「Nothing」と一致するもの

 去るパンデミックの折はユニークなアイディアを発揮、「寝ているだけでアーティストをサポートできるアルバム」を発表した world’s end girlfriend だが、以降の期間はすべてのライヴ活動を中止し、アルバム制作に没頭していたようだ。かくして完成したのが新作『Resistance & The Blessing』なのだが……なんと全35曲144分、LP4枚組/CD3枚組の大作となった。これをリリースするには、端的に、制作費が足りない──
 というわけで、デジタル・シングル “Ave Maria (short edit)” が配信されることになった。5ドル以上で購入可能、購入者の名前はアルバムに記載されるという。シングルを買って、world’s end girlfriendをサポートしよう。

world’s end girlfriendが新作アルバム制作費支援のための
デジタルシングル「Ave Maria (short edit)」をリリース。

https://virginbabylonrecords.bandcamp.com/track/ave-maria-short-edit

全35曲144分、LP4枚組/CD3枚組で年内リリースが予定されるworld’s end girlfriendの
ニューアルバム『Resistance & The Blessing』の莫大に膨れ上がった制作費をサポートするため
シングル「Ave Maria (short edit)」をリリース。
この楽曲の購入者はアルバム内にお名前がクレジットされます。

*Bandcampにて5ドル以上で購入できます。
*購入時の金額記入欄の下部にメッセージが追加できますのでそちらより記載を希望する「お名前」or「アカウント名」を記入ください。
*クレジット記載を希望しない方はメッセージ欄に「名無し」と記載ください。
*2023年5月末までの購入者がアルバムへのお名前記載の対象となります。

[world’s end girlfriendコメント]
コロナという半端な時間があったので全てのライブをやめて、
肉体と精神と時間と残高を擦り減らしながら思い存分アルバムを作って、
全35曲144分という今時こんな長い作品を誰が聴くんだよっという最高なアルバムが出来上がって、
リリースするならLP4枚組/CD3枚組、MVは現状2つを制作中。あともう1つMV制作するつもりっという状態で。
いつだって自腹で制作してる私ですが、流石に今回はやばいぞってことで、、
アルバム制作費サポートするためのシングル「Ave Maria (short edit)」をBandcampよりリリースします。この楽曲を購入した方はアルバム内にお名前をクレジットさせていただきます。
音楽と共にこの素敵な物質にあなたの名前を刻みましょう。
そして、この物語をあなたの物語にしてください。

Buffalo Daughter - ele-king

 昨年は力作『We Are Time』を発表、また『New Rock』と『I』のアナログ盤はそっこうで売り切れと、そうです、日本のオルタナティヴにおけるリジェンドと呼んでいいでしょう、結成30周年のバッファロー・ドーターが、なんと、新進気鋭のLAUSBUBを迎えてのライヴを開催する。これはもう行くしかない。

Buffalo Daughter presents Neu Rock with LAUSBUB

2023年6月25日 (日) 開場 17:00 / 開演 18:00
@表参道WALL&WALL

出演:
Buffalo Daughter
LAUSBUB

【チケット情報】
前売入場券:¥4,000 +1drink ¥700
<販売期間:4/6 18:00〜6/24 23:59>

当日入場券:¥4,500 +1drink ¥700
<販売期間:6/25 17:00〜>

チケット購入URL(ZAIKO):
https://wallwall.zaiko.io/item/355562

WALL&WALLオフィシャルイベントページURL:
http://wallwall.tokyo/schedule/20230625_buffalodaughter_lausbub/

■Buffalo Daughter プロフィール

シュガー吉永 (g, vo, tb-303) 大野由美子 (b, vo, electronics) 山本ムーグ(turntable,vo)

1993年結成以来、ジャンルレス・ボーダーレスに自由で柔軟な姿勢で同時代性溢れるサウンドを生み出し続けてきたオルタナティブ・ロック・バンド。ライヴにも定評がありワールドワイドで大きな評価を得ている。
2021年9月に、現在最新作となる8thアルバム 『We Are The Times』をワールドワイドでリリース。7年ぶりのアルバムは長い期間の色々な思いが惜しみなく曲の中に凝縮され、パンデミックにより大きな変化を迎えた世界の確かな指標を示す作品となった。
2022年は日本でのツアーに加え6月に行われたメルボルンでのRising Festivalに出演。
結成30周年を迎える2023年は、1998年にリリースした『New Rock』(Grand Royal)と、2001年発売の『I』(Emperor Norton Records)のアナログ盤を、それぞれボーナストラックを収録した2枚組で再発。2023年5~6月には3つのアルバムを提げパンデミック後初の北米ツアーを行う。
official site: https://buffalodaughter.com
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■LAUSBUB (ラウスバブ) プロフィール

2020年3月、北海道札幌市の同じ高校の軽音楽部に所属していた、岩井莉子と髙橋芽以によって結成されたニューウェーブ・テクノポップ・バンド。
2021年1月18日、Twitter投稿を機に爆発的に話題を集め、ドイツの無料音楽プラットフォーム”SoundCloud”で全世界ウィークリーチャート1位を記録。同時期に国内インディーズ音楽プラットフォーム”Eggs”でもウィークリー1位を記録。同年6月18日、初のDSP配信となる配信シングル『Telefon』をリリース。翌日6月19日 初の有観客イベント「OTO TO TABI in GREEN (札幌芸術の森)」出演。
2022年11月16日には初フィジカル作品となる1st EP「M.I.D. The First Annual Report of LAUSBUB」をリリース。

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Don Cherry & Jean Schwarz - ele-king

 ジャズ、現代音楽、電子音楽、映画音楽などの再発(主に未発表音源などの発掘リリース)をおこなうパリのレーベルの〈トランスヴェルサル・ディスク〉。ジャズ方面で見ると、1974、75年にかけてフランス国営ラジオ局のホールで録音されたアーチー・シェップファラオ・サンダースライヴ音源、1971年のアーマッド・ジャマルのパリ公演がディスク化されているが、今回はトランペット奏者のドン・チェリーの音源が発掘された。アーチー・シェップにしろ、ドン・チェリーにしろ、1960年代から1970年代のフリー・ジャズ系のミュージシャンはアメリカを離れ、ヨーロッパを拠点にして活動することが多かった。メインストリームから外れたジャズ・ミュージシャン、特に黒人ミュージシャンにとって、人種差別など人権問題の面でアメリカよりもヨーロッパの方が生活しやすいという状況があった。商業セールスが期待できないフリー・ジャズやマイナーなジャズは、アメリカのレーベルは敬遠することが多く、むしろヨーロッパのほうがリリースに積極的だったということもある。だから、彼らの名盤と呼ばれる作品にはヨーロッパ録音、ヨーロッパ盤が多い。ドン・チェリーは北欧やドイツ、フランスなどを拠点とする期間が長く、〈MPS〉や〈BYG〉などに作品を残している。

