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interview with Trickfinger (John Frusciante)

interview with Trickfinger (John Frusciante)

ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる

質問・文:木津毅    通訳:上田紋子 photo: Aura T-09   Jun 26,2020 UP

 バンドを脱退していた時期でさえ多くのひとにとって彼は「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下 RHCP)のジョン・フルシアンテ」だっただろうし、バンドの最高傑作との呼び声も高い『Californication』に豊かな叙情をもたらしたギタリストであっただろう。だからこそ、先日発表されたバンドへの復帰のニュースは古くからのファンを中心として熱狂的に受け止められたし、やはりスタジアム・バンドのメンバーとして再びギターを鳴らす彼の姿を見たいというのが人情だ。
 けれども彼のソロ活動をつぶさに追っていたリスナーは、フルシアンテが優れたエレクトロニック・ミュージックの作り手であることを知っている。過去のソロ作ではギター・ミュージックにエレクトロニックの要素を導入することもあったが、とくにトリックフィンガー名義を使ってからは、アシッド・ハウスやIDMのような純然たるエレクトロニック・ミュージックに集中している。彼の作るマシーン・ミュージックは新しいわけではないがとても端正で、そこからこぼれてくる叙情が何とも味わい深いものだ。

 トリックフィンガーとしては3年ぶりとなるアルバム『She Smiles Because She Presses The Button』も彼の長所がよく表れた作品だ。初期オウテカのようなIDMあり、途中ジャングルの要素が飛び出してくるトラックあり、メロディアスなアシッド・ハウスあり。そのどれもがとても丹念に作られていることが聴いているとわかる。リズム・パターンや細かい音の配置はこれまでよりも洗練されていて、それは本人が言うように絶え間ない努力がもたらしたものなのだろう。ギタリストとしてもエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーとしても、その過剰なほどストイックな姿勢が彼の個性を生み出してきた。
 それにしても、マシーンへのマニアックなこだわりや音楽に対する学究的な考察、エレクトロニック・ミュージックへの愛情(とくにオウテカへのとめどないリスペクト)などなど……を話し出すと止まらない、彼のチャーミングな音楽オタクぶりが発揮されるインタヴューとなった。本文にある通り、本作のあとには(本人曰く)ジャングル寄りのソロ・アルバムも用意されているそうなので、RHCP での活動のみならず、そちらも併せて楽しみにしたいところ。
 それでは1万字超え、エレキング独占インタヴューをお届けしよう。

ロックスター扱いされることへの反動ではなくて、僕は頭のなかでも創作活動でも自由でいたいから、自分が関心あることを追求したいんだ。2007年の時点ではエンジニアでありたいって強く思ったし、自分で音楽を作りたかったし、ロックばかりを作り続けたくなかった。

2000年代なかばにエレクトロニック・ミュージックの制作を本格的にスタートされたと思うのですが、当時はバンドのステージでロックスター扱いされることへの反動もあったのでしょうか?

ジョン:長い間エレクトロニック・ミュージックを愛していて、時期としてはレッド・ホット・チリ・ペッパーズで『Californication』を書き出したころからいちばん好きで聴いていた音楽はエレクトロニック・ミュージックだった。サンプル、ドラムマシーン、シンセサイザーらに魅了され、いろいろと遊んでみたりしたけど、2007年ごろに80年代初期の機材を発見して、しっくりきたというか自分に合っているものを見つけた。303、909、707とかね。そこから一度にいろいろな機材を一度にミキサーを通して録音できることを知って、そこからカセットテープの録音機やCDへ焼くこともできて……音楽をオーヴァー・ダブせずに作れることを知った。僕は4トラックでオーヴァー・ダブすることに慣れていたから、一度に1曲を丸ごとステレオで作れて、オーヴァー・ダブせずに作っている音楽がステレオから流れてきたことにすごく興奮したのを覚えている。ここでやっと自分が愛聴していたモノへの理解ができたよ。だからそれがトリックフィンガーの始まりといってもいいかな。
 今回のアルバムは2018年にレコーディングされて、前作とは同じやり方でまったく同じ機材ではないといえ、同じようなCDバーナーだし、小さな Mackie のミキサーで同期した。音楽性は前作とは違うし、もっと機材を使っていた。今回のアルバムは、4つ以下かな。最後の曲 “Sea YX6” は、ドラムマシーン RY30 でしか使っていないし、シンセサイザー DX100 だけを使っている。だからこの曲では、これが最小数かな。ほかの曲では、平均的に3つ、4つ以上の機材は使っている。これらの Elektron Monomachine、Analog Four、Analog Rhythm らはとてもパワフルなんだ。だから YAMAHA RY30 ドラムマシーン、Analog Four ドラムマシーンを使った。あ! 1曲だけ ROLAND606 ドラムマシーン機材を使っている。“Plane” でね。いろいろな方法でエレクトロニック・ミュージックを作ってきたよ。でもライヴでこうやって作るのは、すごく楽しい方法だったよ。課題は、数少ない機材から最大限のものを作り出すことだけど、その挑戦すら楽しめたよ。最後の曲で1つのドラムマシーンから1曲を完成させることは、とても満足したし、いろいろとやりながら学べたし、あの機材がどれだけ有能かもわかったよ。
 だからバンドのロックスター扱いされることへの反動ではなくて、僕は頭のなかでも創作活動でも自由でいたいから、自分が関心あることを追求したいんだ。2007年の時点では自分自身がエンジニアでありたいって強く思ったし、自分で音楽を作りたかったし、ロックばかりを作り続けたくなかったし、それらをやったことでこの音楽を作ることへたどり着いたんだ。

