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interview with !!! (Nic Offer)

interview with !!! (Nic Offer)

大バカの能無しにファック! でもそれは答えじゃない

──チック・チック・チック(ニック・オファー)、インタヴュー

取材・文:小林拓音    通訳:青木絵美 写真:小原泰広   May 26,2017 UP

エンターテイナーが感情を露わにしたことについて怒る人はどうかしている。それこそがエンターテイナーの仕事であり、エンターテイナーはそれをやって金をもらっているのだから。


!!! (Chk Chk Chk)
Shake The Shudder

Warp / ビート

Indie RockFunkDisco

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アルバムの話に入ります。これまでのチック・チック・チックにももちろんその要素はありましたが、今作はとりわけディスコ色が濃く出ていると思います。そのような雰囲気は意図的に作られたものなのでしょうか? それともジャムをしている間に自然とそうなっていったのでしょうか?

NC:自然にこうなっていった。俺たちがつねにアルバムを通して達成したいことというのがある。ディスコは俺たちが大好きなサウンドだから、そこにいろいろな方法を通して回帰することも多いし、そういうサウンドがバンドのベースとなっている。俺たちのアルバムは毎回違った作品で、毎回成長や学びがあり、新しいサウンドを発見している過程を表現するものであってほしい。だが、過去にタイムスリップして、昔の俺に、今回のアルバムを聴かせたら、「すげー! これ俺たちが作ったの?」と思ってもらえるような作品でもあってほしい。それが俺の願いだ。

7曲目の“Five Companies”は、「緊張した状況から生まれた政治的作品」とのことですが、「5社」というのは何を指しているのでしょうか?

NC:よく言われる「1%の~(上位1%の富裕層が世界の富の半分を握っている)」という話で、「この会社の親会社がこの会社で、その会社の親会社が……」というふうに、結局すべてはワーナー・ブラザーズが所有している、というような話。すべては5つの大企業が実権を握っているという意味。自分は自由を与えられていると思っていても、実際のところは、この金儲けをしている5社の傘下にいるということ。アメリカの政治的状況だってそうだ。ヒラリーも、結局のところワシントンの資産家たちから支持を得ていて、同じ大企業に操られていると非難されていた。下層階級の人びとはそういう文句を言っていた。そこには反論できない。でも、ドナルド・トランプが、大企業とは真逆の立場にいるという主張は、トランプ側のマーケティング作戦がうまかったとしか言いようがない。

9曲目の“Imaginary Interviews”や10曲目の“Our Love (Give It To Me)”はムーディマンを参考にされたそうで、たしかにその影響は感じられました。とはいえ、全体としてはしっかりチック・チック・チックの音楽になっていて、咀嚼のしかたが巧みだなと思いました。2013年のリミックス・アルバム『R!M!X!S』では、ロメアーが1曲リミックスを手がけていましたが、その彼もムーディマンが好きで、そういうアルバムを出しています。ムーディマンのすごいところはどこだと思いますか?

NC:チック・チック・チックが最初に出てきたとき、俺たちはパンクだったからエレクトロニック・ミュージックやドラムマシーンを使った音楽はあんまり聴いていなかった。ハウス・ミュージックを俺たちが知ったのは、ファンクとディスコの後だった。俺たちはずっとバンド活動をしていて、いまではけっこう上手なディスコ・バンドになったと思う。ムーディマンが作り出すハウスは俺たちが共感できるものだった。彼のハウスは、ファンクとディスコがベースになっていて、その時代のロマンスやグルーヴが感じられる。そこにハウス特有の恍惚感が加わっている。そういう点が俺たちにしっくりときて、特に彼の最新アルバムを聴いたときは「これだよ。俺たちがずっと出したいと思ってきたサウンドはこれなんだよ!」と思った。自分が音楽をやっていて、自分がやろうとしていたことを、他の誰かが達成したというのは、とてもエキサイティングだ。自分が音楽を作っているときは、世界でいちばん最高な音楽を作ろうとしている。そこに、他の人が同じ解釈で、自分がやろうとしているのと同じことをやってのけたときは「このアルバムだよ! こういうのが作りたかったんだよ!」って思うんだ。

彼(=ムーディマン)の最新アルバムを聴いたときは「これだよ。俺たちがずっと出したいと思ってきたサウンドはこれなんだよ!」と思った。自分が音楽をやっていて、自分がやろうとしていたことを、他の誰かが達成したというのは、とてもエキサイティングだ。

昨年はフランク・オーシャンやソランジュのアルバムがすごく話題になりました。Pファンク好きのニックさんとしては、最近のR&Bやソウル・ミュージックをどのように捉えていますか?

NC:ファンク音楽の要素などが最近の音楽に取り入れられているのはおもしろいと思う。俺たちが最初チックを始めたとき、ロック音楽の基盤が、まだブルーズ音楽で、それは興味深く感じられた。ブルーズ音楽ってすごく古くさい感じがしたから。「なぜ新しいロック音楽の基盤は、ファンクやディスコではないんだろう?」と思った。最近はその考えが普及してきたみたいで、インディ・ロックのベースとなっているのはフランク・オーシャンやソランジュのようなアーティストだ。それはエキサイティングな変化だと思うし、インディ・ロックの新章となると思う。

チック・チック・チック以外で、いまもっともファンキーな気持ちにさせてくれる音楽は何でしょう?

NC:アンダーソン・パークの新しいアルバムは良かった。ダーティ・プロジェクターズの新しいアルバムも良かった。彼はR&Bとヒップホップをインディ・ロック的にうまく融合させたと思う。(携帯に入っている、2016年ベストのプレイリストを確認中)バンドだけじゃなかったら、たくさんいるよ。フューチャー(Future)、ミゴス(Migos)、DVSN。

通訳:それらはダンス・ミュージックのアーティストですか?