 米国オクラホマ出身のチェリーは、1950年代後半にオーネット・コールマンのバンドで演奏するようになって頭角を現わす。ポール・ブレイ、アーチー・シェップ、ジョン・チカイ、アルバート・アイラー、ジョージ・ラッセル、スティーヴ・レイシー、ソニー・マレイらと共演し、1960年代の米国フリー・ジャズ・シーンを牽引するひとりとなる。1966年に〈ブルーノート〉から初リーダー作の『コンプリート・コミュニオン』をリリースし、アルゼンチンから米国に渡ってきたガトー・バルビエリと共演。同年はジョン・コルトレーンと共演した『アヴァンギャルド』も発表している。翌年にはバルビエリに加え、ファラオ・サンダースと共演した『シンフォニー・フォー・インプロヴァイザーズ(即興演奏家のための交響曲)』や、シェップ、チカイらと結成したニューヨーク・コンテンポラリー・ファイヴの『コンシークエンス』もリリースしている。『コンシークエンス』はニューヨークに加え、デンマークでの録音も含まれる。また、アルバート・アイラーの『ゴースツ』(1965年)、ジョージ・ラッセル・セクステット『アット・ベートーヴェン・ホール』(1965年)など、1960年代中盤のチェリーの代表的なレコーディングはヨーロッパ録音、もしくはヨーロッパ発売されたものだ。

 世界中をツアーしていくなか、チェリーはさまざまな民族音楽にも興味を持ち、取り入れるようになる。〈MPS〉からのリーダー・アルバム『エターナル・リズム』(1969年)が代表作で、アフリカ、中近東、トルコ、東南アジア、インドなどの民族音楽のリズムや民俗楽器を取り入れている。それに伴って、トランペット以外にフルートやパーカッションはじめ、民俗楽器なども演奏し、ヴォイスや口笛などを交えたマルチ・ミュージシャンへと変貌していった。そうした集大成と言えるのがスウェーデンでリリースした『オーガニック・ミュージック・ソサエティ』(1973年)で、ここではアフリカ音楽などの要素はもちろん、実際にフィールド・レコーディングした素材も交えた録音となっている。ファラオ・サンダースの “クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン” をカヴァーするなどスピリチュアル・ジャズの名盤としても語り継がれるこのアルバムは、スウェーデン人の妻のモキによるカヴァー・アートも有名で、ちなみに彼らの子どもであるネネ・チェリー、イーグル・アイ・チェリーらもミュージシャンとなっていった。

 自由で縛られることを嫌ったチェリーは、新しいもの、未知のものに対して好奇心の強いミュージシャンで、ジャズや民俗音楽以外に現代音楽、電子音楽にも接近し、またファンクからミニマル・ミュージックなど幅広い音楽を取り入れていった。エレクトロニック・ミュージックの分野では、シンセサイザー奏者のジョン・アップルトンと共演した『ヒューマン・ミュージック』(1970年)、ポーランドの作曲家/指揮者であるクシシュトフ・ペンデレッキとの共作『アクションズ』(1971年)などが記憶に残る。〈トランスヴェルサル・ディスク〉からの未発表音源『ラウンドトリップ』も、こうした系譜に連なる一枚と言えるだろう。
 録音は1977年のパリにおけるフェスティヴァルのもので、フランス人の電子音楽家/作曲家であるジャン・シュワルツとの共演となる。他の共演者はフランスのミシェル・ポルタル(サックス、クラリネット、バンドネオン)とジャン・フランソワ・ジェニー・クラーク(ベース)、ブラジル出身のナナ・ヴァスコンセロス(パーカッション)で、それぞれチェリーとも多く共演してきた面々だ。45年間も未発表となっていた音源だが、ジャン・シュワルツ自身の秘蔵アーカイヴから発掘され、初めて陽の目を見ることになった。

 西アフリカの弦楽器をタイトルとした “ドウッスン・ゴウニ” は、チェリー自身がそれを演奏し、ナナ・ヴァスコンセロスのコンガが土着的なリズムを刻んでいく。ドウッスン・ゴウニはブラジルのビリンバウに似た楽器で、そこにミシェル・ポルタルのフリーキーなサックスが加わってインプロヴィゼイションを繰り広げるのだが、リズム自体はミニマルに展開していく。そうした循環と不協和のなかから、パート2ではチェリーのヴォイスも交えて呪術的な世界を繰り広げる。“ベルズ” はエレクトロニックなビートを刻み、ベルやシンバルなどの鳴り物やノイズ、SEなどによってアヴァンギャルドな音像を導き出す。テリー・ライリーなどの現代音楽に通じるとともに、テクノの原型とも言えるような作品だ。
 “ビリンバウ” はナナ・ヴァスコンセロスのトレードマークであるビリンバウの独奏。そうした民族音楽と電子音楽の融合が『ラウンドトリップ』全体のテーマでもある。“ホイッスルズ” は土着的なクラリネットに混じったヴォイスが祈祷のような世界を作り出す。“バンド” はバンドネオンの即興演奏と電子音のユニークな共演。そして、公演はオーネット・コールマンに捧げた “トリビュート・トゥ・オーネット” で幕を閉じる。ジャズ・ミュージシャンとエレクトロニック・ミュージックの音楽家の即興的な共演では、近年だとファラオ・サンダースとフローティング・ポインツによる『プロミセス』(2021年)が印象深いが、『ラウンドトリップ』は40年以上も昔にそれを先駆けており、さらに民俗音楽も交えたじつに驚異的な作品である。

Oval - ele-king

 グリッチの開拓者、オヴァルが新作を発表する。ピアノの導入でリスナーを驚かせた『Ovidono』(2021)以来のアルバムだが、先行配信中の “Touha” を聴くかぎりどうやら今回もピアノがフィーチャーされているようだ。『Romantiq』と題されたそれは5月12日に世界同時発売。かつてグリッチで世界を震撼させたマーカス・ポップが目指す「ロマンティック」とはいかなるものになるのか? 期待しましょう。

OVAL(オヴァル)
『ROMANTIQ』(ロマンティック)

THRILL-JP 57 / HEADZ 258 (原盤番号:THRILL 590)
価格(CD):2,200円+税(定価:2,420円)
発売日(CD):2023年5月12日(金) ※ 全世界同時発売
フォーマット:CD / Digital
バーコード:4582561399527

