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Album Reviews

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米澤慎太朗   Dec 22,2017 UP
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 これまで、ハウイー・リー(Howie Lee)やスウィムフル(Swimful)のほか、ツーシン (Tzusing)のリミックスなど、アジアの個性的なエレクトロニック・アーティストをリリースしてきた中国・上海のレーベル〈サブカルト(SVBKVLT)〉。その〈サブカルト〉から、東京のプロデューサー・プリティボーイによるEP「ジェネティクス(Genetics)」がリリースされた。長年UKガラージのDJとして東京を拠点に活動し、レギュラー開催されているダブステップ・パーティ《バック・トゥ・チル》にも出演してきた彼は、昨年フランスのレーベル、〈ポーラー(POLAAR)〉からデビュー、〈サブカルト〉からはEP「ソリスティス」をリリースし、リリースに合わせて上海・深圳を巡る中国ツアーを成功させた。

 ポリフォニックなシンセベースで壮大に幕をあける“ヒグス”は、生な質感のドラムとクリック音のようなパーカッションの組み合わせ、グリッチの掛かったディレイなど、アイディアに溢れた1曲だ。続く“シャドウ・リディム”は、彼のアイコニックな幻影的なシンセに、サンプリング・ヴォイスの組み合わせがトライバルなタッチを加えている。ドロップで差し込まれる低いベースには、ダブステップが発展させてきたローエンドの音響的な進化が表れている。先行トラックとして公開された“ジェネティック・ダンス”は、印象的な木琴のような音色と日本的な可愛らしさを感じさせるメロディ、そしてグライムで使われるようなスクエアベースと有機的に絡んでいく珠玉の1曲。メロディがグラデーションのように少しずつ様相を変えながら、反復していくということが、本作のテーマである「遺伝子」のイメージと重なる。パーカッションとキックにアルペジオを効かせた、“フットステップ・フライング”は、キックの連打とピアノ系のシンセでトランシーな一面を覗かせている。“アウトロ・ハロー”は、クラシックな2ステップ・グライムのリズムを、生音のドラムでアレンジした1曲。ひとつの音色にエフェクトを効かせる展開やピアノのリフに、乾いたポップさがあり素晴らしい。リミックスに収録されているのは、〈フェイド・トゥ・マインド(Fade to Mind)〉所属のアメリカのプロデューサー、マサコーラマン(Massacooramaan)による“シャドウ・リディム”のリミックス。原曲の鳥の鳴き声のようなサンプルを残しながら、削ぎ落としてシンプルに、そしてより鋭くソリッドに再構築している。

 ワン・ニューワン(*)が手がけたアートワークもプリティボーイの音にぴったりだ。ピアノ・シンセのまばゆい音色使いは、カラフルで美しく、幻影的な彼のアートと重なる。写っているのは、奇妙な色のヒゲが生えたミュータント化した大根のようだ。「大根」というアジアらしいモチーフに、遺伝子改良され、奇妙に接合されたような物体。同じ比喩を使えば、グライムやガラージ・ミュージックの枠に、自らのメロディックで自由な感性を接合し、ダンス・ミュージックを新たなレベルで拡張している。

(*) ワン・ニューワンのユニークなアートはTumblrからもチェックできる。
Wang Newone Tumblr - https://wangnewone.tumblr.com/

米澤慎太朗