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interview with Jameszoo

interview with Jameszoo

ナイーヴ・コンピュータ・ジャズの正体

──ジェイムスズー、インタヴュー

取材:小林拓音+野田努    通訳:原口美穂  写真:小原泰広   Jan 18,2017 UP

音楽を作りはじめる前、俺はプロのテコンドー選手で、それで生活していたんだ。

あなたはいまもデンボスに暮らしているんですよね?

JZ:そう。

あまりシーンと関係ない場所で暮らしているという意味で、日本人と近い部分があるのかもしれませんね。

JZ:たしかに。

いまでも故郷に住み続けている理由とは?

JZ:友だちや家族がいるからさ。

音楽活動のためにアムステルダムに引っ越そうと思ったことはありませんか?

JZ:アムステルダムからもたくさんオファーが来たし、友だちもたくさんいるけど、俺にとって、アムステルダムという場所は、「作品の内容よりも背景を重視した場所」なんだよね。音楽を作るのに、たくさんのものや特別な環境は必要ない。俺に必要なのは、家と友だちだけなんだ。

アムステルダムの〈Kindred Spirits〉から作品をリリースするようになった経緯を教えてもらえますか?

JZ:音楽を作りはじめる前、俺はプロのテコンドー選手で、それで生活していたんだ。

一同:へえええ!

JZ:その経験で歯を折ったり膝を痛めたり、身体がボロボロになって、もうやっていけないと思った。で、また学校に戻ろうと思ったんだ。でも、実際戻ってみると、自分には合ってなかった。で、学校に行かないとしたら何ができるだろうと考えていたんだけど、隣の席のクラスメイトが音楽を作っていたから、自分もそれをやろうと思ったんだ。テコンドーをやめてからは酒が飲めるようになって、地元のバーに行ったんだけど、『Beat Dimensions Vol.1』っていうコンピレイションを作ったシナマン(Cinnaman)というDJが、ハドソン・モホークやディムライト、サミヤムをプレイしていたんだ。それを聴いて、自分もそれを作りたいと思った。で、アップルストアに行ってパソコンを買って、そこから4曲を作って、それを友だちに送ったんだ。そしたら彼が〈Kindred Spirits〉に送って、リリースが決まった。音楽を作りはじめて半年で、音楽がリリースされることになったんだ(笑)。

それはあなたが何歳のとき?

JZ:たぶん19か20歳だったと思う。

それ以前は音楽は作ってなかったんですよね?

JZ:作ってなかったね。

しかし、なぜテコンドーの選手になろうと?(笑)

JZ:父親がテコンドーのプロだったからだよ。俺は若すぎてオリンピックには出られなかったけど、オランダの国内では優勝したこともあるし、12ヶ国が参加する大会でも賞をとったことがある。世界選手権では2位になったし、(『Fool』は『ele-king』の年間ベスト30で9位だったので)ミュージシャンとしてよりもファイターとしての方が上なんだ(笑)。

間違いなく、いまの音楽シーンの中でいちばん強い男ですね(笑)。

JZ:だね(笑)。

その後〈Rwina〉からダブステップを取り入れたような作品を出していますが、それは、音楽ファンとしてダブステップが好きでインスピレイションを受けていたからそのような音楽を作ったのですか?

JZ:そう。〈Kindred Spirits〉からのリリースの後、ショウをやるようになったからDJをはじめたんだけど、そこからクラブに行く機会が増えて、クラブ・ミュージックにハマっていったんだ。デジタル・ミスティックス、マーラ、コーキ……そのへんのアーティストを聴くようになったね。だから、そういった音楽の自分ヴァージョンを作りたくなったんだ。そうしてEP「Faaveelaa」ができあがったんだ。

そしてその後、フライング・ロータスと知り合うんですよね?

JZ:そうだよ。その前に、彼とはニューヨークのレッドブル・ミュージック・アカデミーで会ったことはあったけどね。でも、そのときはアルバムを作るつもりもなかったし、あえて彼に自分の音楽を聴かせたわけではなかった。ただスタジオで音を作って楽しんでいるところに、たまたま彼が入ってきて、俺がそのときに作っていた音を聴いたんだ。〈Brainfeeder〉と正式な契約の話をしはじめたのはそのずっと後なんだ。アルバムを作りたいと思ってすべてを完成させたときに、初めてそれを〈Brainfeeder〉に送ったんだ。

彼は初めてあなたの音楽を聴いてどういう反応でした?

JZ:レッドブルのときはすごくエンジョイしてたみたいだよ。音源を送ったときは、俺はオランダにいたからわからない。でも聞くところによると、彼のマネージャーがすごく気に入っていたらしい。ふたりで一緒に聴いて、リリースを決めたらしいよ。

俺はケイジ・ハイノ(灰野敬二)の大ファンなんだけど、彼はいつも、どう演奏してほしいかを楽器に尋ねているらしい(笑)。俺はその考え方が好きなんだよね。


Jameszoo
Fool

Brainfeeder/ビート

AbstractAvant-garde JazzExperimental

Amazon

あなたはたくさんの音楽を聴いているので、今回のアルバムに反映されているのはその中のほんの一部だと思います。次に出す作品はまったく違うものになる可能性もあるのでしょうか?

JZ:あるね。オランダでちょっとしたフェスをスタートしたんだけど、スピーカー・ミュージックやミュジーク・コンクレートのフェスで、ピエール・ブーレーズ、ピエール・シェフェール、ピエール・アンリ、シュトックハウゼン、クセナキスとか、最近はそういった音楽にインスパイアされているんだ。そのフェスをきっかけに友だちと一緒にデンボスでスタジオに協力することになって、そのスタジオで新しいアルバムを制作しようと考えているよ。

そのアルバムも〈Brainfeeder〉から?

