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Interviews

interview with Jameszoo

interview with Jameszoo

ナイーヴ・コンピュータ・ジャズの正体

──ジェイムスズー、インタヴュー

取材:小林拓音+野田努    通訳:原口美穂  写真:小原泰広   Jan 18,2017 UP

Jameszoo
Fool

Brainfeeder/ビート

AbstractAvant-garde JazzExperimental

Amazon

 カマシ・ワシントンの大作を筆頭に、サンダーキャットやニーボディ&デイデラスなどカッティング・エッジな現代ジャズを送り出し続けるかたわら、ジュークのDJペイパルをリリースしたり、はたまたジョージ・クリントン御大と契約を交わしたりと、近年の〈Brainfeeder〉の勢いには目を見張るものがある。その怒濤のような快進撃のなか、フライング・ロータスが自信を持って発掘してきたのが、オランダの若き才能・ジェイムスズーことミシェル・ファン・ディンサーである。たしかにそのサウンドを聴けば彼が大いなる可能性を秘めたタレントであることはおのずとわかるのだけど、いざその音楽がどういうものか説明しようとすると、なかなかどうして一筋縄ではいかない。

 ジェイムスズーが昨年リリースしたアルバム『Fool』を初めて聴いたとき、「IDM的な感性のもとでジャズをやる」というのがコンセプトなのかなと思った。けれど何度か再生しているうちに、ジャズから影響を受けたプログレッシヴ・ロックのようにも聴こえてきた。フリー・ジャズそのもののようなトラックがある一方で、ブラジリアン・ジャズから影響を受けたようなトラックもある。変拍子があったり沈黙があったりとアヴァンギャルドな側面が展開される一方で、メロディの部分はときにユーモラスであったりときにメランコリックであったりと、一体どういう文脈に位置づけたらいいのかわからない。その後彼の来日公演を体験する機会があったのだけど、そのあまりに雑食なDJセットにこちらのはてなマークはますます増殖していった。アルバムを出す前はダブステップ――しかも、かなり独特のそれ――をやっていたし、いやはや、ジェイムスズーとは一体何者なのだろう?

 天真爛漫。先に結論を述べてしまうと、この言葉こそジェイムスズーにふさわしい。彼はミュージシャンである前に、ひとりの無邪気な音楽ファンだったのである。そんな彼は現代っ子らしく、「俺にはルーツがないんだ」と言う。それはなぜかと言うと、彼は音楽をはじめるまでは……ここから先は以下をお読みください。

音楽って、人がそのトラックの背景から判断して決めるものじゃなくて、内容でジャンル分けされるべきものだと思う。

小林(●)、野田(■)

あなたのアルバムをベスト30に選出したのは、ビヨンセの作品のように世の中にプロテストする内容であったり、あるいはブレグジットやトランプみたいな暗い世界を反映したようなアルバムが多い中、あなたのアルバムには何か突き抜けた感じがあったからです。すごい知的なんだけれどもファンキーで、あなたがどんな内容のアルバムを作ろうとしたのかがわからないくらい他の作品とは違い、印象に残ったからです。

ジェイムスズー(以下、JZ):ありがとう。俺は音楽の教育を全く受けていなくて、音楽学校に行くことを考えたこともあったんだけど、結局実現せず、きちんとした曲作りの知識がないんだ。でも、フリー・ジャズなんかも好きだし、俺自身も自分なりにレコードを作ってみようと思った。知識はなくても、自分が大好きな音楽をコンピュータで表現してみようと思って作ったのが、このアルバムに収録されているトラックなんだよ。

なぜ『Fool』というタイトルにしたのですか?

