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interview with Jouska

interview with Jouska

ノルウェーはとくにラッキーな国だと思う。僕たちほとんどの国民が政府を信じているし

──北欧ドリーム・ポップ新世代、ヨウスカを紹介する

序文・質問:野田努    通訳・質問:水嶋健人   Jul 14,2021 UP

日本やアメリカと比べるとここでは生計を立てるための機会がみんなに与えられていると思う。仕事を失ってもここでは大きな問題ではなくて、政府が新しい仕事を見つけるサポートをしてくれるんだ。

『Everything Is Good』は音はもちろん、コンセプトも素晴らしい1枚でした。まずあのジャケットが目を引くと思うのですが、あのジャケットを作る上での戦略や目的はあったのでしょうか?

H:僕たちは大惨事のようなシチュエーションを描きたかった。そもそもウェディングドレスを中古ショップで見つけて、それを持ってビーチに行ったんだ。ウェディングドレスといえば “ロマンチック”や“幸せ”のようなポジティヴな感情を象徴するモノだと思うんだけど、それを身につけながら悲しみや憂鬱のようなモノを表現したかったんだ。

“Everything Is Good”というタイトルなのに楽曲がメランコリックなのと同じだね。

H:そういうことだね。

M:ドレス全体は見えないけどね。

マリットは撮影日について覚えていることはある?

M:私たちは一日中海にいたんだけど、とにかく寒い日だったのよね(笑)。身体についた砂を設立されているシャワーで洗い流したんだけど、とにかく水が氷水みたいで。もう本当に最低だったの。もしかしたらそのムードがその写真にも現れてるのかもね(笑)。

そもそもオスロにビーチがあるのを知らなかったよ。

H:ノルウェーのビーチはLAのようなビーチではないけどね。砂浜は狭いし、だいたい寒いよ(笑)。

撮影はいつだったんですか? まさか冬じゃないよね?

M:もし冬に撮影していたら私たちはいまここにいないわ(笑)。去年の春くらいね。

どっちにしてもビーチに行くには早すぎるね(笑)。

H:ノルウェーにはビーチに行くベストタイミングが7〜8月しかないからね(笑)。ちなみに日本のどこに住んでるの?

神奈川というところに住んでるよ。電車で30分くらいで東京にいけるところ。よくこの質問されるのだけど、住んでるところを説明するときは、もしNYが東京だったら、NZに住んでるって説明するんだけどわかるかな?

H:NYとNZね。村上春樹の本を読んでるから東京近辺の街や駅の名前とか少しわかるよ。都会的でコンパクトな街のイメージがあるね。

東京の満員電車は想像できる?

H:できるよ。昔やってたバンドのMVでフィルム班が東京に撮影しに行ったことがあったんだけど、そのとき彼らは小さな電車にたくさんの人が乗っている映像を撮ってきてね。しかも他の人を無理やり電車に押し込んでいるんだ。

M:OMG

だね。最悪だよ。アルバムの話に戻るけど、『Everything Is Good』の制作に限って言うと、一番影響を受けた3組のアーティストを教えて下さい

M:グライムスは確実ね あとは……。

H:ノルウェーのスメーツも入るかな。

H:いままで触れてこなかったけど、テーム・インパラにもたくさん影響を受けているね。グライムス、スメーツ、テーム・インパラの3つのアーティストの間にいるようなサウンドを作りたかったんだ。テーム・インパラの大好きなところはダークな曲でもといかく音がとにかく心地良いところで、高揚させるような楽曲の中で同時に悲しみやダークさが味わえるのが好きなんだよね。

たしかにヨウスカのサウンドにも包まれるような心地良さがありますよね。

M:そこは意識したわね。水が流れるように自然に身を委ねられる心地良いサウンド作りをとくにシンセサイザーの音で意識したわ。

H:あとは「Euphoria」というドラマにも影響を受けたね。雰囲気やヴィジョンがとてもクールなんだ。チェックしてみて。

見てみるよ。 『Everything Is Good』というポジティヴなアルバム・タイトルですが、内容はもっとメランコリックでダークでエモーショナルですよね。何故こういったアイロニカルな表現をタイトルで使用したのでしょうか? まったく情報がなければサマーチューンが詰まったアルバムをイメージします(笑)。

