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interview with Purity Ring

interview with Purity Ring

ピュリティ・リング来日特別インタヴュー

取材・文:小林拓音    通訳:原口美穂   写真:小原泰広   Apr 21,2017 UP


Purity Ring
Another Eternity

4AD

ElectronicR&BDream Pop

Amazon

 楽器やエレクトロニクス担当のコリン・ロディックとヴォーカル担当のミーガン・ジェイムズからなるデュオ、ピュリティ・リングは、カナダのハリファックス/モントリオールを拠点に活動する……と思っていたのだけれど、LAへと拠点を移してからもう随分と経っていたようである。2011年にインターネット上に発表した音源が注目を集め、〈4AD〉との契約をつかみととり、2012年にファースト・アルバム『Shrines』を、2015年にセカンド・アルバム『Another Eternity』をリリース。他方でダニー・ブラウンのアルバムに参加したりソウルジャ・ボーイをカヴァーしたりチャンス・ザ・ラッパーをプロデュースしたり、はたまたジョン・ホプキンスと共演したりレディー・ガガをリミックスしたりと、精力的に横断的な活動を続けてきたピュリティ・リングだが、ここ最近はツアーに明け暮れていたそうだ。そのツアーの一環なのか、ちょうど3月に来日したかれらに運良く取材する機会に恵まれた。かれらはいま何を考えているのか。次のアルバムはどういう内容になるのか。以下よりお楽しみください。

ピュリティ・リングの音楽は、「ハッピー・アクシデント」で、本当に良い偶然でこういう音楽になったんだ。

前作『Another Eternity』が出てからしばらく時間が経ちますが、この間、何をされていたのですか?

ミーガン・ジェイムズ(Megan James、ヴォーカル。以下、MJ):ほぼツアーをしていたね。もうずっとツアー。その間に曲を書けたらと思うんだけど、まだやり方がよくわかってなくて。とにかくツアーで忙しくて書けなかった。

コリン・ロディック(Corin Roddick、楽器担当。以下、CR):でも少しは曲を書いているよ。アルバムをリリースできるまでには至っていないけどね。これからアルバムの制作に入ろうかなと思っている。

いま模索している方向性みたいなものはぼんやりとあるのでしょうか?

CR:いろんなことをいま実験している最中だね。どんな可能性があるかっていうのを見ているところ。過去のサウンドが進化したものになることは間違いないけど、まだ明確に「この方向性」っていうのは決まってないな。いろいろと試している過程が、自分たちにとってはいちばんおもしろいので、それを楽しんでいるところだね。

ピュリティ・リングの音楽は一言で言うと、ヒップホップやエレクトロのビートとシンセ・ポップの両立だと思うんですが、そもそもピュリティ・リングはどういうふうにはじまったのでしょう?

MJ:(最初はいまと)全然違った。ふたりともまったく違ったね。彼(コリン)の方はエレクトロをやっていたんだけど、じつはドラマーで、私の方はシンガーソングライターっぽい音楽をピアノで作っていた。一緒になって音楽を書き始めるようになってから、自然とこういう音楽になっていったんだ。

CR:できあがったピュリティ・リングの音楽は、「ハッピー・アクシデント」で、本当に良い偶然でこういう音楽になったんだ。最初にビートを書いたときも、以前僕がやっていたバンドや音楽ではこういう(ピュリティ・リングのような)ビートの作り方はしたことがなかった。僕はパンク・バンドにいた経験もあったし、ふたりともまったく違うところから来ていて、一緒になったことでどんどんいまのサウンドが確立されていったんだ。

ここ何年かのピュリティ・リングは、ダニー・ブラウンのアルバムに参加したりソウルジャ・ボーイをカヴァーしたりチャンス・ザ・ラッパーをプロデュースしたりと、ヒップホップのアーティストとの絡みが目立ちます。おふたりはもともと、それぞれシンガーソングライター的な音楽をやったりパンク・バンドにいたりしたとのことですが、その頃からヒップホップへの関心は高かったんでしょうか?

CR:ヒップホップの大ファンだったよ。小学校の頃からエミネムを聴いていたんだ(笑)。ドクター・ドレとか。その頃からずっとハマっているね。

MJ:R&Bとかヒップホップとか、大好きなアーティストや憧れるアーティストはたくさんいるんだけど、ピュリティ・リングのヒップホップのエレメントに関しては、私よりコリンの受けている影響が大きいと思う。

小学校でエミネムやドレを聴いていたら、親に心配されませんでしたか(笑)?

