄付の説明と寄付先一覧】
戦争は人の命を奪い、人の暮らしを奪います。ウクライナ国内では軍事施設だけでなく、住居、学校、病院・衛生施設までもがロシア軍によって攻撃されています。爆撃だけでなく、食料や水の不足によっても市民の命が危険にさらされています。

一方で、国外に避難した人たちも同様に、困難な状況に置かれています。国連によると、すでに100万人以上がウクライナから隣国へ避難し、今後400万人以上が難民となるおそれがあります。その多くは子どもや女性です。避難先ではまず衣食住が保障されなければなりません。そして、精神的なケア、性暴力や搾取からの保護、性的マイノリティへの差別や人種・民族差別のない安心できる居場所の提供なども必要です。

日本で暮らす私たちは寄付という形で困難な状況にある人たちをサポートすることができます。
戦争が人間の命を奪うなら、私たちは人間の命を支えましょう。

以下にあげる寄付先は、すべて人道支援が目的とされた団体です。

・在日ウクライナ大使館
大使館への寄付は避難者の生活支援、インフラ復旧、住宅再建などに使用し、武器には使われないと説明しています。
三菱UFJ 銀行
広尾支店 047
普通
口座番号0972597
エンバシーオブウクライナ

・ユニセフ「ウクライナ緊急募金」
ウクライナにおける継続的な人道支援。クレカや携帯キャリア決済などで寄付ができるほか、郵便局窓口からの振込みもできる。楽天ポイントによる寄付も可能(詳細は楽天クラッチ募金サイト)。
https://www.unicef.or.jp/news/2022/0043.html

・UNHCR
国連の難民支援機関。難民・避難民の保護と支援。クレカ、コンビニ払い、ゆうちょ銀行などで寄付ができる。楽天ポイントによる寄付も可能(詳細は楽天クラッチ募金サイト)
https://www.japanforunhcr.org/campaign/ukraine

・ピース・ウィンズジャパン
国内外で人道支援や災害支援を行う団体。ウクライナ国内の支援団体と提携し、医療物資などを提供。クレカ、銀行・郵便局振込みで寄付が可能。
https://peace-winds.org/support/ukraine

・Insight Ukraine
あらゆる社会的属性の平等のためのウクライナの団体。サイトはウクライナ語と英語(ページ最下部より寄付ページへ)。クレカ、グーグルペイなどで寄付が可能。
https://www.insight-ukraine.org/

・Fight for rights
ウクライナの障害者支援団体 。サイトはウクライナ語と英語(ПІДТРИМКА У КРИЗІ / SUPPORT PWDS IN CRISISより寄付ページへ)。クレカ、グーグルペイなどで寄付が可能。
https://ffr.org.ua/support-in-crisis

・Voices of children
ウクライナの戦禍の子どもたちのサポート。主に心理的、心理社会的支援。サイトはウクライナ語、英語、ドイツ語、スペイン語。クレカ、グーグルペイなどで寄付が可能。
https://voices.org.ua/en/

・uahospitals
ウクライナの医療機関の支援窓口。ウクライナ各地の病院への医療資源の提供。サイトは英語。クレカによる寄付が可能。
https://4agc.com/fundraiser_pages/e9aca7e4-13d5-4e67-b6bd-548f94822793#.YhjmJ5PP0bn%E2%81%A0

 ロシアによるウクライナの侵略を受け、アンダーグラウンドな音楽シーンで連帯(solidarity)が進んでいる。ミュージシャンやレーベル、ヴェニューや楽器会社など、音楽に携わるさまざまな人びとが、戦争によって影響を受けるウクライナの人びとへの支援をおこなっているのだ。

 今日のエレクトロニック・ミュージックの最先端を担うUKのレーベル〈ハイパーダブ〉は、パンデミック下で積極的にアーティスト支援に動いているバンドキャンプ(先日ゲーム会社に買収された)のキャンペーン「バンドキャンプ・フライデイ」を活用し、本日金曜の売り上げの半分をウクライナの慈善団体に寄付すると発表している。〈ハイパーダブ〉のバンドキャンプ・ページはこちら

