Home > Interviews > interview with Joker - 俺はおまえたちの思うブリストルではない
ひとりっ子で、いつも母親といっしょだった。彼女は車を運転しながらいつも音楽を聴いていた。それがジャングルだった。9年前に兄弟ができたんだけど、それまではずっと住む場所も転々としていて、ようやく一カ所に落ち着いて住むことになったとき、近所にクラックハウスみたいな家があって......
■最初はDJから?
ジョーカー:俺、ひとりっ子で、1日のうちの24時間、1週間のうちの7日間、母親といっしょだった。母親は車を運転しながらいつも音楽を聴いていた。それがジャングルだった。9年前に兄弟ができたんだけど、それまではずっと住む場所も転々としていて、ようやく一カ所に落ち着いて住むことになったとき、近所にクラックハウスみたいな家があって......まあ、実際に売人の家ってわけじゃなく、そう見えたってことなんだけど、そこにたまっていた連中のひとりが、いかにも売人なのか中毒者みたいな人なんだけど、いつも車で音楽を流しながらカセットテープを売り歩いていたんだ。それを友だちがよく買っていて、それを俺はよくコピーさせてもらっていた。そのテープを聴いていたよ。
■そのテープがガラージだったんですか?
ジョーカー:そう、ガラージとグライムがミックスされていたね。
■あなたはどういう風に、音楽制作を学んでいったんですか?
ジョーカー:いとこの家に行ったときにコンピュータを見せてもらって、そのなかにものすごい数のループがあったんだ。それをつないでいるのを見て、「あれ、それって曲を作ってるの?」って訊いたら、「そうそう」って。「こうやって、こうやって、こういう風にやるんだよ」って、で、「おお!」みたいな。それが最初だったね。それから数ヶ月後に自分でもコンピュータを手に入れて、そこにループを集めて、で、自分でやるようになったんだよ。
■それは何歳のとき?
ジョーカー:13歳だね。えー......だから2002年ぐらいかな。
■音楽に夢中になった理由みたいなものについて話してもらえますか?
ジョーカー:7歳の頃かな、さっきも言ったように母親の車になかにいるときにはいつも音楽があって、で、車中で流れている曲に自分の頭のなかで想像で違うフレーズを加えていった。だから子供ながらに頭のなかでトラックを作っていた。「俺ならこうするのに」とか、「何でここでこうならないんだろう」とか、実際に作る前からずっとそういうことをやっていた。
■2007年にピンチの〈イヤーワックス〉から「Kapsize EP」をリリースするまでの経緯を教えてください。
ジョーカー:ヘンリーって男がいてね、彼はダブプレートを作っているんだけど、そのヘンリーがピンチの知り合いだった。俺はいつもダブプレートをヘンリーに頼んでいた。そのダブプレートがピンチのパーティのオープニングで何度か使われた。そのとき、けっこう良い反応をもらって、で、あのシングルがリリースされたんだ。15歳ぐらいのときかな。まあ、18歳になるまでは、ホントに身近な人しか俺が18歳以下(合法にクラブに行ける年齢)だということは知らなかった。
■「Kapsize EP」の前から、ダブプレートはけっこう切っていたの?
ジョーカー:俺、その前からラジオのDJもやってたんだ。その頃はまだCDJがそんなに一般的ではなかったし、いまでも俺はCDよりもヴァイナルが好きだから、ラジオでプレイするためにもダブプレートはけっこう切っていた。
■ちなみに何であなたはジョーカーという名義を使ったの?
ジョーカー:音楽とは別に、自転車にすごくはまっていたんだ。ゲットー・バイクというね、自転車に乗って悪いことをするグループに入っていて、俺はそのグループのなかでもいちばん落ち着きのない子供だった。ずっと喋っているし、落ち着きがなかった。で、「うるさいから、おまえ、黙っておけや」って、「おまえはジョーカー(おどけ者)だな」って。いつもそういう風に言われていて、最初は「俺のことをジョーカーと呼ぶな」と反論していたんだけど、いつしかそれも面倒くさくなって、「ま、いいか」と。それでジョーカーになった。
■トランプの最強のカードって意味かと思った(笑)。
ジョーカー:ま、それでもいいよ(笑)。
■そういえば、2009年、あなたが"デジデザイン"を出したあとに『ガーディアン』に載った記事で、あなたが"パープル(紫色)"を用いるのは、女の子が入りづらいような、モノクロームでダークなダブステップへの抵抗みたいな話がありましたが、実際のところどうなんですか?
ジョーカー:悪いけど、そのことに関しては話したくないんだ。俺が意図したこと以上に、話がでかくなってしまって......。
■でも、今日も紫色のデザインのTシャツじゃないですか。
ジョーカー:......(ものすごく小さな声で)たまたまね。
取材:野田 努(2011年10月17日)