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interview with BORIS

interview with BORIS

往復するノイズ

──ボリス、インタヴュー

倉本 諒    Jun 20,2014 UP

日本ってマジックミラーで囲われていて、内側からは外が見えるけど外側からは内が見えない。(Atsuo)
ジャムの曲が形になって行く過程で、言葉を加えたりギターのフレーズを入れたりしていくとき、常にそれらの「日常性」は考えます。(Takeshi)


BORIS - NOISE
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ボリスの楽曲や詩からは昭和歌謡を強く感じることがあります。実際に花太陽雨のカヴァーをやっていたりもしますし。僕が海外でボリスが好きな子に出会ったりすると、PYGのことを訊かれたりして。海外のファンはボリスの和製音楽のバッググラウンドにすごい興味を持っていると思うんですよ。

A:欧米のロック史に匹敵するくらい日本のロック史には濃いものがありますよね。でもぜんぜん外側には伝わってない。向こうの人もどうやって掘り下げていいかわからない。ジュリアン・コープが書いた『ジャップ・ロック・サンプラー』にしても主観的でまだホントに入り口みたいなものですよね。パッと見でも日本には本当に変なカルチャーがいっぱいある。音楽の歴史だけでも、たどっていったら「すごいものがあるんじゃないか?」って、みんな興味持っているんじゃないかな?

N:レコード・コレクターからすると(日本は)最後の秘境と言われていますからね。いまはインターネット社会でこれだけ情報がアーカイヴ化されているでしょ? でも日本の音楽の歴史だけは世界に知られていない。

A:日本ってマジックミラーで囲われていて、内側からは外が見えるけど外側からは内が見えない。ずっとそういう状況で日本人が中で好き勝手に空騒ぎしている。でもそういったカルチャーがネットの時代になって断片的にどんどん漏れ出している。外側からしたら興味が沸くでしょう。クオリティ高いですからね、日本文化は。僕らはそういう意味では(外から)正当に評価されていないと思う。彼らだって日本の音楽からの影響も強く受けているわけですから。

N:外は感覚的な部分でそれを感じているから好きなんだと思いますよ。

僕も彼らはイメージだけですけどそれを感じているのだと思いますね。

N:それにサウンドの上でも癖みたいなものが向こうの人は聴くとわかるみたいですよ。ひとつ言われているのが、アメリカの植民地主義じゃないですが、日本は戦後にアメリカの文化をおもいっきり与えられた。コカコーラを飲んでアメリカ的な文化をどんどん取り入れようというふうになった。そしてギターから何から実際に取り入れている。けれども日本は植民地化されることへの反発心があって、それが音楽の中に表出している。向こうの人はそういう分析の仕方をしているんです。

A:力道山的な。

N:そうそうそう。

(一同笑)

N:それが大雑把になると三島由紀夫からきゃりーぱみゅぱみゅまでいっしょになってしまうのですけど。それぐらいおもしろがってはいるんですよ。

A:過去の歴史の構造によって、日本人の表現活動が全部シニカルに見えちゃうことってありますよね。

N:でもむしろシニカルに見えているというよりはやっぱりミステリーに見えているんじゃないですか。僕らがアモンデュールを見るような感じで向こうは見ている気がしますけどね。

A:僕らの場合は表層的なロック・フォーマットがアメリカン・オルタナティヴみたいなものだったんで、アメリカのシーンにはハマりやすかったのかなとは思いますね。

N:あとは時代的なものもあったんでしょうね。そういうものが求められているというか。

A:そういう雰囲気はありましたよ。ボアダムスがあって、ギターウルフがあって、メルトバナナがあって、次の日本人は誰? 他に誰か日本人のアーティストはいないの? みたいな空気を当時は感じましたね。

N:僕はそれっておもしろい状況だと思うんですよ。ジュリアン・コープがたとえでたらめだとしても、あれだけ書いたってことは大したもんなんですよ。本当に資料がないので。


