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dialogue: suppa micro pamchopp × Captain Mirai

dialogue: suppa micro pamchopp × Captain Mirai

偏見をぶっ飛ばせ!

──対談:スッパマイクロパンチョップ × キャプテンミライ

取材・文:小林拓音    Mar 29,2018 UP

Various Artists
合成音声ONGAKUの世界

Pヴァイン

ElectronicPopVocaloid

Amazon Tower HMV iTunes

 ボーカロイドやその他の音声合成ソフトを用いて作られた音楽はいまその幅を大きく広げ、アンダーグラウンド・シーンも成熟へと向かっている(そのあたりの流れは『別冊ele-king 初音ミク10周年』『ボーカロイド音楽の世界 2017』を参照のこと)。そんな折、『合成音声ONGAKUの世界』なるタイトルのコンピレイションがリリースされた。帯には、まるでそれが正題であるかのように、「ボカロへの偏見が消えるCD」と記されている。監修を務めたのはスッパマイクロパンチョップ。1998年に竹村延和の〈Childisc〉からデビューを果たした彼は、最近になってボーカロイド音楽の持つ魅力に気がついたそうで、それまでの自分のように偏見を持った人たちに少しでも興味を持ってもらおうと、精力的に活動を続けている。今回のコンピもその活動の成果のひとつと言っていいだろう。じっさい、ここに収められているのはシンプルに良質なポップ・ミュージックばかりで、もしあなたがなんとなくのイメージで避けているのであれば、それはほんとうにもったいないことだ。そんなわけで、監修者のスッパマイクロパンチョップと、同コンピにも参加している古参のクリエイター、キャプテンミライのふたりに、このコンピの魅力について語り合ってもらった。あなたにとってこれがボーカロイド音楽に触れる良い機会とならんことを。

※ちなみに、スッパマイクロパンチョップのブログでは、今回の収録曲から連想される非ボーカロイド音楽のさまざまな曲が紹介されており、ロバート・ワイアットやエルメート・パスコアール、ダーティ・プロジェクターズやディアンジェロなど、興味深い名前が並んでいる。そちらも合わせてチェック。


たまたま耳に入った曲が自分の好きな感触じゃなかったら、そのイメージしか残らなくて、それ以外が想像できないという状況だと思うんですよね。 (スッパマイクロパンチョップ)

対バンした相手と表面上は仲良く話していても、心の底では「なんだあいつ」みたいに思っていたり(笑)。〔……〕ボーカロイドを始めてみたらみんなすごく開けていたんで、それもすごく驚きましたね。 (キャプテンミライ)

スッパさんがボカロの音楽を聴くようになったのはわりと最近のことなんですよね?

スッパマイクロパンチョップ(以下、S):そうですね。ボカロの音楽を聴き始めたのは去年の8月末からなんです。初音ミク10周年のタイミングですね。それまではあまり興味がなかった。でも、Twitterでたまたま流れてきたyeahyoutooさんとPuhyunecoさんのふたりの曲を聴いてとても感動したんですよ。それ以来ニコニコ動画でアーカイヴを掘りまくっていますね。そこから自分でも曲を作り始めるようになって、10月にはもうボカロに関するトークイベントをヒッキーPと始めていましたね。

キャプテンミライ(以下、C):最近スッパさんという方がボーカロイドに熱中しているという噂は僕も聞いていて、ちょっと前からTwitterとかでスッパさんの発言を拝見しているんですが、ようはその2曲がボーカロイド音楽を聴き始めるきっかけになったわけですよね。

S:そうですね。

C:僕も似たような感じで、ボーカロイドを始めるきっかけになった曲があるんですけど、やっぱりそれって、ボカロ云々を抜きにして音楽として良かったっていうことで、ようはすごくかっこいい曲に出会ったということですよね。

S:ですね。キャプミラさんの出会いの曲はなんだったんですか?

C:すんzりヴぇrP(sunzriver)という人の曲ですね。僕はもともとバンド畑の人間で、「ライヴハウスだ、バンドだ、ギターだ」みたいな世界でやっていたんですが、じつはその頃からすんzりヴぇrとは知り合いだったんですよ。彼は最近何をやっているんだろうと思って調べてみたらいつの間にかボーカロイドを始めていて。もちろん僕もボーカロイドの存在は知っていたんですが、なんとなくの見た目のイメージくらいしかなかったんですね。でも彼の楽曲を聴いてみたら、彼がそれまでやっていたものとぜんぜん変わらない、むしろボーカロイドによって魅力が増しているかもしれないと感じたんです。これはおもしろいなと思って、自分でもやってみることにしたという流れですね。

S:それは2008年ですか?

