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Interviews

interview with tofubeats

interview with tofubeats

インターネットの憂鬱

──トーフビーツ、インタヴュー

取材:野田努    写真:小原泰広   May 23,2017 UP

 他人のことを気にしないように
 後ろ髪を引く人ばかりに
 これ以上もう気づかないでいい
1曲目“CHANT #1”

 もう良し悪しとかわからないな
 君らが数百万回再生した
 バンドの曲が流れてきた
2曲目“SHOPPINGMALL”


tofubeats
FANTASY CLUB

ワーナー

J-POPDeep HouseBassTechno

Amazon

 高校時代にシカゴ・ハウスやニンジャ・チューンなどを聴いた彼は、しかし自分の出自を曖昧にぼやかし、エレクトロニカや細分化されたインディ・ミュージックしか聴かない類のリスナー〈誰だ?)へ反論するかのように、TSUTAYAや郊外ショッピングモール、安居酒屋チェーン店、地方都市の衰退を日本の現代的土着性として再定義しようとした。文化的焼け野原を故郷とすることによる大衆へのアプローチ。そして、Jポップ的(マーケティングの入った)オリエンタリズムを逆利用すること、これが彼の戦略でありクリティックでもあったように思う。もちろん賛否両論あった。良きことのひとつを言えば、単純な話、若者たちに広く聴かれたことだ(おかげで彼の曲は彼の政治嫌いに相反して、デモにも使われた)。悪きことをひとつ言えば、それは単なるホントの、消費されるだけの商品としてのJポップにしかなりかねないことである(何が大切に聴かれ続けて、何が商品として忘れられるかは、10年後の中古盤屋──残っていればだが──を訪ねれば明らかになる)。
 トーフビーツの根は、インターネットを若者が活用できる時代に培われたという意味でも、セイホーやトヨムやグライム・プロデューサーの米澤慎太朗らとほぼ同じだが、その打ち出し方は極端に反動的で、彼はワーナーと契約したさいも大胆にも「就職」という言葉を使った。音楽を商売に限定することになると反感を覚える者も少なくなかったが、それは音楽業界への皮肉にも見えた。
 こうしてバブルガム・ミュージックを生産しようとした彼は、しかし、いまここにはいない。いまここにいるのは、時代に翻弄されている自分を隠さない彼だ。日本経済の格差問題は、大手メジャーと契約している若いミュージシャンもお金の心配を隠さずにはいられないというところにも滲み出ているわけだが(苦笑)、新作『FANTASY CLUB』で彼が告白しているのは、インターネット社会が信用ならないということで、それは「インターネット世代」という肩書きを甘受してきた彼にとって、言わずにはいられない状況にいま直面しているということなのだ。彼は本作において「見解」を述べている。
 また、喪失感はトーフビーツが最初から表現してきた感覚で、ジャム・シティの『クラシカル・カーヴス』や初期ヴェイパーウェイヴにも見いだせる感覚ではあるが、彼のそれは先述したように、極めて日本的な問題意識に立脚している。『FANTASY CLUB』の最初の2曲では、とくにそれがむき出しになっていると言えるだろう。
 このアルバムの魅力は、アルバム中盤に収められたインストゥルメンタルにもある。ベース・ミュージックを吸収した“OPEN YOUR HEART”とタイトル曲のディープ・ハウス“FANTASY CLUB”は、もうひとつのクライマックスであるということを忘れずに。アルバムの出だしが強烈なので見過ごされがちだが、地味に良い曲である。(まあ、彼らしいメランコリックな曲調でもある)

“ポスト・トゥルース”が物語るのは、それがもはや「ぼくたちのインターネット」ではないということだと思う。

新作を聴いて、驚いたので、担当の岩田さんに電話したんですよ。

TB:その話聞きました(笑)。超笑ったすね(笑)。即レスで電話してきた人なんて初めてじゃないですかね。

「どうしちゃったの?」って(笑)。まさかの展開に驚きましたよ。

TB:はははは!