JZ:そう。そのスタジオは自分のものではないけれど、スタジオ・セッションを仕切っているんだ。(そう言って、スタジオにある50年代の機材の写真を見せてくれる。)

その当時の機材でないと作れない音があるとは思うのですが、それに拘る理由とは?

JZ:やはり、その時代の機材でしか作れない音があるんだよ。ギアって、ひとつひとつ作れる音が違うと思うし、そういった機材を使うことは、俺にとってはチャレンジなんだ。俺はケイジ・ハイノ(灰野敬二)の大ファンなんだけど、彼はいつも、どう演奏してほしいかを楽器に尋ねているらしい(笑)。俺はその考え方が好きなんだよね。俺自身も楽器や機材の使い方を勉強したわけではないし、自分で探り出すしかないからね。

シュトックハウゼンやブーレーズやクセナキスのような音楽は、クラシックの延長にあるもので、いうなれば理論的な、すごく理屈っぽい音楽なんですけど、そういう意味でいうと、あなたはもっと感覚というか、直感的に音楽を作っていますよね? そんなあなたにとって、50年代のああいった現代音楽はどこが魅力ですか?

JZ:サウンド・デザインがいまだに時代を感じさせないところ。いまでこそみんながコンピュータを使っているけど、当時はテープやそういうものを使っていたわけで、知識がある人も誰もいなかったわけだよね。そこが魅力的なんだ。みんな勉強不足だったわけではなくて、新しいサウンドだったから知識の持ちようがなかった。ブライアン・イーノも、何か新しいものを作る場合、そこにクオリティは存在しないと言っていたしね。

ブライアン・イーノは好きですか?

JZ:大好きだよ。デヴィッド・バーンとの作品とか素晴らしいと思う。

このアルバムには、音が突然止まって間が生まれる瞬間のある曲がいくつかあります。そういった間や沈黙は意識して作っているんですか?

JZ:そうだね。俺はダイナミックな作品が好きだから。音楽制作において、いちばんパワフルな手法は静寂だと思うんだ。たとえばファンクのブレイクも、奏者がそれをどうプレイするかではなくて、どうストップするかがすべて。ときには、どういう音を鳴らすかではなくて、どこで音を鳴らさないかが大切なんだよ。ジェイムス・ブレイクが大好きなんだけど、彼の作品も複雑すぎない。サウンドは少ないのにいい曲を作り出しているところがすごいと思うね。

テコンドー、スポーツと音楽の共通点はあると思いますか? 私も柔道をやっていたのですが、リズムの外し方って大事ですよね? その辺で共通するのかなと思って。

JZ:そうそう。タイミング。相手のタイミングを見計らいながら動くというところ。それって即興みたいなものだと俺は思うんだ。セットされたリズムはないわけだしさ。

だいぶあなたの音楽の秘密がわかってきました(笑)。

JZ:だね(笑)。

テコンドーをやっていた頃も、音楽は聴いていたんですよね?

JZ:いや、聴いてなかったよ。

ということは、短期間ですごい量の音楽を聴いてきているわけですね?

JZ:そうなんだ。本当にハマったからね。まるで中毒さ。家族は誰も音楽ファンじゃなかったし、周りに音楽はなかったからね。

音楽にハマりだしたとき、お母さんから何か言われませんでした?

JZ:最初は不安がっていたけど、シュトックハウゼンなんかに関する音楽理論があって、それを俺が勉強しているのを知って、息子がいかに真剣かがわかったらしい。パフォーマンスをするときはジャズ・バンドとやるんだけど、それを見たとき、本気なんだなと感じたみたいだね。

パフォーマンス、DJ、音楽制作、いろいろと活動されていますが、どの作業がいちばん好きですか?

JZ:すべてだね。どれが欠けてもダメさ。どれかひとつだけをやるんじゃなくて、すべてのバランスをエンジョイしているよ。

テコンドーでは怪我などがあったと思いますが、音楽活動をはじめて何かマイナスな面はありましたか?

JZ:自己中心的にならなければいけないときがあることかな。そんな自分の一面とは向き合いたくないけど、向き合わなければいけないし、自己中になっている自分に気づかされる。ライヴがうまくいかないとか、そういうのはあまり気にしないんだ。ミスは犯して当然だし、そこから学ぶしね。でも、我が強くなるのはあまり心地よくはない。テコンドーでは身体を痛めつけていたけど、音楽制作はマインドを痛めつけている感じかな。

アルバムが出てからしばらく経ちますが、これからのご予定は?

JZ:2017年の春にEPをリリースする予定。内容はもっとエレクトロニックだよ。で、そのあと次のアルバム作りに集中するつもり。今度もまたさまざまな音楽が詰まった内容になるだろうね。あと、『Fool』のアートワークを手がけてくれたペインターとのコラボのプロジェクトも計画しているんだ。

もし次の作品にリミックスを入れるとすれば、誰にリミックスを頼みたいですか?

JZ:ペーター・ブロッツマン。またはケイジ・ハイノ(灰野敬二)、メルツバウ。

ありがとうございました!

JZ:こちらこそありがとう!

取材:小林拓音+野田努(2017年1月18日)

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Profile

小林拓音/Takune Kobayashi
1984年生まれ。ele-king編集部。寄稿した本に『IDM definitive 1958 – 2018』など。編集した本に『わたしたちを救う経済学』『ゲーム音楽ディスクガイド』『文明の恐怖に直面したら読む本』『別冊ele-king 初音ミク10周年』など。

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