01. Zauberwort(ツァオバーヴォルト)
02. Rytmy(リートミー)
03. Cresta(クレスタ)
04. Amethyst(アメティスト)
05. Wildwasser(ヴィルトヴァッサー)
06. Glockenton(グロッケントーン)
07. Elektrin(エレクトリン)
08. Okno(オクノ)
09. Touha(トウハ)
10. Lyriq(リューリク)
11. Romantic Sketch A(ロマンティック・スケッチ A)
12. Romantic Sketch B(ロマンティック・スケッチ B)

Total Time:46:20

Tracks 11, 12…日本盤CDのみのボーナス・トラック

All music written, arranged and produced by Markus Popp
Artwork by Robert Seidel

'90年代中盤、CDスキップを使用したエポック・メイキングな実験電子音響作品を世に送り出し(2022年発表されたPitchforkの『The 150 Best Albums of the 1990s』にて1995年作『94diskont.』が132位にランクイン)、エレクトロニック・ミュージックの新たな可能性を提示し続け、世界中にフォロワーを拡散させた独ベルリン在住の音楽家、オヴァル(OVAL)ことマーカス・ポップ(Markus Popp)。
2020年1月リリースの『SCIS』(THRILL-JP 51 / HEADZ 243)以来のワールドワイド・リリース(米シカゴの老舗インディー・レーベルThrill Jockey Recordsより)となるオヴァルの最新アルバム『ROMANTIQ』にて、マーカス・ポップがまたしてもエレクトロニック・ミュージックの可能性を刷新した。
「ASMR 2.0」とも呼ばれた、2021年12月に発表された女優Vlatka Alecとのアートプロジェクト作品(マーカス自身のレーベル、UOVOOOからのOVAL名義でのリリースとなった)『OVIDONO』(Soの豊田恵里子も参加)でのクリエイションも反映させ、『OVIDONO』のアルバム・カヴァーを担当したデジタル・アーティストRobert Seidel(ロバート・サイデル。ドイツのイエナ出身で、現在はベルリンを拠点に活動。『ROMANTIQ』のアートワークも担当)とのオーディオ・ヴィジュアルなコラボレーション(2021年9月に開館したDeutsches Romantik-Museumのグランド・オープニング用のコラボレーション)が契機となり、多様な建築物かのように立体的な音空間を創り出している。
かつてのフォークトロニカ、ポスト・クラシカルとは一線を画した、2010年の『O』以降、職人芸のように磨き上げた、生楽器(オーガニック)とエレクトロニクス(デジタル)の境界線を曖昧にした独特なブレンドが、新たな領域に達し、所謂音楽家的なコンポーザー、メロディーメイカーとしての才能が一気に開花したかのような、圧倒的にオリジナルでロマンティックな音楽を創り上げた。
‘膨大な情報量を、見事に昇華し、これまでの作品の中でも最高峰に美しく洗練された、ノスタルジックでありながらフューチャリスティックでもある、情緒豊かな大傑作アルバム。

アルバムからの先行シングルとなった9曲目「Touha」(トウハ)のHEADZヴァージョンのMusic Video(video by Robert Seidel)は現在、以下URLにて限定公開中。
https://www.youtube.com/watch?v=itRb-9EkhC8

◎ 全世界同時発売(2023年5月12日)
◎ 日本盤CDのみのボーナス・トラック2曲収録
◎ 日本盤CDのみマーカス・ポップ本人によるマスタリング音源を使用(デジタル配信は、ワールドワイド版のThrill Jockey盤と同様に、Rashad Beckerによるマスタリング音源を使用)
◎ 日本盤CDのみマーカス・ポップとロバート・サイデルのお気に入り画像をメインに使用した、Thrill Jockey盤とは異なるオリジナル・デザインのジャケット。

African Head Charge - ele-king

 エイドリアン・シャーウッド主宰の〈On-U〉を代表するグループのひとつ、81年にパーカッショニストのボンジョ・アイヤビンギ・ノアとシャーウッドによって開始されたダブ・プロジェクト、アフリカン・ヘッド・チャージ。なんと『Voodoo Of The Godsent』(2011)以来となる、12年ぶりのオリジナル・アルバムが発売されることになった。ボンジョの暮らすガーナの都市名が冠された新作『ボルガタンガへの旅』は7月7日発売。現在新曲 “Microdosing” が公開されている。やはりかっこいい……
 そしてなんとなんと、おなじく12年ぶりに来日公演も決定!! 詳細は後日とのことだが、首を長くして待っていようではないか。

African Head Charge
ヤーマン!!!!
パーカッションの魔術師、ボンジョ、

パーカッション奏者のボンジョ・アイヤビンギ・ノアとUKダブのパイオニアとして知られるプロデューサーのエイドリアン・シャーウッドを中心に結成された〈On-U Sound〉の伝説的プロジェクト、アフリカン・ヘッド・チャージが12年ぶりの新作『Trip To Bolgatanga』を7月7日に発売することを発表、同時に新曲「Microdosing」をMVと共に解禁した。また、12年ぶりの来日も決定しており、後日詳細が発表される予定となっている。

African Head Charge - Microdosing
https://youtu.be/DELmBbsI0jM

アフリカン・ヘッド・チャージが、12年ぶりのニューアルバムとともに〈On-U Sound〉に帰ってきた。タイトルは『Trip To Bolgatanga』で、結成メンバーであるボンジョ・アイヤビンギ・ノアがレコーディングを主導し、彼の盟友でともにグループを動かしてきたエイドリアン・シャーウッドが再び制作の指揮に携わった。

アルバムの間隔が大きく空いたことに関して、ボンジョは次のように述べる。「12年という時間が経つ間、私はガーナで家族と過ごしていたけど、創作は続けていた。まだまだ自分には世に問うべきことがたくさんあるってことは、きっとわかってもらえるだろう。人生の中で、この時期は仕事もしたかったけど、家族との時間も大切にしたかった。毎日を愉快に過ごしながら、創作にも精を出した。何といっても幸せなことがあれば、いっそう創作に前向きになれるものだし、最大の幸福は家族といることなんだから」

