「Nothing」と一致するもの

Autechre - ele-king

 今年は00年代の代表作『Confield』と『Draft 7.30』がリイシューされたり、ザ・ハフラー・トリオとのボックスセットが再リリースされたりと過去のレガシーに注目が集まる一方で、突然のミックス公開もあったり、話題にこと欠かないオウテカ。現在は世界各地をツアー中で、今夜は幕張に上陸することになっている彼らだが、数日前に新たなライヴ音源集『AE_LIVE 2022-』がリリースされている。2022年にミラノ、アテネ、ヘルシンキ、ロンドンなどでおこなわれた7つのパフォーマンスを収録。彼らはこれまでもたびたびライヴ音源を解放してきたけれど、このアーカイヴ運動、いったいどこまで拡張しつづけるのでしょう。購入はAE_STOREから。

AE_LIVE 2022-
WARP444

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Klara Lewis & Nik Colk Void - ele-king

 クララ・ルイスの音は、いつも流動的な、不定形な魅力を放っている。形式が定まる前に形が溶け出し、また別のカタチへと変化するようなノイズと音響なのである。そこでベースになっているのが音のループだ。音と音をコラージュし、ループする。そのコンポジションはクライマックスを目指して構成されるというよりは、霧や空気の中に溶けていってしまうような質感を生んでいる。ループを多用した「アンチ・クライマックスなサウンドコラージュ/エクスペリメンタル・ミュージック」とでもいうべきか。ルイスのサウンドには催眠効果があるというか、どこか夢の中を漂うような感覚がある。

 ルイスのそのようなサウンドの特質は、〈Editions Mego〉からリリースされた初期の2作『Ett』(2014)、『Too』(2016)の頃から変わっていない(この二作は音のコンポジション/コラージュの絶妙さという意味で、10年代のエクスペリメンタル・ミュージックを象徴するような作品ではないかと私は考えている)。
 ルイスの音の魅力を知るには、このオリジナル・アルバム以上に、2021年に〈Editions Mego〉からリリースされたライブ音源『Live In Montreal 2018』をおすすめしたい。ライヴ録音ということもあってか空間に侵食するように構成される音のコラージュによるサウンドスケープが手にとるようにわかってくる。思わず「21世紀のシュールリアリスト」などと言いたくなってくるほどだ。
 コラージュ。霧のような音の質感。ループ。アンチ・クライマックス。これは2018年にリリースされたサイモン・フィッシャー・ターナーとのコラボレーション作品『Care』でも発揮されていた。まるでルイスの領域にごく自然に溶け込んでいくように、サイモン・フィッシャー・ターナーの音が音響空間の中に漂っていたのだ。当時聴いたときから不思議だったのだが、どうしてこんなことが可能なのか。「他」を「自身」の領域へと引き込ませる独自の技をルイスは持っているのだろうか。
 それは今年リリースされたクララ・ルイスとファクトリー・フロア、カーター・トゥッティ・ヴォイドの活動で知られるニック・コルク・ヴォイドとのコラボレーション・アルバム『Full - On』でも同様だった。リリースは、〈Editions Mego〉ではなく、ルーク・ヤンガー(ヘルム)が主宰するロンドンのエクスペリメンタル・ミュージック・レーベルの〈A L T E R〉からである。
 一聴すればわかるように本作でもクララ・ルイスの音響空間がいつの間にか、ニック・ヴォイドに浸透し、溶け合ってしまったかのようなサウンドスケープが生成されていた。加えてルイスの音にはなかったインダストリアルな重いビートが展開する曲もある。クララ・ルイスの「ループ感覚」とニック・コルク・ヴォイドの「インダストリアルなリズム/ビートの反復感覚」の相性はとても良いのかもしれない(むろん互いの「個」がぶつかるというよりは、それぞれの音が「溶けていく」ようなコンポジションがなされている)。激しいデジタル・ノイズは、ルイスの初期EP「Msuic」(2014)を思わせもした。『Msuic』はテクノの要素や声の要素など本作にも通じる点があるEPなのでいま聴き直すとちょうどよいだろう。

 本作『Full - On』には全17曲収められている。収録時間36分ということからもわかるように1曲は短い。そのぶんサウンドのヴァリエーションは豊富だ。まるでノイズ/電子音のオブジェを鑑賞するかのようなアルバムである。不安定なノイズが炸裂する1曲目 “Say Why”、声を加工した2曲目 “In Voice 1”、インダストリアルなビートがループする3曲目 “Junk Funk”、祝祭的なメロディが反復する4曲目 “Ski” までを一気に聴くと、このアルバムもまたループとノイズと霞んだ音色を多用した作品だと気が付くはずだ。
 注目すべきはアルバム中盤である。エレクトリック・ギターの音をコラージュしループさせる6曲目 “Guitar Hero”、変調した声を用いた7曲目 “In Voice 2”、声とノイズのフレーズをループさせるインダストリアルな8曲目 “Green”、80年代のポップスの一部分のようなサンプルのループに、重いビートが重なる9曲目 “Pop” までの4曲は、このアルバムの個性と本質を象徴している箇所といえる。そう、多様なサウンド・エレメントのループである。
 10曲目以降もサンプルとノイズを駆使したループ・アンサンブルを展開するが、曲調はより内省的にアンビエントなムードへと変化していく。14曲目 “Work It Out” では、曲の頭に激しいインダストリアルなリズムが打ち付けられるが、そのビートはノイズにすぐにかき消され、融解してしまう。15曲目 “Phantasy” でも曲の頭はオーセンティックな電子音楽のようなアルペジオを展開するが、これもすぐに音の霧の中に溶け込んでいってしまうのだ。リズムや反復音がアンビエント/アンビエンスの中に溶け込んでいってしまうのも本作の特徴といえる。

