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Interviews

interview with Irmin Schmidt

interview with Irmin Schmidt

カンの現在、そして回想と展望

──イルミン・シュミット、インタヴュー

質問・文:松山晋也    Jun 26,2017 UP

 プログレッシヴ・ロックというジャンルに限らず、ロックの歴史において最も偉大なるバンドの一つに数えられてきたカン。彼らがケルンで誕生したのは、ちょうど半世紀前のことだった。70年代末に消滅するまでの間に彼らが発表した作品群は、70年代のパンク、80年代のニュー・ウェイヴやノイズ、更に90年代以降のポスト・ロックなど後続の若いミュージシャンたちに延々と影響を与え続け、現在に至っている。70年代英国のメディアによる「カンは50年先を行っている」という賛辞が真実だったことを、今、誰もが認めているはずだ。


Can
The Singles

Mute/トラフィック

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 というわけで、結成50周年を祝しておこなった、カンのリーダー格イルミン・シュミットへの電話インタヴュー。
 カンがシングル盤としてリリースした楽曲だけを23曲集めた編集盤『The Singles』が先日、英ミュートからリリースされたばかりだが、その前の4月には、ロンドンのバービカン・ホールで〈The CAN Project〉のコンサートもおこなわれた。これは、カンの楽曲をモティーフにイルミン・シュミットが作曲したオケ作品をロンドン交響楽団が演奏する(指揮はイルミン自身)第1部と、マルコム・ムーニーをシンガーに立てたスペシャル・バンドによるライヴという第2部から成るもので、イルミン自身が立案/プロデュースしたものだ。
 今回のインタヴューはそれらを踏まえて、6月半ばにおこなったものだが、時間が足らず、終盤の最も肝心な質問がすべてこぼれてしまったことを予めお断りしておく。

20世紀に存在していたコンテンポラリーなアイディアのすべてが詰まっていて、そのおかげで、ユニークで特別な音楽になっているのだろうね。だから何度聴いても、必ず何か新しいものが聴こえてくる……それがカンの音楽であり、カンのミステリーにもなっている。

4月にロンドンのバービカン・ホールでおこなわれた「カン・プロジェクト」のコンサートは、メディアではどんな反応でしたか。

シュミット:すごくいい反応だったよ。とても気に入ってくれた。私がロンドン交響楽団の指揮をして、自分で書いたシンフォニーを2曲披露したんだ。そのうちの1曲は、カンの作品をモチーフとしたものだった。カンの曲をオーケストラ・アレンジにしたのではなく、オーケストラ・ピースにカンの曲を引用した感じだ。メディアはほとんどロック系の評論家たちで、こういうものを見たり聴いたりしたことがなかい人たちばかりだったから、すごく驚いていたな。企画自体も珍しかったしね。最初の1時間はシンフォニックな音楽で、その後はロックで。みんなまさに見たこともないものを見たようなリアクションだったよ。よりじっくり鑑賞するために、もう一度観たいと言ってくれる人たちも多かった。第1部の方が好きな人もいれば、第2部の方が好きだった人もいたし、いろんなリアクションをもらえた。なによりも、まあ、みんなにすごく良いと言ってもらえて嬉しかったよ。

企画した自分自身では、コンサートの出来具合をどう評価していますか。

シュミット:うーん、難しい質問だね。世界でも指折りの素晴らしいオーケストラの指揮をとらせてもらっただけでもすごいことだった。私は若い頃に指揮者としての経験があったものの、カンを始めてからはオケを指揮することなんてまったくなかったから。だから、こうやってオーケストラと何かができることは私にとっては心底嬉しいことだ。いまだに指揮をやることが私にとって喜びであることに気づかされる、とても重要なできごとでもあった。心が動かされる、本当にいい経験だったな。コンサートの第2部は、サーストン・ムーアと彼のミュージシャンによるカンへのオマージュだったんだが、それも楽しくやらせてもらったよ。

クラシック出身のあなたが、今改めてオーケストラ作品にこだわる理由を教えてください。

シュミット:おっしゃるように、私にはクラシック音楽の背景があって、オーケストラの指揮をしていたこともある。交響楽団やオペラハウスで指揮者をしていたんだ。指揮をしてたのと同時に、クラシックの作曲もしていた。だからこれも自分の一面だ。ロックの自分がもうひとつの面であるように……まあ、他にもいろんな面を持ってるけどね。そういう背景がカンの音楽を豊かにしてくれたんだと思う。ロックだけではない、クラシックや、私が若い頃に勉強していた日本の雅楽とか、いろんな要素があわさってカンの音楽になってる。突然やり始めたことではないんだ。私は本当にオーケストラのサウンドが大好きだし。何十年にもわたってひとつの曲が受け継がれていって、どんどん研ぎ澄まされていく感じがとても美しいと思う。オーケストラの音楽は元々がすごく豊かだと思う。時折そういう音楽の世界に触れることが自分の喜びでもあるんだ。だからこれからも続けると思うよ。