今回のアルバムのサウンドによって『My Life In A Hole In The Ground』や『Songs Of Praise』といったアフリカン・ヘッド・チャージの往年の名作が思い起こされるのは確かだが、だからといって彼らの音楽がすでに進化を止めていると思い込むのは誤りだ。名パーカッション奏者の彼は言葉を続ける。「ドラム演奏にしても、詠唱するようなチャントの歌唱にしても、できるまでには時間がかかる。私はひたすらガーナ全土に赴いてドラム奏者たちに会ってきた。ファンテ、アキム、ガー、ボルガタンガといったあらゆる部族が、それぞれに異なるドラムの文化を持っている。僕はできる限り多くを学び、組み合わせてひとつの形にしようと模索している。これは料理に似ている。すべての材料、例えばヤム(ヤマイモ)、バナナ、カボチャを混ぜ合わせると、そこに施す最終的な味付けが肝心だ。私は音楽をそういうふうに捉えている。さまざまな要素を集め、それを味わえば『いいね、これはいい味付けだ。いいね、これはいいサウンドだ』という言葉が出てくる。これこそがアフリカン・ヘッド・チャージの存在意義なんだ。ありとあらゆる組み合わせを追求して、それをエイドリアンのところに持って行けば、さらに新しいものを作るために彼が力を貸してくれる」

プロデューサーを務めるエイドリアン・シャーウッドも同じ意見だ。「アフリカン・ヘッド・チャージにふさわしい素材を選び抜き、それからオーバーダビングやミキシングを楽しみながら完璧なものに仕上げていくということをずっとやっている。これまで常にいい関係で仕事を続けてきたけれど、今回のアルバムで自分たちは史上最高の結果を出せたと思う」

グループが40年以上に渡って活動してきた中でも、今回のアルバムは、音楽の本質を共有する大家族のようなメンバーたちが現場に戻ってきた印象がある。マルチな楽器奏者のスキップ・マクドナルドと、彼とタックヘッドでともに活動するダグ・ウィンビッシュのふたりは、さまざまなトラックに参加してその力を発揮している。かつて90年代初めにアフリカン・ヘッド・チャージに関わっていたドラムのペリー・メリウスが、正統派の重厚なリズムを3つの楽曲に加えている。ここに新鮮な顔ぶれが数多く加わっていることも見逃せない。管楽器やリード楽器は、ポール・ブース、リチャード・ロズウェル、デイヴィッド・フルウッドが務める。キーボードにはラス・マンレンジとサミュエル・ベルグリッター。ギターはヴィンス・ブラック。さらにはシャドゥ・ロック・アドゥ、メンサ・アカ、アカヌオエ・アンジェラ、エマニュエル・オキネらによるパーカッション、イヴァン・“チェロマン”・ハシーによるストリングス、ゲットー・プリーストによる力強い歌声が加わる。そして特別ゲストとして、伝統楽器コロゴの名手キング・アイソバがボーカルで参加するとともに伝統的な2弦リュートの巧みな演奏を披露している。

過去のアルバムでは世界各地から集めたエッセンスを一緒くたに混ぜ合わせていたのに対し、ニューアルバムにおいてアフリカン・ヘッド・チャージはただひとつの場所を念頭に置いている。『A Trip To Bolgatanga』とは、ボンジョにとって現在の生活拠点であるガーナ北部を巡る音楽の旅だ。これは幻想的な旅路の記録であり、そこに現れる風景を象徴する、さまざまなハンドパーカッションや人々が唱和するチャントの歌声を補強するように、轟くベース音、変化を加えた管楽器、余分な音をカットするエフェクト、騒々しいワウペダルの効果、何かにとりつかれたようなブードゥー教のダンスミュージック、合成されたうねりのサウンド、コンガのリズム、何層にも入り乱れる電子楽器のエフェクト、ブルースの影響を感じさせる木管楽器、ファンキーなオルガンの音などが加わっている。〈On-U Sound〉の作品がすべてそうであるように、何度繰り返し聴いてもその度に細かいディテールに関する新たな発見がある。このサウンドは大がかりな音響システムで聴かなければ、その真価を理解することはできないだろうし、そうなった暁には、いかなる相手が競合しようとも太刀打ちできずに叩きのめされることだろう。

アフリカン・ヘッド・チャージの最新作は7月7日にデジタル、CD、LPで7月7日に発売!国内盤CDにはボーナストラックが追加収録され、歌詞対訳と解説書が封入される。LPは通常盤(ブラック・ヴァイナル)に加え、限定盤(蓄光ヴァイナル)、日本語帯付き仕様盤(蓄光ヴァイナル、歌詞対訳・解説書付)で発売される。さらに、国内盤CDと日本語帯付き仕様盤LPは、数量限定のTシャツセットでも発売される。

label: On-U Sound
artist: African Head Charge
title: A Trip To Bolgatanga
release: 2023.07.07

BEATINK.COM: https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=13353

国内盤CD Tracklist
01. A Bad Attitude
02. Accra Electronica
03. Push Me Pull You
04. I Chant Too
05. Asalatua
06. Passing Clouds
07. I’m A Winner
08. A Trip To Bolgatanga
09. Never Regret A Day
10. Microdosing
11. Flim 18 (Bonus Track)


蓄光ヴァイナル

蓄光ヴァイナル(暗闇ではこのように光ります。)

Powell & London Contemporary Orchestra - ele-king

 越境する20世紀後半のクラシック音楽。パウウェルがロンドン・コンテンポラリー・オーケストラと共作・共演した新作『26 Lives』 を聴いて思わずそう呟いた。リリースはパウウェル自ら主催する〈Diagonal〉から。
 現行のエレクトロニック・ミュージックがこれほどまでに20世紀後半のクラシック音楽、もしくはエレクトロアコースティックに隣接するというのは稀な事態ではないか。
 それもあのパウウェルがである。激しいビートがそのサウンドの背骨とでもいえる彼が、こうまでオーケストラの音を分解・生成するような見事な音響空間/音響作品を作り出すとは。これには驚きしかない。とはいえその兆候はあった。彼のリスナーであれば承知の事実である。
 そう、パウウェルの2021年作『Piano Music 1-7』の存在だ。『Piano Music 1-7』においてピアノによるミニマル・ミュージックに挑戦していたのである。ここですでに20世紀後半のクラシック音楽的なものに接近していたわけだ。もちろん『26 Lives』ではさらなる音を追求している。コンピューターによって電子音とオーケストラが融合することで新しいドローン・サウンドを生み出しているのだ。まさしく極上にして尖端、そして前衛的なサウンドスケープが鳴らされているのである。
 より「前衛的」という意味では、アクトレスが同じくロンドン・コンテンポラリー・オーケストラとコラボレーションした『LAGEOS』(2018)よりも、より尖端的であるといえるだろう(むろん『LAGEOS』も大・大・傑作なのはいうまでもない)。
 この『26 Lives』は、ジョン・ケージ、エリアーヌ・ラディーグ、ジェームズ・テニー、アルヴィン・ルシエ、モートン・フェルドマン、ミカ・リーヴィらのエレクトロ・アコースティックな楽曲を演奏する「24時間コンサート」の一部として演奏された録音をベースにしている。録音はマルチ・チャンネルでなされ、実際は3時間に及ぶ演奏だったという。この音源はその3時間の録音からエディットされたものだ。