 また今年1月、スポティファイがクリエイターにちゃんとお金を払っていないことを理由に(そして同社のCEOがAI防衛産業の会社に投資している可能性も示唆しつつ)、全作品を同ストリーミング・サーヴィスから引き上げたドイツのプロデューサー、スキー・マスクは、今回の戦争を受け未発表音源集『A』をリリース。収益のすべてをウクライナの人道慈善団体に寄付するとのこと。『A』のバンドキャンプ・ページはこちら

 ほかにも、ロシアのレーベル〈Gost Zvuk〉による『STOP THE WAR!』やスウェーデンのレーベル〈Northern Electronics〉による『A Dove Has Spread Her Wings: Relief for Ukraine』(ダニエル・エイヴリーやドナート・ドジーが参加)といったチャリティ・コンピが編まれたり、ロンドンではホット・チップやロイシン・マーフィなどの出演する募金イヴェントが開催されたり、同じくロンドンの Space289 というヴェニューが3月11日に収益をウクライナの赤十字などに寄付するイヴェント(ジャイアント・スワンやボク・ボクなどがプレイ)を準備していたりと、各地で人びとが「なにができるのか」を考え、実行に移している。

 詳しくは『The Quietus』がまとめているので、こちらのページをぜひ参照してください。

 また、日本のインディ・シーンで何かアクションを起こしているレーベル、アーティスト、DJをご存じの方はご一報ください。

Horace Andy - ele-king

 ジャマイカの希代のシンガー、その宇宙クラスの甘い声によって、アーリー・レゲエの時代から“Skylarking” や “Money Money” といったクラシックを持つホレス・アンディ。その魅力たっぷりのヴォーカルはかれこれ半世紀近く、世界中の音楽ファンを魅了しつづけてきた。1991年、マッシヴ・アタック『Blue Lines』への参加によりレゲエ・ファン以外にもその存在を知られるようになったホレスだが、その後のベーシック・チャンネルによる一連の〈Wackies〉リイシューで彼の音楽に触れた世代もいるだろう。4月8日、このレジェンドの新作が〈On-U〉からリリースされる。
 現在、ジェブ・ロイ・ニコルズ、エイドリアン・シャーウッドとアスワドの故ジョージ・オーバンとのコラボによる “Try Love” が公開中だ。アルバムにはメッセージの込められた新曲から代表曲の再演までを収録、『Blue Lines』の “Safe From Harm” の新ヴァージョンも収められているようだ。かの名曲がどのように蘇ったのか──必聴の1枚です。

HORACE ANDY
美しいファルセットと卓越したメロディー・センスを持つ至高のシンガー
そしてマッシヴ・アタックが敬愛するレジェンド、ホレス・アンディ。

4/8 発売の最新作『Midnight Rocker』より、
ニュー・シングル「Try Love」を公開!

ジェブ・ロイ・ニコルズ、プロデューサーのエイドリアン・シャーウッド、そして亡きジョージ・オーバン(Aswad)が共同作曲!

〈On-U Sound〉は、ジャマイカ音楽の豊かな歴史において時代を超越する偉大なシンガーソングライターのひとり、ホレス・アンディによる真の傑作アルバムを紹介できることを非常に光栄に感じている。こ のパフォーマンスはまさに金色の星のごとく燦然と輝くものであり、私にとって大きな誇りである。 ──エイドリアン・シャーウッド

70年代、80年代に〈Studio One〉や〈Wackies〉などのレーベルで制作した「Skylarking」、「Money Money」他、数々の名作によって、世界中のレゲエファンから愛される存在となった伝説的シンガー、ホレス・アンディ。90年代以降はマッシヴ・アタックの作品に参加したことでレゲエ以外のシーンに衝撃を与え、彼らの全てのスタジオ・アルバムに参加、更に常に彼らのツアーを支える主要メンバーとして活躍しており、より幅広い音楽ファンを虜にし続けている。そんな彼が、エイドリアン・シャーウッドをプロデューサーにむかえて〈On-U Sound〉よりリリースする最新作『Midnight Rocker』(4/8発売)より、ニュー・シングル「Try Love」を公開!

