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interview with Kikagaku Moyo

interview with Kikagaku Moyo

無国籍ロウファイ・サイケデリア

──幾何学模様、インタヴュー

取材:松村正人    May 20,2022 UP

島ということを再度考えてみると、アイソレイトされていて独自の文化があり、島民に通じる言葉があるけど島から出ると通じなくなっちゃったりするようなおもしろさがあると思ったんですね。ことにこの5~6年、日本のことをすごく考えるようになっていたのもあります。あたりまえだったことがじつは特殊なことなんだと気づくことも多かった。

前置きが長くなりましたが、新作『Kumoyo Island』は日本語にすると「クモヨ島」だと思いますが、「くもよじま」と読むんですか、それとも「くもよとう」?

Go:「くもよとう」です。

「クモヨ島」とは日本という島国の暗喩ですか?

Go:僕らはいままでも場所をけっこう提示してきたんですね。「Temples(寺院群)」「Garden(庭)」「Forest(森)」「House(家)」などです。それらの場所は現実には存在しませんが、聴いたひとに情景を思い浮かべつつ聴いてほしいという気持ちがあったんです。今回もアルバムのタイトルを決めようとしたとき、場所がいいなと思っていました。そのタイミングで、今年でバンドを止めることになり、「Kumoyo Island」というタイトルが決まったのはその後です。収録曲にも海っぽいイメージ、青っぽいイメージがあったので、もしかしたらこれは島なのかな、島っぽいなという気がしたんです。それでよく考えると、日本って島じゃんって(笑)。当たり前ですが、島ということを再度考えてみると、アイソレイトされていて独自の文化があり、島民に通じる言葉があるけど島から出ると通じなくなっちゃったりするようなおもしろさがあると思ったんですね。ことにこの5~6年、日本のことをすごく考えるようになっていたのもあります。(住んでいたときは)あたりまえだったことがじつは特殊なことなんだと気づくことも多かったので。もしかしたらそれはものすごく未来的なことなのかもしれないし、すごく古い体制かもしれなくて、それらは紙一重のかもしれないと考えたことがあったんです。今回のアルバムでは島から出て、島の外でワーッとやっていた僕らがまた島に帰って曲をつくった。自分たちの(旅の)ループがそこで最後クローズするなというイメージがありました。

「Kumoyo」というのはどういう意味なんですか。

Go:それは「きかが/くもよう」の「くもよう」なんです。いまちょうど着ているんですけど(といって上着の前をはだけると自分たちのバンドTを中に着込んでいる)こういうマーチャンダイズがあってグラフィックのなかでバンド名が「KIKAGA – KUMOYO」と区切ってあるんですよ。このマーチは去年つくったものですが、日本語で「きかが/くもよう」とわけて考えることはあまりないと思うんですけど、それがアルファベットになって「KIKAGA – KUMOYO」とわかれてきたときに、アルバム・タイトルにループ(回帰)するという意味合いをこめたのと同じように「KUMOYO」というバンド名がループしているのもおもしろいと思ったんですね。

「Moyo Island」だったらわかりやすいけど、「Kumoyo Island」だとわからなくなりますね。

Go:その不自然感が言葉の響きとして新しかったしバンドのお尻の部分だし、ということでつけました。

最後は日本で仕上げたんですよね。停滞気味だった2020年夏からお尻に火がついてきた?

Go:ヤバいなって。

日本に戻ってレコーディングしていたのはいつですか?

Go:2020年の11月から2021年の1月くらいまでです。

曲ができてから戻ってきたんですか?

Go:その時点で曲づくりをはじめました。さっきいったように、曲づくりができなくなっちゃって、なんでできないんだと考えたときに、みんなでスタジオに毎日入るからできないんだと結論づけたんです。スタジオに毎日入ると練習みたいになっちゃうんです。曲をつくるのと練習は違うじゃないですか。

そうですね。

Go:アイデアを発展させていくのもみんなそれぞれ違ったスペースが必要だし、各人のキャパシティもいろいろですからその場で思いつくひともいれば、家に帰って何回も聴いて1フレーズ出てくるひともいる。日本に住んでいたときは週1、週2のペースでスタジオに入ってのこりの日で消化することができたんですけど、毎日入っちゃうとそれもないから、うちらが東京に帰ってきて1ヶ月半時間をとって週1ペースでスタジオに入るサイクルでつくればできるんじゃないかと思って帰国しました。東京では初期のころから入っていた浅草橋のツバメスタジオのすぐそばにAirbnbで部屋とって、夜の12時以降と平日の使ってない時間帯を自由に使わせてもわらってデモをつくっている感覚で曲作りしていたら、デモがデモじゃなくなっちゃったんですよ。

スタジオで録っているからね(笑)。

Go:(笑)デモって家でつくるからリズムマシン使ったりギターをラインで録ってショボくなっちゃったりするけど、レコーディング・スタジオだとそんなこともなく、ああこれでできるかなと思い、やっちゃっいました。