 本アルバムの曲は、いわゆる「エレクトロ・アコースティック」であり、いわば実験音楽の部類に入れることができるともいえよう。「現代音楽」のコンサートで演奏されたようだが、当然だが、ここに垣根はない。そうではなく未知の音を追求する姿勢のみが大切なのだろう。
 斬新で新しい音はジャンルを無化し、音響を拡張し、さまざまなタイプの聴き手をつなげていくことで生まれる。アルバムを聴くとわかるように、『26 Lives』のサウンドの質感は、現行のエクスペリメンタル・ミュージック特有の緻密さやダイナミックさ、繊細を持っている。現代音楽のそれとは確実に違う音なのだ。
 ここには音そのものに執着することで、まったく別の世界を希求するような未知の響きがある。実験の拡張がある。拡張の音響がある。音響の未来がある。といえば言い過ぎだろうか。だからといって万人向けの無難な顔をしているわけではない。極めて個性的かつ実験的な音だ。
 もう少し各曲を具体的にみていこう。『26 Lives』には全10曲が収録されている(正確には10トラックに分かれているとすべきかもしれない)が、どの曲も簡素な数字がタイトルとして付けられている。そしてどの曲もドローンを基調としている。しかしときに旋律的な要素もレイヤーされている。音はオーケストラの生音の揺らぎをときに増幅させている。
 美しい旋律を持った2曲目 “23” から無調的で不安定な響きや旋律をミニマルに展開する3曲目 “6, 8” は夢の中で崩れていくシンフォニーのように甘く響く。泡のような音が鳴る4曲目 “13, 12” を経て、硬質な音の持続が生成する “10, 11, 4” に至る。
 以降、光が乱反射するようなドローンを中心を基調としつつ、オーケストラの音が電子音響の中に完全に溶け合っていくような音響空間を生成していくのだ。ドローン音響の中に、音が不安定に崩れていくように。

 『26 Lives』の独創性は、クラシカルな要素を響きの中で分解している点にある。旋律がときにグリッチするように歪み、ノイズの直前で新しい音楽・音響を生成する。パウウェルとロンドン・コンテンポラリー・オーケストラは、いわばジェラール・グリゼーら現代音楽によるスペクトル学派が探求した音響生成を、極めてカジュアルに、コンピューターとオーケストラを融合させる手法で実現したのではないか。音楽を音波として認識し、倍音をスペクトル分析し合成することで生まれる音響空間を生成すること。ノイズの極限から極限の音響を追求すること。
 パウウェルは本作(本楽曲)でオーケストラの響きを抽出し、ノイズと楽音と音響の混合体を作り出しているように思えてならないのだ。むろんこのコンセプト自体は真新しいものではないかもしれない。しかしこのような音をパウウェルが作り出すことに意味があると私は思う。
 思えば00年代以降のエレクトロニカ/電子音響もまた、コンピューター内で音響の操作し、未知のサウンドを追求する試みであった。ミニマルと倍音、音響の交錯、融解。それはかつてグリゼーらが希求した「音響空間」をコンピューターによって実現するような音楽運動でもあった。
 
 2023年のいま、パウウェルが、『26 Lives』のように生成的な音響空間を生み出したことに、私などは、00年代・10年代エレクトロニカ/電子音響で展開された「夢」(つまり未知の無限にしてミニマムな音響空間)を継承する「意志」を(勝手に)感じてしまったのだ。コンピューター・エディットから生まれる音響空間の生成、つまりは「新しいエレクトロニカ」がここにあるように思えてならないのである。
 このアルバムの音はモダンなのだ。つまり『26 Lives』はクラブ・ミュージック好きも、クラシック音楽好きも、アンビエント好きも、モダン・クラシカル好きにも聴かれるべきアルバムといえよう。

イタリアン・ホラーの帝王、その鮮血の美学の核心に迫る

『サスペリア』で知られるイタリアン・ホラー/サスペンス映画の巨匠、ダリオ・アルジェント監督による10年ぶりの新作『ダークグラス』の公開が決定!

ヨーロッパに伝わる魔女伝説をモチーフに、独自の色彩感覚にこだわった耽美的な描写で一世を風靡した『サスペリア』、そして工夫を凝らした残酷シーンと、意外すぎるトリックでミステリファンをも驚嘆させた『サスペリア PART2』。
イタリア映画界にとどまらずハリウッドにも進出、当時人気絶頂のジェニファー・コネリー主演『フェノミナ』や、華麗なる流血表現でカルト的人気を誇る『オペラ座 血の喝采』などの傑作を連発。
ジョージ・A・ロメロ監督『ゾンビ』や『デモンズ』シリーズなどプロデューサーとしても活躍。
『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督による18年の『サスペリア』リメイクの大ヒットも記憶に新しい。
いまなお、ジェームズ・ワン、クエンティン・タランティーノ、エドガー・ライトら名だたる監督たちが影響を口にする巨匠、ダリオ・アルジェント。
待望の新作『ダークグラス』の公開も決定し、改めて注目の集まるホラー/サスペンス映画の鬼才の全貌を紹介、さらにはアルジェントを生んだイタリアのサスペンス映画「ジャッロ」の入門特集も掲載!