Horace Andy - Try Love
https://youtu.be/6mDLSr4l1_c

「Try Love」ではジェブ・ロイ・ニコルズ、プロデューサーのエイドリアン・シャーウッド、そして亡きジョージ・オーバン(Aswad)が共同作曲を行った。楽曲には富と名声という虚飾を捨て、周囲の人々への愛を受け入れるという、普遍的な意識のメッセージが込められている。

『Midnight Roker』の制作に際し、プロデューサーを務めたエイドリアン・シャーウッドは、自身がリー・スクラッチ・ペリーのアルバム『Rainford』や『Heavy Rain』に携わって学んだ、円熟期を迎えたミュージシャンの作品にとってふさわしい取り組み方を踏襲した。一流のミュージシャンを集めたチームを編成し、何ヶ月もかけてパフォーマンスやアレンジやミキシングを仕上げていった。その結果完成した11曲は、優れたテクニックに裏打ちされ、丹念に作り上げられた楽曲となり、ホレス・アンディの唯一無二の歌声の魅力をより一層際立たせる結果となった。

曲目の中には、「Mr. Bassie」のように、ホレス・アンディの既存の名曲をセルフ・カバーしたものもあるが、「Watch Over Them」や「Materialist」のように、多くの楽曲は現代ならではのメッセージを込めて新たに作曲したものである。さらに、アンディにとって最も深い交流のあるグループ、マッシヴ・アタックの作品の中から、初期の大人気曲「Safe From Harm」の新バージョンまでを収録している。原曲の「Safe From Harm」ではシャラ・ネルソンがボーカルを務めていたが、ここではホレスがマイクを握っている。

今回のアルバムでバックを支えるバンドには、〈On-U Sound〉を代表する精鋭ミュージシャンが揃っており、参加メンバーには、ガウディ、スキップ・マクドナルド、クルーシャル・トニー、アイタル・ホーンズ、そして亡きスタイル・スコット、ジョージ・オーバンが名を連ねている。

リー・スクラッチ・ペリーの『Rainford』と同様に、『Midnight Roker』に関しても全曲のダブミックスバージョンを収めたアルバムの制作が予定され、2022年後半のリリースが期待されている。

待望の最新作『Midnight Rocker』は4月8日にCD、数量限定のCD/LP+Tシャツセット、LP、デジタルでリリース! 国内盤CDには解説が封入され、ボーナストラック「My Guiding Star」が収録される。LPは日本語帯付き仕様の限定盤(レッド・ヴァイナル)に加え、通常盤(ブラック・ヴァイナル)でのリリースが予定されている。



label: On-U Sound / Beat Records
artist: Horace Andy
title: Midnight Rocker
release date: 2022.04.08 FRI ON SALE

国内盤CD BRC695 ¥2,200+税
国内盤特典:ボーナストラック追加収録/解説・歌詞対訳封入

国内盤CD+Tシャツ BRC695T ¥6,600+税
帯付き限定盤(レッドヴァイナル)+Tシャツ ONULP152BRT

BEATINK.COM:
https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=12365
Tower Records: https://tower.jp/artist/discography/174938

TRACKLISTING:
01. This Must Be Hell
02. Easy Money
03. Safe From Harm
04. Watch Over Them
05. Materialist
06. Today Is Right Here
07. Try Love
08. Rock To Sleep
09. Careful
10. Mr Bassie
11. My Guiding Star (Bonus Track)

BRIAN ENO AMBIENT KYOTO - ele-king

 アンビエントの巨匠として知られるブライアン・イーノは、ヴィジュアル・アーティストでもある。
 ニューヨーク時代の1979年、トーキング・ヘッズとのレコーディング中にヴィデオカメラを入手した彼は、その後『中世マンハッタンの誤った記憶』『木曜の午後』といったヴィデオ作品を残している。しかし固定された表現に満足しないイーノは以降、サウンド面でもヴィジュアル面でも「ジェネレイティヴ(自動生成)」な表現を探求することのできるインスタレーションにも大いに力を注いでいくことになる。
 かくして『静かなクラブ』『未来は香水のようになるだろう』『凧物語』『スピーカーの花々』『7700万の絵画』などなど、かれこれ30年以上にわたり世界各地でさまざまなインスタレーションが展示されてきた。日本でも1983年のラフォーレ赤坂をはじめ、2006年のラフォーレ原宿など、これまで五度展覧会が開催されている。
 そして2022年。日本でのひさしぶりの展覧会が決定した。会場は京都中央信用金庫旧厚生センター。会期は6月3日から8月21日。空間全体を用い、その場だけの音と光の変化を体験することができるのはインスタレーションならではの魅力。今回は彼のアート活動の中核をなす『77 Million Paintings』と、日本初公開となる『The Ship』のインスタレーションが展示される。とくに後者を体験できるのは非常に嬉しい。
 ブライアン・イーノのアートの神髄に触れることができるこの絶好の機会、逃す手はない。