JZ:アルバムを作っているプロセスの中で、「フール」な決断をしてしまう自分がいたんだ。自分自身に納得がいかないことが多々あったしね。そういう自分の状態からこのタイトルをとったというわけ(笑)。なりたくはないけど、「バカ」になってしまう自分もいる。そんな自分のポートレイトみたいなタイトルなんだ。それに、「フール」って言葉そのものがおもしろい名前だと思うしね。タイトルに関しては、変に凝ったりはしていない。アルバムもそうだし、タイトルもそうだし、長いタイトルはあまりつけたくないんだ。音楽ってみんなそれぞれに意味のあるものだと思うから、その内容を決めつけるようなタイトルはつけたくないんだよ。

たしかに、曲のタイトルもワンワードで短いものばかりですね。

JZ:タイトルで格好つけたくないんだ。最近の音楽って、内容よりも状況や背景を重視しすぎたものが多いと思う。それでIDMとか呼ばれたりもしてるけど、音楽って、人がそのトラックの背景から判断して決めるものじゃなくて、内容でジャンル分けされるべきものだと思う。

ついでにもうひとつ言葉の質問をすると、なぜジェイムスズー(Jameszoo)という名前にしたのですか?

JZ:特に理由はないよ(笑)。名前を考えているときに、たまたま思いついたのがこの言葉だったんだ。で、じゃあそれでいいやって思って(笑)。

アルバムに収録されたスティーヴ・キューンの曲も、原曲“Pearlie's Swine”のタイトルが“The Zoo”に変えられていますが、それには何か意味があるのでしょうか?

JZ:彼は以前〈Buddah〉っていうレーベルにいたんだけど、そのレーベルが破産して、パブリッシングの都合で、スティーヴ自身がタイトルを“The Zoo”に変えたんだよ。タイトルを変えたのは俺じゃないんだ。

ジェイムスズー(Jameszoo)の「zoo」と繋がってるのかなと思っていました(笑)。

JZ:最高の偶然だよね(笑)。あの曲は、アルバムの中でも俺のお気に入りでもあるし。

俺にはルーツがないんだよ(笑)。おもちゃ屋にいる子どもみたいなんだ。音楽のすべてが魅力的で、ひとつひとつの作品に興奮する。

スティーヴ・キューンとはどういう経緯で出会ったのですか?

JZ:9ヶ月くらいずっと彼とメール交換をしていたんだけど……

通訳:メール交換はそもそもどうやってすることに?

JZ:知り合いを通じて、彼の連絡先を知って、俺から彼にメッセージを送ったんだ。会ってもらうまで長いこと彼を説得しないといけなかったんだけど、9ヶ月経って彼がやっとニューヨークに招待してくれた。で、ニューヨークに着いて、彼から来るように言われたバーに行くと、ジョーイ・バロンとバスター・ウィリアムスもそこに座っていてさ(笑)。スティーヴだけいると思ってたからいきなり3人のレジェンドと一緒に座ることになって緊張したね(笑)。その3人の前で「スティーヴがなぜ自分とコラボするべきなのか」っていうのを説明しなきゃいけなかったんだ。変な雰囲気だったよ(笑)。最初は何ともいえない雰囲気だったけど、シュトックハウゼンに関する話をしはじめると、自分も彼も好きなミュージシャンの話でどんどん盛上がって、「今日自分のセットで“The Zoo”をプレイするから、もしそれを気に入ったらコラボしよう」と彼が言ってきてくれた。それから数日後にニューヨークのスタジオに入って、一緒に曲を作ったんだ。

彼から学んだことはありましたか?

JZ:彼のファンすぎて、学ぶというよりはただただ魅了されていたね(笑)。もっといろいろ学ぶべきだったと思うけど、雰囲気に圧倒されてしまっていたから。

もうひとり、このアルバムにはビッグなアーティストが参加しています。アルトゥール・ヴェロカイとはどのようにして出会ったのでしょう?