CR:母親からは禁止されていたね(笑)。使っていたソニーのCDウォークマンが中身の見えるものだったから、母親にバレないようにエミネムのCDの上に別のCDを置いていたよ(笑)。

そういうヒップホップのアーティストとコラボする一方で、ケイティ・ペリーやレディー・ガガとも絡んでいますよね。それぞれリスナー層が異なっていると思うのですが、自分たちとしては一貫しているというか、ピュリティ・リングとして特にそこは分けて考えているわけではないのでしょうか?

CR:僕は音楽のすべてのジャンルやスタイルが繋がっていると思っているんだ。プロダクションのディテールで異なる部分はあると思うけど、僕はいろんなものをブレンドしたり繋げたりするのが好きなんだ。ケイティ・ペリーのリミックスもダニー・ブラウンのトラック制作も自分にとっては同じなんだ。そこにあんまり違いは感じないな。

ピュリティ・リングの音楽にはもうひとつ、シンセ・ポップの要素もありますね。ですがそれはキラキラした感じのそれというよりは、どんよりした感じ、ダークな感じのそれです。そこで想像してみたのですが、シューゲイズからの影響はあるのでしょうか?

MJ:そうね。昔はシューゲイズを聴いていたし、影響を受けている部分はあると思う。

CR:シューゲイズというジャンルはリスペクトしているよ。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインも好きだし。でも、アルバムや曲名を全部言えるほどハマっていたわけではないんだ。とはいえ、僕らの音楽のなかのダークでどんよりした部分がシューゲイズやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのような音楽と比べられるっていうのは、すごく納得がいくよ。

ファースト・アルバムの『Shrines』を出した後、周囲やメディアなどから「シンセ・ポップ」だとか「ドリーム・ポップ」だとか、いろいろな呼ばれ方をされたと思いますが、

MJ:「フューチャー・ポップ」なんてのも言われたよね。

自分たちでピュリティ・リングの音楽に言葉を与えるとしたら、なんと呼びますか?

MJ:それはやらないようにしてる。

CR:つねにジャンルレスでいたいんだ。

MJ:自分たちを何かに括るっていうのは絶対にしたくない。私たちの音楽は本当にいろんなものが混ざっているし、トラック単位でもアルバム単位でも違うから、ひとつ「これ」って言うことはできない。

ピュリティ・リングの音楽を届けたいのはどのような人たちでしょう?

MJ:ショウをやっていて感動するのは、お客さんたちの年齢が本当にさまざまなこと。服のスタイルもいろんな人たちがいて、それがすごく嬉しい。私たちのオーディエンスやリスナーは会場で喧嘩することもないし、言い争いをすることもない。みんな本当に音楽を聴きたいから来ているのね。そこが、自分たちがいままでショウをやってきてブレない部分だと思う。私たちの音楽が好きで、そして私たちの音楽だけじゃなくて、音楽そのものが本当に好きでハマッている人たちに聴いてほしいと思っているし、実際に聴いてもらえていると思う。

CR:忍耐強い人、かな(笑)。会場でもずっと音楽を聴いてくれているような。

MJ:私たちもそうありたい、と思えるような人たちね(笑)。

僕らの音楽のなかのダークでどんよりした部分がシューゲイズやマイ・ブラッディ・ヴァレンタインのような音楽と比べられるっていうのは、すごく納得がいくよ。

私は音楽を聴くときに、ヴォーカルが入っている曲でも、最初は歌詞の内容は気にせずに音として聴いているんですが、ミーガンさんのヴォーカルはひとつのサウンドとしておもしろいと思いました。音としてのヴォーカル、というのは意識されていますか?

MJ:ありがとう。おもしろいサウンドにしようっていうのは自分ではあまり意識していないな。偶然、その曲に合ったものができあがるんだ。たとえば、誰もが「素敵な声だよね」って認める素晴らしいシンガーっていうのがいると思うんだけど、自分は逆に、そうならないようにしている。ヴォーカル・トレーニングとかも受けるんだけど、「誰もが認める良いシンガー」になってしまうと、自分のスタイルが消えてしまうと思う。だからいま歌っているスタイルとか、聴こえ方が変わらないようにしよう、っていうのは意識しているね。でも、「この曲では、こういうサウンドに聴こえるように、こう歌おう」とか、曲作りのときにそういうプランを立てることはないかな。

フランク・オーシャンやソランジュなど、最近のR&Bの動向についてはどうお考えですか?