ヴィジュアル・アートに革命をもたらした
ブライアン・イーノによる音と光の展覧会
BRIAN ENO AMBIENT KYOTO
開催決定

会場:京都中央信用金庫 旧厚生センター
会期:2022年6月3日(金)~8月21日(日)

ありきたりな日常を手放し、別の世界に身を委ねることで、 自分の想像力を自由に発揮することができるのです ━━ブライアン・イーノ

ヴィジュアル・アートに革命をもたらした英国出身のアーティスト、ブライアン・イーノが、コロナ禍において初となる大規模な展覧会「BRIAN ENO AMBIENT KYOTO」を開催します。

会場は、築90年の歴史ある建築物「京都中央信用金庫旧厚生センター」を、建物丸ごとイーノのアートで彩ります。

本展では、ブライアン・イーノによる音と光のインスタレーションを中心に展開します。

音と光がシンクロしながら途絶えることなく変化し続け、その空間のその時に、観客の誰もが違う体験をすることができる、音と光による参加型の空間芸術です。

芸術家としての活動のみならず、アンビエント・ミュージックの創始者であり、環境問題にも早くから取り組んできたイーノが、世界的文化都市の地で、どのようなメッセージを発するのか。ぜひご注目ください。

【開催概要】
タイトル:BRIAN ENO AMBIENT KYOTO(ブライアン・イーノ・アンビエント・キョウト)
会場:京都中央信用金庫 旧厚生センター
住所:京都市下京区中居町七条通烏丸西入113
会期:2022年6月3日(金)~8月21日(日)
開館時間:11:00~21:00 入場は閉館の30分前まで
チケット:
[前売り]
平日 / 一般 ¥1,800 専・大学生 ¥1,300 中高生 ¥800
土日祝 / 一般 ¥2,000 専・大学生 ¥1,500 中高生 ¥1,000
前売り購入サイト:https://www.ambientkyoto/tickets
[当日券]
各200円増 小学生以下無料

主催:AMBIENT KYOTO実行委員会(TOW、京都新聞)
企画・制作:TOW、Traffic
協力:α-station FM KYOTO、京都METRO、CCCアートラボ
後援:京都府、京都市, ブリティッシュ・カウンシル、FM COCOLO
機材協賛:Genelec Japan、Bose、Magnux、静科
特別協力:Beatink、京都中央信用金庫
公式ホームページ:
https://ambientkyoto.com
Twitter. https://twitter.com/ambientkyoto
Instagram. https://www.instagram.com/ambientkyoto
Facebook. https://www.facebook.com/ambientkyoto

Maya Shenfeld - ele-king

 〈Thrill Jockey〉が興味深い電子音楽家/作曲家のアルバムをリリースした。ベルリン在住のマヤ・シェンフェルトの『In Free Fall』である。
 マヤ・シェンフェルトは現代音楽の作曲家で、クラシックのギター奏者でもあるのだがパンク・バンドでギターを演奏するなど、多岐にわたる音楽活動をおこなっているようだ。現代音楽の領域ではモダンな電子音楽を追求しており、インスタレーションや作曲作品などを通して、電子音合成と有機的な音を越境させるような音楽を生み出している。
 本作『In Free Fall』は、マヤ・シェンフェルトのデビュー・アルバムであり、最初の集大成であり、電子音楽方面での作曲方法が追求されているアルバムである。このアルバムには実験的な電子音楽、オーセンティックでミニマルなシンセ・サウンド、映画音楽的なトランペットとシンセのアンサンブル、電子音響ドローンなど、いくつもの手法が駆使されている。しかしサウンドが乱雑になったり、無意味にカオティックになったりすることはない。端正だが緊張感もあり、どこか風が吹くような自由さもある。私にはこのバランスの良さが『In Free Fall』の魅力のように思える。