H:大事なところだね。アルバムはダークでメランコリックなモノに仕上がったんだけど、アルバム内容をそのまま表現するようなタイトルはつけたくなかった。もっと面白くしたかったのさ。アルバムのタイトルを見てから聴いてもらえれば一瞬でそれがアイロニカルな表現だって気づいてもらえると思うし、ちょっとクスッとしてほしくてね。予想していたサウンドと別のものを届けたかったんだ。僕たちはペテン師ではないけど、サプライズが好きでね(笑)。

(笑)ヨウスカの音楽には哀しみが含まれていると思うのですが、その哀しみはどこから来た哀しみですか? 個人的な心配事や出来事、もしくは日々の生活の中で感じること? もしくはもっと外の世界で起きている社会問題とかからですか?

M:混ざっていると思う。もちろんパーソナルな経験から来ることもある。そしていまの私たちが置かれている状況とかからもね。例えばInstagramにいいね!とフォロワーを稼ぐために写真を上げるのは本当にストレスになるし、この状況にまだ慣れない。それでも残念なことにいまでは社会の大きな一部になってしまっているでしょ。そういった日々の小さなことから気持ちがダウナーになってそれが楽曲のムードにも反映されていると思う。

ときどき全部やめたくなるよね。

H:本当にね。それに僕たちは神経質だと思うんだよ。いろいろ考えてしまうし心配ごとも多い。でも自分たちの性格がこういう人間だって知ってからは感情を自分たちの音楽で表現したいと思ったよ。無理に明るい音楽を作るんじゃなくてね。悲しいかもしれないけど、同時に美しいかもしれないから。

感情を吐き出せる場所があるのは素晴らしいことだと思うよ。 ちなみにパーソナルなこと以外だとノルウェーのダークな部分から影響があったりするんでしょうか?

M:あるわよ。

例えばどんな? ノルウェーには行ったことがないので、多くの情報を知ってるわけではないけど、そんなアウトサイダーにはノルウェーはとても良い国に見えます。カレッジに無料で行けたり、医療システムも平等で整ってる。僕はアメリカが好きだけど、とても問題が多すぎて良い国とは言えないし、日本に良いイメージを見る人も多いけど、治安は良いけどじつは自殺者が多い国なんて良い国とは言えないよね。そういう意味でいうとノルウェーは外部者からしたらパーフェクトな国にも見えたりするんだけど、そうじゃないかもしれないよね。ノルウェーのダークなポイントはあったりするのでしょうか?

H:そうだね、まずたしかにノルウェーやスウェーデン、デンマークといった国は世界のなかでもとくにラッキーな国だと思うよ。国の決まりや政治においてね。小さい国だからまとめやすいというのも大きいと思う。例えば僕たちはほとんどの国民が政府を信じているし、世界的に見るとそれはユニークなことだと思う。例えばアメリカでは政府と国民の間には溝が空いていると思う。政治家と市民はまるで違う世界に住んでいるかのようにね。でもノルウェーでは誰もが誰かしら政治に関わっている人を知っているから、格差がなくて親近感を持ちやすいんだ。それは多くの人たちが持っている社会主義的な考え。ほんとうの意味での社会主義ではないのかもしれないけど、平等主義者というのかな。

平等主義者? 例えばどんなことから感じるの?

H:日本やアメリカと比べるとここでは生計を立てるための機会がみんなに与えられていると思う。仕事を失ってもここでは大きな問題ではなくて、政府が新しい仕事を見つけるサポートをしてくれるんだ。たぶんだけど、日本やアメリカでは一度仕事を失ったら、それは人生に大きく作用するような出来事になっていると思うし、自殺とかにも繋がってくると思うんだけど。

そうだよ。

H:日本はアメリカよりマシでしょ?

うーん、経済的な格差にしてはマシだと思う。アメリカにはホームレスが多すぎるしね。LAを離れてNYCに行ったときがあったんだけど、しばらくNYで生活してLAに戻ってきたら友だちがホームレスになってた。そういったことが普通に起きたりするんだ。彼はたった23歳だったのにね。ところでノルウェーのダークポイントは?