カンの最重要コンセプトは「spontaneous(自発的、無意識的)」ということだったと思いますが、今回のオケ作品は「spontaneous」なものになったと思いますか。

シュミット:「spontaneous」ということなら、それはやはりカンだ。今回のオケの試みはそういうものではない。オーケストラ作品に携わっている時は、もしかしたら曲作りの過程で「spontaneous」な部分はあるかもしれないが、オケは渡された楽譜をその通りに演奏するから、ステージ上で「spontaneous」になることは難しい。もう既に存在するものをそのままプレイしなければいけないわけだ。オーケストラで音楽を演奏することは、私にとって、カンの場合とはまったく違うことなんだ。カンの音楽をオーケストラを通して再現しようとはしていないわけで。オーケストラの楽曲を作るときは、オーケストラの世界観を考えて作曲する。それはカンが演奏する時の「spontaneous」なアプローチとはまったくもって違うものだよ。

第2部のバンド・コンサートではサーストン・ムーアが核になっていたようですが、サーストンを中心に据えた理由は?

シュミット:私は長年ソニック・ユースの大ファンだった。80年代にソニック・ユースが出てきた時からずっと好きだった。以前、バルセロナのフェスティヴァルで彼らと共演したことがあって、私たちはライヴの後に会う機会を得た。その時に彼らと話し、お互いには共通点が多いことがわかった。音楽的に考えてることとかも含めてね。私たちにとってソニック・ユースの音楽は重要で、彼らにとってはカンの音楽が重要だった。それが、今回の理由のひとつだ。もうひとつのきっかけは……私は、来年出版される予定の本をここ数年書いてきたのだが、その本にサーストンのインタヴューを掲載するために彼に会ったんだ。その時いろいろ話しているなかで、サーストンから、パリでやるライヴに参加しないか? と提案があった。彼は、インプロヴィゼーションで共演したいと言ってくれた。それがきっかけで、私と彼はパリでデュオとして一緒に演奏したんだが、まったくもって即興的なライヴだったよ。実際、1時間しか準備の時間がなかった。そしてその時もまた共通点の多さを感じた。だから今度は私の方から、私が企画するコンサートの第2部のキュレーターになって欲しいというオファーをしたんだ。彼は快くそのオファーを受け、ミュージシャンも集めてくれた。立派なキュレーターだったよ。(註:カンの初代シンガーだったマルコム・ムーニーをフィーチャーし、サーストン・ムーア&スティーヴ・シェリーのソニック・ユース組を筆頭に、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン~プライマル・スクリームのデボラ・グージなどがバッキング)

あなたは何故、そのバンド・コンサートに参加しなかったのですか。

シュミット:なにしろ私は第1部のオケ・コンサートで指揮をしてたからね。前日にはオケと6時間もリハーサルをして、当日にも3時間のリハーサルがあり、その後に1時間の本番があった。つまり、あのコンサートでの私の役目は、第1部で二つのオーケストラ曲の指揮者をすることだったんだ。第1部で指揮をした後、第2部で演奏もするとなったら、体力的にもすごく厳しかったと思うよ。第2部のライヴはカンへのオマージュだったが、そこで私は演奏すべきではないと思ったし、そもそも私はカンの音楽を演奏することにはあまり興味がない。もう私は、カンの楽曲を再現したり、再構築したくはないんだ。今は違う音楽をやっているからね。だからそこはすべてサーストンに任せた。彼ならではのカンを創り出してくれたんじゃないかな。

第2部のバンド・コンサートに関し、あなたの方からサーストンたちに何かメッセージやアドヴァイス、注文などを出しましたか。

シュミット:私が口を出すことはまったくなかったよ。本当に何もなかった。サーストンがやってくれたことに関しては、いっさい関与していないし、口出しもしなかった。なにしろ、私も本番で初めて聴いたんだからね。お互いリハーサルの時間も被っていたから、リハーサルも見ていない。だからサーストンがやることを邪魔することはなかったし、私は私で自分のリハーサルに集中していた。本番でサーストンは第1部を初めて見たし、私は第2部を初めて見た。

質問・文:松山晋也(2017年6月26日)

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松山晋也/Shinya Matsuyama 松山晋也/Shinya Matsuyama
音楽評論家。『ミュージック・マガジン』他の音楽専門誌や朝日新聞などでレギュラー執筆。時々、ラジオやイヴェント等での解説、選曲なども。ワールド・ミュージックと実験音楽系の仕事が中心。著書『めかくしプレイ~Blind Jukebox』、編著書『プログレのパースペクティヴ』、その他音楽関係のガイドブックやムック類多数。

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