ロックってもっと危険で馬鹿馬鹿しく、下劣なものなんです。だからこそ人々の日常に寄り添える部分があると思うんですよね。(Atsuo)

話は変わるのですが、僕がボリスにのめり込むきっかけとなったのはゼロ年代後半のパワー・アンビエントとかヘヴィ・ドローンがキテた時期だったんですけど、当時たとえばサン O)))とボリスのコラボレーション『Altar』が暗示するように、スティーヴン・オマリーや、他にはアイシスのアーロン・ターナー等、インターナショナルなネットワークで世界観を共有していたと思うんです。また、当時、さまざまな背景でヴィジョンを交錯させていた仲間は現在ではそれぞれいい具合に異なるフィールドで活動しているように見えます。彼らのような長年のミュージシャンシップからの現在のボリスへのリアクションというのは気になりますか?

A:「それぞれの役割」があるな、とは思います。君がそっち行くなら僕こっち、みたいな。お話に出たアーロンやスティーヴンは昔からの友人で、3人ともアースの『2』を当時から、まわりの誰も評価していないのに絶賛していました。他にはジム・ジャームッシュの『デッド・マン』のサントラも僕らは注目していたりした。それぞれ別の場所にいても同じフィールを共有していた記憶はあります。それぞれのバンドが活動していく中でそれぞれの立ち位置みたいなものが生まれていって。サン O)))はああいった現代音楽というかコンテンポラリー・アート寄りな方向にいって。僕らは……ロックというか──

ボリスはアート志向な表現に抵抗感を感じていると何かのインタヴューで読んだことがあるのですが。

A:抵抗感というのは彼らに対しての抵抗感ではなくて、自分たちが「アーティスト」と呼ばれることに対する抵抗感、高尚なものとして捉えられることへの抵抗感ですね。

ただ、ボリスは過去作品を聴く上でも、現代音楽の方向性にいって何ら不思議ではないというか、むしろすごいものができ上がるだろうって確信もあったりします。そこでボリスがロックにこだわるのはなぜだろうとも思います。

A:やっぱりロックってもっと危険で馬鹿馬鹿しく、下劣なものなんです。だからこそ人々の日常に寄り添える部分があると思うんですよね。そういうロックの日常性みたいなものに魅力を感じますね。人々の生活とか社会システム、すなわち日常の中で人々の手元まで届くというところに可能性を感じます。日常が変わらないと何も変わっていかないと思う。人々の日常に寄り添える音楽でありたいとは思いますね。

T:ジャムの曲が形になって行く過程で、言葉を加えたりギターのフレーズを入れたりしていくとき、常にそれらの「日常性」は考えます。言葉にしても高尚な言い回しではなくて、普段使うような響きの言葉をできるだけ選ぶようにしている。ギター・フレーズも僕やWataが弾いたりするわけですからどうしても手癖になってしまう部分があるんですけど、意識的にキャッチーにしてみたり、明るい気持ちで弾いたり……。誰でも弾けるとか、誰でも口ずさめるとか、そういった日常性、距離感がグッと近くなるようには意識していますね。

ボリスの打ち込みが聴いてみたいんですけど今後期待できますでしょうか?

A:音源としてはあり得る……いや、どうだろう?

日本盤『Smile』(海外盤とはミックスが異なっていた)の冒頭は若干ダンス・ミュージックっぽかったですよね。

A:石原さん(石原洋『Smile』のサウンドプロデューサー)のリミックスでああなっていますね。あの頃はリズムマシンもよく使っていた。テンポが揺れるようなものを使っていたんですよ。もうオモチャ。微妙に早くなったり遅くなったり。やっぱりそういうもの、エラーが起こるようなものに魅力を感じる。打ち込みは打ち込みでそういう音楽の良さももちろんわかっているんですけど、このメンバーでライヴでやるとなると、僕らがべつにやらなくてもいいことかな、と思ってしまいますね。録音作品としては全然アリだと思うんですけどね。

少し機材の話が出たところでお訊きしたいのですが、ボリスのテープエコーはスペースエコーなんですか?