H:人びとがとても孤立しているんだ。自分自身の抱える問題や感情を人に話すのも苦手だし、新しい人たちと出会うのを恐れているところかな。なかには生まれてから死ぬまで同じ環境のなかで同じ人たちと過ごす人たちもいるよ。日本にも似ている部分があるよね?

そうだね。日本人はとくにシャイだから。でもノルウェー人もシャイなの? 僕には数人ノルウェー人の友だちがいるけど、彼らめっちゃ喋るから(笑)。逆に珍しいのかな?

H:そうだね。レアだよ。ノルウェー人はとてもシャイだと思う。

M:ノルウェー人は偏見が強いよね。

H:そうだね。ノルウェーの人は偏見が多いと思うし、すぐに他人をジャッジする傾向にあると思う。たしかに他の国よりも住みやすい国ではあるんだけど、それをわざわざランキングっぽい感じで表現していたりする。それは社会的にはよくないと僕は思うかな。

M:甘やかされて育った子供みたいにね。

M:気候も関係あると思う。冬なんてとにかく暗いし寒いんだけど、それらが人のムードとかにも直接関係していると思う。

H:ノルウェーより南から引っ越してきた人たちは、とにかく冬になると落ち込むよ。なんつったって、太陽が出ないからね。

M:真っ暗よ。

H:この気候はノルウェーの人たちのワガママな正確を生み出しているひとつだと思う。世界的には考えられないかもだけど、あの冬があるし、僕たちは毎年夏に長い夏休みを取る権利があると思ってるからね(笑)。

そろそろアルバムの話に戻りたいのですが、4曲目に収録されている“Pink”という曲にはDoglover95というアーティストがゲスト参加していますよね。彼はオスロのラッパーのようですが、元々繋がりがあったのでしょうか? 

H: うん、彼のことはもともと知っていたよ。彼がリリースしたアルバムが大好きだったんだ。

M:彼の音楽ではノルウェーのラッパーでは珍しい実験的なサウンドなんだよね。

H:ノルウェーのラッパーはだいたいキャッチーなモノを目指して作るんだけど、彼はもっといろんなモノを取り入れていてユニークな存在だよ。人としても最高なヤツだから一緒に仕事できて嬉しかったね。

M:プロデューサーとしても素晴らしいの。

アルバムを作ってるときに記憶に残ってることってあります?

M:フィレンツェに2週間行ったときがあって。

H:ダラシないノルウェー人だね(笑)。

M:アルバムの制作もスタートしてね。すべてが素晴らしい体験だったのよね。

H:建造物やムードとか街を歩いているだけで感じることがたくさんあったんだ。ダビンチとか偉大なアーティストがたくさん生まれた街だからね。滞在するだけで感じるモノがとにかく多かったんだよね。音楽を作るのには最適な場所だね。

ノルウェーからそんなに遠くない?

H:遠くないよ。飛行機で3時間くらいかな。

それは良いよね。ヨーロッパに住んでいると、いろんなところに気軽にいけるのがいいよね。

M:うん。文化や言葉が違う国に気軽にいけるのはアーティストにとって良いことだと思う。

アルバムのなかでとくにお気に入りの曲はある?

H:僕のお気に入りは冒頭の”Everything Is Good”だよ。個人的に一番ピュアな曲だと思うし、アルバムのムードを1曲で表現できた曲だと思うんだ。メランコリックな気持ちにもなるし、楽曲の最後のカオスなアレンジが好きだね。

M:私は“Beat Up You Baby”がお気に入りね。まずメロディが好きなの。脳内のなかをグルグル回ってる感じがするのよね。この曲は他のアーティストとは全然違うオリジナリティのある曲にとくに仕上がっていると思う。インディー・ギターとR&Bヴォーカルをミックスしたスタイルがとくにうまく表現できたかな。

アルバムのラスト・トラックである“”♰shadow♰は作中もっとも実験的な曲ですが、この曲のアイデアはどこから来たんですか?