 『In Free Fall』には全7曲が収録されている。1曲め “Cataphora” は Kelly O'Donohue のトランペットと電子音のアンサンブルによる曲だ。折り重なる音は洗練されており、まるで映画音楽のような流麗な展開を聴かせる。同時に音と音のレイヤーには和声を超えるような構造にもなっており、音楽と実験の領域を無化する楽曲となっている。この曲における電子音と有機的な音の交錯は、まさに本作の方法論や表現を象徴するものである。ちなみにどうやらカテリーナ・バルビエリとのレジデンスの間に書かれた曲のようだ。
 シンセ・ウェイヴ的なシーケンス・サウンドで始まる2曲め “Body, Electric” でも後半になるとクラシカルなアンサンブルへと変化する。続く3曲め “Voyager” ではエモーショナルなシンセサイザー・サウンドが全面的に展開され聴き手を電子音の深い海に誘うサウンドスケープを生成していく。どこか映画『ブレードランナー』のヴァンゲリスを思わせる曲だ。
 この2曲を経て、エンプティ・セットのジェームズ・ギンズバーグをプロデューサー/コラボレーターに迎えた4曲め “Mountain Larkspur” に至る。レコードではA面のラスト曲となるこの曲は、わずか2分50秒のほどのトラックではあるもののアルバムを代表する1曲といっても過言ではない。ベタニエンユース合唱団の幽玄な合唱は、ベルリンにある1902年の廃プールでリハーサル・収録した録音したものだという。その録音にギンズバーグとシェンフェルトが電子的な加工を施し仕上げた。いわばアルバムA面のエンディング的曲であり、アルバム前半を総括する幽玄なトラックともいえる。
 続く5曲め “Silver” は硬質なサウンドによるドローン作品であり、その透明な質感の音響がとにかく美しい。この曲も2分50秒ほどのトラックだが、粒子のように美しいミニマルなドローンの中に込められた音の変化や情報量が凄まじく、深く聴き込んでいくと時間を超越するような感覚を覚えるほどだ。どこかビー・ジェー・ニルセンのドローンを思い出しもする。この曲はレコードではB面1曲目に当たるので、アルバム後半のはじまりを告げるトラックともいえよう。
 そして6曲め “Sadder Than Water” は、3曲め “Voyager” と対になるようなシンセ・アンサンブル的な楽曲だ。7分20秒というアルバム最長の曲だが、静かなエモーションが巧みな曲構成に誘導されるように、隅々にまでうごめいていて、まったく飽きることのない仕上がりである。
 アルバム最終曲 “Anaphora” は、アルバム冒頭の “Cataphora” と対になっているような曲だ。“Cataphora” で実践された管楽器的なアンサンブルの追求とでもいうべきか。この曲で『In Free Fall』は、まさに「Anaphora=首句反復」の名のごとく反復し、円環を描くようにアルバムは終わる。むろん円環といっても閉じているわけではない。その静謐な中に点描のように置かれる音たちは、まるで上昇するように世界にむかって開かれているのだ。

 アルバムを通して聴くと、まさに電子音楽の新古典主義とでも形容したくなるほどの出来栄えであった。全曲で36分というミニマムな収録時間であっても、形式にとらわれず、しかし形式を軽くみることもなく、自由に、開放的に音楽の実験と作曲を試みている、そんな印象を持ったのだ。長く聴ける普遍的な電子音楽作品ではないかと思う。

Black Jazz Records - ele-king

 70年代スピリチュアル・ジャズを代表する3大レーベルのひとつ、オークランドの〈Black Jazz〉。かつてジャイルス・ピーターソンやMUROがミックスし、セオ・パリッシュがコンピを編んだことでも知られるこのレーベルのラインナップには、ずらりと名作が並んでいる。このたび、それら20枚すべてを収納したボックスセットが販売されることになった。専用ボックスには全アルバムのアートワークやシリアルナンバーが掲載されるとのこと。これはとんでもないアイテムだ。