A:はい。

201ですか? (※Roland Space Echoの型番)

A:アンチ201です。

(一同笑)

A:リヴァーブはいらない。

ボリスのギター・サウンドにテープエコーは最高の相性だと思います。

A:150がないとツアーに出ない、この人(Wata)。そこで重要なのが、リヴァーブ・ユニットが入っていない150なら、軽くて運びやすい。

僕は機材が好きなのでそういった部分のこだわりも気になりますね。昔からボリスはオレンジのイメージが強かったりするのもありますし。テープエコーは壊れますよね。

W:壊れますよ。何回も。

A:いままで10台くらいは買っているよね。

W:何個か壊して、それぞれの部品を集めて修理したり。

N:音デカいですよね。

A:最近はわりと抑えめなんですよ。歌にピントを合わせたいので。でも今年の頭から昔の曲を演奏するセット、それこそ『Amplifer Worship』の曲を入れたり。当時以上にグッと音量を上げるパートもやっているんですが、会場の電源が落ちたりしちゃって。

(一同笑)

アンチ201です。リヴァーブはいらない。(一同笑)  (Atsuo)

ボリスは演奏環境へのこだわりは強いと思いますが、アメリカはどこもかなりローファイじゃないですか、そのあたりはどう対処しているんですか?

A:基本的にステージの上で音のバランスは作ってあるので、あとは外音がデカく出せるか出せないかだけなんです。会場のスペックがよければよりいいですけど。結局先も話したエンジニアのノエルはもう耳が遠くなっているので、自分に聴こえるようにグーッと上げてしまうんですね。だから大丈夫です。

(一同笑)

これからNOISEワールド・ツアーがはじまるわけですが、どのようなアーティストとステージを共有するのでしょうか?

A:アトラス・モス、セレモニー、ナッシング、マリッジズ、サブローザ、マスタード・ガス & ロージズにマスター・ミュージシャンズ・オブ・ブッカケとかですね。サポートには昔からの友達もいるし、楽しみですね。今回はツアーに出るのが楽しみになるアルバムになった。今まではこんな感覚なかったですね。

また今後の海外ツアーを経ることで今回の『NOISE』までのボリスの感覚がさらにアップデートされていくわけですね。

A:6月の国内のライヴはアルバムの全曲披露をやるんですが、そこから海外ツアー用にまたセットを変えて向かうつもりです。アメリカ・ツアー後、日本でも9月に東名阪で行ないます。日本に戻ってきた頃には『NOISE』の曲も成長したものが聴かせられるんじゃないかな。

ボリスはパフォーマンスをおこなう上で日本と海外の環境の違いを実感していると思いますが、今後国内のライヴ環境の変化に対するヴィジョン等はあったりしますか?

A:だいぶ変わってきている気がします。去年から国内でもライヴをたくさんするようになって、やれば変わってくるものだな、と実感しています。お客さんもチケットの買い方とかを覚えたりしたんじゃないかな?

え?

A:いや、日本のライヴでもどんどん外人のお客さんが増えているんですよ。

T:以前、浅草のホテルから新代田フィーバーに電話がかかってきて、「そちらに行くにはどうやって向かえばいいんですか?」って問い合わせが入ったことがあって、どうやら宿泊中の外人さんが観に来たいってことだったんですけど。

(一同笑)

それもすごい話ですね。

A:浅草観光協会に話を通した方がいいのかもしれないね(笑)。

T:主要ライヴハウスへの経路とチケットの買い方だけでも。

取材:倉本諒、野田努 写真:小原泰広(2014年6月20日)

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Profile

倉本 諒/Ryo Kuramoto倉本 諒/Ryo Kuramoto
crooked tapes代表、イラストレーター兼スクリーン・プリンター。

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