エレクトロニック・ミュージックを制作し始めたころを振り返って、あなたはエレクトロニック・ミュージックを「学んでいた」と表現していました。いまもエレクトロニック・ミュージックを「学んでいる」という感覚ですか? それとももう少し別のものに変化しましたでしょうか。

ジョン:エレクトロニック・ミュージックに限らず、音楽全般に対して僕は「学ぶ」姿勢でいるんだよね。RHCP で制作してきた音楽もだけど、愛聴していたレコードやCDを聴きながらいっしょにギターを弾くんだ。60年代、70年代で他のミュージシャンがやってきたことを暗譜するんだよ。これをやることによって、曲をかいて、自分がどんなスタイルの音楽を作りたいかわかる。だから僕にとっては、ほかのひとが過去にやったことを知ることで自分への成長にもつながるし、音楽を作ることと学ぶことはイコールだと思う。
 だからエレクトロニック・ミュージックも同じで、ヴェネチアン・スネアズといっしょに音楽をやったことで良いことを学んだし、この過去12年間はリリースしていない音楽をたくさん作ることができた。彼といっしょに仕事することで学ぶことがたくさんあった。たくさん曲を作って、ライヴからそのままステレオでレコーディングして、ふたりで同時に多数の機材を使って、自分たちでミックスもして。そのやり方でたくさん学んだ。あと、いつもエレクトロニック・ミュージックの歴史に着目しているのはいちばん気になる音楽だし、ほかのひとの作品を聴くことでどうやって作っていいか発見があるからなんだ。真似から始まって最終的には僕っぽいと言われる音楽になると思うけど。ほかのひとがやってきたことをなぞることで、もっと高いところへいけるんじゃないかって思う。なんかすごく性格もよくて、ひとから好かれていて、楽器を弾きだしたらそこから人間性が表現されるひとっているよね。みんなはそういうひとに引きこまれるよね。僕はそういうタイプじゃないんだよ。僕は本当に努力を積み重ねないとダメだし、クリエイティヴな部分を頭のなかで活性化させて、柔軟性をもって、頭の回転も早くしないとダメなんだ。いつも何かにインスパイアされてないとダメなんだ。十代のとき、僕の友だちのなかで全然練習してなくても素晴らしいものをすぐにできちゃうタイプのひとがいて、僕も真似しようと思ったけど難しかった(笑)。だから早い段階で僕はひとに気にいってもらえるような音楽を作るためには、何倍も努力をしなくてはならないということに気づけたよ。ひとに好かれようが好かれまいが、僕はとにかく頑張らなくてはいけないんだ。

あなたにとって、トリックフィンガーの楽曲はあなたのパーソナリティをどの程度反映したものだと感じますか?