 ギター、シンセ、モジュラーシステムにサンプリングを駆使し、会話を重ねるように作り上げたというこのアルバムは、ふたりの個性が溶けあい、反復し、やがて逸脱し、新しい音響空間が生成しているような作品である。
 この不定形で、流動的な、形の定まらないノイズの反復にいつのにか聴き手である私たちも引き込まれていく。ルイスは音響は聴き手の意識にも浸透する。まるでこの世から異界に連れ出されていくうような感覚に満ちているのだ。
 アルバは、17曲目 “I'll Always” の加工された声による歌声のような曲で終わる。ノイズ/サンプルのループの横溢を経て、最後は変調された声によるアカペラのような曲で終わるわけだ。このアルバムでは「声」が要所要所でポイントになっていた。ノイズから声へ。見事なアルバムの構成だと思う。

 霞んだトーン。ノイズの横溢。インダストリアルもアンビエントもノイズもヴォイスも、すべてが溶け合いながら、つねに別の音響の形態へと変化していくような不可思議な音響世界がここにはある。まさにポスト10年代の先端音楽といえよう。

Michael Soward - ele-king

日野元彦 - ele-king

PUCHO & THE LATIN SOUL BROTHERS - ele-king

WELDON IRVINE - ele-king

GERARD PJ BROWNE - ele-king

GANG'S BACK - ele-king

THE CLASS SET - ele-king

goat - ele-king

 ここ数日は台風のニュースにやきもきされている方も多いでしょう。このタイミングで、まさに2023年の台風の目となりそうな情報が入ってきました。
 紙エレ最新号にもインタヴューを掲載している大阪の日野浩志郎、日本が誇るこの至高の実験主義者を中心に結成されたリズム・アンサンブル、goatがサード・アルバム『Joy In Fear』をリリースします。前作『Rhythm & Sound』が2015年なので、なんと8年ぶりです。レーベルは、KAKUHAN の素晴らしいアルバムも出していた日野主宰の〈NAKID〉。アートワークは前回に引きつづき五木田智央が、デザインは真壁昂士が、録音は西川文章、マスタリングはラシャド・ベッカーが担当しています。全国ツアーに先がけまずはCDが発売、追ってLPも発売されるとのこと。
 あわせて、先日発表された初のツアーの詳細も告知されていますが……これがまたとんでもない面子が集結しています。絶対に見逃せない案件です。詳しくは下記をご覧ください。

大阪を拠点とする音楽家 日野浩志郎を中心に結成されたリズムアンサンブル「goat」が約8年ぶり、通算3枚目となるアルバム「Joy In Fear」の情報を発表した。日野が運営するレーベル「 NAKID」からのリリースとなり、アートワークは前回に続き五木田智央、録音は西川文章、マスタリングはRashad Beckerが担当した。
全国ツアーにて先行でCDが発売、LPも追って発売される。

【NKD09】goat - Joy in Fear artwork by Tomoo Gokita

goat - Joy In Fear
1. Hereafter
2. III I IIII III
3. Cold Heat
4. Warped
5. Modal Flower 6. Spray
7. GMF

Koshiro Hino - Guitar
Atsumi Tagami - Bass
Akihiko Ando - Saxophone
Takafumi Okada - Drums
Rai Tateishi - Percussion, Bamboo flute, Irish flute

NKD09
Composed by Koshiro Hino
Recorded, mixed by Bunsho Nishikawa *Recorded by Koshiro Hino (1st/7th track) Mastered by Rashad Becker
Recorded at ICECREAM MUSIC
Artwork by Tomoo Gokita
Designed by Takashi Makabe
Art direction by Yusuke Nakano
Published by Edition Golfen & Reiten / Freibank

結成10周年を記念とした初の国内ツアーを行うことは先日公開されたが、
goatが自ら主宰する 東京・京都公演の詳細がついに全貌が明らかになった。
東京公演は渋谷WWW X、京都公演は 会場であるロームシアター京都との共催で2日間に渡って開催される。

京都公演のDAY1(8/31)には東京都近代美術館での「声ノマ 全身詩人、吉増剛造展」にて行われたコラボレーションをきっかけとし、
現在までに継続して作品制作/ライブを行ってきた空間現代 ×吉増剛造、もはや説明不要なジム・オルーク 、石橋英子、
山本達久という三者によるカフカ鼾、 去年リリースされたデビューアルバムが海外を中心に絶賛された日野浩志郎と
チェリスト中川裕貴によるデュオKAKUHANが決定。

DAY2(9/1)には主催のgoat他、ミニマルダンスミュージック~クラウトロック~サイケデリックロックが混在した新作EP「家の外」で
独自の存在感をさらに強くした進化し続ける国内屈指のバンド OGRE YOU ASSHOLE、そして大名盤「幸福のすみか」の発売から25年、
BOREDOMSや想い出波止場などの山本精一と、アート・パンク・バンド、アーント・サリーの創設メンバーであり電子音楽ソロ等でも
世界的に賞賛を浴びるPhewによる伝説的なデュオが再び実現した。

東京公演(8/27)では先日ruralでのライブセットも大きな反響を呼んだPhewがソロで出演、加えて唯一無二のスタイルで
00年代のMCバトルシーンから台頭したラッパー鎮座DOPENESSの出演が決定。

因みに国内ツアーではニューアルバムに加え、真壁昂士デザインによるgoatの新Tシャツが販売される。

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