ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with Keiji Haino 灰野敬二 インタヴュー抜粋シリーズ 第2回
  2. Beyoncé - Cowboy Carter | ビヨンセ
  3. Columns ♯5:いまブルース・スプリングスティーンを聴く
  4. interview with Keiji Haino 灰野敬二 インタヴュー抜粋シリーズ 第1回  | 「エレクトリック・ピュアランドと水谷孝」そして「ダムハウス」について
  5. 壊れかけのテープレコーダーズ - 楽園から遠く離れて | HALF-BROKEN TAPERECORDS
  6. interview with Martin Terefe (London Brew) 『ビッチェズ・ブリュー』50周年を祝福するセッション | シャバカ・ハッチングス、ヌバイア・ガルシアら12名による白熱の再解釈
  7. Brian Eno, Holger Czukay & J. Peter Schwalm ──ブライアン・イーノ、ホルガー・シューカイ、J・ペーター・シュヴァルムによるコラボ音源がCD化
  8. interview with Mount Kimbie ロック・バンドになったマウント・キンビーが踏み出す新たな一歩
  9. Bingo Fury - Bats Feet For A Widow | ビンゴ・フューリー
  10. tofubeats ──ハウスに振り切ったEP「NOBODY」がリリース
  11. 三田 格
  12. Beyoncé - Renaissance
  13. Jlin - Akoma | ジェイリン
  14. HAINO KEIJI & THE HARDY ROCKS - きみはぼくの めの「前」にいるのか すぐ「隣」にいるのか
  15. 『成功したオタク』 -
  16. まだ名前のない、日本のポスト・クラウド・ラップの現在地 -
  17. KRM & KMRU ──ザ・バグことケヴィン・リチャード・マーティンとカマルの共作が登場
  18. Beyoncé - Lemonade
  19. Politics なぜブラック・ライヴズ・マターを批判するのか?
  20. R.I.P. Damo Suzuki 追悼:ダモ鈴木

Home >  Interviews > interview with Joker - 俺はおまえたちの思うブリストルではない

interview with Joker

interview with Joker

俺はおまえたちの思うブリストルではない

――ジョーカー、インタヴュー

野田 努    写真:小原泰広   Oct 17,2011 UP

Joker
The Vision

4AD/ホステス

Amazon iTunes

 リアム・マクリーン......ジョーカーを名乗るこの青年は、路上では不良だったかもしれないけれど、音楽シーンではいわば神童だ。地元ブリストルのグライム・シーンで頭角を現していた彼は、2009年に〈ハイパーダブ〉から"デジデザイン"を発表すると、その評価はいっきに加速した......というのも強いて喩えるのなら、"デジデザイン"からはデビュー直後のマッシヴ・アタックのあの蛇のような艶めかしい暗さがいよいよグライム/ダブステップのフロアに接続されたかのような、ある意味では我々が待ち望んでいた陶酔が展開されていたからだろう。
 また、ジョーカーが、ピンチやペヴァリストといったDJ/プロデューサーが開拓したブリストルのダブステップのシーンにおいて、もっとも若いひとりだったことも彼の神話に拍車をかけたのかもしれない。いずれにしても、グイードとジェミーとの3人による通称パープル・サウンドのパーティは、ジョーカーによればそれはDOMMUNEが広いと感じるぐらいの規模だったというのに関わらず、ブリストルの新風の象徴として瞬く間に広く知れ渡った。
 『ザ・ヴィジョン』はジョーカーのファースト・アルバムで、待ち望まれていた1枚だ。ブリストルのアンダーグラウンドのこの10年の秘密を明かすかのように、グライム、ジャングルやダブステップが混ざっている。そして本人に自覚はないかもしれないが、多くのリスナーはブリストルらしい"低音"を感じるだろう(彼の音楽が「町から生まれたもの」であることは、以下のインタヴューを読めばわかると思う)。ビートが直撃するようなパワフルなR&B"ザ・ヴィジョン"は数ヶ月前に先行リリースされているが、アルバムのなかばの"ミルキー・ウェイ"以降の流れはとくに素晴らしい。フラフラになりながらクラブの入口を目指して真っ暗な階段を下っていく。その先に待っているのは暗闇のなかの孤独な恍惚だ......。たとえ本人がこの言われ方を拒もうが、ジョーカーからはブリストルの"ネクスト"を感じる。ヒップホップを基盤としながら、騒々しいベースを擁するメランコリー・ミュージックという意味において。

自転車にはまっていた。ゲットー・バイクという自転車に乗って悪いことをするグループに入っていて、俺はそのグループのなかでもいちばん落ち着きのない子供だった。ずっと喋っているし、落ち着きがなかった。で、「うるさいから、おまえ、黙っておけや」って、「おまえはジョーカー(おどけ者)だな」って。

昨晩のDOMMUNEでのプレイ、わずか1時間でしたが素晴らしかったです。

ジョーカー:えー、あー、......(しばし沈黙、そして日本語で)ありがとう。

どういたしまして(笑)。今日着ているそのTシャツは、ビリオネア・ボーイズ・クラブ(ファレル・ウィリアムスのファッション・ブランド)のヤツですよね?

ジョーカー:そうだよ。昨晩着ていたのも同じブランドさ。原宿の店で買ったんだ。

ファレル・ウィリアムスというのは、あなたにとってヒーローのひとりと言っていいんですか?

ジョーカー:ああ、そうだね。

ゾンビーもファレル・ウィリアムスがヒーローだと言っていたけど、あなたがた世代にとって彼は本当に大きな存在なんですね......あ、でも、ゾンビーのほうが年上なのかな?

ジョーカー:ゾンビーは30歳だよ。

あー、ぜんぜん彼のほうが上なんですね。ちなみにあなたはファレルのどんなところが好きなんですか?

ジョーカー:数年前にネプチューンズのインタヴューを読んだ。そこでファレルが、「俺たちにできるんだから君たちにもできる」って言ってて、俺はそれで「そうか、できるのか!」って。

とくに音楽的に影響を受けたってことはないんですか?

ジョーカー:もう、メチャメチャメチャメチャメチャメチャ......好きだ。彼の音楽は大好きだ。

音楽にのめり込んだきっかけは?

ジョーカー:つねに音楽があったから。

親からの影響?

ジョーカー:てか、音楽が嫌いなヤツっているのかな? 音楽はずっとそこにあった。最初の影響は、10代になったばかりの頃に聴いたアンダーグラウンド・ミュージックだった。それから俺はターンテーブルを手に入れて、クルーに入って、ますます音楽の世界に入っていった。

あなたのいうUKのアンダーグラウンド・ミュージックとは、昨晩も話したけど、グライムのこと?

ジョーカー:いや、違う。最初はどちらかと言えばガラージだった。それからジャングルだね。ジャングルは、UKではものすごく大きいから。グライムはガラージの新しい型で、ドラムンベースはジャングルの新しい型っていう言い方もできるよね。

取材:野田 努(2011年10月17日)

123

INTERVIEWS