ジョン:僕のパーソナリティそのものが反映されているよ! さっきも言ったようにまずは、ほかのひとがやっていることを聴いたりすることから始まる。このアルバムで言ったら “Noice” では、ドラムンベースのプロデューサーAMIT (エイミット)からのインスパイアだった。彼は、半分ドラムンベースでやるんだけど。そのアイデアを気に入って、R-130 だけでやってみたんだ。あと、ほかにふたつ機材を使って。あのリズムは彼からインスパイアされたものなんだ。“Sea YX6” は、オウテカが作ったEPで RY30 だけを使ったものがあって、彼らのインタヴューでひとつの機材だけを使うことに対する価値観とかも読んだ。そのアイデアにインスパイアされた。“Brise” は、Elektron の Analog Four や Analog Rhythm を使った。これらは、ジェネレイティヴな音楽をシンプルに作れて、楽しいやり方だと思う。機材にプログラミングして、それらが機材から出てきて、次はどんなものが出てくるかわからないからワクワクする。メロディは毎回リズムとともに変わるし、ドラムやメロディは、この “Brise” ではジェネレイティヴ。“Plane” のメロディもジェネレイティヴで、“Amb” は、メロディとベースラインはジェネレイティヴだし、“Rhyme Four” は特有のメロディがある。だから時と場合によってランダムなものが出てくる。とくに “Plane” と “Brise”。ジェネレイティヴな音楽は、マーク・フェルにとくに影響されている。“Brise”は彼や彼がいたグループの SND でやっていたことに感化されたよ。サウンドを聴いていると機材へ命令するのではなく、機材とコミュニケーションを取っている感じがするんだ。それでそこから出てくる結果に驚いたりするんだよね。そういった過程が楽しいよ。
 だから全部僕っぽいと思うよ! メロディ、リズムのセンスは全部僕らしいと思うし。ここで使っている言語──あらゆる機材の使い方やプログラミングは、確実にほかのひとたちからの影響を受けているね。ギターを演奏しているときも同じだよ。僕のギターは、僕っぽいんだけれど、僕自身はだれかを真似しようとしているんだ。

コンピューターに制限のプログラミングをすることによって、ジェネレイティヴ音楽が生まれている。だからジェネレイティヴ・ミュージックとAI音楽の区別がつかないな。コンピューターは結局人間がプログラミングしなきゃならないし。

今回の『She Smiles Because She Presses The Button』はいつごろ制作した楽曲を収録しているのでしょうか?

ジョン:2018年にレコーディングしたね。収録した楽曲たちの経緯は不思議な形で出てきたんだよね。できるだけ簡潔に答えられるようにするね。
 数年、音楽をあまり作らない時期があったんだ。2015年ごろかな。自分のメインとしている家に住んでなくて、違うところに住んでいたんだよね。それでメインにしている家に帰ってからスタジオを立ち上げて、いままでやったことのないやり方で音楽へアプローチしはじめたんだ。出来が悪くても気にしなかった。結果が良くなくても気にしないことにした。何かをやり遂げたかなんかどうでもよかった。僕自身が高いところまでチャレンジしてさえいればよかったんだ。そうやって持っている機材でやったことのないことにトライしたことで、新たな発見もあったんだ。音楽を作っていくことでいちばん大切なことに着目していたし、曲の完成とかアルバムを完成することが目標ではないなか、一年間それを続けたんだ。だから今作と9月に出るものは、一年間丸ごと曲作りに時間を費やせた結果なんだ。ゴミみたいなものをたくさん生産したけど、そこからたくさんのことを学んだよ。前はFMシンセも DX7、DX100 の使い方すらわからなかった。だからその時期に使い方を覚えた。Analog Four や Analog Rhythm の使いこなし方も努力した。やれるだけの実験をこの機材らで試したよ。あんなひどい音楽を作って我慢できたのが不思議で仕方がないよ(笑)。でも本当にいい結果を願い続ける自分に疲れたんだ。オーヴァー・ダブもやらなかったよ、スタジオでもリビングでも。僕は一度もコンピューターからドラムマシーンをプログラミングしたことがないんだ。ドラムマシーン自体からやるから。とにかく自分の首をしめることをやめたんだ。最終的に自分が聴きたい音楽が生まれたらいいって決心したんだ。でもその怠けてた時期があったからこそ、「こんなのやってられない。ちゃんと始まり、中間、終わりという点を考えて曲を作ろう」って考えたんだ。そのときに今作の曲や9月にリリースされるものが出てきたんだよ。

先にリリースされたEP「Look Down, See Us」と今回のアルバムはどのような関係にあるのでしょうか?

ジョン:「Look Down, See Us」は、リリースされる数か月前に作られたんだよね。だから僕にとっての最新の音楽はあのアルバムに入っている。あれは僕の大きなスタジオで制作されたんだ。もっとギアもあるし、コンピューターもあったりで。だからあれは、今年の9月に出るアルバムとは違うことをやったものなんだ。あのジャングルにこだわった一年があったからこそ、2019年は違うアプローチで柔軟性をもって、自分へ課題を与えるようにしたんだ。楽して、ただ同じパターンを続けないようにね。「Look Down, See Us」は、僕がいろいろな場所へ行ってから新たな場所へ行こうとしたものかな。

アルバムのリリース元となる〈Acid Test〉は 303 へのこだわりがあるユニークなレーベルですが、〈Acid Test〉、あるいはそのサブレーベルの〈Avenue66〉からアルバムをリリースすることは、どのような意味を持ちますか?