JZ:〈Brainfeeder〉の前、俺は〈Kindred Spirits〉っていうレーベルにいたんだけど、そのレーベルをはじめたキース・ヒューズ(Kees Heus)が、アムステルダムのパラディソ(Paradiso)っていうイベントのプロモーター兼オーガナイザーだったんだ。で、彼がアルトゥールをそのイベントに招待したんだけど、キースが俺にメールしてきて、「アルトゥールが来ることになったから、彼に自分の音源を送ってみろよ。もしかしたら、彼が来たときに一緒にスタジオに入って何か作れるかもしれないぞ」と言ってきた。それでアルトゥールのFacebookに音源を送ったら、彼から「いいよ。コラボしよう」という返事が来て、彼がオランダに来たときに3時間くらいジャムをして、そこから俺が一部を取って曲を作ったんだ。アルトゥールはいままで自分が出会った中でもいちばんと言ってもいいくらい良い人だったよ。アルトゥールとスタジオに入っていたときは、アルバムを作ろうなんて考えもなかった。でも『Fool』を作りはじめたとき、あのセッションを使った作品を絶対入れようと思ったんだ。

普段からブラジリアン・ミュージックは聴くんですか?

JZ:そうだね。エルメート・パスコアール、ペドロ・サントス、カエターノ・ヴェローゾ、ティン・マイアも好きだし、好きなミュージシャンはたくさんいるよ。

あなたの作品からは、あなたが一体どんな音楽を聴いて影響されてきたのかがわからないくらい、すごくたくさんの音楽の要素が聴き取れますが、実際はどんな音楽を聴いて影響されてきたのか教えて下さい。たとえば、この『Fool』には、ジャズの要素もあり、エレクトリックの要素もあり、ソフト・マシーンのような音楽性も感じられます。

JZ:そうそう。ロバート・ワイアットにこのレコードに参加してほしかったんだけど、実現しなかったんだ(笑)。ロバートから、「君の音楽を気に入っている」っていうメッセージはもらったよ。でも、彼はもう音楽制作をやっていないから、コラボできなかったんだ。俺は、ミュージシャンである以前に音楽ファンなんだよね。だから、家にいるときはつねにeBayやDiscogsをチェックしているし、すべての音楽サイトをチェックして新しい音楽を追い続けている。そのすべてから影響を受けているんだ。エレクトロニック・ミュージックというジャンルひとつでも、俺はミュジーク・コンクレートやシュトックハウゼンからディムライトやドリアン・コンセプトまで、昔のエレクトロニック・ミュージックから現代のそれに至るまで、そのジャンルのすべてを知りたいと思うし、知ろうとするんだ。ジャズも同じ。オーネット・コールマンからペーター・ブロッツマンに至るまで、できるだけたくさんのミュージシャンの作品を聴いて学ぶようにしているよ。

先日あなたのDJを聴いていて、ジャズやヒップホップはもちろんなのだけれども、『AKIRA』のサントラだったりスティーヴ・ライヒだったり、あるいはエイフェックス・ツインからバトルズまでがかかって、あなたの音楽のルーツがわからないところがすごくおもしろかったんですが、いまの話を聞いてあなたが深い音楽ファンであることが伝わってきました。

JZ:俺にはルーツがないんだよ(笑)。おもちゃ屋にいる子どもみたいなんだ。音楽のすべてが魅力的で、ひとつひとつの作品に興奮する。DJをするときは、サウンドシステムをチェックして、それに合ったセットをプレイするようにしているんだ。初めて日本でプレイしてみて、日本のオーディエンスはヨーロッパのオーディエンスと違うなと思った。ヨーロッパってダンスのムードを作り出すことがすべてだけど、日本のオーディンスは音を聴き込もうとするんだよね。それに合わせたセットを考えるのは、自分にとって新しい経験だったよ。俺も音楽を聴きたい派だから、嬉しかったね。

取材:小林拓音+野田努(2017年1月18日)

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Profile

小林拓音/Takune Kobayashi
1984年生まれ、東京在住。ライター、編集見習い。これからいろいろやっていく予定です。

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