音楽において自分の感情を露わにすることは無粋だという立場だったじゃない? 音楽はあくまでもポップス、エンターテイメントに徹するべきというスタンスで作ってきたわけで。それが新作ではさ……

TB:今回は奇跡的といえるほど制作に時間をかけられたんですよ。

なんていうんだろう……疑問であったり、居心地の悪さを真摯に伝えようとしている。で、岩田さんに言われて今回の作品のコンセプトにはポスト・トゥルースがあると、『ワイアード』の記事“SHOPPINGMALL”についてのインタビューを読んで欲しいと言われて、「なるほど」とは思いましたけど。

TB:はい。

『POSITIVE』から『FANTASY CLUB』へ、この変化についてまずは訊きたいんですけど。

TB:『POSITIVE』の頃よりも、まずは好きなことをやれる比率が上がったんですね。独立したんで。

なるほど。

TB:『POSITIVE』のときは、制作期間も1~2か月で、しかも敢えてJポップを作りたくて作ったんですけど、今回はその逆というか……、聴き手の好きなものなんてわかんないのに、「こんなん好きでしょ?」と出すのをいまやるのは失礼かなと。そんな風にやるのはやっぱり無理、というか……、あのときは「ポジティヴ」という言葉があったからなんとか明るい方向でまとまったんですけど、「みんなの総意」みたいな部分でいうと、もうそんなものはなかったと。

昔から言われている「細分化」ということ?

TB:そういうこともあると思います。細分化されていったけど、メジャーにいるとJポップを期待されてしまうんですね。プロだから商業として成り立つものを作らなきゃいけないという気持ちはあります。頑張ろうという気持ちもあるんですけど……、『POSITIVE』を作って、やっぱりそんなものはわかんないとあらためて思ったんです。みんながなにを好きなのかなんてわからないと、だったら、その「わからない」と真剣に向き合ってみようと。ノリや理屈で突破するっていうんじゃなくて、とにかく「わからない」と向き合ってみようと。そうして出来たのが“SHOPPINGMALL”という曲です。アルバムは、その曲が出来て転がっていったみたいな感じなんですよ。

『POSITIVE』への反動もあると。ぼくが思ったのはね、『First Album』と『POSITIVE』はプロデューサーとして作品に接していたと、しかし今回は作家として接していると。この違いは大きいですよ。アルバムの1、2、3曲目の流れが前半のクライマックスになっているんですけど、最初の2曲が強烈ですよね。そして6曲目以降はインストが続いている。トーフビーツのビートメイカーの部分をおもてに出しているとも言えるし、7曲目なんて聴くと、あれ、トーフビーツにこんなアンビエント・タッチのメロディ・センスがあるのかとも思ったし。

TB:“OPEN YOUR HEART”や“FANTASY CLUB”は『POSITIVE』のときにはもうあったんですけど、あのとき削った曲なんです(笑)。

それはなに、プロデューサーとしての意識が強かったから?

TB:たしかに『POSITIVE』のときは完全にプロデューサー目線で考えていましたね。『First Album』のときは自分の作家性を自分で解体しようとして、しっちゃかめっちゃかになった、というのが当時は反省としてあったんです。だから、よりはっきりプロデューサーを意識したのが『POSITIVE』です。そして、インディーズ時代の気持ちに戻って作ったのが今回のアルバムとも言える。自分が好きなものを出そうと、そう思って作りましたね。

ソランジュがひとつのきっかけになった、と?

TB:ビヨンセのアルバムの超パワフルさよりも、ぼくはソランジュに感動しました。ソランジュは、新しいことをやろうとしているし、向き合っているものが共同体というよりも自分……というか、範囲が狭いものだと思ったんですよ。この感覚は、ぼくが宇多田ヒカルさんの初期のほうが好きということとも共通するんですけど。『ア・シート・アット・ザ・テーブル』は4年くらいかけて作られて、ヴィデオもちゃんとしているし、丁寧なんですよね。どこかの誰かではなく、自分が見えているものごとを題材にしているからこその丁寧さだと思いますし、ソランジュを聴きながら、あらためて自分が好きなものを出すことにビビっちゃいけないと思ったんですよね。いまだからこそ言えますが、『POSITIVE』のときは、ビビっていたということが大いにあった。最大公約数的に、みんなが好きなものを作らないといけないというか。

そのプレッシャーを払いのけたと? 

TB:独立したし、ソランジュのそういう作品を聴いて、ということですね。

取材:野田努(2017年5月23日)

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