H:(笑)Shadowだよ(猫をみせる)。

M:フィレンツェで作った曲だよね。

H:フィールド・レコーディングでイタリアの子どもたちが公園で遊んでいる様子を録音したんだけど、それをあらためて夜中に聴いているとメランコリックな気持ちにさせられてね。ただ、子どもたちが理解できない言語で喋っている要素が録音されているだけなのに、ノスタルジックが止まらなかったんだ。だからこのサンプルの上でヨウスカらしい即興シンセを乗せて、アルバムのラストアンセムにしたんだよ。

M:フィールド・レコーディングでとてもノスタルジックになって、私は子供の頃の感情を思い出したの。子供のときに飼っていたペットが死んじゃったこととかね。本当に残酷で辛かった。当時はその私が大切にしていたウサギが死んでしまったことを理解もできなかったの。この曲はそのウサギとShadowを重ねた曲だね。この子もいつか死んでしまう日が来るわけだし。

H:だから「shadow」の隣に♰がついているんだ。

M:あらためてお葬式をやっているかのようにね。

とても悲しい終わり方ですね。

H:だね。

オスロの音楽シーンについてもっと訊きたいのですが、先ほどスメーツやSassy 009というアーティストが話題になりましたが、個人的にはDas Bodyや Lokøyといったアーティストも好きで、こういったエレクトロ・ミュージックにR&Bが加わったスタイルの素晴らしいアーティストがオスロから続々と出てきているような気がするのですが、それに理由などはあると思いますか?

H:たしかにオスロではつねにどこかしらの若いアーティストのコミュニティーがいつも急激に成長をしている感じがあるよ。理由としては、まずアーティスト同士の距離が近くて影響与えあっていることかな。オスロという街は大都市に比べると規模が小さいから知り合いが音楽を作っていることも多くて、そういった知り合いがカッコいいものを作っていると自分も作りたくなる。そういった連鎖が生まれていると思う。コラボレーションとかもやりやすい環境だと思うしね。他にはライヴをプレイする場所もたくさんあるし、ノルウェー政府からサポートを受けられることもたくさんの若い子が音楽をやっていける余裕がある理由の大きいなひとつだと思う。

政府に支援されている?

H:そうなんだ。だから誰しもが弁護士や医者を目指す必要はないんだ。そういった財政的な支援があるから僕たちはメジャーなポップを作らなくても済んでいる。楽器を買ったり、アルバムを制作したりするのはお金がかかることだけど、僕たちアーティストはそういった音楽活動することで欠かせないことに関して財政的支援を受けられるんだ。

M:あと、目立ちたいってのもあると思うな。ノルウェーではだいたいがポップ、ヒップホップ、フォークみたいな音楽をやってる人が多いから、だから違うタイプの音楽を作ればシーンのなかで目立つしね。

H:ノルウェーの伝統的なポップ・ミュージックはだいたい年寄りのために作られてたりするから、僕たちの世代は自分たちが好きなものを好きなように作りたかったんだと思う。それは結果的にはノルウェーらしいモノではないけど、新しいモノではあると思うんだ。それで結果的にそういった思考を持ったアーティストはオスロに集結する。それ以外の街ではなかなか活動が難しいからね。

M:私たちは別々の街で育ったけど、どちらとも音楽をやってる人はいなかったね。本当にやりたいならオスロに引っ越してくるのが主流なのよ。小さい街にとって悲しいことかもだけどね。でもオスロに引っ越してきて、すれ違う人が全員カルチャーに対して興味を持っているような感じがあるわ。

他のジャンルのアーティストとも関わったりしますか?

H: うん、いろんなジャンルのアーティストと関わるよ。僕たちはプロデューサーとしても活動しているからね。とくにアコースティックな音楽や実験的なジャズ、更にはノイズミュージックのようにヨウスカよりも実験的なモノをやったりもする。自分たちのなかでリミットを立ててしまうとつまらなくなってしまうからね。そういったこともあって僕たちはいろんなアーティストと繋がりがあるよ。

InstagramでSafarioと一緒に仕事をしているとこを見たよ。

H:そうだね、最近彼と仕事をしているよ!

彼はもっとアメリカのベッドルーム・ラップっぽい感じだよね。他のアーティストとかもジャンルをまたいで仕事をしている人が多いの?