じっさいそれで曲になったんですか。

Go:ならなかったんですが、プロセスが楽しかった。メンバーがちょっと顔出して音入れさせてよ、みたいな、そのプロセスが楽しかったからそれでいいんじゃないか、これが楽しかったんだからこれ以上のものはできないんじゃないかと(笑)。いいとかわるいとかではなく、楽しければいいという原点に戻って、これでよいのではないかということですね。

それでいろんな音が入っているんですね。

Go:いままではライヴでやっていた曲をスタジオで録ってオーヴァーダブすることが多かったんですが、今回にかんしては宅録にちかいというか、コロナというのがあってライヴが想像できなかったのもあって再現できなくても関係ないやという感じでした。

「世界に出よう」と考えたときに、白人の文化にたいして了承をもらうような流れをうちらの世代で変えていきたいとは思っています。海外に出るには英語をしゃべれなきゃいけない、歌詞も英語じゃないとわからない、ということではないと思うんですね。

曲の話に移ります。冒頭の「Monaka」はなかなかのキラーチューンですが、どのように誕生したのでしょう。

Go:Tomoは石川の加賀温泉の出身なんですね。

ええ。

Go:そこに民謡があるらしく、それがメインのインスピレーションなんですね。

途中のペンタトニックっぽいパートですか?

Go:それとコブシを思わせる部分ですね。それらをどうやってバンド・アレンジに発展させるかというのは、さっきいったようにスタジオでいろいろ試した結果です。歌詞の「もなかのなかなか」というのはTomoの適当さの真骨頂です。

あんまり説明になっていないけどね(笑)。

Go:なってないかもしれないですけど(笑)、Tomoの実家はお菓子屋なんです。

それで「もなか」なんですね。

Go:その影響下にあるんでしょうね。それがパッと出てきて、そこにいまで聴いてきたクラウトロックやサイケの要素が加わり、ああいうふうになったんですね。

アイデアをもちより固めていったらそうなったと。

Go:あれをやりながらみんなで適当にジャムしていくんですが、あんまりできることはないんですね。僕だったらふつうのビートかハンマービートか、変拍子でどうのこうのとかあまりできないですし、みんなもだいたいそうなんですね。いろんなことを思いついても技術的にできないので、ああいうかたちにおちつきました。

変拍子できないとおっしゃいますけど『Forest Of Lost Children』の “Smoke And Mirrors” なんかは変拍子ですよね。5、5、5、6だから。

Go:あれは変拍子と知らずにやっていました(笑)。たまに6拍子になったらいいんじゃない、くらいな感じです(笑)。

そういうことをやっていたから冒頭にプログレっぽくならないよう気をつけたというのがちょっと意外な気がしたんですよね。

Go:意図するのと自然にそうなるのとの違いですよね。

ロジックではなく感覚、フィーリングですね。

Go:そうです。

できることがあまりないということですが “Monaka” でもイントロや途中のパートでも、場面の転換のさせ方に意外性があってよく練られているなと思いますが。

Go:フリー・ジャズなんかのスピリチュアルな感じってあるじゃないですか。あの曲はそういった感じのイントロをクラウトロックにつなげた感じです。いろんな楽器がウワーッて鳴っていたのが、リフがはじまるとキュッとひきしまるというか、開いたり閉じたりというか、緩急といいますか、そういうのが曲のなかであると飽きないと思うんですね。ミニマルな音楽ってつくるのは簡単そうですが、グルーヴがちゃんととれていないと気持ち悪いと思うんです。僕はクリックでは叩けないですしジャストなリズムからはブレているんですが、だったらブレても大丈夫なように展開をつけるといいますか、展開があればごまかされるというのは語弊がありますが、聴いている方も飽きないと思うんですよね。

視界が変わりますからね。

Go:そうですね。

でもそれが幾何学模様の特徴になっていると思うんですね。サンプリング的な折衷感といいますか、いろんな要素がカットインしてくる意外性があってワンコードのセッションで即興をまわしていくのとも違う特徴だと思います。

Go:ありがとうございます。

それが今回のアルバムではコクが出てきたと思いました。

Go:新しいことをやるという目標はあまりなくて、自分たちが楽しければいいと思っているんですよ。うちらはツアーをやるにしても、アルバム・ツアー名目でアルバムからの曲を中心にセットリストをつくることはあまりないんですね。ツアーでも毎回セットも違うから、いままでのセットリストに1~2曲、できれば3曲新しい曲が加わればいいね、くらいのノリなんです。となると “Monaka” と “Dancing Blue” と “Yayoi Iyayoi” の3曲がライヴでできれば、あとはなんでもいいやというのはありました。逆にいうとそこで遊べるということでもあります。

いまあげられた3曲はアルバムでもカギになる3曲ですね。

Go:この3曲にかんしてはライヴを想像していたところはありました。いまはそれを練習しているところです。自分たちの音源を聴いて「これどうやんだっけ!?」「できんの!?」って(笑)。

取材:松村正人(2022年5月20日)

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