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interview with Shota Shimizu

interview with Shota Shimizu

10年目の情熱

──清水翔太、インタヴュー

取材・文:二木信    写真:小原泰広   Feb 27,2017 UP
清水翔太 『My Boo』Short Ver.

ただビジュアルがいい、ただ歌や声がいいというのに僕はあまり興味がないんです。小田さんといっしょにやって、「やっぱり自分はミュージシャンでありたいな」という気持ちが強くなったんです。


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少し話題を変えるのですが、これまで多くのラッパー、シンガー、ミュージシャンと共作してきましたよね。自分の音楽観に影響を与えた客演とか、共作はありましたか?

清水:小田(和正)さんがすごく印象に残っています。僕は音楽をやる以上ミュージシャンでありたいんです。「ビートだけもらってラップだけやる」ではなくて、自分で音に入り込んで作りたい。いかにビートから作ろうがラップをバンバンやろうが、音楽的に何がどうなっているのか、というのをちゃんと話せる人間でいたい。あの曲(“君さえいれば”)はアレンジを小田さんがやられたんですけど、そのアレンジの過程を見ていると、全部の楽器が上手いんですよ。アレンジもするし、打ち込んでギターも弾いたりしていて、「ミュージシャンだなあ。カッコいいな」と思いましたね。自分もそうありたいし、音楽のプロである以上みんなにそうあってほしいとも思いますね。自分のできる範囲でいいと思うんですよ。それが例えばMPCでもいいし、ギター1本でもいいし、何でもいいからとにかく自分で奏でてひとつ作品を作れる、というのが僕のなかでの最低条件だと思っているんです。ただビジュアルがいい、ただ歌や声がいいというのに僕はあまり興味がないんです。小田さんといっしょにやって、「やっぱり自分はミュージシャンでありたいな」という気持ちが強くなったんです。

清水さんはギターも弾いて、ドラムも打ち込んで、自分で作曲もアレンジもしていますよね。それは子供のころに習得したものだったのでしょうか?

清水:いやいや、そんな偉そうなことを言いながら全部そんなに上手くないですよ。ピアノ、キーボードを15、6歳くらいのときに、ドレミファソラシドのドの音もわからないみたいなところから始めて、ギターもここ3、4年でちょっと触ってみているぐらいですね。ドラムも1年前くらいに電子ドラムを買った感じです。でも僕は教わるのが嫌なんで(笑)、全部自分で触りながらやっていきたいし、独学ですね。とりあえずは触っていくみたいな感じですね。ヒップホップ的な感覚でいけば、そんなに知識がなくたって、コードが全部わかって押さえられなくたって絶対いい曲作れますから。限られた技術や知識のなかでめちゃくちゃいい曲作る人もいっぱいいますしね。

「FIRE」のシングルの2曲目“Knocks Me Off My Feet”はスティーヴィー・ワンダーのカヴァーですよね。どうしてこの曲をカヴァーしようと思ったんですか?

清水:スティーヴィーの曲であの曲がいちばん好きなんです。それぐらいしかあの曲に関しては言うことがなくて(笑)。

ははは。ダニー・ハサウェイも大好きなんですよね。

清水:そうですね。いまでも歌自体の上手さというところではダニー・ハサウェイが僕のなかでいちばんですね。

ダニー・ハサウェイでアルバム1枚か1曲挙げるとするなら、清水さんはどれを選びますか?