3大スピリチュアル・ジャズ・レーベルの一つ、“Black Jazz Records”のLP BOXをVINYL GOES AROUNDにて限定販売。

〈Strata East〉や〈Tribe Records〉と並び、70年代を代表する3大スピリチュアル・ジャズ・レーベルの一つ、〈Black Jazz Records〉。

レーベルはオークランドを拠点とし、1971年から1975年にかけて20枚のアルバムをリリースしました。この珠玉の名作を最新リマスター音源で復刻。
VINYL GOES AROUNDのサイトで全てのLPをボックスセットで販売いたします。

ボックスは20枚全てのLPが収納できるサイズで作られており、裏面には全アルバムのジャケットが掲載、シリアルナンバーも記載します。また過去に制作したポスターのデッドストックも封入。15セットの限定販売となります。

[THE STORY OF BLACK JAZZ RECRODS 予約ページ]
https://vga.p-vine.jp/exclusive/

[商品情報]
アーティスト:V.A.
タイトル:The Story of Black Jazz Records
価格:¥79,200(税込)(税抜:¥72,000)
フォーマット:LP×20枚
★シリアルナンバー付き
★15セット限定販売
※期間限定受注(~2022年3月28日まで)
※限定品につき無くなり次第終了となりますのでご了承ください。
※商品の発送は 2022年5月中旬ごろを予定しています。

[収録タイトル]
・GENE RUSSELL『New Direction』(PLP-7146)
・WALTER BISHOP JR.『Coral Keys』(PLP-6997)
・DOUG CARN『Infant Eyes』(PLP-7169)
・RUDOLPH JOHNSON『Spring Rain』(PLP-7133)
・CALVIN KEYS『Shawn-Neeq』(PLP-7132)
・CHESTER THOMPSON『Powerhouse』(PLP-7155)
・HENRY FRANKLIN『The Skipper』(PLP-7137)
・DOUG CARN Feat. THE VOICE OF JEAN CARN『Spirit Of The New Land』(PLP-6996)
・THE AWAKENING『Hear, Sense And Feel』(PLP-6998)
・GENE RUSSELL『Talk To My Lady』(PLP-7136)
・RUDOLPH JOHNSON『The Second Coming』(PLP-7761)
・KELLEE PATTERSON『Maiden Voyage』(PLP-6775)
・WALTER BISHOP Jr.『Keeper Of My Soul』(PLP-7760)
・THE AWAKENING『Mirage』(PLP-7200)
・DOUG CARN Feat. THE VOICE OF JEAN CARN『Revelation』(PLP-7170)
・HENRY FRANKLIN『The Skipper At Home』(PLP-7199)
・CALVIN KEYS『Proceed With Caution!』(PLP-7781)
・ROLAND HAYNES『2nd Wave』(PLP-6780)
・CLEVELAND EATON『Plenty Good Eaton』(PLP-6787)
・DOUG CARN『Adams Apple』(PLP-7782)

Sista Rap Bible - ele-king

 新たな切り口でヒップホップの歴史を追う書籍が刊行されている。その名も『シスタ・ラップ・バイブル──ヒップホップを作った100人の女性』。男性優位で語られることの多いヒップホップ史において、ロクサーヌ・シャンテからソルトン・ペパ、クイーン・ラティファなどなど、じつはヒップホップは女性たちが作ってきたものでもあったことに光を当てる1冊だ。カラーのイラストをふんだんに利用したぜいたくな本に仕上がっている。著者はNYのライター、クローヴァー・ホープ。訳者は『ヒップホップ・ジェネレーション』の翻訳などで知られる押野素子。初心者も上級者もチェックしておきましょう。

ヒップホップは、優れた女性ラッパーたちが作ったものでもあった──
これまで語られることのなかったその歴史をクールなイラストと共に紹介する2020年代のヒップホップ・バイブル!

C’mon girls,
さあ、男たちに見せつけてやろう!
熱いパーティ・ショウでナンバーワンになる方法
let’s go show the guys that we know
how to become Number One in a hot party show
(PUSH IT by SALT-N-PEPA)

男性優位で語られるヒップホップ・シーン。
しかしその歴史は優れた女性ラッパーが
作ったものでもあった──。

女性ラッパーの活躍をイラストとセットで紹介し、
これまでは語れることのなかった歴史を描いた、
斬新で新しいヒップホップの教科書が登場!