執筆:伊東美和、宇波拓、片刃、上條葉月、児嶋都、児玉美月、後藤護、高橋ヨシキ、ナマニク、はるひさ、ヒロシニコフ、真魚八重子、森本在臣、山崎圭司

目次

クロスレビュー『ダークグラス』(真魚八重子、高橋ヨシキ)
ダリオ・アルジェント・バイオグラフィー(山崎圭司)
イラストコラム(児嶋都)
フィルモグラフィー
アルジェントがアルジェントであるために作られた監督デビュー作──『歓びの毒牙』(ナマニク)
宙吊りの連続──『わたしは目撃者』(上條葉月)
アルジェントが唯一挑んだ「ホモエロティシズム」映画──『4匹の蝿』(ナマニク)
無産階級から見た革命を描く──『ビッグ・ファイブ・デイ』(はるひさ)
恐怖のアルジェント・マシーン──自動人形・エレベーター・マネキンとの別世界通信『サスペリアPART2』(後藤護)
奇妙な世界をサヴァイヴし、その扉から出ていくとき──『サスペリア』(児玉美月)
デタラメのなかの美意識──『インフェルノ』(上條葉月)
暗闇の領域──『シャドー』(山崎圭司)
美少女と鮮血──『フェノミナ』(真魚八重子)
殺戮の創意──『オペラ座 血の喝采』(真魚八重子)
娘アーシアを本格的に女優として開眼させた、フェィッシュな首チョンパ映画──『トラウマ/鮮血の叫び』(ナマニク)
繰り返される大文字のアートへの接近──『スタンダール・シンドローム』(高橋ヨシキ)
新説──『オペラ座の怪人』(はるひさ)
アルジェントによるジャッロの「再発見」──『スリープレス』(高橋ヨシキ)
アルジェント流デスゲーム──『デス・サイト』(片刃)
ヒッチコックとの共通項とは──『ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?』(高橋ヨシキ)
汚くエグい中にも爽快感──『サスペリア・テルザ 最後の魔女』(片刃)
ただ、黄色であるというだけ──『ジャーロ』(はるひさ)
カマキリの神話学 祈りと邪眼──『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』(後藤護)
これでもかというポーの「美味しいところ乗せ」『マスターズ・オブ・ホラー/悪夢の狂宴「黒猫」』(片刃)
力みすぎない中にもハードな描写『マスターズ・オブ・ホラー』(真魚八重子)
プロデューサーとしてのアルジェント(伊東美和)
ドキュメンタリー『ダリオ・アルジェント 鮮血の魔術師』(森本在臣)
インタヴュー 吉本ばなな
対談:「アルジェントはお好き?」(山崎圭司・ヒロシニコフ)
コラム
アルジェントと音楽(宇波拓)
最高のパートナーにして魔女の血族──ダリア・ニコロディ(森本在臣)
アーシア・アルジェント──銀幕とその裏側(片刃)
「ぶっ殺し」と「ぶっ壊し」──アルジェントに影響を受けた新世代の映像作家たち(ヒロシニコフ)
小特集 ジャッロ入門
概説「ジャッロ映画」とは(山崎圭司)
おすすめジャッロ30選(ヒロシニコフ+森本在臣)
コラム それはジャッロであり、ジャッロではない──ホラー映画の新たなる潮流「ネオ・ジャッロ」(ヒロシニコフ)

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Chihei Hatakeyama - ele-king

 日本のアンビエント・マスターのひとり、畠山地平が5月に公開される映画『ライフ・イズ・クライミング』のサウンドトラックを手がけ、アルバムとしてリリースする。今回は、畠山のトレードマークである、あのダークで緊張感たっぷりのドローン作品とは違って、畠山地平の新境地と言える、深い情感を携えたアンビエント作になっている。メロディがあり、ギターがフィーチャーされ、言うなれば『パリ・テキサス』のアンビエント・ヴァージョン。これがじつに魅力的な作品になった。
 映画『ライフ・イズ・クライミング』は、視力を失ったクライマーがアメリカ合衆国ユタ州の大地に聳え立つ岩山を登るというドキュメンタリー。クライミングの選手権でタッグを組んだ相棒を “目” にしながら、その人生をかけた旅が素晴らしい映像のなかに記録されている。その壮大な景色とヒューマンな物語、そして畠山地平の音楽をぜひご堪能いただきたい。

畠山地平 / Chihei Hatakeyama
ライフ・イズ・クライミング・オリジナル・サウンドトラック / Life is Climbing Original Soundtrack

フォーマット:CD
レーベル:Gearbox Records
発売日:2023年5月10日(水)
解説付き

■映画『ライフ・イズ・クライミング』の公開情報
5/12(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開

詳しくは→https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=lifeisclimbing

予告編
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『ライフ・イズ・クライミング』
小林 幸一郎 鈴木 直也 西山 清文 エリック・ヴァイエンマイヤー
主題歌:「Amazing」MONKEY MAJIK
音楽:Chihei Hatakeyama
撮影:中原 想吉 清野 正孝
エグゼクティブプロデューサー:スージュン
プロデューサー:森 多鶴
監督:中原 想吉
助成:文化庁文化芸術振興費補助(映画創造活動支援事業) 独立行政法人日本芸術文化振興会
文部科学省選定 一般非劇映画(少年、青年、成人、家庭向き)
配給:シンカ 2023年/日本/日本語・英語/89分/カラー/1.90:1/5.1ch ©Life Is Climbing 製作委員会
製作:インタナシヨナル映画株式会社 NPO法人モンキーマジック 株式会社サンドストーン 株式会社シンカ
製作パートナー:株式会社ゴールドウイン ミレー・マウンテン・グループ・ジャパン株式会社 株式会社ランドウェル 株式会社リプライ

syrup16g - ele-king

 syrup16g の『HELL-SEE』がリリースされたのは20年前、2003年だという。他人事のような表現から始めたのは、1994年生まれのぼくが syrup16g を知ったとき、彼らはもうすでに活動を終えていたからだ。とはいえ、ぼくのような後追いリスナーからしても、十数年を経てから手にするこの『HELL-SEE』20周年記念盤のレコードが持つ物理的な重みには感じ入るものがあった。

 ぼくが彼らの魅力に気づいたのは2009年頃、彼らが解散した翌年だった。家族の目を盗んで使わなければならない、リビングに鎮座するパソコンという情報ソースの代わりに、インターネットが持つ莫大な情報ソースを解放してくれるiPhoneというツールが手に入ったのもちょうどその頃だった。だから再結成以前の彼らのライヴを一度も見ることができなかったぼくのようなリスナーでも、当時の彼らがどのように消費されていたのか、その痕跡は当時の2ちゃんねるやニコニコ動画などのネット・メディアから十分確認することができた。
 syrup16g は、音楽鑑賞者の厳しい審美眼を耐え抜いたバンドというより、彼らの内省的な歌詞をめぐる議論や、Gt, Vo の五十嵐隆の不安定なギター・プレイや歌詞の歌い間違えをネタにしつつ見守るコメントなど、「生温い」視線のなかにいた。
 そうした消費のあり方は、「もはやロック・バンドはロック・スターというキャラを演じることができない」という、虚構と現実の軋轢そのものを表現の原動力とした、リアルな内面の吐露を伴う彼らのスタイルがあればこそ存在し得た「力弱い」消費のされかただろうし、その「弱さ」こそが彼らと彼らのリスナーを結びつけるものだったのだろう。