清水:ベタですけどやっぱり『ライヴ』が好きです。あのアルバムのライヴ感って、いまでもずっと僕の理想としているライヴなんですよ。僕はお客さんにいっしょに歌ってほしいんですよね。それは自分にも責任があって、歌いたくなるようなキャッチーな部分がないから歌わないんだろうっていうのもあるんですけど、でも海外のアーティストのライヴってお客さんがバリバリ歌うじゃないですか。

そうですね。R・ケリーのライヴとか観るとすごいですもんね、オーディエンスの歌が。

清水:自分が客だったら聴こえないでしょ、っていうくらい客がほぼ全部歌うじゃないですか。自分のライヴもそうなって欲しいなって思うんですけど、でも曲のパワーがもうちょっと必要だなと思いますね。だから、“My Boo”を作るときに歌いたくなるフレーズも意識していたんです。そうしたら、あの曲がちょっとパーティ・アンセムっぽくなってくれたので、すごく嬉しいんです。北海道かどこかのクラブで“My Boo”が流れていて、それを客が大合唱しているのをツイッターで見て、「これこれ! これに憧れてた!」みたいな(笑)。だから、自分の理想とするライヴ像はあのアルバムからきてますね。それもあってキャロル・キングの“ユーヴ・ガッタ・フレンド”(ダニー・ハサウェイが『ライヴ』でカヴァーしている)をカヴァーしたんです。

ディアンジェロもすごく好きなんですよね。ディアンジェロでアルバム1枚選ぶとしたらどれですか?

清水:僕はぶっちぎりで『ブードゥー』ですね。

『ブラウン・シュガー』ではなく『ブードゥー』なんですね。

清水:『ブラウン・シュガー』から入りましたけど、もう『ブードゥー』を棺桶に入れてほしいですね。あれだけあればいいってレベルに好きですね。『ブラウン・シュガー』は音楽として完成されすぎちゃっている曲が多いというか、もちろん他のアーティストの曲と比べたら全然キレイじゃないですけど、ディアンジェロにしてはある程度キレイですよね。『ブードゥー』のぶっ飛び具合が好きすぎるんです。たぶん何万回か聴いたとしても発見があると思う。「やっぱりエグいな」とハッとする瞬間がいまだにある音楽はすごいですよね。

清水さんも『PROUD』で自分なりの“エグみ”を出して、そこで獲得した自信や方法論の延長で次作も創作していこうと考えていますか?

清水:そうですね。自由な感じはすごくありますね。やっぱりいままでみたいに「これはちょっと言わないほうが良い。ここはもっとキャッチーにしよう」みたいなのはやめたほうがいいとはすごく思っていますね。既存のキャッチーさではなくて、自分なりのキャッチーさとか、自分なりの表現をやればいいと思っていますね。

清水さんの音楽の変化に戸惑ったファンもいたんですか?

清水:それが意外といなかったと思いますね。もちろん多少はいると思うんですけど、想像してたよりかはだいぶ少ないと思います。そこが僕のリスナーのすごくいいところで、この10年のなかで僕の「本当はこういうことをやりてえんだ」というのを感じ取っているんですよね。

それは、『PROUD』以前のインタヴューなどでそういう葛藤とかジレンマみたいなものを表現されてきたからですか?

清水:軽くは言っていましたね。少しだけ。思っていた以上にファンのみんながそういうことを感じていて、だから「変わっちゃったね」というよりも「やっときたか」みたいな意見の方が多かったですね。

それは後押しになりますね。

清水:そうですね。ただ、「次のアルバムはマジでぶっ飛んじゃおう」みたいな気持ちになる日もあれば、次の日には「いや、もっと普通の聴きやすいものを作ろうよ」みたいな気持ちになったり、その次の日には「もうトラップっしょ」みたいな気持ちになったりするんでそういう自分にもう困っちゃうんですよ。しかもけっこう完璧主義なんでアルバムを通しての世界観とかを統一したいんです。でもそれを気にし過ぎると作れなくなるから、音楽は真剣に作るけれど、そういう気持ちとの向き合い方はテキトーにやらないとダメですね。自分のなかで良い曲なら良いというのがあるので、それがどういう形であれ、良い曲を作ればいいかなといまは考えていますね。

取材・文:二木信(2017年2月27日)

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Profile

二木 信二木 信/Shin Futatsugi
1981年生まれ。音楽ライター。共編著に『素人の乱』、共著に『ゼロ年代の音楽』(共に河出書房新社)など。2013年、ゼロ年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行。漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/2015年)の企画・構成を担当。

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