NC:DVSNは90年代っぽいR&Bを作るアーティストで、ドレイクのプロデューサーをやったこともある。彼らが作る音楽は90年代のスロウジャムのようで、彼らのアルバムは良かった。マックスウェルの最近のアルバムも素晴らしいR&Bのアルバムで、最高な曲がいくつもあった。たくさんあるよ。携帯のプレイリストを見てくれよ。本当にたくさんある。良い音楽はたくさんあるよ!

(スマホを渡され、リストを確認中)すごい、いっぱい入ってる……

NC:俺は、年末にいろいろなメディアが出す音楽チャートをすべてチェックするんだ。その中から、俺が好きだったものを、このプレイリストに加えていく。すべて去年のリリースで、その中でも俺が知らなかった音楽。だからメジャーなやつは入っていないよ。

(リストを確認中)

NC:Spotifyがあるなら、リストを送れるけど?

Spotifyは無料のやつしか使ってないんですよ。

NC:まじかよ!? 1ヶ月10ドルだぜ?

最近、入ろうと思っています(笑)。

NC:一度入会したら、絶対手放せなくなるよ!

アーティストの政治的主張が何であれ、俺はそのアーティストが好きだったらその人の音楽を聴き続ける。それができないやつは、そいつの問題だ。そいつはかわいそうなやつだ。自分が好きな音楽を聴くことができないのだから。

今年1月にヤキ・リーベツァイトが亡くなりましたが、チック・チック・チックは2004年に“Dear Can”という曲を出しています。彼の功績や、彼に対してどのような考えをお持ちですか?

NC:ヤキ・リーベツァイトは、彼の音楽を聴くよりも先に、彼の存在について知る、というような人物だった。非常に伝説的なドラマーで、当時のロック・ドラマーよりも、ずっとファンキーなドラマーだったと思う。カンというバンドに非常にユニークなサウンドをもたらしてくれた。カンはドラマーに引率されたバンドだったということがわかる。ドラマーというのは多くの場合、バンドというマシーンを運転する役で、創造的力というリムジンの運転手的な存在だ。だが、ヤキ・リーベツァイトは絵描きのような存在だった。バンドは彼を中心として成り立っていた。ダンス・ミュージックはリズムが基盤となっている。彼は、他のロック・ミュージシャンよりも先にそのことを理解していたのだと思う。本当に偉大な力を持つ人だった。

以上です。

NC:もう一点、政治の話で、ヴァンパイア・ウェークエンドについて言及したい。ヴァンパイア・ウェークエンドが政治的な主張をしたのはすごく良いことだったと思う。当時、バーニーの考えは過激的で途方もないと考えられていた。民主党支持者たちは、ヒラリーとバーニーとの間で選択を迫られていた。だが、ヴァンパイア・ウェークエンドがバーニー支持を表明したことによって、バーニーの考えはクレイジーでもなく、普通だと気付いた人がたくさんいた。バーニーが求めているものは、過激でもなんでもなく、正当なことであり、自分たちはそういうことを求めるべきなんだ、と気付いた人がたくさんいたんだ。だから、あれはとてもパワフルな瞬間だったと思う。彼らがそういう主張をしてくれて俺は嬉しい。俺はずっとヒラリー支持者だったけれど、ヒラリーがルール内でしか動けなかったり、ワシントンの資本家としてしか活動できなかったことが、ヒラリーの敗因となってしまった。だからヴァンパイア・ウェークエンドがそういう活動をしたのはすごく良かったと思う。もし、そういう活動が、誰かの反感を買ったとしても、それがまた別の人のインスピレイションにつながるから良いと思う。いつだって、文句を言いたがるやつはいる。それはしかたがないことだ。でも、もともとヴァンパイア・ウェークエンドのファンだった人が、ヴァンパイア・ウェークエンドの活動を見て、がっかりしてしまったというのは信じがたい。でもそんな人たちは放っておけばいい。俺も、こないだガールフレンドと派手に喧嘩したことがあって、カニエ・ウェストがドナルド・トランプのもとを訪れたとき、彼女は俺にこう訊いた。「あなた、カニエの音楽を聴くのやめるの?」俺は「FUCK NO! (やめるわけねーだろ)」と答えたよ。俺はカニエのファンだし、彼の音楽が大好きだ。トランプに会いに行ったのは得策とは思えないし、後でカニエも後悔すると思う。けど、俺はカニエを聴き続けるぜ。彼が良い曲を作り続ける限り。そんなの関係ない! 逆に、ヴァンパイア・ウェークエンドが過激だと思われていた派を支持して、バーニーを正常化してくれたときは、俺でさえ「そうだ、バーニーの考えは実行可能だし、おかしくもなんともない」と思った。だから、俺は両方の観点から答えられる。アーティストの政治的主張が何であれ、俺はそのアーティストが好きだったらその人の音楽を聴き続ける。それができないやつは、そいつの問題だ。そいつはかわいそうなやつだ。自分が好きな音楽を聴くことができないのだから。それはやつの問題で俺の問題じゃない。俺はとにかくジャムをかけ続けるぜ(笑)!

SONIC MANIA 2017 出演決定!
2017.8.18(金)
OPEN 8:00PM / START 10:00PM
チケット情報
前売り¥11,500(税込)別途1ドリンク代¥500
http://www.sonicmania.jp/2017/

取材・文:小林拓音(2017年5月26日)

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