 そうした「弱さ」や「繊細さ」を表現に取り入れていくようなバンド像は、ニルヴァーナ、レディオヘッド、ザ・スミスなどの英米のオルタナティヴ・ロックの潮流と共振する部分だろうし、コーラスの効いたクリーン・トーンのアルペジオや、グランジ〜シューゲイザー的なギター・サウンドなど、音響面でもそれらのバンドからの影響は大きいだろう。
 けれどそのような──あえてこうした語を選ぶが──「本格的な」音像には不釣り合いなことに、彼らの音楽にはジャパニーズ・フォーク的なコード感やメロディやアレンジが目立つのも重要なことだ。それは彼らの盟友であり、「鬱ロック」という語でともに括られていた ART-SCHOOL が、オルタナティヴ・ロックの文脈にある程度馴染むのとは対照的だ。
 どこか垢抜けないそれらのフォーク的な要素は、彼らの音楽に親しみやすさとベタッとした暗さを与えながら、日本語詞がうまく機能するための適切なタイム感を与えているように思う。そのおかげもあってか、この『HELL-SEE』というアルバムには、驚くほど柔らかい口語的な表現や陳腐な言葉遊びに溢れている。

 まず印象的なのは、「さっそく矢のように/やる気が失せてくねぇ」というオープニング・トラック “イエロウ” の歌い出しだ。五十嵐の書く詞に頻出する「捨て仮名」が早速登場し、無気力な形でのアルバムのスタートを告げる。続くA2 “不眠症” の「もう遅ぇかねぇ/ねぇ/うるせぇてめぇメェー/うるせぇてめぇ寝れねぇ/もう遅えよねぇ」という、切迫していながらもどこか気の抜けた「捨て仮名」の使用も印象的だ。
 また「すぐ似てる/なんちゃって/一緒じゃん/すぐに慣れちゃってもうピンとこない」(A4 “末期症状”)や、「使えないものは駆除し/排除されるよなぁ/雑踏その何割/いらない人だろう」(C2 “正常”)など、消費すること/されることにおけるあやふやな不安を、その背後にある「仕組み」の存在とともに匂わせていくような表現も彼らならではのものだろう。

 こうしていくつかの歌詞を羅列してみると、切実な内面の吐露や社会風刺的な「リアルな側面」すら、語呂合わせや気が抜けた「捨て仮名」を通過することによって、「この表現は陳腐なものに過ぎない」という自覚に送り返されていることがよくわかるだろう。彼らの表現のいたるところに過剰なまでの内省が仕組まれている。だが同時に、破れかぶれなヴォーカルやアルバム全体を覆うローファイな音像のなかで、そうした内省で押しつぶしたものの残滓が表現全体のあちらこちらで「逆ギレ」的に噴出していく。
 彼らの音楽には、日本人が英米の文化を消費する際につきまとう、「カルチャーを消費しているという自意識の薄膜」を壊してしまうような切実さとギョッとするくらいのリアルさがある。だからこの音楽を救い出すために、欧米の文化を引き合いに出すのはむしろこの音楽の射程を狭めることになる。何よりも重要なことは、極めて平易な日本語で、ゼロ年代初頭から中期の時代の空気を彼らが引き受けていたことだ。
 と、こうしていろいろ書きつけてみた後に改めて自問してみる。2023年にこのアルバムを聴き直す意味とはなんなのだろうか。どんどん悪くなるばかりの世界のなかで『HELL-SEE』はどんな価値を持つのか。

 そもそもこのアルバムのタイトル、『HELL-SEE』は「Healthy(健康的な)」という語を皮肉るものなわけだが、「健康」というタームは現代において極めてアクチュアルな問題だ。当初は「意識が高い層」の趣味にとどまっていたマインドフルネスやヨガという、「リラックス」にまつわる技術とメンタリティは、サウナやCBDの普及によってより多くの人びとにリーチするようになり、あらゆる不満の噴出や問題提起を未然に「予防」する。一方で、「ストゼロ」的なものに含まれる、過剰なストレス発散の手段も、それ自体が過剰であることが「ネタ」にされることで、許容され、濫用され、流通していく。メンタル・ヘルスの方面では、鬱病の「軽傷化」や、発達障害という概念の濫用によって、勝手な自己診断とそれに伴う自責の念が世界を覆っている。
 あらゆる「ヘルス・ケア」はより一般化し、多くの人間が進んで自己検疫と自己診断を繰り返す。『HELL-SEE』が素描してみせた問題はさらに進展し、「悪化」しているのは間違いない。

 ところで『HELL-SEE』というアルバムが不思議なのは、そうした「健康」を巡る問題を予感し、あらゆる一般通念をクサすアイロニーを主成分とした露悪的な表現を含みつつ、なぜかフォーク・ソング的といっても良いほど素朴な歌い回しが同居していることだ。
 例えばこのアルバムには、B3 “(This is not just)Song for me” やB4 “月になって” のような直球のラヴ・ソングも収録されているし、アルコール中毒によって五十嵐が入院した経験をもとに作られたというD2 “シーツ” では、「いつか/浴びるように/溺れるように/飲みたいよ」という退廃的なフレーズが、「いつか/風のように/鴎のように/飛びたいよ」という牧歌的なフレーズに重ねられている。またこのアルバムは、とってつけたような穏やかさを持つD4 “パレード” という曲で幕を閉じるのだ。
 このことはこのアルバムに限ったことではないが、彼らの音楽は、自己否定と逆ギレの、躁と鬱の天秤の揺れ動きから、ふいに夢から醒めるような穏やかさに入り込んでしまうところがある。そうした意味で、こうして「悪化」した現在から『HELL-SEE』を聴き直してみると、syrup16g は、あらゆるアイロニーを引き受けながら、穏やかさと素朴さを音楽のなかに託すことをやめなかったバンドのようにも見えるのだ。
 そのことを最も象徴するのがC1 “ex.人間” だろう。ミニマルで穏やかなギターのリフレインと、その間で揺れる浮遊感のある電子音とベースのフレーズをバックに、「道だって答えます/親切な人間です/でも遠くで人が死んでも気にしないです」という告白から始まり、「きてるねぇ/のってるねぇ/やってるねぇ/いってるねぇ/急いでるし分かってるんだ/三つ数えりゃ消える」という、形のない焦燥や諦念が通過していく。しかし最も熱を帯びた調子で曲の終盤に歌い上げられるのはこのようなフレーズだ。