C:2008年ですね。

けっこう初期ですよね。

C:そうです。当時はまだ偏見もいまより大きかったし、バンド畑の人間だったので、ライヴハウスとかで周りに「ボーカロイドというのを始めてさ」って言うと、反応が冷たくて。「お前、何やってるんだよ」みたいな反応をされることが多かったですね。でもそれからどんどん初音ミクがメジャーになっていったので、やっている側としては広まりきった感はあったんです。でも今回のスッパさんの活動を見ていると、まだまだ広がりきっていなかった部分があったんだなというのを感じましたね。

S:その「広がった」というのも、もしかしたら偏見が広がったということかもしれないですよ(笑)。

C:まあ、同時なんでしょうけどね。ただ若い世代にはふつうに広まっている感はありますね。だからいまスッパさんが届けようとしているのは、若い子よりも少し上というか、ミドルで音楽好きの人たちという感じですよね。それこそバンド畑の人とか、ロックやエレクトロニカを聴いているようないわゆる音楽好きの層というか。

S:そこにも届けたいってことですよね。自分もライヴハウスとかクラブとかはよく出演しているんですけど、そういうところで出会う人たちの偏見ってすごく根強くって。キャプミラさんが「お前、何やってるんだよ」と言われたときと、いまもまったく同じ状況なんですよ。

C:そうなんですね。難しいですねえ。たとえば「初音ミク」という名前自体はそれこそ誰でも知っているものになっていますけど、じっさいにそれを聴いているかは別問題ってことですよね?

S:たまたま耳に入った曲が自分の好きな感触じゃなかったら、そのイメージしか残らなくて、それ以外が想像できないという状況だと思うんですよね。だから、このコンピを聴いて考え直してほしいってことですね(笑)。

C:でもどうなんでしょうね。偏見ってじっさいそんなに強いのかな……いや、やっぱり強いのかなあ。

S:強いと思いますよ。Twitterで「これ最高! ヤバい!」ってYouTubeのリンクを貼るのと、ニコニコ動画のリンクを貼るのとでは違いがあるというか。ニコニコ動画なんか誰も覗いてくれないんですよ。「そっちの世界は行きたくない」みたいな偏見はあると思います。

音楽ファンって、ほかの何かのファンと比べると、なかなかそういう壁を崩さない感じはありますよね。オープン・マインドに見えて、じつはすごく閉じているというか。

S:ですよね。だから今回はそういうボカロのネガティヴなイメージをすべて取っ払って、音楽だけに集中して見せたいんですよね。音楽活動をしている知り合いには若い子が多いんですが、若い子でも外へ出て音楽をやる人と、家のなかだけで音楽をやる人とではちょっと違いがあって。やっぱり外でやるおもしろさを知っている人は偏見を持ちがちですね。キャプミラさんの場合はボカロとの出会いが早かったから良かったというのもあると思うんです。すんzりヴぇrさんやディキシー(Dixie Flatline)さんとは、ちょっと仲間意識みたいなものもあるんじゃないですか?

C:そうですね。当時はボーカロイドをやっている人たちの横の繋がりがすごくあったんですよ。初投稿日が近い人たちなんかで良く会ったりしていて。バンドをやっていると意外にギスギスしているところがありますよね。たとえば対バンした相手と表面上は仲良く話していても、心の底では「なんだあいつ」みたいに思っていたり(笑)。ライヴハウスではそういう空気をバンバン感じることがあったんですが(笑)、ボーカロイドを始めてみたらみんなすごく開けていたんで、それもすごく驚きましたね。だから10年前に出会った人たちとはいまだに会ったりするような仲になっていますし、それが世代ごとにいろいろとあるんじゃないですかね。いまの若い人は若い人たちでコミュニティがあるんじゃないかという気はします。

取材・文:小林拓音(2018年3月29日)

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Profile

小林拓音/Takune Kobayashi
1984年生まれ、東京在住。執筆と編集。寄稿した本に『IDM definitive 1958 – 2018』など。編集した本に『別冊ele-king 初音ミク10周年』など。

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