MJ:(R&Bは)90年代にも一度はやって、00年代にも波が来て、いままたそれが戻っている感じがするね。

CR:R&Bは5年前にも一度来て、それがソランジュやフランク・オーシャンが入ってくるスペースを作ったと思う。それでいまR&Bが再び盛り上がっている。R&Bって音楽のなかでもベストなジャンルのひとつだと思うから、その流行が終わらないで、つねに盛り上がっていてほしいなと思う。

ミーガンさんは昔シンガーソングライターのような音楽をやっていて、コリンさんはパンク・バンドをやっていたということで、おふたりはロックも聴いてきていると思うんですが、

CR:あまりロックは聴かないんだ。クラシックなロックンロールは聴いてない。ハードコアやポストパンク、あるいは「叫び」のロックとか(笑)、そういうのを聴いてきたんだ。

なるほど。個人的にはここ最近、R&Bとは対照的にロックは厳しい状況に置かれていると感じているのですが、ロックについてはどうお考えですか?

MJ:インディ・ロックが、いわゆる超「ロックンロール」みたいなものを乗っ取っているような現象があると思う。だから、そこまでインディ・ロックが下火っていうのは感じてない。いわゆる超「ロックンロール」じゃなくてインディ・ロックがはやっている傾向はあるね。そういう音楽も好きだけど、インスパイアまではされないかな。

CR:まあ、戻ってくると思うんだよね。なんでもはやったりはやらなくなったりというサイクルがあるから、みんながまたそういう音楽を新鮮に感じるまで時間がかかると思うんだ。だからR&Bのように、ロックンロールもまた帰ってくると思う。

MJ:私はギターの良い音楽がすごく好き!

日本からはなかなか見えづらいんですが、いまカナダの音楽シーンはどういう感じなのでしょう?

MJ:カナダ? 全然知らない!

CR:(僕らはLAに)移ってるからね。

MJ:私たちはあんまりカナダのシーンについて把握してないんだ。でもそれは、自分たちがLAにいるからわからないってことじゃなくて、私が19歳のとき、カナダに住んでいた頃からもう、自分たちのやっている音楽がシーンからはかけ離れたものだったから。(カナダにも)シーンが存在しているのは知っているし、それが良いシーンだっていうのもわかるんだけどね。ここ5、6年でフェスも大きくなってきたし、シーン自体もベターになってきたと思う。カナダの音楽シーンやカナダのミュージシャンたちにすごく自信がついてきていると思う。「カナダ」っていうカテゴリやジャンルができてきた。いまは政府もアーティストにお金を出していて、アーティストが音楽を作りやすい環境があるし。ドレイクや(ジャスティン・)ビーバーがすごく大きな役割を果たしているんじゃないかな。

あなたたちが最初に注目されたきっかけは、インターネットに発表した音源でした。インターネットの文化についてはどう思っていますか? 良い面でも、悪い面でも。

CR:深い質問だね。良くも悪くもインターネットっていうのは、音楽のプラットフォームになっているわけだよね。だからいろんな人がそこから音楽を発信できるし、自分たちが発見したことのなかった音楽をそこから見つけ出すこともできる。それは素晴らしい部分だと思う。でもマイナスの部分は、誰もがそれをできてしまうから、埋もれてしまう可能性もある。気づいてもらうのが大変になってきているっていうのが良くない面かな。自分たちが曲を出したときは、SoundCloudもまだそこまで浸透してなくて、新しかった。だから自分たちはラッキーだった面もあると思う。いまはどんどんみんながやるようになってきていて、難しくなっているってのはあると思うね。

MJ:まだMyspaceがあった時代だったから、(私たちは)気づいてもらうことができた。インターネットによって、人がどう音楽を聴くかっていう、聴き方が変わったと思うし、いまだにどんどん変わっていっていると思う。いまはメジャー・レーベルがインターネットを使いはじめているし、SpotifyにしろApple Musicにしろ、メジャーな音楽は大きくなってきている。だから、音楽の人への届き方や音楽の聴き方も進化して、どんどん変わっていっていると思う。それは良いことでもあるけど、小さいアーティストたち、まだビッグじゃないアーティストたちの居場所が少なくなっているっていうのも事実だと思う。それがこれからどうなっていくのかは私も注目している。

取材・文:小林拓音(2017年4月21日)

Profile

小林拓音/Takune Kobayashi
1984年生まれ、東京在住。ライター、編集見習い。これからいろいろやっていく予定です。

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