ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Columns 内田裕也さんへ──その功績と悲劇と (columns)
  2. øjeRum - On The Swollen Lips Of The Horizon (review)
  3. MOMENT JOON - Immigration EP (review)
  4. Angel-Ho - Death Becomes Her (review)
  5. 釣心会例会 ──食品まつり a.k.a foodman がシカゴの RP Boo を迎えパーティを開催 (news)
  6. R.I.P. 遠藤ミチロウ (news)
  7. Jamie 3:26 ──80年代シカゴを知るDJ、待望のジャパン・ツアー (news)
  8. Ruby Rushton - Ironside (review)
  9. interview with Ralf Hütter(Kraftwerk) マンマシーンの現在 (interviews)
  10. JUST ZINE 3 Book issue ──アンダーグラウンド・シーンが誇る読書家たちをフィーチャーしたZINEが登場 (news)
  11. 追悼・蜷川幸雄(前編) (news)
  12. WxAxRxP POP-UP STORE ──〈Warp〉30周年を記念したポップアップ・ショップがオープン (news)
  13. interview with Akira Kobuchi Quiet Wave : 史上もっとも静かな革命 (interviews)
  14. Emily A. Sprague ──フロリストのエミリー・スプレーグによるアンビエント作が〈RVNG〉よりリイシュー (news)
  15. Columns なぜスコット・ウォーカーはリスペクトされているのか (columns)
  16. Stereolab ──ステレオラブが10年ぶりに再始動、過去タイトルも順次リイシュー (news)
  17. 魂のゆくえ - (review)
  18. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第5回 反誕生日会主義 (columns)
  19. Helado Negro - This Is How You Smile (review)
  20. interview with Chihei Hatakeyama 我がドローン道 (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Kajsa Lindgren - WOMB

Kajsa Lindgren

Avantgarde

Kajsa Lindgren

WOMB

Hyperdelic

Bandcamp 野田努   Aug 02,2018 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 W杯期間中、とうぜんJ1リーグはお休みで、その間それぞれのチームは休養したり、練習したりしていたわけだが、ぼくが応援している清水エスパルスというここ数年ぱっとしないチームは、18チームのなかでもっとも長い休暇を取っていた。長谷川健太が指揮を執るFC東京などほぼ休みナシで練習していたというのに、スウェーデン人のヤン・ヨンソンが監督を務める清水エスパルスは16日間も休んでいたし、練習再開後も休みが多いので、サポーターは「大丈夫かよ?」と不安視しているのだが、考えてみればスウェーデンは「短縮労働」の先進国だ。高度化した育児休暇制度をはじめ、「フレキシブル・ワーク」の一般化のみならず、1日6時間労働による生産性の向上という実験もはじめている。欧米では評価されているこうしたスウェーデン式だが、忙しくしていないと落ち着かないという日本社会ではまだまだ浮いてしまっているのが実情だろう。

 カイサ・リンドグレンはスウェーデンの作曲家/エレクトロニック・ミュージッシャンで、本作『ウーム(子宮)』は彼女のファースト・アルバムになる。自然、そして身体におけるフィールド・レコーディングの素材をさらに水中で再構成したという作品で、まったく独特の音響が生成されている。アンビエントともウェイトレスとも言いたくない、引き合いに出されているのはイーノとジョン・ハッセルの『Possible Musics(第四世界の鼓動)』だが、というのもこのアルバムは、まだ見たことのない(聴いたことのない)世界を表現したいという欲望による、ある種の異世界を描いているからだ。彼女は最終的には、無生物の世界さえも空想しているようだ。

 あるいはまた、フランスの実験派の女性アーティスト、フェリシア・アトキンソンと比較されるリンドグレンは、安易な音旅行には舵を取らず、音響の深海へと潜水しているかのようだ。水中ミキシングということで涼を求めるなんてとんでもないです。とはいえ、この音楽は耳障りなわけではないし、人を動揺させるものでもない。極めて静的な音楽だ。
 彼女はこのアルバムのリリースにあわせて、ストックホルムでは水中コンサートを開いたそうだが、なんかそれも生活のなかに気持ちの余裕のあるスウェーデンらしさがゆえの実験なのだろうか。こんな生産性のないことに夢中になれることが羨ましい。それにしても最近は、エレクトロニック・ミュージックにおいて、聴いて良かったので作者を調べてみたら女性だったということがじつに多い。

野田努