ジョン:〈Acid Test〉はそうだね。303 へのこだわりのあるレーベルだから、303 を使用している音楽しかリリースしないんだよね。今回は 303 を使用していないんだよ。だからこそ〈Avenue66〉に上手くハマったんだ。

アルバム・タイトルはエレクトロニック・ミュージックを作ることの純粋な喜びが表現されているように感じたのですが、一人称が「She」なのはなぜですか?

ジョン:僕自身、ボタンを押して音楽を作ることが好きだからね。でも正直に話すと僕の彼女 Aura-TO9 (アーティスト名)のパソコンのログイン画面に彼女の写真が出てくるんだ。それは彼女自身の写真で、彼女が笑顔でカメラのシャッターを押そうとしている姿の写真が出てくるんだ。だから僕が、彼女はボタンを押すことによって笑顔になるって言ったら、彼女が「それは素敵なアルバムのタイトルになるね」って言った流れからなんだよ(笑)。

1曲目の “Amp” からそうですが、あなたの楽曲はとてもメロディックだと感じます。エレクトロニック・ミュージックにおけるメロディの要素をどのように捉えていますか?

ジョン:ポップ・ミュージックでメロディを作るのとは違うものだよね。ロックでもね。ポップでもロックでも、(メロディは)音楽の要素のなかでいちばんメインであってその他はメロディに合わせる形だけど、エレクトロニック・ミュージックでは、ドラムがリードしていて、メロディがドラムに合わせるし、たとえドラムがシンプルでも僕にはそう聴こえる。だからじょじょにやっていくうちに繊細なメロディを生み出さなければならなくなった。エレクトロニック・ミュージックを始めたとき、サビばっかり出てきたんだ。MPC3000 とかでプログラミングしようとしていて、途中でサビみたいなところが出てきちゃって、頭を悩ませたよ。そういう書き方に慣れていたからなんだろうけど。だからもっとリズミカルで繊細なメロディが書けるように勉強したんだ。あとは、いろんな方法でメロディへアプローチするやり方を考えたんだ。ポップではキャッチーなメロディを作ることを目指すけど、エレクトロニック・ミュージックでメロディはいろいろな役割を果たせる。メロディは、半分効果音、半分メロディでいられるし、音符であったと思ったら次から聞こえる音は、音符というより効果音みたいな。それかハーモニーであったり、一音ではなくどんな音でもいいんだ。そこから音とサウンドのコンセプトのなじませ方というのが分かっていくんだ。スムーズな物語のように。だからこれらにはすごく時間をかけたし、発展していったものと言えるかな。
 アーロン・ファンクと僕が普段音楽を作るときは、僕がドラム、メロディを担当して、じょじょに僕はメロディ担当、彼はドラム担当になり、たまにベースを僕がやったり、彼がやったり……。それでたまにメロディ自体ドラムみたいに聴こえたものを僕が作ったり、彼が小さなドラムマシーンでメロディを作ったり……いろいろ。でも僕にとって彼は世界のなかでも好きなドラマーで、だから彼のドラムをサポートするためのメロディを考えたりもした。それが大きな影響を与えたとも言える。こういうやり取りを誰かとやったことはなかったからね。RHCP にいるときもドラムはメロディに沿って作られているし、ギターもそうだし、ベースもだし。だからリードを取るドラマーがいて、僕はメロディだけど、そのドラムをサポートすることによってメロディの要素に対する捉え方が変わったね。メロディを生産することやメロディを機材で作っているときにサウンドに対して焦点を当てているから、メロディはどちらかというとそのサウンドに向けて存在している、サウンドを強調させる要素だと思う。だからデジタル機材で音を作ることにすごく時間をかけるんだ。そこからそのサウンドに合った一音を見つけるんだ。CだからとかDだからとかEだからとかではなくて。いいサウンドを仕上げて、そこにあった一音を見つけなかったら台無しになるからね。ギターの演奏とは全然違うことだね。

質問・文:木津毅(2020年6月26日)

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Profile

木津 毅木津 毅/Tsuyoshi Kizu
ライター。1984年大阪生まれ。2011年web版ele-kingで執筆活動を始め、以降、各メディアに音楽、映画、ゲイ・カルチャーを中心に寄稿している。著書に『ニュー・ダッド あたらしい時代のあたらしいおっさん』(筑摩書房)、編書に田亀源五郎『ゲイ・カルチャーの未来へ』(ele-king books)がある。

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