■シーン黎明期に暗躍した女性ラッパーの闘争から、先駆者ロクサーヌ・シャンティの活躍、そして彼女に続くソルト・ン・ペパ、クイーン・ラティファ、リル・キム、ローリン・ヒル、そしてニッキー・ミナージュやカーディ・B、リゾといった現在の女王までをイラストとともにわかりやすく紹介!
■ローカル・シーンを支えた女性ラッパーやワンヒット・ワンダー(一発屋)までをくまなく網羅。
■何から聴いたらいいか迷う初心者にも、最新の潮流を掴みたい上級者にもマストな一冊。
■ブラック・ライヴズ・マター以降の新しいフェミニズムを知るための教科書としても最適!

シスタ・ラップ・バイブル
──ヒップホップを作った100人の女性

クローヴァー・ホープ(著)
押野素子(訳)

単行本/B5変形/240頁
ISBN:978-4-309-25676-4
Cコード:0073
2022.02.28発売
定価3,289円(本体2,990円)

【目次】
▼女子にしては上出来/Introduction: Nice for a Girl
▼女性ラッパー第1号は?/The First Women
MCシャーロック/MC Sha-Rock
ワンダ・ディー/Wanda Dee
▼ラップ・クルーのファースト・レディたち/First Ladies of Rap Crews
メルセデス・レディーズ/Mercedes Ladies
デビー・ハリー/Debbie Harry
▼白人ラップの系図/White Rap Family Tree
リサ・リー/Lisa Lee
ザ・シークエンス/The Sequence
スウィート・ティー/Sweet Tee
ロクサーヌ・シャンテ/Roxanne Shanté
レディ・B/Lady B
スパーキー・D/Sparky D
ソルト・ン・ぺパ/Salt-N-Pepa
MCライト/MC Lyte
アントワネット/Antoinette
クイーン・ラティファ/Queen Latifah
J.J.ファッド/J.J. Fad
ラトリム/L’Trimm
▼マイアミ・ベースの女性たち/The Women of Miami Bass
オークタウンズ・357/Oaktown’s 357
ミア・X/Mia X
▼女性デュオとグループ/Women in Duos & Groups
ニッキー・D/Nikki D
ビッチズ・ウィズ・プロブレムズ/Bytches With Problems
N-タイス/N-Tyce
ヨーヨー/Yo-Yo
ボス/Boss
ヘザー・B./Heather B.
レディ・オブ・レイジ/Lady of Rage
ザ・コンシャス・ドーターズ/The Conscious Daughters
ダ・ブラット/Da Brat
▼レフト・アイのライムを振り返る/A Journey Through Left Eye’s Rhymes
シルクE・ファイン/Sylk-E. Fyne
バハマディア/Bahamadia
リル・キム/Lil’ Kim
▼名前にレディがつくラッパー/The “Lady” Rappers
フォクシー・ブラウン/Foxy Brown
ノンシャラント/Nonchalant
ミッシー・エリオット/Missy Elliott
アンジー・マルティネス/Angie Martinez
チャーリー・ボルティモア/Charli Baltimore
メデューサ/Medusa
イヴ/Eve
ソレイ/Solé
レディ・ラック/Lady Luck
ローリン・ヒル/Lauryn Hill
ヴィータ/Vita
キア/Khia
トリーナ/Trina
ラ・チャット/La Chat
アミル/Amil
ショーナ/Shawnna
レミー・マー/Remy Ma
ニッキー・ミナージュ/Nicki Minaj
アジーリア・バンクス/Azealia Banks
カーディ・B/Cardi B
▼女性ラッパーの未来/the future

著者

クローヴァー・ホープ
ブルックリンを拠点とするライター/編集者。Vogue、Elle、The New York Times、XXL、Village等で執筆し、現在はJazebelに勤務、NYUでライティングを教える。

押野素子(オシノ モトコ)
翻訳家。ハワード大ジャーナリズム学部卒業。ワシントンD.C.在住。訳書に『フライデー・ブラック』『私の名前を知って』『MARCH』『ヒップホップ・ジェネレーション』ほか。

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