H:あんまり多くはないかな。だいたいの人たちは同じジャンルの人たちと一緒に仕事をしたり遊んだりしているからね。LokøyやSafarioのようになかにはジャンルを超えて色々やっているアーティストもいるよ。個人的には自分たちとまったく違うアーティストと仕事をすることは最高だと思っている。全然違う趣味のなかでお互いが好きなモノを見つけたら、それは大きな発見にもなって自分自身をアップデートすることにも繋がるからね。

クラブとかには遊びに行くの? 

M:行かないわね。

H:いまは行かないね

M:昔から行かなかったじゃない。オスロにはクールなクラブは多くないの。

H:オスロにはクールなクラブはあんまり多くないんだ。少しはあるけど、だいたいオスロのパーティ・カルチャーといえば、飲んで、酔っ払ったら外で休憩して、良い感じの人を見つけてセックスするみたいな感じだからね。ただここ10年間でいろいろ変わってきていると思う。最近レイヴ・パーティを主催する人が増えていて、そこではクールな音楽がいつも流れているんだ。街の中心にあるクラブだとせいぜい2〜3くらいしか良い場所があるかないかって感じかな。

なるほどね。クラブ・カルチャーは若い子には根付いていませんか?

H:クラブに行くのは高いんだよね。ノルウェーの人はだいたいお金をそこそこ持ってるけど、それ以上にアルコールが高いんだ。だから若い人がクラブで朝まで過ごすにはハードルが高くてね。半月の給料を一夜で溶かすようなモノだよ。

本当に? 普段から高いの? それともクラブ内でだけ?

H:どこ行っても高いけど、クラブはとくに高いね。アルコールのルールが厳しいんだ。

日本とは真逆だね。日本は他の国よりも安くアルコールをクラブで買えるよ。でも逆にドラックには超厳しいから海外のお客さんからはたまに文句言われてるよ(笑)。

H:ノルウェーもドラッグに対しては少し厳しいかな。でもいろいろ変わっていて、マリファナはたぶん合法になっていくと思う。

最後にオススメのオスロの新人アーティストを3組教えて下さい。

M: まずはJuni Habel(ユニ・ハベル)彼女はインディーフォークSSWね。最高なの。

H:少しジョニ・ミッチェルに似てるかな。メロウでチルなフォークでめちゃくちゃ最高だよ。

M:Niilasも最高ね。

H:彼はエレクトロ・プロデューサーだね。彼はずっとDJとして活動していたんだけど、最近自身のデビュー・アルバムをリリースしてね。それが最高なんだよ。クラブっぽさもあるんだけど、メランコリックな要素もあってね。彼は自身の音楽にサミー族の音楽やカルチャーをミックスしようと挑戦しているんだ。サミー族の話は聞いたことある?

ごめん知らないや。

H:彼らはノルウェーの先住民なんだ。ドイツやデンマークから人びとがノルウェーに移住してくる前からノルウェーの北の地域に住んでいた人たちで、まったく違うカルチャーのなか生活していた。アメリカのネイティヴ・アメリカンと同じ感じだね。Niilasはそういったサミーの伝統音楽とヨーロッパのテクノやUKのブレイクビーツをミックスしているんだ。

M:後はアンビエントもミックスされているわ。

なるほど。ノルウェー人にしか作れない音楽ってことだね。

M:うん、そのとおりだわ。

もう一組は誰でしょうか?

H:たくさんいるから選ぶのが難しいね。

M:Murmurかな。彼女は私と一緒にSassy 009のバンドメンバーをしているの。

H:Murmur はライヴがカッコいいんだよね。日本にも一緒に行きたいよ。

M:私は彼女の唄声が大好きなの。彼女の歌い方は少なくてもここでは他の人とは全然違うのよね。

H: 僕たちみたくノルウェーのアーティストはシャイだから囁くように歌ったり、メロウな感じで歌ったりすることが多いんだけど、彼女は身体の全体から声を出すように歌うんだ。

名前もカッコいいね。ヨウスカ、Murmur、Sassy 009でツアーをできたら最高だね。

M:そうだね! せっかくリリースもできたしいつか日本にも行きたいわ!

序文・質問:野田努(2021年7月14日)

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