「少し何か入れないと/体に障ると彼女は言った/今度来るとき電話して/美味しいお蕎麦屋さん/見つけたから/今度行こう」。

 色合いや凹凸のない流動食のような「健康」という語の代わりに置かれた、「お蕎麦屋さん」という具体的な固有名と、不意に挿し挟まれる「彼女」のセリフが呼び出す極薄のドラマは、「体に障る」という「健康」を巡る言葉を、血の通った人の肉声に、「気遣い」や「優しさ」と呼べるようなものに変換していく。
 『HELL-SEE』という作品には決して強い肯定性はないし、リスナーの背中を押すような前向きさもない。しかしこの作品は、サウナやCBD、あるいは音楽の世界でいえばニュー・エイジやアンビエントなど、アイロニーもユーモアも抹消し、「なかったこと」にしてしまう「無我」にまつわる技術の代わりに、健康や自己の承認を巡る、自傷行為にも似た際限のない自己内省に足を取られること自体を受け入れた上で、そこで演じられるものをひとつのある「ドラマ」に仕立てあげてみせる。際限のない「地獄」から、あるいは「不健康」から、あるドラマを、ある物語を摘出して編み上げていく。
 自己否定やアイロニーの答えとして、強い肯定性や「無我」の境地を置く代わりに、肯定や希望と呼ぶにはあまりにぬるく、ゆるく、当たり前のように置かれた素朴な言葉を、2023年のいまもぼくはひとつの「救い」として聴いた。

 ぼくらは自分自身の生活を消し去ってしまいたいという欲望を抱えながらも、せめてひとつの物語として、ドラマとして、その「生」に言葉を与えられるのを待っている。そのような祈りは決して、「健康」や「道徳」の名の下に消し去られて良いものではないし、ただ華やかな言葉を与えられて消え去るようなものでもない。「鬱ロック」という語で名指され、精神的な問題を抱える多くの人びとに届いていたこのアルバムは、そのことを20年も前から知っているのだ。

Cantaro Ihara - ele-king

 いよいよ新作フルレングスの登場だ。70年代以降のソウルやAORなどからの影響をベースにしつつ、現代的な感覚で新たなサウンドを探求するシンガー・ソングライター、イハラカンタロウ。昨年からウェルドン・アーヴィン日本語カヴァーや “つむぐように (Twiny)” といったシングルで注目を集めてきた彼が、ついにセカンド・アルバムを送り出す。メロウかつ上品、どこまでもグルーヴィーなサウンドと練られた日本語詞の融合に期待しよう。

70年代からのソウル〜AORマナーやシティ・ポップの系譜を踏襲したメロウなフィーリング、そして国内外のDJからフックアップされるグルーヴィーなサウンドで注目を集めるイハラカンタロウ待望の最新アルバムがリリース決定!

ジャンルやカテゴリにとらわれない膨大な音楽知識や造形の深さでFM番組やWEBメディアでの海外アーティスト解説やイベント、DJ BARでのミュージックセレクターなどミュージシャンのみならず多方面で活躍するイハラカンタロウが、前作『C』から2年を越える歳月を費やした渾身のフルアルバムをついに完成!

世界的なDJ、プロデューサーとしても知られるジャイルス・ピーターソンのBBCプレイリストにも入るなど海外、国内ラジオ局でのヘヴィ・プレイから即完&争奪戦となったWeldon Irvineによるレア・グルーヴ〜フリー・ソウルクラシック「I Love You」(M7)日本語カバーや、サウスロンドンのプロデューサーedblによるremixも話題となったスタイリッシュ・メロウ・ソウル「つむぐように (Twiny)」(M2)といった先行シングルに加えて、新進気鋭のトランペッター “佐瀬悠輔” が艶やかなホーンを聴かせるオーセンティックなソウルナンバー「Baby So in Love」(M3)、現在進行形のルーツ・ミュージックを体現する“いーはとーゔ”の菊地芳将(Bass)、簗島瞬(Keyboards)らが臨場感溢れるパフォーマンスを披露した極上のグルーヴィー・チューン「アーケードには今朝の秋」(M4)、そして自身のユニット “Bialystocks” でも華々しい活躍を続ける菊池剛(Keyboard)が琴線に触れるメロディーを奏でる「夜の流れ」(M6)など同世代の才能あるミュージシャン達が参加した新たな楽曲も多数収録!

イハラカンタロウ『Portray』ティザー
https://youtu.be/RyE9RtDsohk


[リリース情報]
アーティスト:イハラカンタロウ
タイトル:Portray
フォーマット:CD / LP / Digital
発売日:CD / Digital 2023年4月28日 LP:2023年7月19日
品番:CD PCD-25363 / LP PLP7625
定価:CD ¥2,750(税抜¥2,500)/ LP ¥3,850(税抜¥3,500)
レーベル:P-VINE

[Track List]
01. Overture
02. つむぐように (Twiny)
03. Baby So in Love
04. アーケードには今朝の秋
05. Cue #1
06. 夜の流れ
07. I Love You
08. ありあまる色調
09. You Are Right
10. Cue #2
11. Sway Me

[Musician]
Pf./Key.:菊池剛(Bialystocks)/簗島瞬(いーはとーゔ)
E.Guitar:Tuppin(Nelko)/三輪卓也(アポンタイム)
E.Bass:toyo/菊地芳将(いーはとーゔ)
Drums:小島光季(Auks)/中西和音(ボタニカルな暮らし。/大聖堂)
Tp./F.Hr.:佐瀬悠輔

[特典情報]
タワーレコード限定特典:未発表弾き語り音源収録CD-R

[Pre-order / Streaming / Download]
https://p-vine.lnk.to/1NYBzJ

[イハラカンタロウ]
1992年7月9日生まれ。70年代からのソウル〜AORマナーやシティ・ポップの系譜を踏襲したメロウなフィーリングにグルーヴィーなサウンドで作詞作曲からアレンジ、歌唱、演奏、ミックス、マスタリングまで 手がけるミュージシャン。都内でのライヴ活動を中心にキャリアを積み2020年4月に1stアルバム『C』(配信限定)を発表、“琴線に触れる” メロディ、洗練されたアレンジやコードワークといったソングライティング能力の高さで徐々に注目を集めると、同年12月にはアルバムからの7インチシングル「gypsy/rhapsody」、そして2022年2月には「I Love You/You Are Right」(7インチ/配信)をリリース、さらには12月にサウスロンドンで注目を集めるプロデューサーedblによるリミックスを収録した「つむぐように (Twiny)」(7インチ/配信)をリリースし、数多くのラジオ局でパワープレイとして公開され各方面から高い評価を受ける。またライヴや作品リリースだけでなく、ラジオ番組や音楽メディアで他アーティストの作品や楽曲制作にまつわる解説をしたり、ミュージックセレクターとしてDJ BARへの出演やTPOに合わせたプレイリストの楽曲セレクターなどへのオファーも多く、深い音楽への造詣をもってマルチな活動を行なっている。2023年2月には「I Love You (DJ Mitsu The Beats Remix)」(7インチ/配信)をリリース、春には待望の2ndアルバムのリリースを予定している。

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